真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第51話「努力と目標」
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真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第51話「努力と目標」

 

 

 

赤斗「ふぅーーーーー」

 

中庭で鍛錬を終えた赤斗が、気を静めて息を整える。

 

赤斗「……うん?」

 

赤斗は息を整え終えると同時に、蓮華の姿を見つけた。

 

蓮華「すまない。鍛錬の邪魔をしてしまったか?」

 

赤斗「大丈夫、大丈夫♪ 鍛錬なら、もう終わったから」

 

蓮華「そうか。よかった」

 

赤斗「蓮華、どうしたの? 僕に用だった?」

 

蓮華「赤斗。少し私に付きあって貰えないか?」

 

赤斗「いいよ。鍛錬も終わった事だしね♪ で、どこに行くの?」

 

蓮華「水軍基地の視察だ」

 

赤斗「……水…軍」

 

赤斗の顔が少しだけ暗くなった。

 

蓮華「どうしたのだ?」

 

赤斗「いや……何でもないよ」

 

蓮華「無理にとは言わないが……」

 

赤斗「いや、行くよ。せっかく蓮華が誘ってくれたんだから」

 

蓮華「そ、そうか。なら行こう。今は丁度、思春が水軍の訓練をしているところだ」

 

赤斗「うん。……分かった」

 

こうして、赤斗と蓮華の二人は、水軍基地へと向かった。

 

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普段はあまり立ち寄る事がない一角に、孫呉の水軍基地があった。

 

辺りには、磯の香りが漂っている。

 

赤斗(…………やっぱり、まだ駄目だな)

 

目の前に広がる海を見て、赤斗はそう思った。

 

蓮華「あそこだ、行ってみよう」

 

蓮華は港に寄せられている船を指差した。

 

赤斗「…………」

 

蓮華「本当にどうしたのだ?」

 

赤斗「ちょっと考え事を……」

 

蓮華「考え事?」

 

赤斗「そう。……かっこいい船だなと思って」

 

赤斗は蓮華に嘘をついた。

 

蓮華「船が珍しいか?」

 

赤斗「うん、まあね。こんなに近くで見るのはひさしぶりだ。本当に、ひさしぶり…………」

 

今度は嘘ではなく、真実だった。

 

その時、船の方から鋭い視線を感じて、船の方を見た。

 

思春「……何をしに来た」

 

視線の主は、思春だった。

 

思春は、こちらに気がつくなり、慌てて一人で船から降りて近寄ってきた。

 

思春の後ろには鈴なりに顔を覗かせている水兵たちがいる。

 

赤斗「思春」

 

思春「蓮華様、ご視察ですか……この者は一体」

 

蓮華「私が誘ったのだ。何か問題でもあったか」

 

思春「問題というほどの事ではありませんが。……誰が休んでいいと言った!」

 

ひそひそ話をしながら、こちらを気にしていた水兵たちに、思春が人睨みする。

 

水兵「すいやせんっ!」

 

思春「礼儀を知らぬ連中です、申し訳ありません」

 

蓮華「よい。仮にも主と、噂の人物が視察に来たのだ……気にもなろう」

 

思春「この程度で気を散らされても、というのが本音です」

 

蓮華「思春は、自らにも部下にも厳しい。甘いのは私に対してだけだ」

 

蓮華はふて腐れたように言った。

 

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思春「ところで、貴様」

 

赤斗「はい。何でしょう?」

 

赤斗は急に思春に睨まれて、畏まって敬語になってしまった

 

思春「また、熱でもあるんじゃないのか? 顔が真っ青だぞ」

 

赤斗「え?」

 

思春「前にも言ったが、蓮華様にうつったらどうするつもりだ!」

 

赤斗「え、でも、本当に熱はないから、大丈夫だよ」

 

思春「本当だろうな」

 

赤斗「はい。本当です」

 

思春「……ならばいい。視察に来たのならば、大人しく見ていろ。では……」

 

思春は、蓮華には一礼、赤斗は睨んで……踵を返して、颯爽と船に戻っていった。

 

蓮華「すまない、思春はあぁいう性格だ」

 

赤斗「思春なりに、僕の事も心配してくれたんだから、気にしていないよ」

 

蓮華「それにしても、本当に大丈夫なのか? 身体の調子が悪いなら、無理せずに帰って休んでくれても良いのだぞ」

 

赤斗「心配しないで、本当に身体の調子は悪くないんだ。むしろ、鍛錬の後だから絶好調なくらいだよ」

 

蓮華「……本当だろうな?」

 

赤斗「本当だよ」

 

蓮華「分かった。……だが、無理はするな」

 

赤斗「了解♪」

 

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思春「続けるぞ……! 心身ともに気を充実させ、呼吸を合わせろ」

 

水兵たち「へい!」

 

思春が船に戻り、演習が再開された。

 

蓮華「見事なものだろう? 思春の兵は……ふふっ、特別だからな」

 

赤斗「特別?」

 

蓮華「長年の付き合いという事だ。彼らは、思春が呉に身を置く前からの部下」

 

赤斗「あぁ、そうか。思春が江賊の時からの部下か」

 

蓮華「よく知っていたな。まだ話していなかったと思ったが」

 

赤斗「天の知識で、知っているだけだよ」

 

蓮華「すごいな。天の知識はそんな事まで分かるのか」

 

赤斗「まあね。でもさ、よく江賊を引き入れたよね。反対意見とかは無かったの?」

 

蓮華「江賊を取り組む動きには反論はあった。賊上がりの将では、民も怯えようというもの。しかし、常に官吏や獲物と戦っていた彼らは、訓練された兵にも等しい強者だ」

 

赤斗「……確かにね。実戦経験が豊富そうだ」

 

蓮華「思春の存在は、呉の水軍を一層強化してくれた。それに、な」

 

赤斗「それに?」

 

蓮華「江賊の隊長が呉にいるのに、呉に楯突く江賊がいると思うか?」

 

赤斗「ああ〜、なるほどね〜」

 

蓮華「ふふ……事実、思春は治安の改善にも貢献してくれている。多様な個性が集結したものが組織だ。思春も私も、そしてお前も、呉の一部だ」

 

赤斗「呉の……一部」

 

蓮華「呉は逞しいぞ。多少の毒を取り組んだくらいでは、腹も下さない」

 

赤斗「そうか……すごいな。これは僕も、もっと頑張らなくちゃダメだね」

 

蓮華「……頑張る、か」

 

赤斗「蓮華?」

 

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蓮華「努力とは目標に向けたものと私は考える……なら、お前の努力は何のためだ? ……何を目標に、お前は努力をするつもりでいる?」

 

赤斗「僕の目標……か。そうだな。……きっと、この世界に来たばかりの頃なら、先生を探し出して、天の世界に帰る事と言っただろうけど、今は違うね」

 

蓮華「……今は?」

 

赤斗「黄巾党討伐に出発する前夜の事、蓮華は憶えている?」

 

蓮華「黄巾党討伐の前夜? あぁ、憶えている。私も初陣で緊張していたからな」

 

赤斗「その時に言ったよね。誰かを守るという理由があれば戦える。僕は孫権を守りたいって。……それが、今の僕の目標かな」

 

蓮華「////////」

 

赤斗「あの時の僕は、火蓮さんに孫呉の為に力を貸せと言われても、意味が分かっていなかった。でも、今ならその意味が分かるような気がする」

 

蓮華「意味?」

 

赤斗「孫呉の為に力を貸す。それは、ただ僕の知識を役立てる事だと思っていた。でも、それが答えではなく方法だったんだ」

 

蓮華「方法と答え、だと」

 

赤斗「そうさ。孫呉の為に力を貸せというのが問題なら、僕の知識を役立てる事が方法。そして、僕の知識を役立てて……呉の皆や蓮華を守るのが答えだったんだ」

 

蓮華「…………」

 

赤斗「でも、誤解しないでね。火蓮さんに言われたから、蓮華を守るんじゃないよ。火蓮さんに言われなくたって、僕は蓮華を守りたいんだ」

 

赤斗は素直な気持ちを、正直な気持ちを蓮華にそのまま伝えた。

 

蓮華「な……っ!? 〜〜〜〜〜……っっ。コホンッ! ……そ、そうやって、お前は私をからかうのだ……!」

 

蓮華は、ポカンと口を開いていたが、我に返って大げさな咳払いをした。

 

赤斗「別にからかっていないんだけどな。……あ、蓮華?」

 

蓮華「見ているだけでは物足りなくなってきた。私も訓練に参加してくる。お、お前もどうだ?」

 

ビクッ

 

赤斗は身を震わせた。

 

赤斗「僕は、え…遠慮しておく……」

 

蓮華「もしかして、赤斗。……船が怖いの?」

 

赤斗「っぅう」

 

蓮華「ふ、どうやら図星のようね」

 

イタズラッ子のような頬笑みを蓮華は浮かべた。

 

赤斗「正確には、海が怖いんだけどね……」

 

蓮華「そうなのか? 意外だな」

 

赤斗「昔、海で溺れた事があるんだ。それから、海は苦手だ」

 

赤斗の声が暗くなる。

 

どうやら、赤斗のトラウマに触れたようだった。

 

蓮華「すまない。無理をさせてしまったようだ」

 

赤斗「気にしないでよ、蓮華。……けど、海が苦手な事を克服するには、まだまだ、努力が必要みたいだけどね♪」

 

赤斗は無理やり笑顔を作ってみせた。

 

蓮華「そうか。なら、思春に泳ぎを教えて貰うといい」

 

赤斗「何だって?」

 

蓮華「昔、溺れたせいで海が苦手になったのなら、泳げるようになれば良いのではないか。ならば、思春はうってつけだ」

 

赤斗「え、ちょ、ちょっと、蓮華」

 

蓮華「訓練が終わったら、私から思春に頼んでみるわ。待っててね、赤斗」

 

そう言って蓮華は、駆け足で船の方に行ってしまった。

 

赤斗「…………どうしよう」

 

蓮華の気持ちが嬉しかったが、赤斗は困惑していた。

 

海が苦手な事を克服する為に、努力するとは言ったものの、自信はまったく無かった。

 

それ以前に、思春が泳ぎを教えてくれるとは思えなかったが、蓮華の頼みだったら聞いてくれるだろう。

 

赤斗「はぁー。……本当にやばいかも」

 

赤斗は、これから先に待っているであろう、思春との特訓を想像して大きな溜息をついた。

 

 

 

つづく

説明
赤斗の苦手なものが蓮華にばれてしまう事に。

この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に
脱線することもあります。また、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。
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コメント
いえ、こちらも言い過ぎました。ごめんなさい。(渋井)
↓渋井さん、失礼しました。ユーザー名なので、敬称を略してました。気を悪くしたならすんません。(かんがるーO)
大変よくわかりました。ご丁寧にありがとうございます。 カンガルーさん、あなた何様ですか??とやら、とあなたに呼び捨てにされる覚えはないんですが(^-^;(渋井)
↓渋井とやら、人それぞれ好きなように書けば良いんじゃないかい?(かんがるーO)
渋井様へ:何で一刀でなくオリ主なのかというご質問ですが、多くの方々が一刀を主役にされている二次小説を書かれているので、少しだけ違う事をしてみたいなと思って、一刀ではなく赤斗を主人公にしてみました。(ryo)
渋井様へ:何でお気に入り限定公開ではないのかというご質問ですが、別に意味はございません。たまに、お気に入り限定公開にすれば良いかなと思っているぐらいです。(ryo)
なんでお気に入り限定公開じゃないんですか? あとこの作品、主人公が一刀でも十分書けますよね?わざわざオリ主、それも特徴の掴みにくい、一刀ともろ被りなのを起用した理由を教えてくれませんかね?(渋井)
赤斗・・・南無(合掌)(VVV計画の被験者)
まさかの、かなづちか!(かんがるーO)
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