新・外史伝『希望』編 第15話 『乱世の予感。一刀、夢を見る』
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新・外史伝『希望』編 第15話 『乱世の予感。一刀、夢を見る』

 

 

 

 

 

 

 

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張角三姉妹は劉璋軍により処刑され、残った賊軍たちも討ち取られた

 

張角たちの親衛隊はなぜか劉璋軍に投降し、そのまま吸収合併された

 

何進大将軍は諸侯に解散を告げ、洛陽に引き上げていった。

 

また、唯一の大手柄を劉璋軍にさらわれ、ほかの手柄を諸侯がいくら言い立てても何進は無反応だった。

 

劉璋は褒美を受け取ると、蜀へと引き上げていった

 

黄巾の乱は終わりをつげた…

 

しかし、乱世がこれで収まるとは思えない。

 

伏竜鳳雛の予測もそう予測を立てていた。

 

何時の日かこの漢という国はさらなる内乱が起こり、外敵の侵略にさらされる日々が続くだろう。

 

今後の方針を決めるべく、公孫軍と劉備軍は帰路についた

 

各軍はそれぞれ引き上げていった

 

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黄巾の乱から数ヶ月が経過したある夏の夜

 

ここは、十文字の義勇軍『北郷軍』の傘下にあるとある城

 

その一室に天の御遣いこと、北郷一刀がいた

 

一刀はベッドに入り、寝息を立てている

 

しかし、その額には大量の汗が浮かんでいた

 

彼は、とある夢にうなされていたのだった

 

「ぬぅ…ぅう…!」

 

それは、自分自身が消える夢

 

「あ…あい…しぃ…ゃ…!」

 

大切な人たちが消えていく夢だった

 

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そして、全てが闇に覆われた

 

ただただ漂い続ける少年がいた

 

『北郷一刀』、つまり自分自身だった

 

(「なんだ?光が広がっていく」)

 

一筋の光を銅鏡が放ち続けていた。

 

その光は、次第に広がっていき…一刀を優しく包み込む

 

そして、道教をもった赤茶色髪の男がたっている。

 

導師服を身に纏い背中に大剣を背負っていた。

 

「一刀……北郷……一刀」

 

呂厳は一刀に語りかけ続ける

 

(「そうか…これは、あの時の…洞賓にこの世界に連れてこられたときの…記憶!」)

 

しかし、彼は無反応。

 

目を瞑ったまま微動だにしない。

 

「駄目か…。」

 

呂厳はポツリと呟いた

 

「ここまで、魂が磨り減っていては…完全に回復させることは不可能なのか?」

 

(「魂?磨り減る?いったい…何のことなんだ?」)

 

「どうすれば…良いのだろうか?」

 

呂厳は腕を組み、思考をめぐらせている

 

そして、

 

「もはや、これしかなかろう…北郷一刀。

 

許せ、お前にオレはとんでもないものを背負わせるかもしれん。

 

だが…この力の封印が、とかれないことを切に願う。」

 

そういうと、呂厳は一本の剣を虚空から取り出した。

 

真っ白に輝く刀身約1mの両刃の剣だった

 

(「なんて…綺麗な剣なんだ!どんな宝剣よりも美しい…剣なんだろう」)

 

呂厳は、白い剣を横たわっている一刀の上に置いた

 

「白帝剣よ…。我が分身よ…。

 

その力をもって、オレの魂の一部をこの者に移せ…」

 

世界全てが真っ白な光に覆われた

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SIDE 一刀

 

 

俺はいつの間にか、真っ暗な空間にいた

 

「一刀……北郷……一刀」

 

誰かが呼んでいる。

 

「……北…郷……一………刀……北郷……」

 

 

男の声だ…

 

「我が、声を聞け」

 

誰だろう?

 

「我が、祈りを聞け」

 

この声は……何処かで、聞いたことがあるような?

 

声は、どんどん大きくなる

 

そして、何かの呪文らしき声が聞こえてくる

 

「 I ha…e bo…ed the d…kn…s

   ―――私の…を…が…覆う―――

 

 

 

D……ness is my bl…e,Des…r is my Es…h…on

   ―――…をち…らに、絶…をた…に―――      」

 

 

なんだ!?

 

 

 

「 I h…e b…n no d…a…ed at the s…ing

   ―――無…の…を…と染めた―――

 

 

 

I do not have the …… at all

   ―――己の…をゆせない―――」

 

 

分からない…何を言っている!?

 

「まだ…我が声は…届かぬか?」

 

すまん…。

 

肝心なところが理解できん!

 

お前は、いったい!?

 

 

「すまぬ…北郷一刀。

 

最早時間が無い…ようだ。

 

今はまだ、オレは手を…貸してやれぬ。

 

だから…頼む、北郷一刀。」

 

声が段々小さくなっていくぞ!おい!待ってくれ!

 

 

「頼む。董卓を…月を…救ってくれ…」

 

 

董卓…を?

 

 

「あぁ…。頼んだぞ。北郷一刀…

 

また、いずれ…会おう。」

 

待ってくれ!

 

お前の名前は!?

 

なんで、俺に!?

 

「今は…語れぬ。

 

だが、我が名は…我が名は…韓…」

 

かん?

 

「湘…子」

 

韓湘子?

 

ここで、俺の意識は途絶えたのだった

 

SIDE OUT

 

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一刀は布団から勢いよく起き上がった

 

その拍子に、ベッドから転げ落ちてしまう。

 

「いてぇ〜!

 

はぁ…はぁ…はぁ…!

 

しかし…、今の…夢は…いったい?」

 

呼吸を整えていると

 

「おはようさんです!

 

大将はん!」

 

外から少女の声が聞こえた

 

「入っても、ええですか?」

 

一刀は、あぁと短く答える

 

すると、

 

ひとりの関西弁を話す少女が入ってきた

 

少女は一刀の手をとると、助け起こした

 

「た、大将はん!だ、大丈夫か?」

 

地面にしりもちをついていた一刀に、心配そうにたずねる

 

一刀は笑顔で答えながら、

 

「大丈夫だよ。

 

すこし、夢見が悪かっただけだよ。」

 

ベッドに座ったかずとは、もう片方の手で少女を引き寄せて自分の膝に乗せて、その頭を撫でてやる

 

「///!もう〜ややわぁ〜大将ぅ!」

 

照れ隠しに、そっぽを向く少女を撫でながら一刀は尋ねた

 

「ねぇ。董卓さんって知ってる?」

 

「ん?なんや、大将。やぶから棒に…」

 

「いやぁ…、まぁなんというか。

 

少し、気になることがあってね。」

 

ごまかす一刀をジト目で見る少女は少し考えると

 

「あっ!思い大しましたわ〜

 

たしか…西陵の太守の一人で、最近太守にならはれたばかりらしいですわぁ。」

 

「そうか…

 

(俺に…董卓を救え?月とはいったい誰だ?)」

 

一刀は、ふと外を見る

 

朝日が上り始めていた

 

「もう、朝か!

 

そろそろ、起きなくっちゃな。」

 

「はいな!」

 

 

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「北郷殿。朝からお盛んなことは結構ですが、少し困ったことになりましたよ。」

 

そこに、干吉が入ってきた

 

「おいおい…干吉。そんなんじゃないって。

 

それより、何のようだ?」

 

一刀は、少女を下ろしてやると干吉の方を向く

 

干吉は、えぇっと頷くと少女を見やる

 

「すみませんが、左慈と葛玄殿を至急呼んできてください。」

 

「うちが?うん、ええで!」

 

少女が出て行ったことを確認すると、干吉は一刀に向き合った

 

「北郷殿。

 

実は、洛陽に放っている同胞が情報を持ち帰りました。

 

都にて、十常侍が暴走。

 

それをとめようとした何進大将軍が反逆罪でとらわれたそうです。

 

何進大将軍を救うために、皇帝陛下より密書を受けた董卓が軍を率いて、洛陽に進軍。

 

こんどは、十常侍の軍勢を排除した董卓が朝廷を牛耳っているとのことです。」

 

一刀は、うぅ〜んとうなると

 

「正史と同じってこと?」

 

「はい。しかし…」

 

「あぁ…できすぎている。

 

もしかして、十常侍の暴走自体から…仕組まれているのではないのか?」

 

「えぇ…。私はそう考えています。」

 

そこに、

 

「俺も同意見だ」「わしも、師匠と同じく。」

 

左慈と葛玄が入ってきた

 

「二人とも、そう思うか?」

 

「あぁ…。できすぎている。

 

面白いほどにな…。」

 

「我らの敵が動き出したのやも知れません。」

 

葛玄が考えているのは、最悪のシナリオ

 

「つまり、董卓をおとりに使って、諸侯を洛陽に集めるってこと?

 

そんなことして、なんになるんだ?」

 

この一刀の質問に、左慈が答え手くれた

 

「北郷。貴様は戦をするとき、相手のことも考えているが…欲に目がくらんだ諸侯はそうはいかん。

 

なんと言っても、朝廷と何進大将軍の危機だからな。

 

これを救えば、出世や金も思いのまま。

 

うまくすれば、この国を操れるかもしれん。

 

となれば、集まる人間どもの心から邪な気を搾取することができる。

 

それも、一気に!大量にだ!」

 

「邪な気?」

 

いったい何のことなのか?

 

この質問を干吉が答える

 

「御意。

 

我らが使う気は、我ら人間でも極めれば使えるようになりますが、その気の使用可能量は限られています。

 

しかし、世に…神仙といわれる者達…つまり、外史の管理者達の使う気や、エネルギーは…その濃度や質、そして採取方法までが…各々異なってきます。

 

この外史の管理者である、葛玄殿は我ら、人間に近しい気の使い方をしますが、中には…人間の出す気を、自身のものとして取り込むものもいるのです。

 

つまり、外気功というやつですね。

 

この外史を破壊しようとしている神仙も、恐らくその類でしょう。

 

邪な、邪悪な思いほど…闇のものにとってご馳走になるのです。

 

でなければ、邪気を集めるなんてしません。

 

その気を使って、奴らはこの外史を破壊する儀式を行うつもりでしょう。」

 

「なるほど…恐ろしいな。」

 

一刀の額に冷や汗が浮かぶ。

 

「北郷。

 

どうするんだ?」

 

「これ以上の、情報は集められそうか?」

 

干吉は、頭を下げ謝罪する

 

「申し訳ありません。

 

じつは、この情報は同胞達が洛陽を脱出する際に命がけで持ち帰ったものなのです。

 

董卓軍がいきなり襲撃してきたとのことです。」

 

「幸いにも、怪我人だけですんだらしい。

 

しかし、これ以上の進入は危険と判断して、俺の一存で脱出させたのだ。」

 

「わかった。ありがとう、左慈。

 

では、…決まりだな。みんな」

 

「ええ」「はい」「おう」

 

一刀は、ベッドから立ち上がった

 

「明日の夕刻に洛陽に侵入し、陛下と董卓さん、そして何進大将軍を救出する。

 

乗り込むのは、俺と左慈の二人だ。」

 

その言葉に、三人は膝を折り頭を下げる

 

「「「御意に!!」」」

 

外はさっきまでの太陽の光はなく、ざぁざぁと雨が降り出していた。

 

それは、まるでこれからのこの大陸を示唆しているように感じられる一刀であった

 

 

つづく

 

 

説明
みなさま、こんにちは。
今日も、外史伝の最新話を投稿させていただきます。
前回までの黄巾党のお話を一章とするなら、今回のお話から二章という形になります。それでは、新・外史伝『希望』編 第15話 『乱世の予感。一刀、夢を見る』をごゆっくりお楽しみください。
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コメント
アカツキ様へ。良いですよね〜。私も同感です(たっちゃん)
jackry様へ。次回、董卓編の開始です!(たっちゃん)
ものすごーく今更な感想ですが、左慈と干吉が仲間って良いですね(^^)(アカツキ)
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外史伝 恋姫†無双 真・恋姫†無双 一刀 神仙 葛玄 左慈 干吉 関西弁の少女 

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