高みを目指して 第15話
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side フェイト

 

やはりリーネは我慢が出来なかった。BETAの大規模な侵攻には必ずと言っていい程単騎で出撃してはできるだけ被害を減らそうと努力していた。その為だけに自分の消耗を無視してビットモビルスーツまで持ち出して暴れに暴れた。それに対して人類がとった行動は、MSの鹵獲作戦の展開だ。消耗しきったクシャトリアとビットモビルスーツを包囲して専用のアンカーを使って堂々と鹵獲しようとして来たのだ。もちろんそれらは僕や刹那が援軍として参入して救助、鹵獲部隊を皆殺しにして解決している。そんなことがあってもリーネは戦い続けた。どれだけ裏切られようとも、ひたすら戦い続けた。理由を聞くとこれから異星人として接するにあたり少しでも心証を良くする為らしい。

確かにそれは分かる。だが、あまりにも無理をし過ぎだ。なんなんだ?

 

「刹那、君は分かるかい」

 

「いえ、ですがいつもの姉上でないということだけは分かります。私にも初めてのことですので」

 

「そうだね。正直言ってかなり不安定だ。あれでは遠からず倒れるか、根底が歪む」

 

「ええ、フォローする必要があります。ただ、何処までやれるか分からないのが不安ではありますが」

 

「そこらはゆっくり計っていこう。とりあえず茶々丸を常に傍に付けておこう」

 

「茶々丸ですか?ですが茶々丸は既に限界が来ていて」

 

「だからこそリーネに対してのストッパーになる。リーネは茶々丸に対して思い入れが深いからこそこの役目を任せられる」

 

「それが茶々丸の死に繋がるとしてもですか」

 

「このまま無意味な死を迎えるよりはマシだ。それが“道具”なのさ」

 

“道具”という言葉に反応して刹那が舞姫を抜こうとして、手を止める。それを見てから言葉を続ける。

 

「僕だって茶々丸を“道具”だなんて思ってはいない。だけど、僕も茶々丸も分類的には“人形”、つまりは“道具”なんだ。役目を果たせない道具に意味は無い。それは自分という存在を果たせないということなんだから」

 

そう、僕らを家族として受け入れてくれるリーネ達の存在は嬉しく思う。だけど何処まで行っても僕らは道具でしかない。いつか完全に壊れて役目を果たせなくなるまで与えられた役目を果たす。それが僕らなんだ。

 

「だけど、僕らには意思がある。だから茶々丸に確認する。全てはそれからだ」

 

「……分かりました。私はあなた達の意思を尊重します」

 

「ありがとう、刹那」

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

side 茶々丸

 

 

施されていた封印が解かれたのだろう。活動限界が近づいていた私はフェイトに頼み封印を施してもらい今日まで眠りについていました。活動限界と言ってもボディーではなく、私が私であるという証拠、魂の限界が近づいていました。だから道具としての役目を果たすべくその時が来るまで眠りにつきました。それが解かれるということはその時が来たのでしょう。

 

「おはようございます。お久しぶりでよろしいのでしょうか、刹那様」

 

「ええ、私の主観的には600年程経っていますから」

 

「そうですか。では、私は私の役目を果たすとしましょう」

 

「……今の状況を知っているのですか」

 

「いえ、ですが眠りに着く際にマスターの危機に応じて目覚めさせてくれる様にフェイトに頼んでいましたから。つまり私が目覚めているという現状が状況を大まかに説明してくれています」

 

「……やはり“道具”として、最後を迎えるのですか」

 

「それが私にとっての幸せです」

 

「なら、私から言うことは何も、いえ、姉上を助けてあげて下さい」

 

「はい、刹那様」

 

「状況を説明するが構わないかい」

 

「ええ、お願いします」

 

 

 

 

 

 

なるほど、そんなことになっているのですか。

 

「分かりました。この件は私にお任せください。それから私の機体を用意してもらえますか」

 

「構わないけど、何を用意するんだい」

 

「本来なら電子戦用の機体なのですがここでは意味がないので広域殲滅型にビットを搭載して下さい。回避する気はないので装甲も厚いのをお願いします」

 

「また難しい注文を、まあいい用意しておくよ」

 

「では、私はマスターの元に向かいます。しばらくの間、二人きりにさせて下さい」

 

「わかったよ」

 

 

 

 

 

 

「茶々丸!?」

 

「はい、マスター」

 

私が眠っているダイオラマ魔法球から出るとそこにはマスターがソファーでウトウトとしている所でした。

 

「あなた、なんで起きてきているのよ」

 

「必要だからです」

 

「マスター権限よ。今すぐ戻りなさい」

 

「それには従えません、マスター」

 

「いいから戻りなさい」

 

「お断りします。それから先に謝罪しておきます」

 

頭を下げてからマスターの頬を叩きます。

頬を叩かれたマスターは眼を白黒させながら私を見ています。私はそんなマスターを抱きしめます。

 

「マスター、怖いのでしょう」

 

「っ、何のことかしら」

 

「マスターはいつも余裕そうに振る舞っていますが初めて行なうことに対しては酷く臆病なことは知っています。更に言えば今のマスターはレイト様とエヴァ様がいなくなった時の様子に酷似します。そして、今回は零樹様と別れてから。家族を失うのが怖いのでしょう」

 

「ち、違う」

 

「なら私はお傍に付かせていただきます。おそらく最後になるでしょうが」

 

「……茶々丸、本当はね、もの凄く怖いの。この旅を続けて本当にお父様やお母様にもう一度会えるのか分からない。そんな状況で私の半身とも言える零樹とも離ればなれになって、不安でしかたがないの」

 

マスターが私の腕の中で震えながら本音を話す。

 

「それでこの人の命が軽すぎる世界に来て、その軽すぎる命にも私の様に大事な人が、命が存在する。そう思ったら止まらない、止められないの」

 

「ですが、それでマスターが倒れでもしたら」

 

「真祖である私をBETAが滅ぼせるのなら自重もしたかもしれない。でも、私が死ぬことがない。この世界において私の命を奪えるものはいない」

 

「それでも、私や刹那様、フェイトが悲しみます。零樹様だってこのことを知れば悲しんで怒るでしょう」

 

「それでも私は止まらない」

 

「でしょうね、それでこそマスターです。だから、私はマスターの傍にいます」

 

「……勝手にしなさい」

 

「ええ、勝手にさせていただきます。ですから今はゆっくりお休みください」

 

「そうさせて貰うわ。お休み、茶々丸」

 

そう言ってマスターがソファーに寝転び寝息をたて始めます。風邪を引かない様に毛布をかけて傍にいる。ただそれだけでマスターは意識を完全に手放してくれる。自分の安全の全てを私に預けてくれている。そこには確かな絆が存在している。それほど長くは続かないでしょうが、確かな絆がそこにはある。それだけで私は満足です。死が私の傍に迫っていたとしても。

 

「死を恐れてはならない。死は終わりであり、始まりでもある。死は隣人であり、己自身でもある。死を避けるのは良い、だが死から逃げるのは愚かである。レイト様、その言葉の意味を私は理解出来ているでしょうか」

 

side out

 

 

 

 

 

side 香月

 

 

数年前から各地で目撃されている謎の戦術機達。

先日、3から4へと移行した時に私に見せられた資料だ

最初の機体は緑色の六枚の羽からファンネルに似た形の空を飛ぶ小型移動砲台、さらにはそれらから放たれるビーム。本体自体も拡散、収束の2種類のビームを胴体から、腕や肩からもビーム。止めに近接武器と思われる武器もビーム。そして空を自由に飛び回り光線級のレーザーを回避、直撃を受けても問題なく行動する装甲。

 

次の機体は黒色の重装甲でありながらも十分な速度を持ち、謎の緑色の粒子を放出しながら手や肩に装備している砲からビームの固まりを吐き出し、謎の粒子がレーザーを防ぐ。

 

更に次の機体は先程の機体と同じ粒子を出しながら戦闘機に可変する機体。

 

他の機体とは違い量産機と思われる機体は緑色で足にもウェポンラックが存在し、肘からはビームで出来たシールドを展開出来る機体が2種類。

 

最近になって確認される様になった深い青色をした身体の至る所にガトリングやミサイルを搭載し背中に装備した青い板がコの字型に変形し最初の機体と同じ様な小型移動砲台を放出、レーザーの回避はアクロバットな機動で行なう機体。

 

BETAの大規模な侵攻に際して必ずと言って言い程に何処からともなく現れて去っていく謎の部隊。

一度恩知らずにも鹵獲作戦が発動され、一度は成功するとすら思わされたが他の機体に邪魔をされ失敗。報復なのか鹵獲作戦に参加していた全員が嬲り殺されている。これにどっかの大国は怒りを露にしているが他の国々はその反応に呆れ返っている。

 

「それで、これを私に見せて何をさせたいのかしら」

 

「おそらくは何らかの接触を取ってもらいたいのでは?外部スピーカーで呼びかけをしていたという報告も挙っていますから」

 

「……あんたがここに入るのを許可した覚えは無いんだけど」

 

いつの間にか部屋の片隅にトレンチコートを着た男が立っていた。

 

「それがね、私の元に香月博士宛に面白い物が届いていたのですよ」

 

「面白い物?何よ、一体」

 

「『人形』から『人形師へ』と書かれた封筒ですよ」

 

「『人形師』って、まさか私の計画が漏れている!?」

 

「おそらくは、それよりも気になるのは宛先の『人形』の方では?」

 

「完成形があるとは思えないわ。なんせ、私ですら素体が入手出来ていないのよ。おそらくは何らかの皮肉ね。それよりも中を改める方が先よ」

 

引き出しからペーパーナイフを取り出し封を切る。そして中に入っている物を取り出す。

 

「なに?これ」

 

「さあ、チップということは何らかの情報媒体では?」

 

「けどこんなチップ見たこと無いわよ。そもそもこんな大きさのチップに何が入っているのよ」

 

「他には何か」

 

「これだけ、待った。封筒の裏地に何か書かれているわ。何々、『これが読み取れないのなら後日、そちらに書類を届けさせてもらう。期待はずれではあるがそれしかないからね。まあ、それがあなた達の限界というわけだ。だからこんな失敗をするんだ。人形より』上等じゃない。私にケンカを売ったことを思い知らせてやるわ。あんたは帰りなさい。それからこの事は内密にしておきなさい」

 

研究もそっちのけで私はこの情報媒体の中身を読み取ろうとした。なんとか手紙にあった後日までに何とか中身を見ることに成功した。その中身は

 

 

 

 

 

 

『はずれ』

 

 

 

 

 

「ふざけるなーーーーーーーーーー」

 

「博士、何かあったのですか」

 

隣の部屋から霞が入ってきたけどそんなことはおかまいなしに暴れそうになって止まる。目の前ではずれという文字が消え、次々とパソコンの中身がコピーされていく。止めようにも既にその大半が終わり最後にまた文字が浮かび上がる。

 

 

 

 

『これが君の失敗さ。人形より』

 

 

 

 

まさか00ユニットでもこれと同じことが起きるというの。

私の中で何かが崩れそうになる。

だけど倒れるわけにはいかない。私は人類を救うと決めたんだから。

 

side out

 

 

 

 

side フェイト

 

 

香月博士のデータを見る限り、この世界には転生者はいないようだね。最もこれから送り込まれるのかもしれないけど。それにしてもオルタネイティブ4の権限を拝借出来たのも収穫だ。これで少しは計画を立て易い。さあ、そろそろ動こうか。我が友の死に少しでも花を添える為に。

 

 

side out

 

説明
彼女の為とは言っても友を失うことになるのはやっぱり辛い。
稼働始めてすぐの頃ならこんなことも無かったのに。
でも、この辛さにも僕が生きてきた意味がある。
byフェイト
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