02 職務妨害です、すずか様………
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●月村家の和メイド 02

 

「すずか様の御学友がですか?」

「そうなの。みんなが来るから御出迎えの準備をして欲しいの!」

 カグヤが罪悪感を覚えて数日、学校から帰ってきたすずかにカグヤはその話を聞いた。

「お茶会ですか? ではノエル先輩に御茶とお菓子を頼みませんと」

「あ、ううん。今回はカグヤちゃんにお茶を入れて欲しいの」

「カグヤにですか?」

 その申し出に、カグヤは少したじろいでしまった。

 御茶の入れ方はノエルに何度も教わっているが、どうもうまくいかない。お菓子作りは上達が早いが、お茶になるとさっぱりだとノエルにもぼやかれたほどだ。

「お菓子ではダメでしょうか?」

 一応提案してみたが、すずかは首を振った。

「カグヤちゃんのお茶が飲みたいんです。最近、ずっと食後のお茶を入れてくれるじゃないですか? アレを皆にも飲んで欲しいなぁ、って思うんです」

 「すごく美味しいお茶でしたから」と満面の笑みで付けたされると、カグヤも嫌とは言えなくなる。あの日を境に、カグヤはすずかに対してすっかり甘くなってしまった。彼女が笑顔になる事は無条件に受け入れてしまうほどに。

「解りましたすずか様。でも、お友達に不快な思いをさせてしまってはいけませんので、せめてお菓子はノエル先輩の用意した物にしてくださいね」

「はい♪ うふふ……っ、楽しみだなぁ〜、カグヤちゃんのお茶〜〜♪」

 嬉しそうにくるくる回って歌い出すほど身体いっぱいで喜ばれる。これでは気も抜けないと、カグヤは嬉しそうな溜息を吐く。

 

 

「っと言うわけでノエル先輩、お茶の入れ方をもう一度教えてもらえますか?」

 厨房に来たカグヤはノエルに頭を下げて、お茶セットを用意する。

 ノエルとしても精進しようとするカグヤを好ましく思ったのだが……。

「構いませんが……、もう教える事が殆ど……」

「……すみません」

 つまり、これ以上教えても上達しないと暗に言われているのだとカグヤも良く解っていた。

「本当に……、こう言ってはなんですが、カグヤは何をやらせても二流にしかなれないのですね? 一つを除いて」

「二流止まりは良く解っていますが……。除くモノがあるんでしょうか?」

 見上げながら訪ねるカグヤに、ノエルは妹を見る様な笑みを作って、クスリッ、と笑った。

「ええ、ありますよ」

 それだけ言ってノエルは何も教えてはくれなかった。カグヤはそれを残念に思いながらも、特に追及する事無くお茶を入れ始める。

「ではせめて横で見ていてください。すずか様の御友達が来るまでに少しだけでも良くしておきたいのです」

「最近よく張り切りますが、やはりすずか様の為ですか?」

「……、そう、ですね。すずか様は笑っていてくれなければ困りますから」

 何でも無い事のはずなのに、何故か気まずさを感じたカグヤは頬に熱を感じながら視線を外して呟く。それが『照れ』と言うモノだと本人はまだ気付かない。

 ノエルは最近のカグヤが年相応の感情を見せる事が嬉しくて、ついつい笑ってしまう。月村家の住人は、何だかんだでカグヤの子供っぽさが大好きだった。

 

 

 すずかの友人、高町なのはとアリサ・バニングスが訪問してきた。お目当ては猫の相手のようだった。

 カグヤは急いで、今自分が作れる一番のお茶を入れると、お菓子と一緒にトレイに置いて持っていく。

「すずか様、お茶とお菓子の用意が―――」

 ファリンと一緒に部屋に入った瞬間、「キュ〜〜〜〜ッ!」と言う動物の悲鳴と共に、カグヤの足元を二匹の小動物が駆けまわる。

「わっ! っと……!」

 危うく踏みそうになり、足を戻すが、戻した先でまた駆け回る猫とフェレット。

 なんとか踏ん張ろうとするが、何処に体重を持って言って良いのか解らずバランスが取れないままくるくると回ってしまい、目が回って行く。それでもお茶は溢してはいけないと必死に持って……、

「……あうっ」

 力尽きてその場で座り込んだ。それでもトレイのお茶だけは最後まで落とさずに支え切る使用人魂を見せた。

「カグヤちゃん!? だいじょうぶ!?」

「だ、大丈夫ですか!?」

 すずかとなのはの二人が駆け寄って声をかける。カグヤは目が回って頭を左右にふらふらさせながらも、

「はい……、なんとかお茶は溢しませんでしたぁ……〜〜@」

「お茶よりカグヤちゃんが大変な事になってるよ?」

 なのはの言葉にこくこくっ、と頷きながら心配そうな表情を見せるすずか。その顔を見て「はっ、これはいけない!」と慌てたカグヤは、瞬時に意識を覚醒させると立ち上がって笑いかける。

「もう大丈夫です。ファリン先輩ではないので、この程度問題はありません」

「ちょっと、カグヤちゃん!? それどういう意味ですか〜〜!?」

 ドジっ子メイドの肩書を持つ先輩ヒラメイドが騒いでいたが、カグヤにはすずか以外どうでもいいのでスルーした。

 立て直したカグヤが席に戻った三人にお茶を入れ、それぞれの感想を待つ。

「ん? これいつものお茶と違うわね?」

「あ、ホントだ? いつものお茶と違う?」

 さっそく気付いたアリサとなのは。カグヤは内心ちょっと怯える。

「ん〜〜〜……、でもこれはこれで美味しいかも? なんて言うか……、気持ちが籠ってる?」

「あ、そんな感じ! 私もそう思った! なんか良いよね、これ」

「うふふ……っ♪」

 二人の感想を聞いてホッと胸を撫で降ろしたカグヤと自分の事の様に笑うすずか。そんな二人を見て楽しそうに笑うファリン。更にその外側からは楽しい風景を眺めて幸せそうに笑う忍と恭也の姿があった。

「随分感情的な表情が増えたじゃないか」

 恭也はカグヤを見ながら忍に言う。忍も我がことのように自慢げに言う。

「ええ、すずかが絡まないといつもと変わらないんだけどね。それでも、初めて拾った時に比べれば、良い顔をするようになったわ」

 忍は少し懐かしむようにしてカグヤを見つめる。

 拾った当初、あまりにも無感情に全てを受け入れ、ただ従うだけの人形に徹するカグヤに、どうにかできないかと考えた忍は、試しに彼が嫌がりそうな事を提案していった。最初はうまく行かず、カグヤをていの良い人形に育てる結果となって行き、忍自身も落ち込む事があった。だが、ある日すずかが言った一言が転機となった。

「カグヤちゃん―――って、あ、ごめんなさいっ! つい……」

 この何気ない『ちゃん付け』に忍はカグヤを女装させて見たのだ。するとカグヤが実に苦い顔をして、「僕、男なんですが?」っと言ってきたのだ。初めて感情が動いた事に歓喜した忍はカグヤに似合う専用メイド服をオーダーメイドで幾つも作ってしまったのだ。

 最初こそ、何度も文句を言っていたカグヤだったが、ついに音を上げ「解りました……、成長して似合わなくなるまで我慢します」と言わせたのだ。

 その時ガッツポーズをとった忍は、本来の目的を忘れていたのは間違いない。それは、その忍を見て親指を立てていた妹とメイド姉妹も同じだろう。

 ついでに言うなら、そうして女装するようになったカグヤは、以来自分の事を『僕』と言う事をやめて『カグヤ』と名前で呼ぶようになった。その理由は「この恰好で僕と言うのは、今の姿の自分を『自分』だと認める様で嫌なんです。だから名前で呼べば、自分を第三者として見れる気がしまして……」っと言う、ある意味トラウマの様な理由であったりする。

「後はもう少し、……本気で笑ってくれたらいいんだけど」

「ああ、それは俺も思ったよ。あの子、あの年で作り笑いが上手過ぎて、見ていて痛々しい……」

 大人二人は、まだまだ心配な子供に悩みが絶えないのであった。

 

 

「!?」

 お茶会の途中、カグヤはそれに気付いた。例の龍脈を揺るがす、危険な物の反応だ。場所は特定できている。否、出来ないはずがない。なぜならその発生場所はここ、月村の敷地内なのだから。

 焦りが生まれる。こんな所で何事か起こされては堪ったものではない。すずかだけじゃなく、忍達にまで被害が及びかねない。

 行動の前に手順を考える。そうでなければ失敗しかねない。失敗してはいけない。失敗すれば彼女達が傷つくのだから。

「あっ! ユーノくん!」

 しかし、手順の途中でなのはの飼っているフェレットが飛び出してしまう。

「あらら? ユーノどうしたの?」

「私ちょっと見てくるよ。皆はここで待ってて」

 そう言ってなのはまで駆けだしてしまう。

 カグヤは一瞬止めようと口を開きかけ―――、

「……ゆーの?」

 その名前に憶えのあるカグヤは止めるのを諦め記憶を辿る。そして、一つ思い当る事がある。

「……まさか、龍斗の言っていた白い少女?」

 思い出したカグヤは、しかし後を追う事に決めた。

 もし、下手に騒ぎを大きくされたら堪ったものではない。自分も追って、最低限の安全を確保しようと決める。

「ファリン先輩、カグヤも行ってきます」

「カグヤちゃんも?」

「はい、念のため。ああ、そうだ……」

 カグヤは一度すずか達と離れた所に居る恭也と忍の元に向かうと、二人にだけ聞こえる声で告げる。

「念のため、ここをお願いします」

 それだけ訊いた二人は、なんとなく色々察した。その程度には二人はカグヤの東雲としての仕事に勘付いていた。

 

 

 カグヤはなのは達の後を追った時には遅かった。

 っと言うのも、何らかの結界が張られ、内部への侵入が出来なくなっていたのだ。

「まあ、ここで大事起こされるよりよっぽどいいんですが……」

 既にカグヤの周囲には霊鳥が四羽待機していた。練習して四羽まで一度に呼べるようになったのだ。しかし、これでは何の意味もない。

 ただ待ってるのも暇なので、結界を解析して、次回侵入できるように術式を構成してみようと考える。

「ん? 今誰か結界に入った?」

 気配に気づいて見上げるが、既に結界に入ってしまった相手を目視で確認はできない。仕方なく待っていると、結界の外に向かって何者かが出ていくのが見えた。

「黒い少女……、ふむ」

 少し考えたカグヤは霊鳥を二羽飛ばして、彼女を追わせた。

 そして自分は、林の中で倒れている高町なのはへと視線を向ける。

「何かあっては、すずか様が悲しみますか……」

 

 

 何があったかまでは説明していない。っと言うか見ていなかったから出来なかったカグヤは、とりあえず自分の件とは無関係だと忍に報告した。下手に事実を教えたところで、余計な混乱をもたらす可能性もあるし、余計な指示を飛ばされるかもしれない。

 なので、怪我をした高町なのはを連れ帰った後、ちょっとした騒ぎになってしまったが、カグヤ自身からは何も語られなかった。

 その日の夜、カグヤは東雲の仕事を控え、就寝の時間まで部屋で準備をしていた。その準備の一つとして、龍斗に連絡を取ろうと、忍から渡された携帯を弄っているのだが……。

「携帯初心者にこのハイテク機能はややこしくて仕方ありませんねぇ〜〜……」

 登録しておいたはずの八束神社の電話番号を呼び出すだけでも時間がかかってしまい、念のためにと飛ばしておいた霊鳥の方が先に八束神社に到着してしまった。

「やはり魔術師は魔術に頼ってこそですね……」

 呆れつつもカグヤは龍斗に連絡。内容は昼間見た黒い少女についてだった。

『知らないよ。俺が土地内で許可を出したのは、白い少女だけ』

 龍斗の返答には高町なのはの名前が出てこない。隠しているのは、万が一カグヤが彼女を危険人物と判断した時、襲われないようにするためだろうか? そう考えながらカグヤも龍斗に合わせて、名前は伏せておく事にした。

「では、その黒い少女とカグヤは接触してみます。既に霊鳥が居場所を捉えていますので」

『解った。俺も一緒に行かなくて大丈夫?』

「龍斗には『白い』方を見て置いて貰いたいですから。今夜は動かないとは限りませんし」

 互いの情報を交換し終えたカグヤは霊鳥を消して通話を切る。

 さて、後は就寝時間に合わせてこっそり抜け出すだけだ。

 そう思って時計を見ようとした時、扉を軽くノックする音が聞こえた。

「どうしましたすずか様?」

「ふえぇ……っ! 私だって解るの?」

「ええまあ、そんな控えめなノックはすずか様しかしませんし……」

 っと言うかカグヤにはすずかのノックとファリンのノックしか憶えていないと言うのが正確だ。この二人のノックは両極端なので、控えめなのと、リズム感のある強めなのと判別がしやすい。月村家には後二人しかにないのだが、ノエルのノックは先の二人を憶えておけば絞りこめ、忍に至っては何故かノックすらしない。それだけに良く解ったのだった。

「えっと……、あの……」

「とりあえずお入りください」

 いつまでも扉越しに間誤付く主に見兼ね、扉を開いて部屋へと招き入れる。

 パジャマ姿にまくらを抱いたすずか現れると、少し恥ずかしそうに上目使いになりながら「お邪魔します……」とお辞儀した。

「あ、カグヤちゃん、まだ仕事着のままだったんだ?」

「着替えるのはベットに入る時だけですから」

 あと地下での訓練時くらいだが、そこまで細かく話す必要もない。

 カグヤはすずかを自分のベットに座る様手で促し、主が座ったのを見届けると、すずかを見降ろさないために、自分は床に正座する。

「カグヤちゃんもベットに座りませんか?」

「いいえ、元々カグヤは座敷生活でしたから、こちらの方が落ち着くのです。……主の前で寛いでいるのですから、使用人としては問題かもしれませんが?」

 薄く笑みながら冗談に聞こえるよう心がけて呟くと、すずかはくすりっ、と小さく笑って承諾した。

「それで、どうなさったんです? いつもならもう床(とこ)で休んでいらっしゃるお時間では?」

「えっと……、そうなんでだけど……」

 枕を抱いたままもじもじ言いにくそうにするすずかの態度に、首を傾げてしまう。正直こう言った照れや恥じらいの機微を正確に理解できるほど、カグヤは感情に聡くはなかった。

 仕方ないので黙ってすずかの言葉を待っていると、恥しがりな主は枕で口元を隠しながらポツポツ話し始めた。

「最近……、何だか怖い気がして……」

「怖い、……ですか?」

「公園が荒らされたり、獣医さんの御家が壊されたり、あんな木が街中で急に出てきたり、それになのはちゃんも……」

 それが一体どうしたのだろう? っと一瞬本気で解らなかったカグヤだが、考えてみれば訳も解らない一般人のすずかからしてみれば、得体のしれない何かが自分の周りで悪さをしているような、そんな不気味さがあるのだろう。

(なるほど、世に言う『幽霊怖い』っと言うのはこう言った意味だったのですね。納得しました……)

 何か別のところで理解を得て頷くカグヤ。

「それで……、なんだか周りが大変な事になってるから……、もしかして私も、って考えちゃって……」

「それでカグヤの元にですか?」

「その……、直接聞いてはいないけど……、カグヤちゃんは、そう言うので頼りになりそうだから……」

 そう言えばすずかには自分が魔術を使った所を見られていたのだったと、今更ながらに思い出す。なるほど、それなら良く解らない物への不安から縋る理由もあると言うモノだ。ならば、自分はその不安を払拭するだけだと、カグヤは薄く笑む。

「不安になる必要などありませんよ」

 言わんとしてる事が解ったカグヤは膝立ちになると、すずかの手を自分の手で包み込んだ。

「すずか様のお傍には、カグヤがずっと付いておりますから」

「カグヤちゃん……!」

 感動したように瞳を潤ませ、頬を上気させながらホッ、と熱い息を漏らす。すずかはカグヤに絶対の信頼を寄せた満面の笑みを向ける。

「じゃあ、一つお願いしてもいい?」

「それがすずか様の命であるなら」

「今夜から、ずっと一緒に寝てください」

「………」

 しばし、カグヤは笑みのまま固まった。

 思考が復活すると共に額に指を当てながら断る方法を模索する。

 すずかの手がカグヤの手を強く握った。

 断れないらしい事を悟る。

「……大人になると道徳という障害がありますのねで、っというか常識がありますので、それまででしたら」

 結局妥協した。

「ダメなの?」

 ものすごく悲しそうな表情をされた。

「……解りました。すずか様がお断りするまでお付き合いいたします」

「ありがとうカグヤちゃん♪」

 結局、すずかの涙と笑顔には、とことん弱いカグヤなのだった。

 承諾したカグヤは、服を寝間着様の浴衣に着替えると(着替え中くらいすずかに退出を願ったが、首を傾げられて断られ、少し傷ついたカグヤ)、二人一緒にベットの中に潜り込む。

「すずか様、大きいベットですから、そんなにくっ付かなくてもいいと思いますが?」

「家族と一緒に寝る時はこうした方が温かくて気持ちいだもん。こうしないと損だよ」

「カグヤはすずか様の家族では―――」

 カグヤが言いかけると、すずかの抱きしめる腕の力が増した。

「家族だよ」

 真剣味のある声にカグヤは押し黙るしかなくなってしまう。

 仕方ないので素直に従う事にした。

 すずかはカグヤの胸に顔を埋めて気持ち良さそうに声を漏らす。

「カグヤちゃんの胸、意外と柔らかくて気持ちい〜〜♪」

「すずか様〜? 今結構グッサリと来ましたよ〜〜?」

「お肌もスベスベ〜〜♪」

「和メイドを着せられる時、お肌ケアを忍お嬢様に叩き込まれましたからねぇ〜」

「瞳は綺麗だし、髪の毛は艶々だし、腰も細いし、カグヤちゃんはとっても美人さんだよね〜〜?」

「これほど心に響く嬉しくない美辞麗句は生まれて初めての経験です。もう許していただけないでしょうか……? いえ、本気で、そろそろ泣きそうなんです……」

「今度また一緒にお出かけしようね? たまには可愛い私服とか着てもらいたいし?♪」

「………〜〜〜〜〜〜っ(涙」

 その後もカグヤは主から御満悦の美辞麗句地獄を寝るまで付き合わされた。精神的なダメージから瞼を閉じる刹那、彼は一つの重要事項を思い出していた。

(ああ……、黒い少女への接触を忘れてました……。いえ、どの道無理です……)

 カグヤは力尽きて眠ってしまうのだった。

 

 

 朝目が覚めたカグヤは、速攻でベットから出ると、いつもの仕事着に着替え、自分のベットに眠る主を主の部屋のベットへと移す。そしていつも通り一階で賄いを食べてから、再びすずかを起こしに行く。

「すずか様、起きてください」

「んぅ〜〜……、カグヤちゃん、もっと寝てよう〜〜……」

「遅刻してしまいますからダメです」

「じゃぁあ〜〜……、カグヤちゃんがキスしてくれたら起きま〜〜す……?」

「寝ぼけるのも大概にしろよ主?」

 さすがに精神ダメージがストレスに変換されて、珍しく荒いツッコミを入れるが、幸せそうに寝ぼけたすずかには全く効果がない。

 嘆息して頭を掻くカグヤは、それでも幸せそうにむにゃむにゃ言うすずかに安心を覚える。

「それにしてもここまで無防備にされると……、何でしょう? 途端にこの隙を突いてみたくなるのは?」

 胸の奥からうずうずと何かが込み上げてきたカグヤは、初めての欲求に逆らえず、思うままに行動してみた。

「すずか様、起きなければ起きたくなる様にさせますよ?」

「ん〜〜〜……?」

「(ニヤリ)……では、申しました通りに」

 カグヤは人差指ですずかの頬をツンツンと突く。起こす為の行為なので遠慮がない。

「ん? んぅ〜〜〜……」

「ふむ、昨夜はカグヤの頬がスベスベだと言ってましたが、すずか様の頬の方がプニプニして大変柔らかいではないですか?」

「んんぅ〜〜〜……っ!」

 嫌がる素振りを見せるすずかにカグヤは胸が弾む様な高揚感を感じる。そのまま、指を額や鼻の頭、顎の下などに指を滑らせ、一々反応するすずかの表情を楽しむ。と、その指が唇に触れた時、感触に反応して口を開いた瞬間、カグヤの指が口の中に入ってしまう。

 一瞬驚いたカグヤだが、またも胸の奥から別の高揚感が湧いて来て、溜めに指を出し入れさせていく。

「ん、んぅっ、はぅむ、……ちゅっ、くぷっ、……あんぅ」

「……〜〜〜〜」

 すずかの口から悩ましげな声が漏れ始め、その声が耳をくすぐる度に頭の奥が痺れるような衝撃を感じた。なんだか楽しくなってきたカグヤはそのまま指の出し入れを続け、時には舌に絡ませたり、強弱を入れてみなり、動きにバリエーションを加えたりと試していく。すると、すずかの表情が何だか苦しそうに紅潮し、悩ましげな声を洩らしながら、必死にカグヤの指を咥え込み始めた。次第に息も荒くなっていき、まるで熱に浮かされたようになって行く。

「あ、……あふむぅっ!!」

 好奇心から続けていたカグヤは、いきなり感極まった様にすずかが両手で腕を掴んで咥え込んできてビックリしてしまう。同時に、荒い息を洩らしながらボ〜〜ッ、とした表情のすずかがやっと目を覚まし、ゆっくりと瞼が開いていく。

 寝起きのすずかは、荒い息をしながら口の中にある何かを咥え込み丁寧に舐める。まだ自分が何をしているのか解っていないのか、視線だけがあっちこっち彷徨い、それでもカグヤの手は離さず、指も咥え込んだままだ。

 次第に覚醒し始めたすずかは、段々と自分のしている事を理解し始め、

「わっわっわ……っ!」

 慌ててカグヤの腕を放して口内の指を取り出す。

「ご、ごめ、ごめんなさいっ!? 私寝ぼけて一体何をっ!?」

「いえ、中々起きないすずか様にカグヤが突(つつ)いて遊んでいたらこうなっただけです。別にすずか様には何の非もありませんよ」

「って、カグヤちゃんが悪戯してたのっ!?」

「イタズラ……? そうですか、アレが『悪戯』と言うモノですか? ……悪戯とは楽しいモノですねぇ〜〜♪」

「カグヤちゃんの顔が今まで見た事のないほど幸せそうな笑みをっ!?」

「ふふふっ……、すずか様、これからも寝起きが悪い様ですと、カグヤが悪戯して起こしますので、ご注意ください?」

「お、お姉ちゃ〜〜〜ん!! カグヤちゃんが何かに目覚めちゃいました〜〜〜〜!!」

 その日カグヤは『悪戯』を覚えた。

説明
うん、あんまり原作介入してないね。
あくまでカグヤ×すずかルートの設定だから当然と言えば当然。

彼女―――もとい、彼(カグヤ)もいつか戦う時が来る。
………っと思う……。
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