人類には早すぎた御使いが恋姫入り 幕間2 凪√
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拠点:凪 自分の価値

 

 

 

「第5陣、今だ、曲がれ!」

「第5陣、西側を塞げ!」

 

それは街を利用した一刀様を『八門金鎖陣』を実行した時でした。

 

街の中央に大きな展望台を立てて、一刀様は賊たちが街に入ってくる様子を見ながら指令を出し、私は旗と銅鑼持った兵たちに信号を送るように告げました。

見ただけでも複雑な陣で、ちゃんと練習もできていないはずなのに、中央からの信号によって各部隊は一糸乱れずに動きました。

やがて賊たちがどこがどこか分からず、道に迷ってバラバラになって包囲されていました。

こっちの数が明らかに劣るにも関わらず、地形を利用した陣によって敵部隊を分け、こちらとの数の差をないものにしてしまったのです。

 

すばらしかったです。まるで妖の術のように、一刀様の指示一つ一つが、敵を弱らせて行く姿をその隣で見て、私いつの間にかは何か尊い何かを見つめるように一刀様を見あげていました。

 

「……これから中央に少しずつ流して包囲後、撃破を繰り返す」

「はい、私は下に行って部隊を指揮します」

「……無茶はするな。先日のような無理をしなくても勝利はこちらにある」

「…はい!」

 

これからもこの方と一緒に居たい。

あの時、私はそう思いました。

 

 

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「大変ありがとうございました」

「……世話になった。では…」

「はい」

 

今ここは医院です。

礼を言っているのは医者の方で、軽く答えて外に向かうのが一刀様です。

 

これがいったいどういう状態なのか言いますと、

我々の軍から離れて典韋将軍と一緒に陳留に戻られた一刀様はその後近くに居た医院に訪ねたそうです。

一刀様の傷は肉が斬られて酷いものになっていたのですが、なんと、一刀様は医院の医者に自分の腕の傷を更に広くさせて、その場で周りの医員たちを集めさせて、自分の腕を直させたそうです。腕を更に刀に斬って、針で縫う作業まで、『手術』をする間医者たちに一々どうすべきが指示を出したそうです。

 

腕を斬らせて血が跳ぶ様を見ながら気を失うことはおろか、慌てる医者たちにどこをどうするべきか冷静に指示したという話を典韋将軍から聞いて、華琳さまを始めとした将たちは皆耳を疑いました。

腕が二度と動かなくなってもおかしくなかった傷だったのです。骨近くまで肉が斬られて、そのまま腕を切断しようとしたものを、一刀様がそのまま置いておくように言っていた理由が分かる瞬間でした。

今一刀様の腕には包帯を石膏で固めたものが巻いてあります。

 

「当分は右腕無しでやっていかなければならないだろ。まぁ、問題はない。こんな時のために左手でも筆が使えるように練習して置いた」

「………」

 

知れば知る程、私は一刀様が不思議に思います。

華琳さまは、一刀様が天の御使いだと呼ばれていると言っていましたが、それだけでは説明できない何かがありました。

 

最も、それだけ凄いお方が私のために自分の腕を犠牲に理由がわかりません。

 

「文謙」

「は、はい!」

 

一刀様に真名を預けたのですが、何故か一刀様は真名で呼んでくれません。それは華琳さまや他の将たちにも同じならしく、理由が不明ですが一刀様は曹操軍の皆の真名をあずかっているにも関わらず真名では呼ばれないようです。

 

「…あの、一刀様」

「何だ?」

「私のこと、真名で呼んでいただけないでしょうか」

「……断ると言ったら、君は俺の部下にならないのか」

「いえ!そんなことは……」

「なら構わないだろ」

 

こんな感じです。

いっそ、真名で呼んでくださらなかったら部下になりませんと答えてみたいと思っていたのですが、そうすると一刀様なら本当に私を部下にしないと思ったのでやめました。

しかし、真名は己の本当の姿を現す大事な名前。

真名を託したにも関わらず、その真名を呼ばれないことはその人に自分の存在を認めてもらいない感じがしますので、あまり良い気分ではありません。

 

「それより、警邏の仕事はどうだ?慣れてるか?」

「あ、はい。精進しております。街の治安を保つという大事な仕事ですから」

 

一刀様に街の警邏の仕事を任されました。

沙和と真桜と同じく『警備隊小隊長』という肩書きをもらっていますが、私たちのような中間で指示をする者たちが居なくても、十分に安定して動ける組織になっていました。陳留が他のところより治安が良いことに有名なのも一刀様の治安計画が大きく関わっているそうです。ほんと、この方はこの軍にとってどれだけ大きな存在なのか考えるだけでも恐れ多いです。

 

「……」

 

ふと、前に歩いていた一刀様が足を止めました。

 

「一刀様……?」

「………………」

 

黙々とどこかを睨むように見ている一刀様の視線を追って見ると……

 

 

 

「はぁ、ここのお茶はほんとに美味しいの」

「せやな…仕事サボって、その上で経費で呑むから尚更うまいよなー」

「ほんとなの」

「「あはは…」」

 

……あいつら(プチッ)

 

「あれは経費で落とさせるな」

「え?あ、一刀様?」

 

私は行って二人を仕留めようと(懲らしめよう)としたのですが、一刀様はしばらく睨んだだけで、そう言って先に進んでいきました。

 

「あの二人を放っておくのですか?」

「警備隊が街で騒ぎを起こしてどうする。非があるなら現場じゃなくてもいくらでも懲らしめることは出来る」

「はぁ……」

「最も、あの二人は警邏なんてさせるために連れてきては居ない」

「…はい?」

 

 

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その次の日のことです。

 

「ちょっと、隊長!これってどういうことや」

「そうなの、こんなのあんまりなのー!」

 

朝っぱらから二人に引っ張られて来てみたら、一刀様の部屋でした。

朝から政務に励んで居られた一刀様は二人を見ることもなく、軽く返しました。

 

「何の話だ」

「これや!今日隊長が部屋の前に貼ってたやろ」

「減俸3割なんてひどすぎるのー」

「前日、君たちが街で民の血税で悠々とお茶を飲んでいるのを見た」

「「ギクッ!」」

「………他に言うことは?」

「ぜ、善処を要求するの」

「……一人つき反省文二十枚」

「二十枚!?」

「…書いたきたら一割減らしてやる」

「しかも全消しじゃあらへんと?!」

 

二人が涙目で一刀様へ訴えていたけど、一刀様はまるで興味ないかのような顔で怪我していない左手で書類を整理しておられた。

 

「うぅぅ…いくらなんでも横暴すぎるの。一回サボっただけなのに……」

「沙和、真桜、いい加減にしろ。サボったお前たちが悪いのだろ」

「凪ー、親友の命の危機に助け舟はおろか追い打ちかけんといてーな…よよよ」

 

命の危機なら昨日乗り越えたばかりではないか。あの場で一刀様がそのまま通りすぎてなかれば、私の手で二人を半殺しにしていたぞ。

 

「俺が嫌だったらいつでも部署替えてあげるから残っていなくてもいい」

「一刀様?!」

 

だけど、流石にその言葉には私も驚きました。

 

「うぅ……隊長の馬鹿ーなのー!」

「あ、ちょっ、沙和、まちぃ!」

 

沙和が本気で泣きながら走り出して、真桜もその後を追って外に出ました。

 

「一刀様、今の言葉は幾ら何でも言い過ぎなのではないのですか?」

「……文謙、今日のお昼に時間空いてるか?」

「話を逸らさないでください!」

「何を怒っているんだ」

「仲間のことを侮辱されて怒らないで居られるはずがありません!」

 

真桜も沙和も、私と志を同じくしてここまで一緒に来てくれた大事な親友たち。不真面目なところもあるかもしれないけど、いつも三人一緒に居ようと誓った仲間たちです。

今の一刀様の言葉は彼女たちのことなどどうでも良いとでも言いたそうな口調でした。

 

「文謙、この軍は実力主義だ。孟徳は才のない奴が自分の分に余る地位にいることを一番嫌う。俺が見るに、あの二人はこういう仕事には向いていない」

「一刀様は、あの二人が無能だと仰りたいのですか?」

「………正直に言おう」

 

一刀様は手を止めて私を真っ直ぐ見ながらこう仰りました。

 

「俺は君しか要らなかった。他の者たちがどこで何をしようが俺は興味はない」

「………」

「あの二人、君が孟徳に願って一緒に入らせたが、俺は正直にあの二人は要らなかった。手間を省けようとしたら厄介事が増えただけだ」

「一刀様!」

「………」

 

私が我を失って一刀様の机を叩いたら、机に積もってあった書類たちが崩れ落ちました。

 

「あっ…申し訳ありません。つい……」

「………」

 

が、そんなことは気にもせず、一刀様は机に書いていた竹簡に目を戻しました。

そして、それから私が何を言っても言葉が返ってくることはありませんでした。

 

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私は仕えるべき相手を間違っていたのでしょうか。

 

一刀様は私のことを高く買いすぎていると思いました。

逆に、他の二人のことを貶めてもいます。

真桜と沙和が居なければ今の私は居なかったのです。

三人で一緒でいたから、互いに足りないところを支え合いながら今までやってきました。

それが一刀様はそんな今までの我々の絆を崩そうとしているのではないのですか。

私が独断で決めたことで、二人が傷つくと思えば、今でも選択を覆した方が良いのではないのかと思いながら、私は沙和の部屋の門を開けました。

 

「沙和、真桜」

 

真桜も部屋に居て、泣いている沙和を慰めていました。

私も行って、しばらく真桜と一緒に泣いていた沙和を慰めてやったら、やっと泣くのを止んでくれました。

 

「ごめん、沙和」

「……っ…ううん、凪ちゃんのせいじゃないの。沙和が真面目に仕事しなかったのがいけないの。隊長が怒るのも当たり前なの」

 

沙和はそう言っていたけど、やはり今回のことで深く傷ついたのは当然のことでした。

 

「凪、あれから隊長さんなんか言ってたん?」

「……」

 

『俺は正直にあの二人は要らなかった。手間を省けようとしたら厄介事が増えただけだ』

 

「…嫌、何も仰ってなかった」

「せやか……緩い人じゃあないことは見てわあってたことやけど、今回の減俸はいってーな。今月街で絡繰夏侯惇将軍を衝動購買しちゃってきっついのになー」

「あ、沙和も、今月ちょっと危ないかもなの。凪ちゃん、お金貸してなの」

「二人とも何にお金使ったんだ…」

「「趣味に」」

「………」

 

何か、自分自身が不憫で仕方がなくなってきました。

 

「しっかし、20枚か……きっついわー、もう…」

「真桜ちゃんは書くの?反省文」

「反省文二十枚とか書いたら腕千切れそうやからイヤや…と言いたいところやけど、流石に厳しいので、なんとか書くしかないかな……」

「減俸の件は一刀様に私がなんとか話して見る。二人は仕事だけ真面目にしてくれ」

「んや、いくら凪の頼みでもあの万年不眠症捻り鬼畜隊長が負けてやるとは思えん」

 

どんな呼び方だ。

 

「うええー、20枚も何書いたらいいの?」

「何か適当に文字増やせばええやろ。せや、沙和とウチと10枚ずつ書いて、お互いの適当に移したらええやん」

「おおー、真桜ちゃんあったまいいのー♪」

 

 

「二人とも、このままで大丈夫なのか?」

「「うん?」」

 

私は表では明るくしようとしている二人の姿が少し不安になってきました。

 

「二人も知っての通り、あの方は少し人より異様なところもあるし、他の部署に移ればここよりはまだマシな扱いされるかも…」

「何言ってんや、凪」

「凪ちゃんは馬鹿なの…」

「へ?」

「お前一人置いてウチらだけで逃げろってか?ウチをそんな薄情者に思っとったら困るでー」

「例え地獄の中でも凪ちゃんと一緒に行くの」

「…真桜……沙和…」

 

………一瞬、自分が本当に馬鹿なことを考えていたと気付きました。

 

「なにせ、あんな人でも凪は隊長が大好きやもんなー」

 

………へ?

 

「な、何を言い出すんだ真桜!」

「隠しても無駄なの。沙和も見たの。あの時凪ちゃんが隊長を見る顔。完全に恋する乙女だったの」

 

あの時というのは、私たちが一刀様と季衣と一緒に賊に囲まれていた時、一刀様の街を迷路のようにしてこっちから賊どもを包囲するという策を実行する時の姿です。

私はあの時一刀様の姿を見て、あの方について行くと思ったのも同然でした。

 

「馬鹿を言え!あの時のアレはただ戦場に立つものとして一刀様の凛々しい姿に憧れていただけでな……!」

「顔を赤くしながら言っても説得力ないの」

「くっ……!」

 

 

お前ら……私はお前らを慰めるつもりで言ったのに………逆に私のことをからかうなんて……

 

「でも、見た様子だと、隊長って幼女趣味ちゃうん?」

「なっ!」

「あ、それはそうかも。一番隣にいる流琉ちゃんとか桂花ちゃんとか皆ペタンコだし」

 

……そ、そう言われてみれば。

 

「凪はいつも武装してるからわかんないけどああ見えて結構あるからな……はっ!もしかしてウチが嫌われるのって、胸大きいからなん!」

「えー、沙和は真桜ちゃんほどじゃないよ!」

 

二人が嫌われるのは普通にサボるからだ。

しかし……もしかして本当に一刀様がそういう趣味だとすれば……うぅぅ……

 

「ああっ、凪ちゃん、そう落ち込まないでなの」

「せ、せや。ほんとに隊長がああいう趣味とも限られんで」

「……本当?」

「「うん、うん」」

「…………」

 

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それから何日か過ぎた時のことでした。

 

「おーい、凪ーー!」

「ん?真桜」

 

いつものように警備隊の政務をしていたら、真桜が朗らかな顔で入ってきた。

 

「お昼しに行こうや。ウチが奢るでー」

「む、もうそんな時間か…それより、真桜。やけに機嫌が良さそうだな」

「うん?ハハー、そう見えるん?」

「ああ」

「聞きたい?ウチがなんで機嫌良いか聞きたいん?」

「………いや、別に」

「あーん、いけず。そこは聞きたいって言ってーな」

 

何か嫌な感じするぞ、真桜。

 

「はぁ……何かあったのか?」

「ふふーん、実はな。この前にウチが隊長に反省文持って行ったらな、隊長から何でもいいから使えそうな絡繰の計画書を持ってきなと言われてな、図案だけ作って資金がなくて諦めた絡繰の図案をあげたんや」

「…それで?」

「そしたらな。今日隊長から呼ばれてなー。『これから君が作りたい物、持ってきたら開発費軍資金で落としてやる。好きなだけ研究し給え』って言われたんや」

「え?それって……」

「でさ、ウチ専用の開発のための炉とかも新調してくれるって言われたな。もうウチがここで死んでもええわ」

 

真桜の顔がもう今でも昇天しちゃいそうだ。

本当に嬉しそうだ。

 

「凪ちゃーん、真桜ちゃーん、ご飯食べに行くのー!」

「沙和、お前も何か上機嫌だな」

「へへー、聞きたいの?」

 

……

 

「何なんだ?」

「へへー、実はね……凪ちゃん、街の子供たちが遊ぶ空き地知ってるよね?」

「…あ、あそこな」

 

確か何もない荒んだところで、子供たちが遊ぶところにしては危ない雰囲気を漂わせるところで少しいけないと思ったことがあった。

 

「隊長に反省文提出しに行ったら街の子供たちが遊ぶ空き地の壁に飾る壁画とか遊び器具とかの飾りで良い物ないかって聞かれて、沙和が普段あそこがこうだったら良いなと思うのを話したら、『上には俺が適当に報告書を上げる。資金落としてあげるからお前好きなように変えておけ。子供たちの意見も参照してだ』て言われたの」

「それはすごいじゃないか」

「うん!沙和いつもあんなところで子供たち遊ぶの見て残念だったのに、今日からでもそこの女の子たちと一緒に、どう飾るか相談しに行くの♪」

 

…………一刀様。

 

「うん?凪ちゃん?」

「…すまん、真桜、沙和。私はちょっと行くところがあるから、お昼は二人で行ってくれ」

「えー、凪ちゃん行けずなの。一緒に行ってお祝い…」

「行ってきぃ。隊長のとこ行くんだろ」

「!真桜、どうして…」

「凪の考えてることなんて顔でばればれなんよ。お祝いは夜に派手にやったらええねんから行ってきぃな」

「……ああ」

 

 

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「もう一度ほざいてみろ」

「…うん?」

 

一刀様の部屋へ向かう先に一刀様が春蘭さまと一緒に居るのを見かけました。

 

「ふん!何度も言ってやる。お前が連れてきたアイツらは武人としてなっておらん」

「…誰もお前のように馬鹿突撃すれば良い将というものではない。増してや、お前が新兵を調練していた時など、半分は途中でリタイアしてしまうぐらいだった。効率からしてお前のやり方は軍に益がない」

「あんな訓練にも付いて来れない腑抜けどもは華琳さまの軍には要らん!」

「……はぁ…まぁ、それはいいとしよう。だが俺が選んだ将、楽文謙を貶めるような発言は幾らお前でも許さないぞ」

「凪あいつはまだ他の奴らよりは武には見所があるかも知れない。だけど、あいつも結局同じだ。あいつらが間抜けなことして賊に突っ込んでなければ、あの時季衣があんな無茶することもなかったであろう」

「……!」

 

確か春蘭さまは、季衣のことを実の妹のように大事にしていたそうです。

あの時の戦いで、私たちは結果はどうであって、季衣が無理をして我々を助けに入って危険な目にあってしまったこと。それに関して春蘭さまは我々に言わずとも怒っていたのでしょう。

 

だけど、

 

「俺が止めても聞かなかったのは許楮自身だ。しかも、もっと言わせてもらうと、文謙はお前や許楮より遙かに孟徳を守るに相応しい将だ」

「な、なんだと!貴様、私を侮辱するつもりか」

 

春蘭さまは今でも一刀様を食いちぎるかのように大剣を握りながら言いました。

それに対して一刀様は傷で動かない手を普段のように巾着に突っ込めず、片手だけ突っ込んで春蘭さまを睨みながら言いました。

 

「あいつの傷だらけの体を見たか」

「…!」

「自分が守ると思ったもの。友、家族、主のためには一歩も下がらなかった故に出来たあの傷たちだ。普通の町娘で生きたらあの綺麗な肌で街の中でも一番綺麗な娘と皆に謳われただろうなそんな娘が、この乱世で自分が大事だと思う人たちを守るためにその肌を傷だらけでして戦ってきた。生まれつきの強さを持ったお前や季衣にその意志の強さが分かるか。孟徳を守るにはお前たちのような強い力も必要かもしれないが、それよりも彼女のような強い意志を持った将たちがもっと多く必要だ」

「……むむ………」

「良く聞け、元譲。お前がどれだけ孟徳を愛するか、どれだけの覚悟で守って居るかも分かる。だがな、だからと言って他の者のソレを貶めていいというわけではない。もう一度俺の部下の意志を馬鹿にしてみろ。

 

 

 

 

……本気でキレるぞ」

 

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

春蘭さまが居なくなった後、私が一刀様に近づきました。

 

「一刀様」

「……聞いてたのか?」

「…はい、申し訳ありません。盗み聞きするつもりでいたわけではありません。一刀様に謝りたくて……」

「李典と文側のことか?」

「はい。…あの時は一刀様の考えも知らずに無礼なことを言って申し訳ありません」

「……今は分かるというのか?」

「…適材適所、ということですよね」

「………」

 

真桜も、沙和も、普段は不真面目だけど、真桜は絡繰や何かを作ることには目がないし、沙和も可愛い服を買ったり、自分で綺麗なものを作ったりするのを好む。

一刀様はそんな二人の性格を知って、二人に自分たちに合う仕事を任せたのだ。

私はただ二人と一緒にいられることだけを考えていたのに、一刀様は二人がどうすれば自分に合う仕事が出来るかを考えてあんな言葉をおっしゃっていたのだ。

 

「おかげで俺の仕事が減るどころか増えた……荀ケと元譲から嫌味も言われるし……ま、いつものことだから構わんが」

「申し訳ありません、一刀様。我々を庇うために……」

「庇う?勘違いをするな、文謙」

「はい?」

 

「…俺は『庇う』なんて贔屓はしない。ただ己の身の程を知るようにしてあげるだけだ。その点に置いて文謙、お前は自分のことを貶めている。これからも俺の助っ人に居るつもりなら自分の力と意志にそれ相応の誇りを持つことだ。俺はそういう文謙の方が『好き』だからな」

 

 

 

「……かずと…さま?」

 

今…なんて……

 

ぐぅ〜〜

 

「……あ」

「…ちっ、元譲め。食事に行く人の足を止めてくだらないことほざいて……」

「…はっ!あ、あの、一刀様!」

「ん?」

「良ければ、私と一緒にお昼食べに行かれませんか?」

「……?……そうか。文謙もまだ食事をとってなかったのか」

「はい!」

「まぁ、良いだろう。この前許楮が言っていた美味しいラーメン屋に行くつもりだったが、ラーメンは食べるか?」

「はい、大好きです!」

 

やはり、私はあなたに仕えて…

 

・・・

 

・・

 

 

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凪が知らない話

 

「最近あなたの部下たちが元気ないわよ」

「…………」

「他の娘たちと仲良くしなさいとは言わないけど…いや、できればそっちも頼みたいけれど、自分の部下たちにぐらいはもう少し優しくしてあげなさい。特に、凪、あの娘は最近すごく落ち込んでるわよ。あなたその娘のことが気に入ってたんじゃないの?」

「……俺は文謙の才に興味があるだけだ。彼女が俺に好意を持つかどうかは興味ない」

「はぁ……良いから今回は私の言うとおりにしなさい」

「何で人の仕事場に来て人の部下の扱いについて指図するんだ。それに孟徳は最近サボる頻度が増えてる気がするぞ。逆に俺の仕事は増える一方というのに…」

「良いから聞きなさい。上官命令よ」

「…無視か…しかもすっかり部下扱いしやがって……そろそろ荀ケ以外の新しい軍師になる奴も物色せねば…」

「良い?あなた普段人に向かって興味深いとか言ってるの、なれない人が聞くとすごく機嫌損ねるのよ。だから、今度凪に興味深いと言う時に『興味深い』を『好き』と変えて言いなさい」

「……孟徳」

「別に意味の違いもないでしょ?」

「……ふっ、興味深いことを言う。そういう孟徳も『好きだ』な」

「っ!誰が私に言えって言ったのよ、馬鹿!」

「怒鳴るな。人の机の上に座って暴れるな。書類がバラバラになる」

 

説明
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コメント
下駄を脱いだ猫さん>>今回は結構念入りに書いた甲斐があったのかにじファンでも評判良かったです。嬉しいです(TAPEt)
山県阿波守景勝さん>>実際そうやりそうだから困る……(TAPEt)
アルヤさん>>李典の字が曼成ということは知ってはいたのですが、なんとなく……文側か文謙より嫌な感じがしたので呼んでません。許楮も字が仲康なのですが同じ理由で呼んでません。しかも曼成だと個人的には黄巾党だったお張曼成の方が先に思い浮かびますので態と避けてったりします(TAPEt)
ZEROさん>>元々そういう人だと理解したらいいのですけどね(汗(TAPEt)
本気でキレるぞ・・・惚れてまうやろォォォォォ!(いや俺男だけど!) というか最初、どこぞのB・Jを思い出した(下駄を脱いだ猫)
半分もリタイアさせる訓練は駄目でしょう……夏候惇は武勇は優れていても、将として他の力量はどうなのだろう……適材適所に配置するのも上司として重要な役割ですよね。(山県阿波守景勝)
訂正です 2p 自分の腕を直させた→自分の腕を治させた 6p 李典と文側のことか?→曼成と文則のことか? です。(アルヤ)
この一刀医学もできるのか。(アルヤ)
これを知ったらさらに嘆くだろうなあ。(ZERO&ファルサ)
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