真・恋姫?無双一姫伝・魏 第二話 恋姫ランド44
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いきなり何処ともしれない荒野に放り出された私、其処では女の子達が盗賊に襲われていて、なんとか撃退したけど女の子の母親は殺されていた。

泣いている女の子にお姉さんになってあげると約束したけど一緒にいた程立さん、戯才士さん、そして趙雲さんの三人はは官軍が来るとどこかに行ってしまった。

その官軍にいた華琳という女の子は突然とんでもない事を言った、「私のモノになりなさい」と。しかもその名前は曹操孟徳。

もう訳が分からないよ、一体何が起きてるのーーっ!?

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真・恋姫+無双一姫伝・魏

第二話「王佐の才?ネコミミ軍師、桂花登場!」

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華琳…いえ、曹操と名のった女の子が私に真名をいきなり預けると傍に居た二人の女性は慌てながら曹操さんに詰め寄っていた。

 

「か、華琳様、なにを突然真名をお預けになってらっしゃるんですか?」

「そうです、いくらなんでも軽率ですぞ」

「そ、そうね、迂闊だったわ」(どうしたのかしら、いくら可愛いといってもいきなり真名を預けようとするなんて)

 

まだ、頭がうまく回らないけど何時までもこうしている訳にもいかずとりあえず話を進める事にした。私のモノになれっていうくだりはスルーするとして。

 

 

「あ、あのう〜」

「な、何かしら?」

「何時までもこうしているのも何なので取りあえず落ち着いてお話がしたいんですけど」

「華琳様、話を聞くのであれば場所を移しましょう」

「そうね、一姫と言ったわね、盗賊共はこれで全員なの?」

 

曹操さんは倒れている盗賊達を横目で見ながら私に聞いて来る。

殆んどが死んでいたけど私は不思議とそれ程の恐怖は感じなかった。死を目の当たりにした恐怖感より彼等に対する嫌悪感が勝っていたらしい。

 

「いいえ、三人ほど逃げられたわ、そういえばなにか本みたいな物を持ってたみたいだけど」

「それよ!!秋蘭、兵の三分の二を探索に回しなさい、残りは私達と一緒に帰ります。貴女達もいらっしゃい、色々と聞きたいことがあるから」

「分かりました、それとこの子のお母さんなんですけど」

「心配はいらん、我々の方で丁重に葬っておこう」

「ありがとうございます、じゃあさやちゃん、行こうか」

「うん、かかさま……ぐすっ…さ、さよなら」

 

零れる涙を袖で拭いながら別れを口にするさやちゃんを優しく抱きしめるとさやちゃんは私に抱きつき胸の中で声を殺しながら泣いている。

 

そして私達は曹操さんに連れられて彼女達の本拠地である街へと連れられて行った。

 

 

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「では改めて聞きましょうか、一姫、あなたの生国はどこ?」

「日本です。東京の浅草という所に住んでいて通っている学校は聖フランチェスカ学園です」

「?にほん?とうきょう?ふらんち…何?」

「貴様ーっ!!訳のわからん事を言って華琳様を愚弄する気か」

「落ち着け姉者、北郷とかいったな、順を追って聞こう、何故あそこにいた?」

「私にも分からないわ、夜に日課の槍の素振りをしていたのは覚えているんだけど気がついたらあの荒野にいて、そうしたら盗賊達がさやちゃん達を襲っていたのよ」

「では、どうやって此処まで来た?」

「それは私が聞きたいわよ」

「華琳様……」

「埒があかないわね」

「何か隠しているに決まっています。こうなったら拷問にかけて本当の事を…」

 

そう言って私の襟首を掴もうとすると、さやちゃんが私を守ろうとして女の人の前に立った。

 

「さやのおねえちゃんをいじめちゃダメーー!」

「その子は?」

「殺された女の人の子供です。鞘花という名前で私が姉になってあげると約束してあげたんです」

 

さやちゃんは私にしがみ付きながら曹操さんを睨み付ける。

 

「…おねえちゃんもさやのおねえちゃんをいじめるの?」

「安心なさい、苛めたりはしないから。少しお話を聞きたいだけよ」

「ほんと?」

「大丈夫よさやちゃん、この人は悪い人じゃないから」

「ありがとう。では改めて、私は姓を曹、名を操、字を孟徳」

「私は夏候惇、字は元譲。良く覚えておけ」

「私は夏候淵、字は妙才だ」

「私は姓を北郷、名前が一姫、字という風習は私達には有りません」

「あら、そうなの?そして私は今この陳留の刺史を務めているわ」

「陳留の刺史?魏の国の国王じゃないんですか?」

 

私がそう言うと曹操さんは目を見開いて驚き、私に詰め寄って来た。

 

「い、今、何て言ったの!? 何で貴女が魏という国名を知っているの?」

「何でって…、三国志を読んで知ってるから」

「三国志?何それ、貴女一体何を…」

「あ〜、ごめんなさい。ちょっと頭が混乱してて、きちんと整理してから話をしますから」

「華琳様、ところでさっきおっしゃっていた魏という国の事ですが」

「そうね、丁度いいから貴女達にも教えておくわ、私はいつまでも刺史という立場に甘んじているつもりはないの、いずれは王として国を興すつもりよ」

「なるほど、魏というのはその国の名ということですね」

「そういうことよ。チラリ(ああ、一姫…やっぱりこの娘は可愛いわ、早く閨に連れ込んで…いいえ私は覇王曹孟徳、威厳を持たないと、ああ、でも)」

「……はぁ…」

肩を抱え込んで一人悶えている華琳を見て、秋蘭は重い溜息を吐くのであった。

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「つまり、お前はこの世界……というより、この時代の人間では無いと言う事か」

「ええ、そう考えなければ話の辻褄があわないのよ。この時代の王朝って漢王朝でしょ。漢王朝の出来事って私達の時代ではおよそ千八百年前の話なのよ」

「……む〜ん」

「…分かってないようね」

「あたりまえだ、こんな突拍子のない話」

「そうね、例えばね夏侯惇、貴女がどこか訳の分からない場所に連れて行かれて、項羽や劉邦に会ったと考えてみて。それが今の私の状況なのよ」

「な、何と!」

「確かにそれならば、北郷が華琳様の考えていた魏という国名を知っていた事も説明がつくな」

「だが、貴様はどうやってそんな技を成し遂げたのだ、それこそ五湖の妖術ではないか」

「それは分からないわ、何かの事故に巻き込まれたのか、本当にそんな妖術をかけられたのか、私が知りたいくらいよ」

「南華老仙の言葉にこんなのがあるわ、荘周が夢を見て蝶となり、蝶として大いに楽しんだ後眼が覚める。しかしそれは荘周が見た夢なのか、それとも今の自分が蝶が見ている夢なのか、それは誰にも説明できないの」

「胡蝶の夢…、ですね」

「へえ、よく知ってるわね」

「学校の授業で習ったばかりですから」

「がっこう?何それ」

「ええっと、皆で集まって色々な勉強をする所かな」

「私塾のこと?」

「まあそんな所です。私達の時代ではそれを国が運営して、義務教育として国民全員が勉強してるんです」

「なるほど。最低限の学力を身に付けさせるには悪くない方法ね」

「しかし、そうすると我々は北郷が見ている夢の登場人物という事でしょうか?」

「逆かもしれないわよ」

「たしかに、私が見ている夢の可能性もあるわね。(もしそうなら、あんな事やこんな事を……)」

「……華琳様…」

「…じとー」

「おねえちゃん、ヨダレたれてる」

「…コホン。一姫、貴女私の下で働きなさい。貴女が言う未来の知識は上手く使えば私の覇業の大きな助けになるわ」

「その前に聞きたいんですけど、貴女は何のために天下を求めるのですか?」

「私の愛すべき民の為よ。彼等が笑って平和に暮らして行ける国を作る為に」

「…分かりました、曹操さんを信じます。私で良いなら力にならせてもらいます」

「良い心がけね、それとそんなにかしこまった言葉で話さなくてもいいわよ。普通に話しなさい」

「良いんですか?」

「華琳様!! この様な者にそんな…もったいなさすぎます!」

「口出しは無用よ春蘭。私が良いと言っているんだから良いのよ」

「うう〜、しょんなぁ〜〜」

「ああ、しょげる姉者は可愛いなぁ〜」

 

華琳への進言を咎められ、落ち込む春蘭を秋蘭は微笑ましそうに見つめていた。

 

「ふう〜、良かった。正直あの喋り方は肩が凝って仕方無かったんです」

「ふふふ、なら部屋を準備させるから好きに使いなさい」

「さや、おねえちゃんといっしょー」

「ええ、一緒よ」

「わーーい♪」

(それじゃ私が忍びこめないじゃない)

「そ、そういえば一姫の真名を聞いていなかったわね、教えてくれるかしら」

「う〜ん、さっき盗賊達から助けてくれた人達に聞いたんだけど私にはその真名ってないのよ。あえていうなら一姫が私の真名と言う事になるのかな?」

「!!」

「な、何と」

「むう…」

「…?どうしたの三人とも」

「いや、少々予想外だったものでな」

「ならば、貴様は初対面の我々にいきなり真名を呼ばせる事を許していたというのか?」

「貴女達の流儀に従うならそう言う事になるわね」

「「むうーー」」

「そう、なら私達も貴女に真名を預けなければ不公平ね」

「え?いいの」

「勿論よ。では改めて私の真名は華琳、これからは華琳と呼びなさい」

「私の真名は秋蘭だ。よろしくたのむ」

「し、秋蘭まで。しかたない、私の真名は春蘭だ」

「わたしはさやかーー!」

「そう、よろしくね、さやか」

 

こうして私は華琳の下で働く事になったんだけど、彼女が私を見る目は学園の先輩達が私を見るソレと同じだった。

いや、むしろ…え〜〜ん。

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それから数週間が立ち、私は秋蘭にこの時代の文字などを習いながら何とか上手くやっていた。

 

そして近隣の村などを襲っている賊討伐の出陣を翌日に控え、慌ただしい日々が続いていた。

 

「あ、いたいた華琳ーー!頼まれていた装備品と兵の確認だけど滞りなく済んだわよ。これが報告書」

「ありがとう、一姫もようやく仕事に慣れてきたみたいね」

「その程度の仕事など出来て当たり前だ。華琳様に褒められたからといって図に乗るなよ」

「…その春蘭には糧食の最終点検の帳簿を受け取って来るように言っておいたと思うんだけど?」

「あ…。も、申し訳ありません!すぐに受け取ってまいります!!」

「…姉者……」

帳簿を取りに来た春蘭だが、肝心の帳簿が何処にあるのか判らずに近くに居た作業をしている少女に声をかけた。

 

「おい、そこのお前」

「……」

「聞こえんのか、おい」

「……」

「返事をせんか、おーーい!」

「聞こえているわよ、何なのよさっきから」

「聞こえているなら返事をすればよかろう」

「アンタなんかに用はないもの。忙しいんだから邪魔しないで!」

「何だとう!」

「何よ!」

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「まったく、春蘭は何をやっているのよ」

 

私は華琳に頼まれて帰って来ない春蘭を探しに来た。

すると春蘭が誰かと言い合いをしてるのが聞こえて来て、何か小さな女の子といがみ合っていた。

 

「春蘭!一体何してるのよ、華琳が待っているわよ」

「北郷、おおっ!そうであった」

「何よ、また誰か邪魔をし…に……」

 

女の子は何やら呆けた顔をして私を見ている。

だが、その目には見覚えがあった、学園の下級生と同じなのだ。

そしてその頬は徐々に赤みを増し、瞳はキラキラと輝き出した。

 

「(ああ、この子もなのか…)糧食の再点検帳簿を受け取りに来たんだけど、監察官って人が何処に居るか知らない?」

「はいっ私です。これが帳簿です!!」

 

そう言って帳簿を渡してくれたがどさくさにまぎれて手を重ねて来る事は忘れなかった。

 

「あ、ありがとう…」

「あ、あのう…ひょっとして貴女が天の御遣い様ですか?」

「ええ、そうだけど」

「やっぱり、噂通りの美しさです!」

「あはは、ありがとう。じゃあ急ぐからこれでね、春蘭行くわよ」

 

握りしめている手をなるだけ優しく外すと引きつった笑顔でその場を後にした。

 

 

 

「ああ、早く曹操様だけじゃなくあの方にもお仕えしたい」

 

少女は離れていく一姫の背中を見送りながらそう呟いた。

 

 

「…なあ北郷、さっきの娘、なんか私とお前では態度が違いすぎる気がするんだが?」

「…気にしない方が幸せよ……」

「そ、そうか?」

 

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「はい、華琳。帳簿を持って来たわよ」

「ありがとう、一姫。ご褒美に今夜閨にいらっしゃい。たっぷりと可愛がってあげるから」

「丁重にお断りするわ」

「あ、あの〜、華琳様。わ、私は…」

「ん?何かしら、夏候元譲」

 

ピシャアアアーーーーーーーーーーーッン!!

 

真名ではなく、姓と字で呼ばれた春蘭は何処かの親馬鹿神魔王の様に雷が堕ちた様なショックに固まり、噴き出す涙を拭う事無く泣き叫びながら走り去って行った。

 

「うわあああ〜〜〜〜〜〜〜〜んっ、華琳しゃまに嫌われたぁ〜〜〜〜っ!!」

 

「い、いいの華琳?ちょっと可哀想じゃ無い?」

「大丈夫よ。何時もの事だし、しばらくしたらケロッとして帰って来るから」

「ああ、泣きながら走り去る姉者も可愛いなぁ」

「秋蘭、貴女ね……」

 

小さくなっていく春蘭の背中を見送っている秋蘭を溜息交じりで見ていると突然帳簿を確認していた華琳の雰囲気が変わった。

 

「秋蘭」

「はっ」

 

呆けていても華琳の呼び声には瞬時に反応する。

感心していいのか分からないが流石だ。

 

「この帳簿を作成した監察官を今すぐ此処へ呼びなさい」

「御意」

 

何があったのか聞こうとしたが何時もとは違い、何かピリピリしている様で声をかけられる感じじゃ無かった。

 

しばらく待っていると秋蘭がさっきの女の子を連れて戻って来た。

 

「華琳様、この者です」

「お前が食料の調達をしたのか?」

「はい、必要十分な量は調達したつもりですが何か問題でもありましたでしょうか?」

「必要十分?これが?…どう言うつもり、指定した半分の量しか用意できてないじゃない」

 

へ、糧食が半分しか無い?それはまずいでしょう、華琳が怒るのも無理はないわ。

 

「もしこのまま出陣したとしたら途中で糧食不足に陥り行き倒れになる所だったわ。そうなったとしたらどう責任を取るつもりだったのかしら?」

「いえ、そうはなりません。…ご説明してもよろしいでしょうか?」

「許す、話しなさい。もし納得できなければ……分かっているわね」

「御意。その時はこの頸、遠慮なくお切り下さい。まずは曹操様は慎重なお方、必ず御自分の目で糧食の最終確認を行います。そこで問題があればこうして責任者を呼ばれます、行き倒れにはなりません」

「なっ!! 私を馬鹿にしてるの?春蘭!!」

「はっ!!」

 

一気に頭に血がのぼったのか春蘭に切り捨てさせようとする。

……と言うか春蘭、貴女何時の間に……

 

「ちょっと待って華琳!! まだ説明の途中よ、最後まで聞きましょうよ」

「…そうだったわね、続けなさい」

「はっ!ありがとうございます」

「ちっ!」

 

春蘭はまださっきの事を根に持っているのか、舌打ちをしながら剣をしまう。

女の子は女の子であの目で私を見つめて来る。

 

「そして糧食が少なくなれば身軽になり、輸送部隊を含む全体の進軍速度は上がり移動にかかる時間を減らす事が出来ます」

「ん?しかし、移動にかかる時間が減った所で討伐にかかる時間が減るわけではなし、あまり変わらないのではないか?」

 

春蘭がそう言った瞬間、辺り一帯の時間が止まった。

気のせいか、作業をしている兵士達の動きも一瞬止まった様な……

 

そして、時は動き出す。

 

「どうかしましたか?華琳様」

「い、いえ、何でもないわ。話を続けなさい」

「は、はい…」

 

女の子は小首を傾げていたが、話を続けようとする。

まあ、春蘭の事を良く知らないから仕方ないだろう。

 

秋蘭といえば……

 

「ち、違う。あんなに頭の回る姉者は姉者じゃない…」

 

そんな事を呟きながら頭を抱えていた。…何気に酷くない、貴女。

 

「そしてこれが最後の理由ですが、私の提案する策をとれば戦闘時間は更に短くなるでしょう。よって、この量でも十分と判断いたしました」

 

私の提案する策って……この子まさか華琳を。

 

「曹操様、どうかこの私、荀ケを曹操様の軍師として麾下にお加え下さい!!」

え?……荀ケ!? 荀ケってあの魏の軍師の?

それより驚いた。この子、あろう事か華琳の事を……

 

「荀ケ、貴女の真名は?」

「はっ!桂花にございます」

「そう、桂花…貴女…」

 

華琳は秋蘭から受け取った愛用の鎌、”絶”を荀ケの首ギリギリに当てると殺気を隠そうともせずに言葉を続ける。

 

「この曹操を試したわね」

「はい」

「なっ!このいけしゃあしゃあと。その頸、叩き落としてくれる!!」

「ちょ…春蘭、落ち着きなさい。まだ話は終わって無いのよ」

「は、離せ北郷!!」

「春蘭」

「うう〜、はい…」

 

羽交い絞めにした春蘭はそれでも暴れていたが、華琳の一言で大人しくなる。

そして、荀ケの私を見る目は更にキラキラ度を増していた。…もうイヤ。

 

「桂花。私はね、何よりも他人に試されるというのが嫌なのよ。それを分かっての事かしら?」

「はい、それを承知の上であえて試させていただきました。勿論切り捨てられる事を覚悟の上で」

 

そして華琳は絶の刃を荀ケの首に当て、首の一筋の傷から血が流れて来る。

しかし荀ケは身動ぎ一つせずに華琳の目を見つめている。そして…

 

「ふ、ふふふふ…あははははははははっ」

 

華琳は突然笑い出すと絶を荀ケの首から離し、肩に担ぎ直す。

 

「気にいったわ桂花。貴女のその覚悟と自信、偽りではなさそうね。桂花!今日より戦列に加わりその智謀、この曹孟徳の為に使いなさい」

「御意っ!喜んで」

 

何とか上手くまとまったみたいでほっとした。まったく、心臓に悪いったら無いわ。

 

「ちょっと大丈夫、荀ケ」

 

私は血が流れている彼女の首にハンカチを当てながらそう聞くと、彼女は突如私の手を握りしめて来た。

しまった!傷が心配で忘れていた、この子は”あっち側”だったんだった。

 

「ああ、御遣い様!! それほどまでに私の事を心配して下さったんですね。感激です!!」

「まあ…ね。それほど大した傷じゃないみたいだしもう大丈夫ね。じゃあ、忙しいからこれでね、荀ケ」

 

そう言い、離れようとするが荀ケの手はまるで吸い付いたかのように私の手を離そうとはしなかった。

 

「待って下さい!! 私は姓を荀、名をケ、字は文若、真名を桂花といいます。ぜひ我が真名をお預かりください」

「わ、分かったわ桂花。私の事も一姫でいいわ、じゃあ、これで…」

 

これで…と離れようとしたが、やはり桂花は私を離してはくれなかった。

 

「あ、あの〜、お願いがあるんですけど」

「な、何かしら?」

「お姉様とお呼びしてもよろしいですか!?」

「…良いわよ」

「ありがとうございます、お姉様!!」

 

正直、勘弁してくれという感じだったがOKしてあげないと何時までも諦めそうにも無かったので許してあげる事にした。

 

……華琳が何だか羨ましそうに指を加えて見て来るのは気のせいよね、そうに違いない。

 

そうに決めた……

 

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翌日、私達は賊討伐の為に陳留の街を後に進軍を開始した。

さやちゃんは寂しそうにしていたが流石に連れて行くわけにはいかず、ぐずるさやちゃんを何とか説得すると泣きながらも何とか納得してくれた。

 

半日ほど進んだ所で休憩の為に進軍は止まり、私は傍に居る桂花に話しかけた。

 

「ねえ桂花、本当に糧食は半分でいいの?華琳なら本当に貴女の首を切るわよ」

「ああ、お姉様、そこまで私を心配して下さるのですね。大丈夫です、私の策は完璧です」

「そう?ならいいんだけども」

 

桂花は甘えるように私の腕にしがみ付いている。どうして私はこうも女の子にもてるんだろう?華琳は華琳で毎夜毎夜、閨に引きずり込もうとするし。

 

「おお、此処にいたかお前達。華琳様がお呼びだ、すぐに来い」

「華琳が?分かったわ、行きましょう」

「はい!」

 

そうして私と桂花は春蘭に連れられて華琳の元へと走って行く。

 

「どうしたの華琳」

「来たわね、丁度偵察も帰って来た所よ。報告を」

「はっ!行軍中の前方集団は数十人ほど。旗もなく格好もまちまちなため目的の盗賊集団の一部と思われます」

「ならもう一度偵察を出しましょう。春蘭、それと一姫、お願い」

「はっ!」

「了解!」

「気を付けてくださいね、お姉様」

「北郷、姉者の手綱をしっかりとつかんでおいてくれよ」

「秋蘭…」

「お願いね」

「華琳様まで…」

 

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しばらく進むと盗賊達と思われる集団が見えてきたが何かと闘っているようだ。

偵察を出そうと思っていたら。

 

ドゴーーーンッ!!

 

ものすごい音と共に何人かが吹き飛んだ。

 

「このーー!ボクはお前らなんかに負けないぞーーー!!」

「お、おい北郷、何なのだあの娘は?」

「私に聞かないでよ」

そこには小さな体で巨大な鉄球を振り回す一人の女の子が居た。

 

「村はボクが守るんだーー!!」

続く

 

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《次回予告》

 

 

たった一人で盗賊達と闘っていた少女、許緒。

 

「官軍なんか信じられるものか!」

 

そして華琳は彼女に言う。

 

「私はいつかこの国の王となる、あなたの村を守るためにも力を貸して」

 

そうね、皆を笑顔にする為に私も。

 

 

次回、第三話・「新しい仲間・そして、明日の為の涙」

 

「今度も見てよね、約束したよ!」

 

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あとがき

 

という訳で再構成版第二話でした。

 

色々と修正や書き足しをしてみましたがどうだったでしょう?

前回は詳しく書かなくても皆分かっているだろうから大丈夫だろうと省略した華琳と桂花の会話ですがあえて書き足してみました。

 

ゲームを再プレイしながら書いたので少しづつ変えています。

袁紹の件はやはり省略、別にそれほど重要な部分でも無いですしね。

 

それとまあ、桂花のデレ度が上がりました。

桂花にとって華琳は尊敬に値する人物ですが一姫はもはや崇拝の対象にまでなっています。

 

分かりやすく言うなら桂花は、華琳ラブですが一姫は激ラブという事です。

 

では次回も頑張りまっしょいっ!!

説明
再構成版の二話目でございます。

桂花のデレ度が上がりました、何故だろう?
2013/1/13/再修正
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コメント
これが無印の華琳だったら「この世の美少女を手に入れるためよ」とか言うから協力しなかったのかな、でもそれだと殺されるかも・・・(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
↓に同意。もう、「桂花萌え」の人たちはウハウハですよwww(萌香)
桂花のデレが上がった理由? それは簡単な事ですよだって桂花なんですから、「桂花大好き」の人たちからすれば『もう最高wwwwwwwwwwwww!?』 『デレた桂花キターーーーーーーーーーーコレ』って感じですよ。 マジで!?(劉邦柾棟)
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