真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第六部 『水着と水とHE∀ting Sφul』 其の七
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第六部 『水着と水とHE∀ting Sφul』 其の七

 

 

第十話『戦女神の凱旋 二』

呉領 荊州長江中流域 赤壁

曹魏軍船団旗艦

【紫一刀turn】

「孫策様、並びに孫呉の将軍方。曹操様と我等曹魏の将軍方が最上甲板にてお待ちです。どうぞお通り下さい。」

「ちょっとぉ、まさか本当に迎えてくれたわけ?」

 そんなやり取りの声だけが下の甲板から聞こえてきた。

「い、いよいよですね、隊長。」

 凪は真剣な顔で下への階段の方を見据えていた。

「落ち着いて行けよ、凪。雪蓮たちが姿を見せたら俺は何も言えなくなるけど、ちゃんと見てるからな。」

「はい!」

 返事と共に凪の闘気が大きくなったのが俺にも分かった。

 そして遂に雪蓮を筆頭に思春、祭さん、明命、シャオ、亞莎が階段を上り、姿を現す。

 迎え討つは華琳と俺を守る形で取り囲む春蘭、霞、季衣、流琉、凪、沙和、真桜。

「お招きにより参上したわよ、華琳♪」

 雪蓮は泰然自若というか、遊びに来たような気安さで挨拶をした。

「いらっしゃい、雪蓮♪歓迎するわ。まぁ、お土産をあげることは出来ないけど、ゆっくりして行って頂戴。そうねぇ、私達が赤一刀を乗せて本陣に戻るまで♪」

 お土産って、俺の事だよな・・・・・・。

「ありがたい申し出だけど、私達もゆっくりしてられないのよねぇ♪蓮華が待ってるから、こちらにお邪魔してる紫一刀を連れて、適当な処で帰らせてもらうわ♪」

 こ、怖い・・・・・二人とも目が笑ってないんですけど・・・・・。

「そう遠慮しないで、今から始める宴を楽しんで行きなさいよ。観客も期待してるわよ♪」

「観客の期待ねぇ・・・・・・・それに応えられるかは、

 

貴女達次第よ!!」

 

 雪蓮が走り出すと同時に孫呉、そして曹魏の武将が動いた!

 先頭を切る雪蓮の前に霞が立ちはだかる。

「いっつも春蘭の相手でいい加減飽きたやろ。たまにはウチと遊んでみんかぁ♪」

 飛龍偃月刀を構えた霞は実に嬉しそうだ。

「あらやだ、本当に面白そうじゃない♪華琳も粋な計らいしてくれるわねぇ♪」

 雪蓮も南海覇王を抜いてそのまま霞と切り結んだ。

 

 

「思春!先日の決着をここでつけてくれる!!」

 春蘭の振う七星餓狼を思春が躱し、更なる攻撃を鈴音でいなして隙を伺う。

「先日の決着?それは工作員戦の事を言っているのか?」

「そうだ!人の顔に下らん落書きなんぞしおって!!」

 三合ほど打ち合ってから思春が口を開く。

「・・・・・貴様はそれを負けだとは思わんのか?」

「思わん!」

 更に五合打ち合ってから思春は溜息を吐いた。

「はぁ・・・・・・・・・・天下一品武道会の時も愛紗に似たような事を言っていたな。」

「それがどうした!」

「・・・・・そうか。ならば貴様が負けを認める様に徹底的に打ちのめすのみっ!!」

 思春が剣速を上げ、それまでの守勢から攻勢に転じた。

 

 

 凪の両手両足が光っている様に見えるのは気を集中しているからだろう。

 それをいつもの様に撃ち出すのではなく、明命の魂切を手甲の閻王で受け、気で弾いている。

「やりますね!凪さん!功夫の使い手でここまでの人は亞莎以来です!」

「その話は聞き及んでいます!私としても亞莎さんと手合わせしたかったのですが」

 凪の連続攻撃!技コマンドならPPP↓Kといったところか!

 明命は全て躱して見せるが、拳圧で髪が乱れていた。

「不本意な勝ちの見える戦いをしたくなかったので、この采配を華琳様に感謝しています!」

 →KKから右下PPKK→Pと明命が長刀なのでひたすら懐に入る連続攻撃を繰り返す。

「亞莎が弱いって言うんですか!!」

 悪口と取った明命は語気を荒げた。

「いえ!昨日の戦い振りを見て、雪蓮様並みの強さと言う話に嘘がないと思いました!」

「では何故!?」

 明命の怒りに任せたひと振りを←←で躱す。

「すぐに解ります!!」

 

 

「ほれ!真桜♪愛紗に向かって行った時の気迫はどうした!?」

 祭さんは普通の槍で真桜の螺旋槍と互角以上の戦いをしている。

「ちょっと!祭姐さん!あんた、弓が得意なのとちゃいますの!?」

 その隙のない攻撃を凌いでいる真桜が健闘していると見るべきか。

「その通り弓が一番じゃ。じゃが槍や剣が使えんとは言うとらんじゃろ。戦場で『剣を使ったことがないから戦えません』で生き残れるか?」

「そらそうやろけど!も少し不得意っぽい可愛げが有ってもええんちゃいます!?」

「料理もろくに作れん奴が可愛げなんぞと言っても説得力がないわ!」

「ぐはっ!!」

 あ〜、この精神攻撃は効いたな。

 真桜が作るのは料理じゃなく、料理を作る絡繰だもんな。

 前に作った『味良しくん』は戦闘ロボになってたけど。

 

 

「焔耶や麗羽みたいに成りたくなかったらそこをどいた方がいいわよ、沙和!」

「シャオちゃん忘れてるんじゃないの?沙和が一緒に水着の意匠を考えた事を!水着の構造を熟知してるのはシャオちゃんだけじゃないの!」

 二人共二刀流(?)でスピード重視型。

 四つの武器が目紛るしく交差する。

 沙和の言う通り、二人の水着には脱げたりしずらい上に切れたりしない様な工夫がされている。

 例えば沙和のワンピース。パイピングという縁取りがしてあるが、かなり切れづらい物を使っている。

 そしてシャオのセパレーツ。昨日と同じ物だがブルマとほぼ同じ形状のボトムには切り飛ばせる紐部分が無い。白のトップは一見肩紐か背中が狙える様に見えるが、あれには極細のワイヤーや針金が全体に仕込んであって、普通のハサミですら歯が立たないだろう。

 何故そんな事が解るかというと、シャオの胸のサイズが明らかに大きくなっているのに、揺れもズレもしないからだ。

 あれはブラというより胸鎧と言ってもいい。ワイヤーインの寄せて上げてなんて可愛いレベルの代物では決して無い!

 まあ、武器が相手に触れた時点で勝ちになるのだから、別にポロリをさせなくてもいいんじゃないか?

 

 

 そして先程凪が言った亞莎には季衣と流琉が当たっているのだが。

「本気でやらないと危ないよっ!」

「お願いですから、参ったって言ってください!亞莎さん!」

「そ、それはできませんっ!わ、私も戦わないと・・・」

 交互に飛んでくる季衣の鉄球と流琉のヨーヨーを紙一重で躱す亞莎。

 それは功夫の達人が余裕で躱しているとはとても言えない、危なっかしい物だった。

 俺は亞莎の戦っている姿を見た事がないけど、雪蓮を始め孫呉のみんなが亞莎の強さを認めているのは確かだ・・・・・そう言えば赤も亞莎が戦っている姿は見たことがないって言ってた様な・・・・・・昨日も亞莎の姿はモニターに映らなかったし。

 

 

 更にもうひと組、熱い戦いを開始した奴らがいた!

「孫呉の尻好き!勝負ッス!」

「曹魏の追っかけ!望むところだ!!」

 尻好きは雪蓮に付いて来ていた。

 追っかけは元々この艦に乗っていたのだ。

「勝負の方法は」

「俺とお前のどちらが」

 

「「より多くの決定的瞬間を記憶出来るかっ!!」ッス!!」

 

 二人はそのまま直立不動で記憶モードに突入した。

 見えている筈の二人の姿が、気配を消すことにより風景と一体化していく。

 すごいぞお前ら!遂にそこまで体得したか!

 他の兵達も武将たちの戦いを見守っているが、彼らの緊張と熱気に紛れ尻好きと追っかけの気配は完全に消えていた。

 あれ?あそこでカメラ担いでるの兄ぃじゃないか?

 てっきり救護班にいると思っていた兄ぃは亞莎と季衣、流琉の戦いを中継していた。

 

 

「あ、兄ちゃんがまたこっち見たよ♪」

 季衣がそう言うと亞莎が俺の方を振り向いてしまう。

 こんな致命的な隙を季衣と流琉が見逃す筈はなく、岩打武反魔と伝磁葉々が亞莎を襲う!

「クゥッ!!」

 亞莎はゴツい手甲(確か((人解|れんげ))だったか)で受け止めるが、勢いを殺しきれず身体が宙に浮く。

 亞莎の身体はそのまま楼船から放り出された。

 

「亞莎っ!!」

 

 明命の叫びを耳にしながら俺は亞莎の姿を追って船外を見ると、

 そこには救助船の上で待ち構える星!

 見事に亞莎をキャッチするのを確認し、俺はみんなの方を振り返って手で大きく丸を作り亞莎の無事を伝えた。

「亞莎はね、あなたたちに戦っている姿を見られたくないって思ってたのよ。ここに来るまで覚悟を決めていたのでしょうけど、いざ一刀の視線を気にしたら決意が鈍ったのでしょうね。」

 俺が返事を出来ないと分かっているからか、華琳は俺を見ずに独り言のように呟いた。

 帽子に隠されその表情を伺えないが、多分その顔は感情を押し殺した無表情だったに違いない。

「季衣は真桜、流琉は沙和の援護に入りなさい!」

 束ねた鞭を采配代りに華琳は指示を出した。

 

 

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孫呉船団前衛指揮 露橈

【エクストラturn】

「のう七乃、なんで妾は昨日と同じ水着ではダメなのじゃ?」

「それはですねぇお嬢様。曹魏のみなさんを攪乱する為ですよ♪」

 七乃は昨日と同じ銀色のビキニだが美羽の水着は紫紺のワンピースでスカート状の大きなフリルの付いた物に変わっている。

 髪型もツインテールにまとめ、クルクルの毛先が丁度顔の横で揺れていた。

「なんだかようわからんが、七乃が考えた策なのじゃからきっと上手くいくのじゃ♪」

 美羽は自分の姿がどのように他人に見えているのか良く分かっていない様だ。

 

「美羽さん!?そんな華琳さんみたいな格好で何をするつもりですの!?」

 

 麗羽が救護船から声を掛けてきた。

「麗羽様ダメですよ!模擬戦の最中に救護班のあたいらが声かけちゃ!」

 猪々子が慌てて麗羽を船内に引っ張り込む。

「だって気になるじゃありませんの!」

「私たちは審判でもあるんですから邪魔しちゃダメなんですってば!」

 斗詩にも押されて麗羽の姿は船内に消えた。

「・・・・・・・・・・・・妾の姿はかりんに変装しているように見えておるのかや?」

 美羽が引きつった顔で七乃に問いかけた。

「ええ♪実はそうなんですよ〜♪」

「だ、だいじょうぶなのであろうな?七乃・・・・・」

 

「美羽――――!!そんな華琳様の様な姿をしたからって怯むと思ったら大間違いよっ!!」

 

 桂花の怒声が曹魏側から聞こえてきた。

「ぴゃっ!」

「ああやって冷静さを欠く人を出すのが目的ですからぁ♪」

 七乃が面白がってやっているだけかと思いきや、桂花の指揮で果敢な突入をしてくる船隊を上手くいなし、各個撃破で数を減らしていく。

 

 

曹魏船団右翼指揮 露橈

 

「おやおやぁ、桂花ちゃんが乗せられちゃったみたいですねぇ。」

 風はいつもの様にのんびりと構えていた。

「他人事じゃねぇだろ、風。敵の士気が異様に高いじゃねぇか。どうすんだぁ?」

 宝ャの言う通り孫呉の船がやたらと風の船を目指して突っ込んで来る。

「まぁそれは昨日も似たような状況が在りましたしぃ。多分、穏ちゃんが貧乳党員をかき集めたんでしょう〜♪」

 風の推察通り無理な突入をしてくるのは孫呉の貧乳党員だった。

 

「行けええええ!!何としても程c様の水着姿を礼拝するのだあああああああああ!!」

「貴様らの気持ちは解るが、ここを通す訳にはいかんぞっ!!」

 

 攻めるのが貧乳党員なら、守るのも貧乳党員だった。

「そういうことか。でも風はどうせなら一刀たちに良い処を派手に見せておきたいんじゃねえのか?」

「それはしょうがないのですよ。風は軍師ですから武将さん達の様にはいかないのです。」

「よし!俺が何とかしてやるぜ♪」

 宝ャはそう言うと風の頭から飛び降りた。

「あ。これ、宝ャ。どこへ行くんですかぁ?」

 傍から見れば落っこちた宝ャを拾おうした様に見えていた。

 結果、風はお尻を突き上げる格好になる。

 

『ぶはああああああああああああああああああっ!!』

 

 普段ゆったりとした服を着て肌の露出も少ない風のその姿は、貧乳党員にとってリーサルウェポンとなった。

「勝手にどこかに行こうとしてはダメですよ、宝ャ・・・・・・・・おやぁ?」

 風が宝ャを頭に乗せ辺りを見回すと、敵と味方、果ては救護班の蜀兵までもが鼻血の海に沈み、無事だった者たちが大慌てで救助に駆け回り始めていた。

 

 

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曹魏船団旗艦

【紫一刀turn】

 沙和とシャオの戦いに流琉が参戦。

 その様子をインテリが中継していた。

 モニターを見ると丁度その映像が映し出されており、戦闘の最中に時折胸やお尻のアップ入ってくる。

 中々いい仕事をするじゃないか!

 戦いの方は流琉が参戦した直後は連携が上手く行かず危なっかしかったが、徐々に息の合ってきた二人に、今はシャオが押されている。

 沙和の攻撃を弾いたシャオに流琉の巨大ヨーヨーが飛んでくる。

 それを左に躱すシャオだが、ヨーヨーが軌道を変え追ってきた。

「ええぇぇぇ!?」

 驚きながらも身体を捻ってそれも躱し切った。

 しかし体勢が崩れ次の動作に入れない所に沙和が詰め寄る!

 

「シャオちゃん!勝負アリ!なのっ!!」

 

 沙和の右手の剣がピタリとシャオの胸に当てられていた。

「ああぁん!負けちゃったあぁぁ!!」

 シャオはその場にペタンと座って悔しそうに声を上げる。

 

 

 真桜と祭さんの戦いには兄者・・・だよな?・・・兄者が中継していた。

 巨乳マニアらしく素直におっぱいばかりを追いかけている!

 流石は兄者・・・揺るぎない!

 そして真桜の援護に来た季衣だが、何故か黙って二人の戦いを黙って見ている。

 初めは援護するタイミングを測っていた様だったが、次第に肩が落ちてきた。

「・・・・・かりんさまぁ・・・・・にいちゃぁん・・・・・ボク棄権するぅ・・・・・」

 そう言ってヨロヨロと俺達の方にやってくる。

「どうしたの季衣!?顔が真っ青よ!!」

 慌てて駆け寄った華琳に季衣は

「・・・酔っちゃった・・・・・」

「酔った?・・・船に?」

「・・・ううん・・・・・・ふたりのおっぱいに・・・・・・」

 ・・・・・・・・・・・成程、真桜と祭さんの激しい動きに、おっぱいも暴れ回っていた。

 季衣はその動きを目で追ってしまい、『乳酔い』してしまったのか。

「・・・うぅ・・・ぎぼぢ悪い・・・・・・」

 

「季衣!ちょい待ちぃやっ!!」

「人の胸を見て気持ち悪いとは何事じゃっ!!」

 

 真桜と祭さんが足を止めて文句を言うが

 祭さんの手は止まっていなかった。

 バシン!と大きな音が真桜のお尻から響く。

 

「あ痛だああああああああっ!!」

 

 槍でぶっ叩かれて真桜はすっ転ぶ。

「乙女の尻に何しますのん!!腫れて蓮華様なみになったらどないすんねん!!」

 相当痛かったのかお尻を押さえて転げ回っていた。

「目を離しても気配で感じ取らんか!軟膏でも塗っておけばそこまで腫れんから、後で北郷にでも塗ってもらえ♪」

 視線が一気に俺に集中したのを感じ、慌てて両手を上げて首を左右に振り回した!

 喋っちゃいけないからツッコミも言い逃れもできねぇ!

 とにかくこれで双方二人ずつ脱落。

 そして祭さんには沙和と流琉が戦いを挑んで行く。

 二人の攻撃は祭さんに対して最初から全力に感じられるが、祭さんはまるで稽古でも付ける様にいなしている。

 なんか格が違うなぁ。

 

 

「凪さん!そろそろ終わりにします!!」

「くぅっ!!」

 明命の攻撃に対し凪は守るのが精一杯になってしまっていた。

 序盤の猛攻の所為で疲れが出たのか?

 動きが鈍ったと判断したのか明命が大技を出すのに一瞬溜めを入れた。

 そこにすかさず凪渾身の回し蹴りが飛んでいく!

「甘いですっ!!」

 凪の攻撃を見切った明命が僅か数センチで躱し、背中を向けた凪に魂切を振う!

「はうあ?」

 だが声を上げたのは明命。

 凪の背中が一瞬で間近に迫ってきた!

 

ズドン!と激しい震脚と共に繰り出されたのは←→→P+K、いや((鉄山靠|てつざんこう))だ!!

 

 まともに喰らった明命が吹っ飛んで亞莎と同じように船外に落ちる!

 これを受け止めたのはなんと美以と三猫だった。

 明命は気を失っているらしく動かないが、美以が笑顔で手を振っているので心配なさそうだ。

 意識があれば明命には至福の時だったろうに。

 一方勝者の凪に目を戻せば、未だ鉄山靠の形のまま肩で息をしていた。

 その足元は震脚で甲板が凹みヒビが入っている。

 凪が汗だくの顔を俺に向け微笑んだ。

 

「た、隊長に・・・・・教えて頂いた・・・技・・・・・できました♪」

 

 教えたというほど大した事はしていない。

 こんな技があると言った程度なのだが、凪はそれを覚えて相当鍛錬したんだろう。

 俺は笑顔で頷いてあげると、ようやく構えを解いてそのまま大の字にブッ倒れた。

 救護班が駆けつけるが凪はそれを手で制した。

「大丈夫だ・・・・・・・少し休めば・・・・・・また、動ける・・・・・」

 

 

 春蘭と思春はお互い一歩も引かず打ち合い続けていた。

 流石は三国を代表する二大脳筋。

 あれだけ激しい攻撃をこれだけの時間続けても息が乱れていない。

 

「「北郷!貴様!今私を馬鹿にしただろうっ!!」」

 

 な!?二人共神経が研ぎ澄まされて、勘が鋭くなってるのか?

 この二人は暫く決着が着かなそうだし、下手に関わらない為にも霞と雪蓮の方を見ておくか。

 って、こっちも凄い応酬になっている!

 ただ、霞も雪蓮も口元は嗤っているのに目が((本気|マジ))だ・・・・・。

 これに比べたら最初の華琳と雪蓮のやり取りが普通の挨拶に思える。

 そんな戦いの中継に弟者が挑んでいた。

 不用意に近付けばとばっちりを喰らうというのに・・・・・そのチャレンジ精神に心からの敬意を表したい!

 

「さて、そろそろ到着しそうね。私は赤一刀を迎えに行ってくるから、凪、一刀の守りは任せたわよ。」

「は、はい・・・華琳様・・・お任せ下さい・・・」

 凪はまだ甲板に大の字になりながら応えた。

「それじゃあ一刀、行ってくるわね♪」

 艶然と微笑む女王様に俺は無言で頷く。

 華琳は下の甲板に次々飛び降りると、そのまま走って脱落船を伝い孫呉本陣に向かった。

 既に脱落船の橋は向こうまで出来上がっている。

 

 

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曹魏軍楼船二番艦

【エクストラturn】

「いくら美羽だと判っていてもあの姿では弓を引くのが((躊躇|ためら))われるな。」

 秋蘭は微笑みながら美羽を眺めていた。

 再び帆柱に上がり戦況を確認している。

 右翼が早々に片付いたので、左翼と前曲に弓隊の支援を集めることが出来た。

 その為、全体的に曹魏が押している。

「む、華琳様が出られたか。では、露払いをさせて頂くか♪」

 華琳が右翼側から一人で孫呉本陣に向かうのを確認し、華琳の進行方向の孫呉残存兵を次々と射落としていく。

 秋蘭の神技とも言える十本矢を一度に放つ技。

 しかも一本も外す事無く孫呉兵を脱落させる。

「華琳様の玉体をそう簡単に拝めると思うなよ♪」

 

 

「秋蘭ったら、これじゃあ私の見せ場が無くなってしまいそうね♪」

 秋蘭を見上げ軽く手を振る華琳。

 すると矢を放つ間隔が早くなった。

「あらあら、孫呉に悪いことをしたかしら。」

 華琳の眼前に孫呉本陣が迫る。

 待ち構える孫呉近衛兵も秋蘭の矢で数を減らしていく。

 しかし華琳が到着するまでに全滅は無理だった。

「ふふ♪逃げるんじゃないわよ。今から気持ちよく脱落させてあげるから♪」

 華琳は走りながら軽く唇を舐めると鞭を振って数人を打ち付け、孫呉本陣に飛び込んだ。

 

『うひいいいいいいいいいい!』

 

 奇妙な悲鳴を上げて((踞|うずくま))って行く孫呉近衛兵達。

 

「躾てあげるから這い((蹲|つくば))りなさい!!」

 

 

孫呉本陣

【赤一刀turn】

 華琳が鞭を振るう度に近衛兵が悲鳴を上げて倒れていく。

 しかも下半身を押さえて・・・・・・・華琳、いくらなんでもそれは可哀想じゃないか?

 一分と経たずに百人の近衛兵が華琳の鞭と秋蘭の矢によって脱落してしまった。

 

「くっ!華琳!!一刀は渡さないわよっ!!」

 

 蓮華が俺を庇い前に出た。

 その手には南海覇王が握られている。

 当然レプリカな上に雪蓮も同じ物を持っているので、なんだか有り難味が薄いが。

 

「その意気や善し!王として貴女と勝負が出来て嬉しいわよ。蓮華!」

 

「王としての勝負か、面白い!」

 蓮華の声に気迫が篭る!

 構えた蓮華に華琳が鞭を振るって南海覇王を絡め取ろうとする。

「甘い!」

 蓮華は鞭を絡ませたまま踏み込んだ!

 今度は華琳が鞭の柄で南海覇王を受け止める!

「甘いのはどっちかしら?私の方が背丈が低いからと見くびっていない?」

「心外だな!そのような事は思った事も無い!!」

「あら?では胸の大きさかしら?確かに大きさでは敵わないけど形では負けていないわよ♪」

「べ、別にそんな事思ってないわよっ!!」

 あらら、あっさり華琳のペースに飲み込まれちゃったよ。こりゃ決まったかな?

「ああ!私では絶対に勝てない所が一つ在ったわ♪」

「言うなっ!言わなくていいっ!!」

「お尻では貴女に敵わないわね♪」

 

「だから言うなああああああああああっ!!!」

 

 蓮華が叫んだ瞬間に華琳は南海覇王を奪い取ってしまった。

 さっき祭さんと真桜が話してたお尻の話がモニターに映ってて憤慨してたからなぁ。

 

「はい♪貴女の負けよ、蓮華♪」

 華琳は鞭の柄をムニっと蓮華の胸に押し当てた。

「ううぅ・・・・・修行不足だわ・・・・・」

 蓮華は涙目で落ち込んでいた。

「では、赤一刀は連れて行くけど、貴女も一緒に来なさい、蓮華。」

「えぇ!?」

「まだあそこの上では雪蓮と思春、それに祭が頑張っているのよ。」

 華琳が親指で示した先には曹魏の楼船が間近まで迫っていた。

 

 

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解説席

【緑一刀turn】

 華琳が赤と一緒に蓮華まで連れて旗艦に戻ると、そのまま回頭させて曹魏本陣に向い船速を上げた。

「遂に華琳様が赤一刀さまと紫一刀さまを乗せ曹魏本陣に戻って行きます!

普通ならばもう決定的というところですが、楼船の上ではまだ雪蓮様、思春様、祭さまが戦っています!

果して最後の逆転は在りうるのか!?」

 小喬の実況は観客を未だ盛り上げいていた。

「ねぇ、朱里ちゃん、雛里ちゃん。二人はどう思う?」

 桃香の質問に雛里は即答する。

「これはもう曹魏の勝でまちがいないです。雪蓮さんと霞さん、思春さんと春蘭さん。この戦いは曹魏本陣に到着しても着かないでしょう。もし着くとすればそれは華琳さんが加勢してやはり曹魏の勝です。そして祭さんと沙和さん、流琉ちゃんですが、凪さんが復活して参戦しました・・・・・あ、言ってる傍から決着しちゃいました!」

 祭さんが沙和と流琉の攻撃を捌いた所に凪が((箭疾歩|せんしっぽ))で飛び込んだ。

 背中に軽く触れた所で祭さんの負けが決定した。

 朱里が状況を補足する。

「後、警戒するのは穏さんと美羽ちゃんと七乃さんですが、三人は秋蘭さん、桂花さん、風さん、稟さんが完全に押さえています。もう突破は不可能でしょう。」

 モニター上には四分割された画面に解説席、穏と秋蘭側の戦況、雪蓮たちの戦い、そして曹魏本陣に近付く楼船の姿が映し出されていた。

 そして・・・・・。

「曹魏船団旗艦が遂に本陣に到着!今、華琳様が右手に赤一刀さま、左手に紫一刀さまの手を握り降りてきます!そして本陣に足を踏み出し・・・・・けっちゃあああく!この瞬間曹魏の勝利が確定致しましたっ!!」

 

 

曹魏本陣

【華琳turn】

 さあ、朱里、雛里、桃香。知恵を絞りなさい!

 明日も全力で相手してあげるわよ♪

「なあ華琳・・・・・」

「あの四人放っておいていいのか?」

 紫一刀と赤一刀が見上げる先には春蘭と霞が雪蓮と思春を相手にまだ戦っていた。

「下手に中断させると四人から恨まれるわよ。それでも良ければ止めに行ってもいいわよ、もう曹魏の勝も決まったし♪」

「それって模擬戦が終わったから俺たちがぶっ飛ばされても問題無いって事か!?」

「いくら刃の無い模造刀でも、あの中に入ったら確実に死ぬって!!」

「そうねぇ、せっかくの賞品に死なれては困るから私と一緒にいなさい、二人共♪」

 私は左右の一刀に腕を絡め引き寄せた。

 

 みんなには悪いけどもう少し独り占めさせてもらうわね♪

 

 

 

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あとがき

 

 

美味しいところを全部華琳が持って行っちゃいましたw

 

バトルシーンをノリノリでやらせて頂きました。

蜀対呉はギャグ重視でしたしねw

 

 

功夫

「カンフー」「クン・フー」「コン・フー」どう読むかはお好みでw

 

凪の技コマンドは敢えてVFですw

この時代にはまだ八極拳は生み出されていませんので一刀が教えた形にしました。

凪が「十年早えぇんだよ!」とか

「あなたには功夫が足りないわ!」とか言うのを想像して

ニヤニヤしていましたw

 

箭疾歩

間合いを一気に詰める歩法です。

八極拳を世に広める切掛となった漫画『拳児』に出てきます。

読んだことがない方は是非読んでみてください

二十年以上前の漫画ですがとても面白いです!

 

 

次回は最終戦、魏対蜀の前半。

朱里と雛里が更なる奇策をやってきますw

 

 

 

説明
第十話、魏対呉の後半戦です。
戦力集中の誘い込み策の華琳。
敢えて誘いに乗って乗り込む雪蓮達
一大バトルステージの開幕ですw


ご感想、ご指摘、ご要望、更に
「セリフが無いですねぇ、月さま・・・」「そうだねぇ、大喬ちゃん・・・」「これが漫画だったら姿位は出られるんでしょうねぇ、月さま・・・」「そうだねぇ、大喬ちゃん・・・」
等のご意見がご座いましたら是非コメントをお寄せ下さい。

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コメント
ロドリゲス様  初コメありがとうございます♪そこまで言われると赤面してしまいます(//∇//)次回も面白いと言っていただけるよう頑張ります!(雷起)
初コメです。面白すぎですよ、時間を忘れて読みふっけてしまいました。次回も期待しています。(ロドリゲス)
アルヤ様  自分も読むときは「クンフー」ですね。英語表記でKung-fuと書くため「カンフー」、日本ではVF以来ルビに「クンフー」と書く事が多くなった様です。北京語、広東語では「コンフー」(イントネーションは違うみたいです)だそうです。(雷起)
量産型第一次強化式骸骨様  もし私がその場にいたら、鼻血の海に沈む一人でしょうw 目覚めた兵はそのまま華琳の信者になってしまうのか、それとも孫呉に新たな女王様を求めるのか。孫呉の女王様候補は雪蓮、冥琳、思春ですかね♪(雷起)
漢字表記だとクンフーで読むなぁ。カタカナだとカンフーなのに。(アルヤ)
さすが風。貧乳党の心理的な弱点をここまで的確に突くとはww そして華琳様に躾けられた孫呉近衛兵達は新しい趣味に目覚めそうですねwww(量産型第一次強化式骸骨)
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