IS~音撃の織斑 六の巻:望まぬ力
[全1ページ]

六の巻:望まぬ力

 

Side 三人称

 

一夏の朝は早い。毎朝五時に起床して一時間半の激しいトレーニングをこなした後、直ぐにある人物に電話をかけた。

 

『私だ。』

 

「おはようございます。こんな朝早くに電話をかけてすいません、小暮さん。イバラキです。」

 

『おお、君か。おはよう。で、私に何の用だね?』

 

そう、電話の相手は吉野の開発局長であり、元音撃戦士でもある疾風鋼の鬼と異名が付いた小暮耕之助だ。

 

「ええ、実は、政府から専用機が支給されるとの通達が来たので・・・」

 

『ああ、その事か。』

 

小暮も微妙そうな声で相槌を打つ。

 

「それで一つ無理を承知でお願いがあるんです。専用機を組み立てたままではなく、コアとパーツだけ送って頂けないでしょうか?」

 

『うーん・・・・確かに((吉野|ウチ))はISと倉持技研に深く繋がっているがなあ・・・出来なくはないが、時間はかかるぞ?』

 

「出来るのでしたら何時来ようが構いませんよ。ありがとうございます。」

 

『だが、何故だ?』

 

小暮はそう聞いた。答えは分かっているのだが、やはり本人の口から聞きたいのだろう。

 

「自分の力を自分で育んで理解したいからです。それに、パーツだけを送るなら、仮に他の専用機の完成が遅れていても大して差し支えはしません。だからです。」

 

『そうか。では、頑張りたまえ。』

 

「はい、((鋼鬼|こうき))さん。」

 

電話を切って冷たいシャワーを浴びて体中に付いた汗が冷水と共に流れ落ちた。まだ早かったが食堂に向かって朝食(勿論大盛りだ)を済ませて教室に向かって音楽を聴きながらノートを整理し、分からなかった部分緯線を引いたりと生徒らしく行動し始めた。そうしている内に、他の生徒達も少しずつ入って来た。セシリアは少し遅れて入って来た。目の下には薄く隈ができているのを一夏は見逃さなかった。昨日の一件が余程のトラウマになったのだろうか、一夏と視線が合うと、慌てて反らした。チャイムが鳴り、授業が開始された。

 

side out

 

 

Side 一夏

 

ようやく休み時間になった。俺は早速織斑千冬に向かって行った。

 

「織斑先生、ちょっとお願いがあるんですが。」

 

「何だ?」

 

「実は倉持技研の方に知り合いの方がいまして、ISの搬送は来週の月曜までには間に合わないかもしれないと言っていました。ですので、念の為という事もあります。((訓練機|ラファール))の申請書をお願いしたいんですが。」

 

「ああ。良いだろう。放課後職員室に来い。そこで渡してやる。提出は明日までにだ。」

 

無理難題を押し付けて来るな。まあ、出来るけど。

 

「分かりました。ありがとうございます。」

 

それだけ言うと俺はまたヘッドホンを掛けて音楽を聴き始めた。その直後、肩を叩かれる。

 

「あ?何だよ?」

 

「いっち?、ヤッホー。」

 

この間延びしたのほほんとした感じの声・・・・確か・・・・布仏本音とか言ったな。((色目|ハニートラップ))を使う可能性ゼロの奴だ。俺も比較的に敵対心を低めている相手でもある。

 

「よう、布仏。どうした?」

 

「いやいや、昨日のいっち?の発言の事が結構広がっちゃったりしちゃってさ?、結構いっち?は味方が多いんだよーって言いたくてー。」

 

「そうか。ありがと。ああ、そうだ。お前にちょっと頼みたい事がある。お前、整備科の方だよな?」

 

「そだよ?。」

 

「じゃあ、出来る範囲で出良いんだが、色々教えてくれないか?勿論報酬として好きなデザートを奢ってやる。」

 

最後の部分は声を潜めて言った。海老で鯛を釣る事になるだろうが、使える手段は使わなければ先に進めない。それに、特に俺の財布に打撃は来ない。理由は・・・・まあ後々教えよう。

 

「良いよー、私もかんちゃんを手伝っている間に教えてあげるから?。」

 

「かんちゃん?誰だそれ?」

 

「四組の更識簪、だからかんちゃんなんだよ?。私は幼馴染みなのだー。」

 

「へー。俺の記憶が正しければ、二年に姉がいなかったか?」

 

「うん、生徒会長だよー。」

 

もう少し色々と聞きたかった所だが、チャイムが鳴ってしまい、授業が始まった。席に着いていない奴は片っ端から((黒い鉄槌|出席簿))を食らう事になる。幾ら俺には利かないとは言え余り気持ちの良い物では無い。授業がいつも通り進むにつれ、オルコットの顔色も良くなって来た。本人はあの時の醜態はかなりショックだったらしくその事で思わず笑いそうになってしまう。そして放課後再び俺の所に来た。

 

「あなた、専用機を持たされるそうですわね。」

 

おいおい、声が震えているぞ。

 

「ああ。恐らく間に合わないがな。残念ながら量産機で行く事になるだろう。まあ俺の場合その方が使い慣れているし、しっくり来るんだが。だが心配するな。お前は、五分と経たずに負ける。精々死なない様に俺の戦闘記録でも見て打開策を見出だすんだな。」

 

「減らず口を!決闘で泣いて許しを乞うても許しませんわよ?!」

 

「ご自由に。昨日俺に成す術も無いままビビって半日の間気絶していた様な((腰抜け|チキン))にそんな事を言われてもあまり迫力は無い。それに、弱い犬程良く吠える、能ある鷹は爪を隠すってな。実力や功績は、ひけらかす物じゃないんだぜ?自称エリートさんよ。いばるんなら代表になってからにしろ。言っておくが、そもそも決闘を受けたのは不本意にも、だぜ?俺だってあそこまで言われちゃ怒るのは自明の理だ。それに、代表候補の座を追われない様に、気を付けた方が良いんじゃないのか?一々そんな風に突っかかって来たら、今までの苦労が水の泡になるぞ。俺はこれから訓練機の使用申請書を貰いに行かなきゃいけないからこれで失礼する。」

 

それだけ言って、俺は職員室に向かった。

 

「一夏・・・」

 

「俺を馴れ馴れしく呼ぶな。アンタとは何の関係も無い。そもそも何だよ、専用機って。俺はデータ収集の為のモルモットか、ああ?」

 

「私にはどうしようも無かったのだ。あれはIS委員会上層部が決定した事でもあり、命令だ。ISの事に関してこの事は覆らない。それより・・・・済まなかった。謝っても許さないのは百も承知だ。それだけの事をしてしまったのだから。」

 

今更そんな事を言うのか。遅いんだよ。何時だってそうだ。俺の事を分かっている様に振る舞ってその実は分かっていない。お前みたいな奴の事を偽善者と言うんだよ。

 

「だったら、何故この世界を作ったんだ?『白騎士』。」

 

その名を聞いて織斑千冬の肩が竦んだ。疑問に思っていたが、やはりそうか。

 

「な、何故それを・・・・」

 

幸い職員室には俺達以外誰にもいなかったから存分に話せる。

 

「しばらく疑問にはなっていたんだ。白騎士が誰なのか。だが、ようやく確信が持てた。忘れていたよ、お前と篠ノ之束は親友だったと言う事を。あんな頭のネジが全部飛んだ様なISの生みの親が、親友にこの話を持ちかけて来ない筈が無い。それに、あの動きは見覚えがあるんだ。お前から習ったあの技だよ。一閃二断の構え。だから、俺は余計にお前を許す訳には行かなくなった。お前はこの世界を狂わせて、男に対する不正の温床に変えてしまったんだからな。そして、お前は俺の人生をも狂わせた。何故そうなる事を想定しなかった?」

 

何かをする時には必ず((副作用|ドローバック))、((リスク|危険))がある。リスクを想定もせずに話に乗ってしまうとは、呆れて物も言えない。

 

「まあ、ゆっくり自分の犯した取り返しのつかないミスを反省するんだな。(さて、俺は整備室のスペースで必要な物を取り揃えるか。忙しくなるからな。)」

 

(一夏・・・・お前は強くなったな。あの時に比べて愚かな私よりもずっと強くなった。口には出さなかったが、オルコットの発言は私も気に食わなかった。天狗の鼻っ柱を折って来い。)

 

視線から分かる。織斑千冬は俺の背中を何故か感心する様に見ている。今更((姉弟|きょうだい))ぶるな、偽善者が。

説明
姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
7612 7254 4
タグ
インフィニットストラトス 仮面ライダー響鬼 

i-pod男さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com