IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・
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「う……ん?」

 

 

 俺が目を覚ますと……

 

「って、俺はいつ気を失った?」

 

 はて? 理由が思い浮かばない。

 

 ――君は、あの敵を倒した後に倒れたんだ。

 

 ――ティエリア……そうなのか!?

 

 ――憶えていないのか?

 

 ――滅多刺しにして、GNソードで斬ったところまでは憶えてる。

 

 ――その表現はともかく、君はトランザムが終了すると同時に倒れ込んだんだ。僕は一度回収されて調べられた。

 

 ――へぇ……っておい! 大丈夫なのかよ!

 

 ――心配することはない。僕と君、両方の許可がなければこのISの重要な情報は提示することはできないからな。

 

 ――それで、見られたのは?

 

 ――基本的なスペック・((拡張領域|パス・スロット))、その位だ。

 

 ――基本的なスペック?

 

 ――Oガンダムのスペックだ。それが標準で他が強化、または弱体化となる。

 

 弱体化ってのはアンフやティエレンなどに変化すること。ちなみに俺はガンダム以外に乗る気は……状況によるがほとんどない。

 

 ――そうか、ならいい。その状態だと拡張領域も0ガンダムのもんだろ?

 

 ――その通り。では、僕からの報告はこのくらいだ。拓神はもう少し休むと良い。

 

 ――ああ、ありがとなティエリア。

 

 

「ふう。気を失った原因は……気の疲れと体の疲れ両方だろうな」

 

 そしてここは保健室か。

 そんなことを考えていると、

 

 

 シャッ!

 

 

「気がついたか」

 

 俺の寝ていたベッド周りのカーテンを開けた織斑先生が居た。

 

「は、はい」

 

「そうか。……悪いがお前のISを調べさせてもらった。いろいろと不思議な機体だからな」

 

 うん、知ってます。今さっき聞きました。

 

「どういうことだ? ほとんどデータの開示が出来ないなど……」

 

「まあ、その通りです。ブロックがあって自分でも見れない部分が多いんで」

 

「なに? お前――搭乗者でもか」

 

「はい。機能とかは分かるんですけど、データの開示は……」

 

 出来ますよ、ばっちりと。データ詳細まで。

 

「そうなのか。……では、今日の襲撃のときのことを話してもらおうか。使っていた機体はいい。更識のときも使っていたからな。あの赤くなったのはなんだ?」

 

機体……ヴァーチェは楯無以外には見られてないみたいだな。

すぐに変更した甲斐があった。

 

「ワンオフ・アビリティー『トランザム』……機体の各部に圧縮・蓄積したエネルギーを開放することで性能を三倍に引き上げる機能です」

 

「ふむ……そういうことか。次だ、あの無人機はなぜ復活した? 一度は停止を此方でも確認した、そして復活したときに"ISコアの反応は停止したまま"だった。なにか知っていることは?」

 

「なにも。知っていたなら楯無をやらせてませんから。というか、そんなこと……ありえない」

 

 真面目に、織斑先生の目を見て言う。

 これだけは本当になんなのかが分からない。

 

「そう、ありえないんだ。ISコアが停止しているのに再起動するなんてことは。だからあの時、更識は不意を突かれた。……まあ、その様子では本当に何も知っていないんだろう? 私の話はこれで終わりだ」

 

 ゆっくり休め。と言い残して、織斑先生は保健室から出て行った。

 その後も、あの機体について考えた。でも、まだ疲れが溜まっているのか上手い思考が出来なかった。

 

 今は休むとき。

 

 そう考えた俺は、ベッドに横になって意識を沈めた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ふとなにかを感じて目を覚ますと、そこは――

 

 

 

 

 ―――あの、真っ白な空間だった。

 

 

「っておい! なんでここだよ! 俺また死んだのか!?」

 

 正直、なんでここに戻ってきたのか分からないんだが…?

 

 

「安心せい、まだお主は死んではおらん」

 

「ほっ、よかった……っていつの間に」

 

 本当、いつの間に来たよ。神さま?

 

「最初から居たぞ? おぬしを呼んだのはわしじゃからな」

 

「あ、そういえば心読まれて?」

 

「ああ、そうじゃの。……それと中途半端な敬語は止めにせんか? その方がおぬしもやりやすいじゃろ」

 

「あ、わかり――わかったよ」

 

ふぅ、なんか神様相手には可笑しな敬語を使ってたしな。直すに直せなかったわけだが。

 

「うむ、それでよい。それで、ここに呼んだ理由じゃが―――アレ、と言えば分かるかの?」

 

「復活した無人機……か?」

 

「その通りじゃ。そしてあれが、おぬしをあの世界に送ったときに言った"バグ"じゃ」

 

「―――ッ!? あれが?」

 

無人機に取り付いた、あの黒いのが……バグ?

 

「本来なら、ありえないことだったじゃろう?」

 

「あ、ああ。ISコアが停止したISが動くなんてのは…ありえない」

 

コアはいわゆる人間にとっての心臓。

その機能が停止したなら、動かなくなるはずなのにアレは動いた。

 

「ふむ、バグは我ら神にも予測不能なのじゃ。今回はまだあの程度だったから良いとして、これ以上のものも出てくるかもしれぬ」

 

神さまにも予測不能とか、どれだけ規格外な存在だ? あいつ等。

しかも――

 

「あれで“あの程度”か。笑えないぞ?」

 

「それがバグという存在じゃ。そしてバグはその世界のどこかに巣のようなものを作る」

 

「それは……破壊すればどうなる?」

 

「破壊できれば、二度とバグは現れない。じゃが、巣自体が砦といって過言ではないのじゃ。我ら神なら"浄化"という手段を使えばバグは消せるが、神はほとんどの世界に干渉できない」

 

「……自分達でなんとかしろ、と?」

 

 

 

 

 

「そうなる。それで、おぬしに話が―――いや、話さねばならんことがある」

 

 

 

 

 

「バグについてか?」

 

「いや、違う」

 

「じゃあ、バグと戦うために新しい力をくれる――とかか?」

 

「似ているが……正確には違うの。話を聞いてくれるか?」

 

「断る理由はない。聞くさ」

 

「覚悟をするんじゃ。聞かなくてもよいのじゃぞ?」

 

「……そういってくるってことは、それだけの覚悟が必要ってことか?」

 

念に念を入れるレベルってことか。

 

「その通りじゃ。して、どうする?」

 

「聞かせてくれ。俺は、すべてを知っていたい」

 

断る理由がない。それが念を押されるほどだとしても、だ。

こんな身なら、どんな話だろうと信じられるだろうしな。

 

 

「よかろう。では早速じゃが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――おぬしは半神と呼ばれる存在じゃ」

 

 

 

 オイオイ……最初っからぶっ飛んでないか?

 悪いが、さっきの言葉を撤回させてもらう。

 急に信じられないような内容だったぞ。

 

「そりゃまた……どういうことだ?」

 

「その通り、半神ということじゃ」

 

 一瞬、某プロ野球チームが浮かんだのは気のせいだ。

 

「理由は?」

 

「おぬしの母親ミカが、神との間に子を……お主を産んだからじゃ」

 

「……続けてくれ」

 

確かに、俺の母親の名前はミカだった。

でも神との間に?

ってことは、俺の父親は神だったってことか?

 

「うむ。他の神も、人間と子を作ることはある。そうすると、その神のチカラの一部――半分ほどが遺伝する。そうすると天才と呼ばれる存在が生まれるのじゃ」

 

「ちょっと待ってくれ。俺はなにも無かったぞ? 前世でも普通を貫いてた」

 

それなら、俺は天才と呼ばれる分類に入っていても良かったはずだ。

……オタク趣味には走っただろうけど。

 

「それはな、おぬしが最上級神との間に出来た子だからじゃよ」

 

「……意味が分からないぞ?」

 

最上級神なら、大きな力が遺伝するはず……。

 

「神の力の一部が遺伝する。そしてそれはその神のチカラによって遺伝するチカラの量は変化するんじゃ。そして最上級神はその通り、神として最上級のチカラを持っておる。下の神がいくら……何千何万と集まろうと一蹴できるほどの圧倒的なチカラをな」

 

「つまり、俺にはその分強力なチカラが遺伝したと? なら、なおさらおかしいんじゃないか? どうしてそのチカラが俺にはなかった?」

 

「理由はリミッター、枷を付けていたからじゃ。おぬしが考えたとおり、そのチカラゆえ遺伝するチカラも最下層の神より高い。半神とは言っているが、下の神より強い力を持っておる。そして、それは世界のバランスを壊す」

 

神の強すぎる力に世界が耐えられず、ってことになるのか。

 

「つまり、世界のバランスを壊さないために俺にリミッターを付けたってことか」

 

「その通りじゃ。聞き入れた願い『身体スペックの上昇』もその枷の一部を外したに過ぎないからの」

 

「……って待ってくれ。これまでを通して一つ疑問がある」

 

「なんじゃ?」

 

「神は、世界に干渉できないんじゃないのか?」

 

さっきも、そう言ってたはず。

 

「……それについては、おぬしの元居た世界は特別なのじゃよ。一番最初に生まれた世界にして、唯一神が干渉できる世界。神が生まれた世界でもある。それがおぬしの元居た世界なんじゃ」

 

「神の生まれた世界……ね。なら干渉できてもおかしくは無いな」

 

でもよ……。

 

「なら、なんで父さんは母さんを見殺しにしたんだろうな」

 

干渉できるなら、唯一干渉できるのなら、母さんを助けてくれたって良かったはずだ。

 

「あの世界に干渉はできる。……じゃが、あの世界で起きることは神にも変えられぬ。あの世界に入った神はあの世界で死んで、またこの天界へと戻ってくることになるのじゃ。その間、神のチカラを使うことさえできん」

 

「そういうことか……わかった。話を戻してくれ」

 

都合がいいことが多いな。とは思ってたが、流石にそうばかりはいかねない、か。

 

「わかった。ここからが本当の本題じゃ、おぬしは半神としてのチカラの枷を外すつもりはないか?」

 

「そのチカラを俺に持てと?」

 

「そうすれば、バグの排除も楽になる。これはわしからの提案じゃ」

 

 ……バグは、俺が招き寄せたモノだ。

 そして、それで楯無は傷ついた。

 責任は……取るべきだよなぁ。

 

「俺がそのチカラを受け取るとどうなる?」

 

「うむ。まずは寿命じゃ。人間の何十倍もの悠久の時を過ごしてもらうことになる。そして身体能力……これに説明はいらないの? そして最後に((神力|しんりょく))という我ら神が使うチカラの一部を制限つきとはいえ使えるようになる。これが大まかなところじゃ」

 

「あのさ、前の二つはともかく、神力ってのがあれば俺でも"浄化"できるんじゃないか?」

 

「それは残念ながら無理じゃ。浄化は神力だけで成り立ってはいないんじゃよ」

 

「そうか……。バグの巣は実力で排除しないといけない、と」

 

「そうなってしまうの」

 

最悪なことばかり、できないんだな。

でも、いいだろう。やってやる。

 

「もともと俺が入ったことで起きた事。責任は取るさ」

 

「そうか。……立派になったの、拓神」

 

 

「――え?」

 

 

「ん? どうしたのじゃ?」

 

「今の言い草、俺の昔を知ってるみたいだったなーと思ってさ」

 

「気のせいじゃよ、そんな――」

 

「まさか、アンタが俺の父親……っつーオチはないよな?」

 

「違うの、それは間違いじゃ。わしの知り合いではあるんじゃがな」

 

「……そっか。ならいい」

 

「さて、本題に戻るぞ? チカラを受け取るか否か……どうする?」

 

「俺は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、そのチカラを受け取る。…自分の起こした事の後始末くらいは、自分でやるさ」

 

 

 

 

 

「……わかった。おぬしの枷を開放するとしよう―――◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 この、ISの世界に送られたときにも聞いた“理解不能”な言葉の羅列。

 それが、確かに、俺の中のナニカを壊し……否、外した。

 

 バキンッ!

 

 ガラスの割れるような音。

 それは、俺の体から響いた。

 

 

 

 ―――終わったぞ。実感があるじゃろ? 今まで無かった……いや、感知できなかったナニカがわかるじゃろ?」

 

 

「ああ……心地良い気分だ」

 

 

「ほっほっほ。いままで、体中を鎖で縛り付けられて動いていたのと同じじゃからの。それが外されたんじゃ」

 

 苦しいところから出て、気分が良くなったような感じがする。

 なにか身体から力が湧き出してくるような……そんな、感じ。

 

「さて、力を暴走させられても困るからの。使い方を教えるぞ? 安心せい、半神の身体じゃ。それこそすぐに慣れる」

 

 

 

 ◆

 

 

 

俺は簡単に、本当に簡単に使い方を教わった。

でもそれでいいのだとか。

神力は自分の意思の力で扱う力。きちんと意識できていれば、それだけで暴走するようなことは無いとの事だ。

 

「そろそろ、あちらに戻るか?」

 

「最後に一つだけ」

 

「?」

 

「大切な人が出来たとして、その人と、一緒に居るにはどうすれば良い?」

 

せめてパートナーくらいには、ずっと一緒に居て欲しい。

これが自分勝手な願いだとしてもだ。

 

「おぬしの体液……唾液で良い。それに神力を込めてその相手の体内に流し込む。口付けでいいじゃろう。それで成立する」

 

「それは、相手も半神にする。って解釈でいいのか?」

 

「うむ、そういうことじゃ。身体は半神のものとなり、神力を扱えるようになる……ただ、扱い方は教えてくれい? 暴走すれば世界が壊れるからの」

 

「わかった。もういい、送ってくれ」

 

「そうか、では送るぞ」

 

「ああ。じゃあな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――父さん」

 

 

 その言葉を残して、俺は真っ白な空間から消え去った。

 なんでわかったのか?

 チカラを開放して俺も神力を使えるようになった……つまり相手の神力も読み取れる。

 それであの神さま……父さんの神力を感じた。そしてそれは、俺と似ていた。いや、ほとんど同じだった。

 

 あとは、親子の間だけで通じるナニカってあると思わないか? 本当なら、それだけで十分だろ? それが確信に変わっただけの話だ。

 

 

 

 そして、一度白に塗りつぶされた俺の意識は再上昇していく――。

 

説明
第19話『真実』
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