遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第一章・九話
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響く、響く

 

晴天の下

小さな街の中

いつもの場所

 

響く・・・温かな“歌声”

 

この天水の街の中

今日も、歌が響き渡る

 

せわしない街並みを

静かな部屋の片隅にまで

 

歌声は、届いていく

 

どこまでも

どこまでも

 

少女は、歌い続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな歌姫は・・・今日も歌う

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

一章 第九話【小さな歌姫】

 

 

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「一刀〜、早く来るのじゃ〜」

 

「ん・・・」

 

 

本日もまた、晴天なり

そう思わずにいられないほどの、この青々とした空の下

少女・・・美羽は、無邪気な笑みを浮かべ街を歩いていく

その後ろを、無表情のままついていく青年の姿があった

一刀である

 

彼は美羽の言葉に頷き、歩く速度を速めていた

しかしそれでも、彼女のほうが速い

その為、数分後にはまた少女は振り返り同じ言葉を言うのだ

それに彼もまた、先ほどと同じように頷き歩みを進める

 

そんなやり取りが、何回も繰り返されていた

 

しかしそのことに気づかないほどに、少女は喜んでいた

その原因は彼、一刀にあった

 

 

今日は、数日ぶりの一刀との散歩なのだ

そのことに、美羽は喜んでいた

 

いや・・・毎回そうなのかもしれない

彼女は一刀との散歩の日には、必ずと言っていいほど早起きをし

準備を入念にして、さらには出発前からニコニコと一刀にその日の予定を話すのだ

 

そして、今日もまた同じだった

早起きをし準備を整え、その日の予定を一刀に話した美羽

2人はそれから七乃や祭、夕に見送られ家を出発したのだった

 

 

 

そして、現在

2人はというと・・・

 

 

「あ、美羽ちゃんだ〜〜」

 

「あ〜、無口なお兄ちゃんも一緒だ〜」

 

「うほ、いいおとこ」

 

「一緒に遊んでこうよ〜〜〜〜」

 

 

街の子供たちに囲まれていた

それはもう、見事なまでに

美羽はというと、そんな状況に苦笑を浮かべていた

 

 

「ん〜、今はちょっと忙しいのじゃ」

 

「「「「え〜〜〜〜〜」」」」

 

 

美羽の言葉に、子供たちは一斉に不満の声をあげる

それに、美羽は“うっ”と罪悪感のようなものを感じていた

 

 

「あ、そうだ・・・」

 

 

そんな中、一人の少女が何かを思いついたのか“パァッ”と表情を明るくさせる

それから美羽を見つめ、ニッコリと笑ったのだ

 

 

 

「だったら、一回だけ・・・お歌を、聴かせてよ」

 

「歌、とな?」

 

 

少女の言葉

美羽はピクリと反応し、視線を一刀へと向けた

その視線に気づいたのか、一刀は無表情のまま頷く

それを見て、美羽は僅かに表情を明るくさせた

 

 

「仕方ないのぅ・・・一曲だけじゃぞ?」

 

「「「わ〜〜〜〜〜い」」」

 

「うれしいこといってくれるじゃないの」

 

 

美羽の言葉

子供たちは、それぞれ喜びの声をあげる

そして、そんな子供たちに見守られながら・・・彼女は謳いはじめる

 

 

♪〜♪〜〜〜♪

 

 

この街に

この空の下に

 

優しく響き渡る・・・そんな歌を

 

 

♪〜♪〜〜

 

 

「うわ〜」

 

「やっぱ美羽ちゃん、上手だよね〜〜」

 

 

その歌声に、子供たちは無邪気な笑みを浮かべ

その歌声に、近くにいた者達も笑顔を浮かべていた

気付けば子供たちだけではなく、大人たちまでもが彼女の歌声に聴きいっていたのだ

 

 

「・・・」

 

 

そんな中、一刀は・・・彼だけは、無表情のまま

ただ黙って、彼女の歌を聴きつづけていた

 

“どこかで聴いたことがあるような”

 

そんな、彼女の歌を・・・

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

「ふ〜、ようやっと抜け出せたのじゃ」

 

 

言って、美羽は額に滲む汗を拭った

その後ろでは、一刀がトコトコと彼女について歩いていた

 

あれから結局、彼女は一曲では終わることができず

所謂“アンコール”というのに応え、五曲歌ったのだった

 

子供だけでなく、大人達までもが彼女に歌をせがむ中

彼女は“仕方ないのぅ”と、皆の言葉に応えていた

嬉しそうに、“笑顔”を浮かべながら・・・

 

 

「しかし、随分と時間が経ってしまったのう・・・もうすぐ、お昼になってしまうのじゃ」

 

「ん・・・」

 

「七乃が作ってくれたお弁当は、いつもの場所で食べるのじゃ」

 

「ん・・・」

 

 

言って、彼女は一刀の手を引いて歩く速度を速める

それでも、彼が疲れない様注意しながら・・・彼女は、二人は街中を歩いていく

 

そんな中、美羽は空を見上げる

太陽は、まもなく真上

その太陽は、今日も温かく自分たちを照らし続けてくれている

 

“お日様、いつもありがとなのじゃ”

 

そんなことを考え、彼女はクスリと笑った

 

 

 

「さて、急ぐのじゃ一刀」

 

「ん・・・」

 

 

 

繋いだ手の先

聞こえる、いつもの声

 

彼女はまた笑うと、その歩みを早めたのだった

 

 

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ーーーー†ーーーー

 

 

「はぁ〜、今日はいっぱい遊んだのじゃ♪」

 

「ん・・・」

 

 

夕焼け空の下

並んであるく二人

 

実際には美羽が一刀を連れまわしていただけなのだが・・・彼女の笑顔を見れば、皆が皆そのようなことは口が裂けても言えなくなるだろう

ともあれ、もう太陽も休む時間だ

故に、二人は今家に向い歩いていたのだ

 

並んで、ゆっくりと

その一歩一歩を噛み締めるかのように・・・ゆっくりと

 

 

 

「のぅ、一刀」

 

「・・・?」

 

 

そんな中、不意に美羽が呟く

一刀がそのことに対し首を傾げるのにも気づかず、美羽はそのまま話し出した

 

 

 

「一刀は、今の生活が好きかや?」

 

「今の・・・生活?」

 

「そうじゃ」

 

 

言って、彼女は立ち止まる

それから、ゆっくりと空を見上げた

赤く、温かな空を

 

 

「妾は昔・・・何も知らんかったんじゃ

こんな風に、日が沈んでいくことも

街の人々が、どういう風に生活しているのかも

何も、知らんかったんじゃ」

 

 

言いながら、彼女は手を伸ばす

その手が、朱に染まった

 

 

「ここに来て、皆と一緒に暮らして

白蘭や街の皆と、一緒に笑いあって

そんな毎日が・・・妾は、堪らなく好きになってしまったんじゃ」

 

 

そう言って、彼女は笑った

無邪気に、幼い笑顔

 

だが・・・何故か彼女のその姿は、一層大人びて見えた

 

 

「だから妾は、毎日が楽しくて仕方がないんじゃ

皆で一緒に暮らしていく、この毎日が好きじゃから

これからもずっと、このような日が続けばよいと思っておる」

 

 

ふと、そこで彼女は振り返った

その視線の先、一刀が無言のまま美羽を見つめている

彼女はそのまま、ニッと笑みを浮かべた

 

 

 

 

「勿論・・・一刀も一緒じゃ♪」

 

「っ・・・!」

 

 

そして、笑顔のまま言った言葉

その言葉に、一刀の表情が僅かに“揺れた”

 

 

「一刀も、妾達の大切な“家族”じゃからな

これから、もっともっと楽しい毎日を・・・一緒に過ごしていくんじゃ」

 

 

それは・・・波ひとつない水面

そこに零れ落ちた、“ほんの小さな雫”

本当に小さな雫

 

 

「美羽・・・」

 

 

だがしかし、その雫は・・・

 

 

「なんじゃ、一刀」

 

「・・・も」

 

 

静かな、静かな水の上・・・

 

 

 

 

 

 

「“俺”も・・・皆、好き」

 

 

 

 

 

小さな“波紋”を、広げていったのだ・・・

 

 

 

 

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「一刀・・・」

 

 

呟き、美羽は小さく体を震わせた

 

一瞬

本当に一瞬の出来事だったのだ

 

彼女の目の前

相変わらず、無表情のまま立つ・・・一人の青年

 

だが、たった今

青年が言葉を発した瞬間

 

その顔に、温かな笑顔が見えたのだ

 

 

「一刀、お主今・・・」

 

「・・・?」

 

 

“見間違い”

美羽は、そうは思わなかった

 

確かに、本当に一瞬の出来事だった

もしあの瞬間に自分が瞬きをしていたのなら、確実に見れなかったと・・・そう思う程に

 

しかしそれでも、少女は“覚えている”

あの一瞬の笑顔が、今でも頭の中に思い出せる

 

 

 

“それでいい”

 

 

 

 

「う、うはははははは!

一刀ーーーーーーーーーー!」

 

「・・・?」

 

 

笑い、美羽は一刀に抱き着いた

そしてすぐに、彼の腕をとり走り出す

 

 

「今日は、本当にめでたい日なのじゃ!

早う帰って、みんなに聞かせてやるのじゃ!」

 

 

嬉しそうに話し、美羽は走った

夕焼け空、その下をただ無邪気に

 

彼女と・・・青年は、走っていく

 

 

 

 

「さぁ、早う帰るぞ

妾の・・・“妾たちの家”へ!」

 

「ん・・・」

 

 

 

朱に染まる空も

この街の空気も

 

全てが、いつもより心地よい

少女は誰に言うでもなく、心の中で繰り返す

 

 

“お日様・・・ありがとうなのじゃ”

 

 

それは、全てを失った後

彼女が覚えた、大切な言葉

 

大切な家族を

大切な毎日を

この・・・幸せを

 

 

 

「ホレ、早う早う♪」

 

「ん・・・」

 

 

 

“ありがとう”

 

心の中

彼女は、歌うように繰り返す

 

小さな歌姫は、今日も歌う

この空に向かって

 

 

終わらない・・・“感謝の歌”を

 

 

 

 

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≪見つけましたよ・・・“一刀殿”≫

 

 

 

 

-7ページ-

★あとがき★

 

一章、九話公開です

今回は美羽のお話

彼女との触れ合いが、青年に何をもたらすのか

今後の展開にご期待ください

 

次回は姜維のお話です

一章のキーキャラクターだけに、結構重要なお話になります

そして、そこから物語は急展開・・・?

 

全てを失った四人

空っぽの青年

そして・・・白妙の少女

 

様々な思惑・想いが絡み合い物語は進んでいきます

 

そして、前回の質問の件なんですが

お祭りの作品は、シリアスな作品

 

≪夏の日に、君の影が揺れて≫に、決定しました

 

 

 

カオス

≪そうだ!海“で”いこう♪≫

 

ダーク

≪暗闇に笑う花≫

 

以上の作品は、今度暇なときにでも完成させて投稿します

 

 

それでは、またお会いしましょう♪

説明
九話、公開しますw

今回は、美羽のお話
いつもよりも短いですが・・・少しでもお楽しみいただければ嬉しいです

それでは、どぞ
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コメント
美羽可愛良いなあ♪(readman )
グリャさん<後の阿部であr(ry (月千一夜)
レインさん<成長しましたw (月千一夜)
samidareさん<良い子ですからねぇ・・・ (月千一夜)
紫炎さん<次回までお待ちくださいw (月千一夜)
ZEROさん<ツンが強すぎますからねぇ・・・まぁ、そこが可愛いんですがww (月千一夜)
dorieさん<魏の人たちの活躍は、もう少し後ですねww (月千一夜)
性露丸ティマイ鳥さん<イエソンナマサカ・・・ (月千一夜)
T.K69さん<将来有望な子供ならいましたがww (月千一夜)
きのすけさん<ここから、急展開です (月千一夜)
poyyさん<美羽は良い子だと思うんですw (月千一夜)
大神さん<気長におまちくださいw (月千一夜)
無双さん<後の阿部である(ぇ (月千一夜)
くろまるさん<次回をお楽しみに♪ (月千一夜)
よーぜふさん<“で”・・・そのまんまですww (月千一夜)
悠なるかなさん<次回、明らかになる・・・かもw (月千一夜)
一人おかしな子供がいませんでした!?(グリャ)
何か・・・・美羽いい子・・・・幸せを理解していますね(レイン)
最後はやっぱり稟なのかな? やっぱり美羽は自分の回りに目を向けるようになればこんな成長をすると私も思います(samidare)
ええええええええええええええ!?最後、最後……!!(紫炎)
一瞬、魏に戻らないほうが幸せなんじゃないと思ってしまった。あのネコミミとか春みたいな人が理不尽だし。(ZERO&ファルサ)
最後の稟ちゃんがお邪魔に思えるくらい家族してるよ、この人達w 華琳がいらない魏√アフターは新しいw(dorie)
もう・・・ダメなんですね。一夜殿の体はもうすでにぶる夜さんに蝕まれているんですね(;∇;) 所々にその名残がつД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚(mighty)
所々阿部さんがおるような・・・・・・そして一刀の存在がついに魏にばれちゃったのか!?嵐の予感が……(T.K69)
最後の禀っぽいな。波乱の予感だな(きの)
美羽はとってもいい子になりましたんねぇ。そして最後のは一体誰なんでしょう。(poyy)
阿部さんいなかったか?もしくはいい男が・・・・アァーーーー!!!(無双)
最後の言葉はいったい誰が言ったんだ!?めちゃくちゃ気になります!(くろまる)
素直な美羽さん・・・ほんとはいいこですからねぇ、ばかなだけでw そしてまさかの稟ちゃん!? ・・・でってなんすか!??w(よーぜふ)
なんか変なの混じっていなかったか?公園とかにいそうな… そして最後の台詞がもの凄く気になります(悠なるかな)
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