真・恋姫†無双  星と共に 第27章
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真・恋姫†無双  星と共に  第27章

 

 

五丈原に軍を進める諸葛亮。

だがその最中で……

 

「ごふっ! ごふっ!」

 

諸葛亮は馬の上で口から血を吐く。

 

「ああ!」

「朱里さん!」

 

諸葛亮の様子を見て、馬謖は驚き慌てるが……。

 

「大丈夫……これくらいなら……」

「少し休んだら…」

 

王平が諸葛亮に休むよう進言する。

 

「……すみません」

 

諸葛亮はあらかじめ用意されていた馬車に乗り換えて、体を休めた。

今回、呉との共同戦線のこともあり、蜀の将を全員は連れて行けない。

五丈原に向かったのは、諸葛亮、馬謖、王平、馬超、馬岱、厳顔、黄忠、そしてこの世界の趙雲であった。

 

「でも本当にここから魏軍が来るのかな〜?」

「もう一つの道からこないわけではないからの」

「ええ、もし朱里ちゃんの読みどおりなら……」

「曹操達は五丈原から来る可能性があるって事か……」

「だけどどちらが本隊なのかは……」

「分からぬということか」

 

蜀の面々は様々な不安を抱きながらも五丈原に向かった。

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その数日前、許昌では……。

 

「ついに、ここまで来たんだな」

「ええ」

 

目の前に広がるのは銀色に光る曹魏の兵五十万。

 

「姉上。全軍、集結いたしました」

「ええ………」

 

華琳は間を置いて、兵達の前で演説する。

 

「聞け! 魏の勇士達よ!」

 

華琳の声と同時、兵達は自分達の武器を構えなおし、永琳達将も姿勢を正しくする。

 

「これより我らは国境を越え、劉備率いる蜀への侵攻を開始する!

越えるべき山道は厳しく、敵は名将の誉れ高い関羽、孫策となる! 激戦となる事は必至でしょう!

だが、我らは袁一族を討ち、西涼を制し、赤壁を抜けて大国呉にも勝利した!

皆はその激戦をくぐり抜けた一騎当千、万夫不当の勇士達よ! 油断も慢心もしてはならぬ。けれど、恐れを抱く事もない!

この大陸に残る国家は、我が曹魏と劉備の蜀の二国のみ、だが、疲弊しきったこの大陸を救えるのは、西涼でも、孫呉でも、ましてや理想だけの蜀でもない! 我らが曹魏、ただ一国のみ!

今こそ蜀を呑み込んで、我らが大陸の主、大陸の守護者となるのだ! 総員、出立せよ! 我らが威光を、蜀の地の果てにまで輝かせるのだ!」

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

兵全員が声を上げる。その声は本当に蜀の奥地にまで響きそうなほどに。

そして許昌に集まった軍は漢中から蜀を攻めるとして、五丈原へと向かった。

その行軍の最中……。

 

「まだ身が震えるようです」

「うん。何か凄かったの…」

「ウチの兵士って、あんなにいたんやねぇ……」

「呉攻めの時以上に集まってるからね、驚くのも無理ないわ」

「この戦に全力を尽くすのは当たり前でしょ。蜀が最後の相手なんだから」

 

北郷隊の会話に黒美が入ってくる。

 

「それにここにはいないけど、行軍しているのは私達だけじゃないのよ」

 

澪も会話に入ってくる。

その言葉の意味はと言うと、華琳達が蜀への進行を始めたのと時を同じくして、建業に残っていた春蘭達魏軍も蜀への進行を開始したのだ。

 

「でも二面作戦とは私達の主は思い切ったことをするわね」

 

次に咲が入ってきた。

 

「それほど我らの力を信じていると言う事であろう」

 

そして星も会話に参加してきた。

 

「まあそうだろうな」

「だけど油断はしてられんよ」

 

黒美が少しばかり真剣な表情をする。

 

「何でや?」

「ここから蜀への道がかなり険しいからだ」

 

すると永琳と光琳がやってくる。

 

「険しい?」

「知らないの? ここからならともかく、漢中から蜀への街道は絶壁ばかりなのよ」

「絶壁……」

「まあその絶壁のための準備は真桜が用意してるみたいだけど……」

「真桜ちゃんそうなの〜?」

「まあ隊長や華琳様に色々言われて準備はしといたけど……」

「あくまでそれは最終手段だ。何とか別の道を探すさ」

 

そういいながら一刀は漢中へと向かう。

そして行軍している中、華琳達はある情報を掴んだ。

それは蜀軍の一部が漢中のとなりにある五丈原に布陣を取っているとのことであった。

 

「五丈原に陣を?」

「はい。斥候からの報告ではそんな情報が……」

「それでその五丈原に指揮を取っている将は誰なの?」

「将は確認できただけで馬超、馬岱、黄忠、そして趙雲です」

「この世界の私もそちらに回っているのか」

「それで軍師としては諸葛亮がいるみたいなのですが……」

 

少し永琳がどもってしまう。

 

「? 何? 朱里が一体どうしたの?」

 

諸葛亮と因縁がある黒美が永琳に詰め寄る。

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「……報告によれば諸葛亮は本当に病を患っているみたいだ」

「なんやて!?」

「朱里が!?」

 

黒美も驚いたがそれ以上に一刀と星が驚いた。

 

「それは本当か!?」

 

一刀が興奮しながら永琳に話しかける。

 

「本当かどうかは分からん。だが病人や怪我人を乗せる馬車に諸葛亮が運ばれていたとの報告はある」

「そんな……あの朱里が……」

 

一刀は衝撃を隠せない。前の報告であらかたの覚悟はしてたが改めて聞くとやはりショックは隠せない。

 

「そこまで驚く事なの?」

 

動揺している一刀に華琳が声をかける。

 

「ああ」

「一刀殿、思わず真名を言っておりますぞ」

「……そうだな。まあ本人がいないからまだいいだろ……。とりあえず今は真名で言うが……」

 

一刀は話を続ける。

 

「朱里はいくつに見える?」

「そうね……齢十四前後と言ったところかしら」

「まあそんなところだろ。それであの子は前の世界じゃ病気になんかなってないんだ」

「なんですって?」

「でもそれは前の世界のことでしょ? それに前の世界の蜀は徐州でもこの世界の蜀は成都にあるのよ。

風土病にかかってもおかしくないんじゃ……」

「それはないわけじゃないだろうが……あの朱里がそんな失敗……」

「少しいいか?」

 

話を途中でとぎらせられた永琳が一刀達に尋ねる。

 

「どうした?」

「話の続きがあるのだが……」

「続き?」

「そうだ」

「朱里の病気の話に続き……それは一体どういうことだ?」

「うむ。少し前に入った情報だが、どうやら諸葛亮の病は風土病などでは無いらしいのだ」

「?」

「では疲労から来たものなのか?」

「違う。呪いから来たものだ」

『呪い?』

 

突然の「呪い」と言う発言に皆が先ほどとは別の驚きを表す。

 

「どうも斥候が小耳に挟んだくらいの情報だがな……。

それで斥候が何とか探りを入れたところ、どの医者に見せても誰もわからず華陀と呼ばれる医者に見せたところ呪いだと言われたらしい」

「ふぅ〜ん」

「どうやらその呪いの本当の目標は諸葛亮ではないらしいのだ」

「なんだって?」

「そこまでしか話を聞けなかったが、将軍達もそんな話をしていたらしいから信憑性は高いだろう」

「そうか……」

「呪いか……」

 

一刀はふと思った。

 

「一刀?」

「隊長?」

「……」

「一刀殿」

 

星が一刀の肩を揺らして、一刀に呼びかける。

 

「うん? ああ、済まない」

「考え事にしては長かったですな」

「それはそうだ。『呪い』って聞いたらどうしても白装束の連中を思いつくからな」

「まあそれは無理ありませぬな」

「それで思ったんだが、その朱里が掛かった呪いの本当の目標……俺じゃないかと思うんだ」

「一刀に?」

「ああ。呪いとかそういうのに精通してるのは十中八九左慈の仲間だ」

「確証はあるのですか?」

「ない」

「いいきるわね」

「それくらい俺はあいつらのことが嫌いだと言う事だ」

「そうなるんかいな〜?」

「俺はそれ以外思いつかない。以上だ」

「どちらにしろ、相手の軍師がまともに機能してないって事ね」

 

華琳が好都合とばかりな事を言う。

 

「華琳、相手は諸葛亮だ。いくら朱里でも何の無策……ってことはないだろ」

「まあ、軍師がいる以上策はあると思ったほうが良いわね」

「そういうことだ」

「しかし無策で来ると言う策もないことはないがな」

「それってもはや策とは言わないんじゃない?」

「そうかもしれませぬな」

 

星は少し笑う。

 

「何はともあれ油断は出来ないと言う事ね」

 

そして華琳達は五丈原へと兵を進ませた。

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それから数日経ち、華琳達は五丈原の少し前へとたどり着いた。

その少し前と言うのは、五丈原の前にある谷に着いたと言う事だ。

何故谷の前に留まったのかと言うと、明らかに敵の罠があると言うことが明白であるからだ。

 

「さてと、この先はどう進もうかしら」

「このまま進めば上から矢が降ってきます」

「だったら谷を上れば……」

「それは無理だ」

 

光琳が意見を言うと永琳が否定する。

 

「何で?」

「それをやろうとした時点で敵の矢が降ってくる。そうよね?」

「ええ。この谷で上れるところは恐らく限られてる。

そうなると絶対その場所に兵が潜まれてるって事よ」

「そうねぇ……」

「そしてこのまま行けば確実に矢の餌食……」

「……朱里のことだから、恐らく別の物を用意しているはずだ」

「別の物?」

「ああ……地雷だ」

「地雷?」

「そうだ」

 

一刀は華琳達に地雷のことを簡単に説明した。

 

「そんなものがあるのね」

「まあこの時代でも作れるものだからな。俺が言いだす前から朱里は考えてたみたいだけどな」

「しかしその地雷というのは厄介ね」

「下手をすれば道を塞がれるなんて……」

「下手と言うより、確実と言うべきだな」

「そうなるとどうすればいいの?」

 

皆が悩もうとした時……。

 

「大丈夫だ。真桜、あれちゃんと出来てるよな?」

「ばっちりやで」

 

真桜は一刀に言われるとどこからか風呂敷を持ってきて、そこからあるものを取り出す。

それは小さいパイナップルのようなものであった。

 

「何それ?」

「なんて名前やったっけ?」

「手榴弾だ」

「しゅりゅだん?」

「簡単に言うと火薬が一杯詰まった爆薬だ」

「怖いわね」

「それでこれはどう使うの?」

「気ぃつけんとアカンで。下手に使うとその場でドカーンや」

「これはな……」

 

一刀が次に手榴弾がどんなものであるかを丁寧に説明した。

 

「遠くに投げて使うものなのね」

「まあこれで人を殺す事は出来るけど俺はしたくない。あくまで爆弾処理のためのものだ。だからこれは普通の手榴弾とは違う特別性のものだ」

「それはいいけど、誰が投げる?」

「投げると言うより、打つだ」

「打つ?」

「錫、俺がこれを投げるから棍棒で思いっきり谷に向かって打ってくれ」

「……この前までなんでそんな特訓をさせたのかようやく分かったわ」

 

実は錫は一刀と真桜と星と澪と一緒にバッティング練習をしていたのだ。

ただし何故バッティング練習をしていたのかは錫には伏せており、一刀と真桜と星しか知らなかったのだ。

ちなみに澪が参加していたわけは面白そうだったからであり、理由は知らなかった。

 

「あの時の要領でやればいい」

「精一杯、頑張るわ」

「精一杯ではなく、かなり力を入れて頑張れよ」

「いくで」

 

そして真桜は手榴弾の一つを錫に向かって軽く投げる。

 

「はあっ!」

 

錫は手榴弾を思いっきり鉄の棍棒で打ち返し、谷の割れ目の中心辺りまで飛ばした!

真桜特性の手榴弾は改良を重ね、錫の棍棒で思いっきり打ち返したくらいでは爆発しないようにしていた。

そして手榴弾はあと少しで一刀達の前から見えなくなりそうになったとき……。

 

「そこだ!」

 

一刀が破偉派をホルスターから引き抜き、手榴弾を正確に撃ち抜いた!

今回手榴弾を確実に撃ち抜くために破偉派には実弾を入れていたのだ。

そのため破偉派から出てきたのは氣弾ではなく実弾であり、手榴弾はその場で爆発した。

そして手榴弾からはなにやら散弾銃の弾のようなものが広く飛び散り、そのまま地面へと落ちていった。

すると散弾銃の弾が地面に落ちていった瞬間に地面は爆発していく。しかも弾が落ちなかった場所でも爆発の影響、つまり連鎖爆発を起し、谷は燃えていった。

 

「これでよしだな」

「それでこれからどうするの?」

「相手はこれで谷の割れ目に注意が言ってるはずだ。そこを谷を上れる場所で上る」

「なるほどね」

「すぐにこの谷の上を上れる場所を探せ!」

 

それからすぐに谷の上を上れる場所を見つけた。

おまけにその場所には兵が配置されていなかった。

華琳達はこれを好機としてすぐに谷の上を上らせ、上ってきた兵や将をすぐに谷の上にいる蜀軍の捜索と撃退にまわした。

上った兵達は谷の上にいた蜀軍の兵士の見事撃退したのだった。

 

「一刀、よくこんなこと思いついたわね」

「この時代で出来る事を考えた結果だよ。前の世界ではあまり役に立たなかったからな……」

「そう? 前の世界では大陸を統一したのに……」

「あれはその時の仲間達のおかげだ」

「それでもあなたが上に立ったから仲間ができたのでしょう?」

「……否定はしない」

「それで、あなたは私が大陸を統一するのをどう思うの?」

「どう思うかって? 簡単だ。俺は反対しない」

「あら? どうして?」

「俺の前の世界の役目は天の御遣いとして大陸を統一する事。だがこの世界では天の御遣いとして曹操の天下統一を補佐する。

それがこの世界の役目だと、勝手だが考えてる」

「随分勝手ね」

「そう考えないとやっていけない……とは少し変だがそんな気がしてな」

「そうなの」

「私はそれで構ませぬぞ」

 

星が突然一刀を後ろから抱きつく。

 

「おわっ! 星!」

 

「私は一刀殿と一緒に入れれば、何でもいい」

「あのな星……」

「それはずっと前から言っておりますぞ」

 

一刀は少し黙り込むが……。

 

「そうだったな」

「うむ」

「あら、それは私も賛成ですわ」

 

今度は澪が横から一刀に抱きついてくる。

 

「澪まで……」

「こうして一刀に会えたのだから、そう考えたいわ」

 

星と澪に抱きつかれて困る一刀。

その一刀の様子を見る華琳達。

 

(視線が痛いな……。特に華琳と凪……)

 

一刀は痛い視線を味わいながらもどうすることが出来ないので、少しばかりため息をついた。

それから数日後、華琳達はとうとう五丈原に着いた。

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「いよいよだな」

「ええ」

 

夜になり、天幕の外に出ていた華琳のところに一刀が寄ってくる。

 

「眠れないのか?」

「それはあなたじゃなくて? 一刀」

「………やっぱり華琳には適わないな……」

「眠れないわけは諸葛亮の事?」

「ああ」

 

一刀は自分達の遥か遠くにある蜀軍の陣営の一つを見る。

 

「あれだけ立派な陣営、間違いなく朱里の考えたものだ」

「分かるの?」

「よくな……。それにあの陣営は朱里がいる時に使うものだ。間違いなく朱里も戦場に居る」

「何故諸葛亮は病の体を圧してまでこの戦いに出てきたのかしら?」

「それは愚問だと思うぞ」

「愚問?」

「華琳なら……いや皆分かるはずだ。この戦いがどんなものか……」

「あ……」

 

華琳は一刀の言葉でふと分かった。

 

「まさか私がすぐに気付かなかったなんてね……」

「劉備達に攻められた時みたいだな」

「あの時は少し頭に血が上っていたけど今は違うわね」

「じゃあ何だ? 昂ぶってるのか?」

「それに近いわね」

「まあ、無理はないか……」

「一刀、あなたは?」

「俺か……」

 

一刀はそういわれて少し黙り込んでしまった。

 

「言えないの?」

「言えない……わけじゃないな。正直戸惑っている」

「さっきも言った諸葛亮……それも病の事かしら?」

「ああ」

「永琳の報告では病ではなく呪いだと聞いたけれど……」

「呪い……だろうな」

「あなたはどうしたいの?」

「俺は……朱里を助けたいと思っている」

「今は敵なのに?」

「ああ、そうだ」

「前の世界では味方でも今は敵なのよ。あなた正気?」

「……ははは」

「どうしたの?」

「いやいや、前の世界でも同じような事を言われたのを思い出してな」

「それって確か……」

 

二人は少し黙り込む。

 

「……ああ。前の世界の華琳が、于吉に操られてそれを桂花達が助けて欲しいと懇願してきた時も同じような事を……」

「我らが言いましたな」

 

そこに星がやってくる。

 

「星」

「あれは結構揉めてたよな」

「うむ。あの時はまさか翠に説得されるとは思わなかったのだがな」

「馬超に?」

「ああ」

 

一刀と星はその時のことを華琳に話した。

 

「そう。あの馬超がね……」

「復讐よりも民の事を優先させた。正直な話、驚いたよ」

「そんな事があったの」

「その時の翠と同じって……わけじゃないけど、俺は助けたい。例え何も出来ないとしても俺は何かしてあげたいと考えてる」

「……それでどうするつもりなのかしら?」

「朱里をこちらで保護する。まあ戦ってるとなると捕虜になるけどな」

「捕虜に?」

「あくまで保護は可能な限りだ。とりあえずは朱里と接触。それなら何とかできるはずだ」

「それも難しいと思うけど?」

「何、その道は……私が開く」

 

星が自信満々に言う。

 

「頼むぜ、星」

「承知」

 

そして星はその場を後にした。

 

「それじゃあ俺も……」

「ええ……」

 

一刀も星の後に続くようにその場を去った。

 

「………」

 

華琳は黙ってその様子を見ていた。

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翌日、魏軍は陣から出てきた。

 

「一刀。戦には二つの戦があってね…」

「勝つ戦と、負ける戦か?」

「違うわよ。策を弄して良い戦と、弄してはならない戦よ」

「そっちか……。それでこの戦は……」

「策を弄してはならない戦よ」

「なるほど、それならとてもやりやすいな」

「全軍! 突撃!!」

 

華琳が号令をかけ、魏軍は全員が突撃していく。

その様子を見ていた蜀軍は……。

 

「朱里」

「はい……」

 

馬謖に支えられている諸葛亮は……。

 

「……」

「朱里さん?」

「はわわっ!? すみません、少し寝てたようで……」

「無理をしないで……」

「それで何を?」

「魏軍が全軍突撃をしておるのだが……」

 

この世界の趙雲が諸葛亮に言う。

 

「分かりました。こちらも全軍、突撃お願いします!」

 

諸葛亮の号令により、蜀軍も突撃して行った。

 

「星!」

「承知!」

 

星が一刀の前に出て、二人で一気に突撃していく。

 

「何だ? あの二人?」

「趙雲将軍?」

「あれは私ではない! 皆の者、容赦なく倒しても良い!」

「しかし……」

「構わぬ!」

「分かりました!」

 

少し動揺していた兵士を趙雲が強くなだめ、兵士達は星に向かって矢を射るが……。

 

「甘い!」

 

一刀が黒と白を抜き、自分達に飛んでくる矢をことごとく撃ち落す。

しかもピンポイントに自分達に当たりそうな矢だけを正確に撃ち落している。

とは言っても数が数なので一刀が全てを撃ち落すのは無理だが……。

 

「私の出番ですわ」

 

澪が栖冷矢の先端から氣弾を放ち、それが矢に当たり、当たった氣弾が跳弾の様に再び飛んで、別の矢を撃ち落していく。

 

「さすが澪だな」

「これで相手は矢を使えないはずだ」

「それこそ完全な白兵戦ですな」

「ああ」

「それじゃあ、一刀達の援護に入るわ」

「構わないわ」

「隊長!」

「私達も行くぞ!」

 

星と一刀を援護するかのように咲、澪、錫、凪、沙和が一刀達の周りの敵と戦いに行く。真桜は他にやる事があったために一緒に行けなかった。

それにあわせるかのように王平、馬超、馬岱、厳顔、黄忠も戦いにやってくる。

王平は咲、馬超は錫、馬岱は沙和、厳顔は凪、黄忠は澪と戦闘に入る。

 

「街亭以来ですね」

「ええ」

 

王平は武器を弓から薙刀モードに変える。

咲も構える。

 

「行くわよ?」

「ええ」

 

咲と王平は同時に駆け出した!

 

「あっちは始まったようね」

「そうだな」

 

次に錫と馬超。二人は自分達の得物を構える。

 

「手加減は出来ないぞ」

「こっちもよ」

 

そしてこちらも同時に駆け出した!

 

「こっちも……」

「負けないの!」

 

沙和と馬岱も得物を構えて駆け出した!

 

「……」

「どうした? 来ぬのか?」

 

厳顔の持っている武器を警戒する凪。

 

(あの武器……真桜の武器のように特殊なのか?)

「来ないならこちらから行くぞ!」

 

そういうと厳顔はパイルバンカーのようなものを構えてそこから砲弾を発射させる!

 

「!」

 

凪は紙一重でその砲弾を避けた。

 

「ほうやるではないか」

「撃たせないようにするには……!」

 

そういうと凪は厳顔に突撃していく!

 

「あなたが黄忠ね」

「そういうあなたは徐晃……」

「ええ、知ってもらって光栄だわ」

「先ほどの矢の撃ち落とし、見事ね」

「それはどうも……」

 

澪と黄忠は得物を構える。

 

「まああなたの弓の腕前もなかなかのものと聞いているわ」

「それはどうも」

「でも負けないわよ」

「それはこちらもよ」

 

澪が突撃していく!

 

「あと少し!」

「! 主!」

 

星が一刀を無理矢理どかし、槍を防御の構えにして、防御する。

星の前に突然槍を持った女が襲ってきたのだ。

その女とはこの世界の趙雲であった。

 

「お主か」

「同じ顔を見るのは面白いとは思うが、流石に嫌なのでな……」

「決着をつけようと?」

「うむ」

 

趙雲が構え、星も構える。

 

「一刀殿は先へ。私は私を相手します」

「星。いけるか?」

「無論」

「なら頼むぞ」

 

一刀はそのまま前に走り出した。

しかし一刀の前にはまだまだ兵士が何人もいるが……。

 

「邪魔だ!」

 

一刀は黒と白、破偉派を交互に抜き、氣弾の早撃ちで兵士達を打ち倒していく。

 

「諸葛亮はどこだ!」

 

兵士達を次々に倒していくうちに、ようやく諸葛亮を見つけだす。

 

「諸葛亮(朱里)!」

「ここまで……こられるなんて……」

 

諸葛亮がピンチを感じていると……。

 

「ごふっ!」

 

諸葛亮は血を吐き出し、よろけてしまう。

 

「諸葛亮!」

 

一刀は倒れそうになる諸葛亮の腕を掴む!

すると……。

 

「!」

「!?(この感覚は……)」

 

一刀は感じた。諸葛亮の体を蝕んでいた呪いの病が自分の体に移っていることを……。

 

「? あれ?」

 

諸葛亮は先ほどまで苦しかった体が嘘かのように軽くなり、諸葛亮は一刀の手を解いて自力で立った。

 

「病はもう大丈夫かな?」

「はわっ! 何でそんなこと!?」

「色々あるんだよ。それじゃあ……」

 

一刀は諸葛亮に背を向けてその場から去ろうとする。

 

「待ってください!」

「悪いが、今は俺と君は敵同士だ。今の俺は待つ気はない」

 

一刀は走り出し、その場を去って行った。

 

「あの人……」

 

諸葛亮は呆然としていた。

それからしばらくして戦いは魏軍の勝利。

蜀軍は成都まで下がっていった。

そして五丈原を進んだ華琳達はそこから少し先で自軍の伝令とあった。

 

「そう。春蘭達も、うまく行っているようね」

「はい。翌日には成都に到着。そちらと同時展開可能です」

「分かったわ。下がってよし」

「はっ」

 

伝令はその場を去っていった。

 

「次で最後か」

 

華琳の元に一刀が来る。

 

「ええ、そうなるわね」

(だがどうも最後とは思えない……)

 

一刀は前の世界で魏と呉を降した後、終わりだと思ったら白装束との戦いになった。

それを思うとやはり最後とは思えないのであった。

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おまけ

 

 

作者「第27章だ!」

一刀「どうした? こんなに早く投稿して」

作者「深い意味はない。ただどうも昨日の夜投稿したものの閲覧数が少なくてショックを受けた」

一刀「連載ものを2つ連続で投稿したのがいけなかったんじゃないのか?」

作者「そうだろうな……。とりあえずはまだ最終回を書いていないことだ」

一刀「書けよ」

作者「色々あるんだよ。今回の話で朱里の病気に驚く一刀。前に書いたことをすっかり忘れてたようだったから、今投稿する際に若干修正した」

一刀「そういえば手榴弾ってまたオーバーテクノロジーだな」

作者「地雷だってそうだろ。まああ地雷に関しては横山光輝の『三国志』とか『真・三国無双3』のものを参考にしたんだけどな。

それでは!」

説明
この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。
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コメント
ここで年齢ばらしちゃやばくね?(もともと不明だが)(黄昏☆ハリマエ)
朱里はこれでもう大丈夫なのかな? それと手榴弾まだいいと思うのですが、行き過ぎは注意ですよ?(えらそうな事書いてごめんなさい;;(sink6)
これは朱里にも記憶が移ったか?(赤字)
五丈原は長安の隣にある平原なんだけどなぁ…という突っ込みは野暮だろうか。地雷はともかく手榴弾もともかくダイナマイトぐらいは作れそうな気がしますけどね。(PON)
タグ
真・恋姫†無双 一刀 真・恋姫無双  恋姫†夢想 第27章 

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