恋姫†無双 関羽千里行 第1章 3話
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第1章 3話 ―再会―

 

 

愛紗「お怪我はありませんか?」

 

 同じ経験を2度した感慨にふけっていると愛紗がかがんで俺の顔を覗き込んできた。割と顔が近くて少し照れてしまう。

 

一刀「うん。ありがとう愛紗。」

 

 そう言って微笑むと今度は愛紗が顔を赤くして顔をそむけてしまった。

 

愛紗「それにしてもここはどこなのでしょう。どうせならさっきのやつらを捕まえておいて情報を引き出せばよかったですね。」

 

一刀「そうだね...前と同じだったらこのあと鈴々が駆けつけてくるんだけど、今回愛紗は俺と来ちゃったからなぁ。」

 

愛紗「そうですね、鈴々が来るとは限りません。少し歩いて街道を探しましょう。」

 

 そう言って先に立ちあがった愛紗が俺に手を差し伸べた。俺はその手をとって立ち上がり周囲を見渡した。するとこっちに向かって走ってくる2騎が確認できた。

 

一刀「あっちから誰か来るよ。暗くてよく見えないけどもしかして鈴々かなぁ。」

 

愛紗「体格からして別人でしょう。ん?でもあの者らどこかでみたような...」

 

??「おーい!大丈夫かー?」

 

馬上の一人がそう叫びながら走ってきて、目の前で土煙を立てて馬たちの足をとめた。そして馬から颯爽と飛び降りるとこちらを向いた。

 

一刀・愛紗「あっ!」

 

 その姿を見た俺と愛紗は驚愕の表情を浮かべた。それはその人物が俺たちにとってよく知る人物だったからだ。一目見た瞬間、陽気な彼女と過ごした満ち足りた日々が走馬灯のように駆け巡った。無論、全く死にかけてなどはいないのだが。それは愛紗も同じことだったのか、俺も愛紗も目にうっすら涙を溜めている。しかし、今は初対面で目の前にいる彼女は俺たちの知る彼女ではない。一瞬でかかった真名を俺たちはすんでの所で押しとどめた。

 

??「ん?どないしたん?ウチの顔になんかついてるんかいな?」

 

 怪訝そうにする彼女をよそにもう一人もこちらに向かって歩いてきた。

 

??「全く、さっきまで文句を垂れていたかと思ったらいきなり全力で走り出しおって...」

 

 そういう後ろから来る者を見るとこちらもやはり見たことのある人物であった。しかし、前の外史では愛紗と討ちあった時くらいにしか見たことがなかったが...

 

??「なあなあ。こんなところで何してるん?さっき真っ白い光がドッカーンとこっちの方に落ちたみたいやねんけど見た?というかさっきでっかい闘気感じたんやけどあれアンタ?」

 

 俺の思考を遮るように興奮して一気にまくし立ててくる彼女に懐かしさを感じつつも、好奇心旺盛な猫のような愛らしさを感じさせるしぐさにやっぱりかわいいなぁと思ってしまう。そんな俺の心のうちを知ってか知らずか、愛紗はちょっとだけ不機嫌そうにしてから答えた。

 

愛紗「ん、んん!その質問に先に応えよう。最初の質問だが先ほどまで賊に絡まれていた。2つ目の質問だがそのお主らが見たという白い光はおそらく私達のことだ。そして最初の質問とかぶるがさっき感じた闘気というのは賊と戦った時の私のことだろう。」

 

 質問に答え終わると1人は何を馬鹿なことを言ってるんだという呆れた顔をしていた。対して初めに話しかけてきた彼女にとって白い光の下りなどは今となってはどうでもいいらしい。愛紗に対してもの凄く何か物欲しそうな目を向けている。ま、まさか...

 

??「なあ!ウチと今すぐ戦ってくれん!?さっきの闘気にあてられてウチもうすっかり血が騒いでしまったんや!」

 

 予想していたものと違ってちょっと残念な感じもしたが、それも彼女の持ち味なのでそれはそれで予想を裏切らないなぁと思うのだった。愛紗もちょっと顔が赤くなっていた所を見ると前の外史でのことを思い出していたらしい。少し取り乱した雰囲気を正してこういった。

 

愛紗「い、いきなりだな...初めて会っていきなり戦おうなどと...」

 

??「えー、だめなん?うーん、そこをなんとか!頼む!ちょっとでいいから!死合とまでは行かなくていいから!1合!1合討ちあったら満足するから!」

 

愛紗「わ、わかった、わかったから!1合だな、1合だけだぞ!」

 

??「ほんまに!?ありがとう!めっちゃ嬉しいわ!」 

 

破竹の勢いで迫る彼女にやはり愛紗は弱いらしい。あっさり仕合の提案を受けてしまった。もう一人の彼女はいつものことかといわんばかりにあきれた顔をしている。

 

??「あ、興奮して名乗るの忘れててしもうたわ。ウチは姓を張、名を遼、字は文遠や。」

 

愛紗「私は姓を関、名を羽、字は雲長だ。」

 

張遼「よろしくな!関羽!よっしゃ、気合い入れてくで〜!」

 

 そういうと張遼はこちらから少し離れて早く早くと言わんばかりに臨戦態勢をとる。そんな彼女の態度にちょっと笑みをこぼすとすぐに愛紗も離れて臨戦態勢をとった。するとさっきまで黙っていた彼女も真剣に戦いを見守るような態勢にはいった。かくいう俺も今の愛紗がこの世界でどれくらいの実力を持っているのか気になったので、流血沙汰にはならないだろうと思いつつもハラハラしながらこの場は見守ることにした。

 

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 1時間ほど経っただろうか。互いに得物を構えたままこう着状態が続いている。しかし、汗一つ掻いてない愛紗に対して張遼からは余裕のなさが見受けられた。このままこう着状態が続けば張遼がへばって愛紗の勝ちになるだろう。それは張遼もわかっているのだろうが愛紗の隙のない構えの前に攻めあぐねている様子だ。また、一合だけと言った手前、その1回に全力を注ぎたいのだろう。そうしてこの膠着はいつまで続くのだろうかと思った矢先、ついに根負けしたのだろう。一瞬踏ん張ったかと思うと張遼が神速とも言える勢いで愛紗に向かって地面を蹴った。

 

張遼「どりゃああああああ!」

 

神速の突き。ただ突きだけならば簡単にいなされてしまうがそこに神速が加わることでそれは奥義になる。事実張遼の突きは神速の名に違わぬ速さをもっていた。しかし...

 

愛紗「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 その神速の突きに対して愛紗はあえて前に飛び込み少しかがむと、槍の先に自らの得物の刃をぴったりとあて、力を込めるとそのまま張遼の突きの勢いを上に向かって流した。槍をもったまま万歳をする格好になった張遼がしまったと思った瞬間、愛紗はがら空きになった張遼の脇腹に勢いのまま逆向きになった青龍刀の石突きを一気に突きこんだ。

 

張遼「ぐはっ!」

 

 ついに勝負に決着がつき、張遼が地面に膝をついた。あれはかなり効いたのではないだろうか。心配になって駆け寄ろうとするとペタンと地面に座り込んだ張遼が口を開いた。

 

張遼「うっわぁ。完敗やなぁ!まさかウチの自慢の神速をこんなにあっさりいなされるとは思ってなかったわ。これじゃ討ち合いにもならん。」

 

愛紗「いや、お主も大したものだ、あの一瞬で体を捻って衝撃を受け流すとは。」

 

張遼「いやぁ、そうしたつもりやったねんけど実際あんまし受け流せんかったよ。関羽が槍を返すのが速すぎて対応が追い付かなかったわ。」

 

 張遼は痛みをにじませてはいたがとても清々しい表情をしていた。二人に大した怪我がなかったようで安心する。立ち上がろうとする張遼に愛紗は近づいて行き手を差し伸べた。

 

愛紗「よい仕合だった。いつかまたお相手願おう、張遼。」

 

張遼「おおきに。...かっこええなぁ、関羽。...なあこれからウチのことは霞って呼んでくれへんか?それがウチの真名や。」

 

愛紗「そうか、なら私のことも愛紗と呼んでくれ。」

 

張遼「よろしぅな、愛紗♪」

 

 なんだか愛紗を見る霞の視線が前の外史の霞と似ている気もするが...思いすごしに違いないな、うん。

 

霞「なあ、華雄も戦うんやろ?なら今のうちにお願いしときーよ。」

 

華雄「いや、今のを見てわかった。今の私ではこの者に勝つことはできない。それこそ戦場での一騎打ちであれば一瞬にして討ち取られていただろう。」

 

霞「そうかぁ。華雄と関羽の勝負も見てみたかってんけどな。」

 

 そう言うと愛紗と張遼はこっちに戻ってきた。愛紗の表情も久しぶりの友との勝負でなんだか晴れやかに見受けられた。

 

霞「ほら、あんたも名乗っときーよ。」

 

 そうして4人でまた集まり自己紹介することになった。

 

華雄「そうだな。私の名は華雄だ。そこの張遼と一緒に主君となるべきものを探しながら武者修行をしている。」

 

霞「そうそう、でもなかなか見つからんくてなぁ。最近はもっぱら修業しつつ山賊狩りみたいなことしかしてへんわ。」

 

 そこまで言って今度は霞の好奇な視線がこちらに注がれた。

 

霞「でそっちのにーちゃんは?なんかそっちのにーちゃんはこんな夜なのにぴかぴかした不思議な服着てんな。」

 

一刀「俺の名前は北郷一刀。姓が北郷で名前が一刀。さっきの仕合は凄かったね、張遼さん。ちなみこれはポリエステルといった素材を使ってるから月の光に当たって光って見えるんだ。」

 

霞「ぽりえすてる?なんやようわからんけど...それに珍しい名前しとるんやな。華雄も結構珍しい名前しとると思うてたけど。にーちゃんのことはなんて呼べばええんかな。」

 

一刀「一刀でいいよ、その方が呼ばれ慣れてるから。」

 

霞「そうか、なら一刀もよろしぅな。」

 

一刀「よろしくね、張遼さん。それに華雄さんも。珍しい名前同士仲良くしてくれると嬉しいな。」

 

華雄「あ、ああ。よろしくな、北郷。」

 

 名前では読んでくれなかったが嫌われているというわけではないようだ。笑顔で挨拶し、華雄に手を差し出した。すると華雄には俺が何をしたいのか伝わらなかったらしい。怪訝そうな顔でこちらを見つめた。

 

一刀「これは握手といって俺の国にある挨拶の一種だよ。お互いの好意を示すために手を握り合うんだ。」

 

華雄「そ、そうか。ん...こうか?」

 

一刀「うん、よろしくね、華雄さん。」

 

霞「なんや?ウチとはしてくれへんのかいな?」

 

 軽く拗ねたように見せる霞に温かい気持ちになりながら霞にも手を差し出した。

 

一刀「そんなことないよ。よろしくね、張遼さん。」

 

霞「うん、よろしぅな、一刀♪愛紗もウチと握手しよー!」

 

愛紗「ああ、改めてよろしくな。」

 

霞「よろしくな、愛紗♪握手〜握手~♪」

 霞は愛紗の手を握ったままこの上なく上機嫌で手をぶんぶん振り回している。すると何か気づいたように口を開いた。

 

霞「そういえば愛紗と一刀はこんな夜中にここで何しとったん?見たところ馬も連れてへん見たいやし...」

 

 そう、この世界に俺と愛紗がやってきた意味。それを今ここで問われているような気がした。

 

一刀「さっき愛紗が言ったと思うけど俺たちはさっき張遼さんたちが見たっていう白い光に乗ってやってきたんだ。」

 

霞・華雄「...はあ?」

 

 予想はしていたが案の定こいつ何言ってんだというイタイ子を見るような視線で見られている。止めて!そんな視線で俺を見ないで!そんな状況を見かねて、愛紗が助け舟を出してくれた。

 

愛紗「もしかしたら...お主たちは聞いたことがないか?管輅という占い師の予言を。」

 

華雄「管輅?ああ確か、黒点を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。その流星は天の御使いを乗せ、乱世を鎮静す、とかいうやつのことか。」

 

愛紗「ああ、それのことだ。そしてその天の御使いというのが私のお仕えしている、ここにいる北郷一刀様だ。」

 

愛紗の中でスイッチが切り替わったのがわかる。愛紗なりのけじめだろうか、これ以降俺たちの目標を達成するまで、彼女が俺の名前を呼び捨てすることはきっとないだろう。根拠はないがそう感じ取れた。

 

霞・華雄「...」

 

 二人はどうしたものかという顔でお互いの顔を見合わせた。まあ到底信じられるような話ではないだろう。前の外史ではその占いを信じていた愛紗に出会えたからよかったもののどうやらこの二人はその占いを信じているとは思えない。まあそんな時のためにあれを持ってきているわけで...

 

華雄「確かに夜にも関わらず昼のように明るくなったし、流星のような光も見た。そしてそれが落ちたと思われる場所にいた。確かにつじつまは合うが...」

 

霞「そないけったいな話信じろて言われてもなぁ...」

 

一刀「普通そうだよね。そこでちょっと二人に見てもらいたいものがあるんだけど...」

 

 そういって俺はポケットからそれをとりだした。

 

一刀「この世界だと文字を描く時、筆と墨を使うだろ?これはボールペンといって俺の世界の筆記用具なんだけど、これを使えばわざわざ墨を磨らなくても字が書けるんだ。」

 

そう言うと俺は一緒にポケットから出したメモ帳をとりだして試しに自分の名前を書いて見せた。

 

霞「なにそれ!やらして〜!ほんとや!字がかけとる!」

 

 霞にボールペンとメモ帳を渡すと興奮した様子でいろいろと字や模様を書き始めた。それを後ろから覗き込んで見ていた。

 

華雄「大したものだな...これまで方々を旅してきたが確かにこのようなもの今まで見たことがない。」

 

一刀「これでも信じられなかったらいろいろと未来...天の国の話をしてあげられるけどもうすっかり遅い時間だしどこかに移動するなりした方がいいだろうなぁ。」

 

愛紗「それでは今日はこの辺でキャンプにしましょうか。」

 

霞「きゃんぷ?なんやそれ。」

 

一刀「野宿のことだよ。それかここら辺に村はあるかい?」

 

華雄「私達はもともと街道沿いを進んでいたのだが、あの光を見てこっちに向かってきたから大分外れてしまったな。今から街道まで戻るよりここで野宿したほうがいいだろう。最近は物騒だ。下手に動いて山賊や黄巾の連中に出会ったら面倒だしな。」

 

霞「せやな。じゃあ一刀の言う天の国の話でも聞いたろか。」

 

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 それから俺たちは適当な場所を見つけて火を焚いた。そして4人で焚き火を囲いながら俺は現代の文化や政治、生活などあらゆることについて話をした。それを聞いていた霞と華雄はわからないことがあったら聞き返したり、もっと詳しく話すようせがんだ。霞は特に酒の話になるとどんな種類があってどんな味がするのかなど詳しく聞きたがった。対して華雄はあっちの様々な武器の話などに興味をもったようだった。それらのどんな話をしても二人の顔がころころと驚きに変わったり、好奇に変わったりするので話しているこっちも面白くてついついテンションが上がってしまい、ちょこちょこ話が脱線しかけると愛紗に諌められた。

 

 そうしてしばらく話していると急に霞が華雄ちょっと外すと言い、何やら二人で内緒話を始めた。何度かやり取りをしたかと思うとすぐにこちらに戻ってきて、真剣な面持ちになると、霞が口を開いた。明らかに今までの和気あいあいとした雰囲気が一転した。

 

霞「華雄とも相談して一刀が天の御使いやって話は今までの話を聞いてて概ね信じることにしたわ。それはそれでええんやけど、一刀に訊きたいことがある。」

 

一刀「なんだい?」

 

霞「一刀はこの乱世を鎮めるために来たんよな。ほんなら一刀はこの国を一体どうしたいんや?」

 

 一瞬、俺は愛紗の方を向いて視線を交わした。愛紗が俺に全てを任せるといった表情でこくりとうなずくと俺は霞と華雄に向かって話し始めた。

 

一刀「この国には戦火に巻き込まれた戦う力のないたくさんの人達がいると思う。家を、帰る場所を、家族を失った人たちがたくさんいるだろう。その中にも力がなくて不条理に立ち向かいたくても立ち向かえなかった人たちがたくさんいるはずだ。そしてそういった人たちの願いは、戦いのない平和な世の中の到来であるはずだ。俺は戦乱に苦しむ民を救いたい。少なくとも誰かが戦で友人や家族、愛する人を失うような時代を終わらせたいんだ。そのために、俺達は国を興して天下を統一する。」

 

霞「ふむ。でも国を興すっちゅうことはその道の間にも、人と人の殺し合いがあってそれは避けられへんで?それは一刀の考えと矛盾するんやないんか?」

 

一刀「確かに、俺のように乱世を終わらせようと考えている人もいるだろう。そして国を興せばそういった人たちと意見が合わず、戦いになってしまうこともあるだろう。だけど俺は自分の考えが正しいと思っている。だから絶対に天下を統一し、乱世を鎮める。たとえ矛盾しているように見えてもそれが避けて通れない道ならば進むだけだ。それにある人と約束したからね。絶対に成し遂げて見せるさ。」

 

 そういって俺は愛紗の方に微笑んだ。愛紗も俺の受け答えに満足がいったのか、俺の方を見て穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 そこまで聞くと霞は何かを見定めるようにじっと俺の瞳を見つめた。俺もそんな彼女をまっすぐと見つめ返す。すると、見合って数瞬、いきなりニカっと微笑むとそのまま華雄に向けてこう告げた。

 

霞「どうや?ウチはええと思うねんけど。」

 

華雄「まあ及第点といったところだな。だがそこから先はこれからの道のりで埋まっていくだろう。私もかまわないぞ。」

 

 どこか満足そうに言う華雄に霞も満足したのか、再び俺の瞳をじっと見つめてこういった。

 

霞「国を興すっちゅうなら武官は必要やろ。我が名は張遼文遠。真名は霞。ウチの真名と槍、あんたに預けるで。受け取ってくれるか?」

 

華雄「我が名は華雄。あいにく真名は預けられませんが、私の武も貴方にお預けいたします。」

 

 二人は俺の前で膝をついて臣下の礼をとった。突然のことに一瞬驚いたが霞の口調はともかくその面持ちは真剣そのものだった。華雄の方も真名を預けられないことには何か理由があるのだろう。その決心は本気のものと見てとれる。一度、愛紗の方に顔を向けると、愛紗は1度だけ、真剣にこちらを見据えてコクリとうなずいた。答えは決まった。俺もしっかりと向き直ってそれを受け止めた。

 

一刀「ありがとう。君たちの武、この北郷一刀が預かるよ。」

 

 そこまで言うと急に何かをこらえられなくなったのか、霞がガバッと立ち上がると愛紗の胸めがけて飛び込みぎゅっと抱きついた。

 

愛紗「お、おい、霞?!」

 

霞「これで愛紗ともずっと一緒やな♪これからよろしぅな、愛紗♪」

 

愛紗「こ、こら、そんなとこ触るなぁ!」

 

霞「ええやんええやん、ほれほれ〜♪」 

 

 なんだか桃色の空間が展開されていた。今までの雰囲気と打って変わって和気あいあいとしたものがこの空間に戻ってくる。俺が凄く前に見たことがあるような光景に茫然としていると、華雄が俺の横に立って慈しむような眼差しを霞に向けてこういった。

 

華雄「私も張遼も戦で家族や友人を失いました。それからはどちらも武一本で生きてきましたが、これから目指すべきものはなかなか見つけることはできませんでした。しかし、今仕えるべき主君を得て、さらに己の武しかなかった我らの前に超えたい壁も現われました。なので張遼も喜びを抑えられないのでしょう。かく言う私も今まで生きてきた中で最も大きな喜びに包まれています。どうか今日の所はあいつの所業にも目をつぶって下され。」

 

一刀「うん、元々霞の振る舞いについてはどうこう言うつもりはないよ。ちょっと驚いただけさ。そして華雄にそこまで言わせたからには俺も二人の気持ちに応えられるよう精いっぱい頑張るよ。」

 

華雄「それでこそ私が主と仰ぐ方です。あの人の元にいれば我らは今よりずっと強くなれる。我らはその武にてあなたの目指す道を切り開きましょう。」

 

 そういって愛紗を見つめる華雄の瞳にはゆるぎない決意と野心が見て取れた。華雄もいつか必ず武で愛紗を超えようと狙っているようだ。それを見た俺はこの二人の加入は天下に大きく近づくものと感じた。

 

 

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―あとがき―

 

 読んで下さって有難うございます。最近寒くなったり暑くなったりするので皆さんも体調には気をつけて下さいね!(迫真 前回名前は登場しなかった御二方の登場回でした。と言ってもバレバレみたいでしたけどね。(汗 霞さんの猫耳って可愛いですよね!文字にてあの可愛いさが表現できない自分が恨めしい!そしてもう1人は本編では残念ながら殆ど出番がなかった粥かゆ姉さんです。結構好きなキャラだったんですけど、殆ど描かれなかったので逆に色々いじれそうというのがありますね。

 

それでは、これからも読んでいただけるという方はよろしくお願いします!

 

説明
恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第3話になります。今回は前回チラッと登場したあの御二方の登場です。それではよろしくお願いします。
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コメント
クラスター・ジャドウさん それほどSS読んだことがあるわけではないのですが珍しいものなのですか。確かに体育会系の人ばっかですね(笑(Red-x)
…ふむ、外史に到着してから出会ったのが、まだ董卓に仕える以前の張遼と華雄だと言うのは、ちょっと珍しいかもしれない。しかし、まだ拠点を得ていないから大丈夫とは言え、三人共見事に武官だなぁ。愛紗はある程度は事務仕事も出来そうだが、一刀には及ぶまい。霞も頭はそれなりに回るが、その思考はあくまで武人だし、サボリ癖もあるしな。華雄は脳筋猪なので言わずもがな。…さて、この四人は果たして何処へ行く?(クラスター・ジャドウ)
かがんでですね、ご指摘ありがとうございました!(Red-x)
なるほどここで愛紗が一刀のこと再び「様」を付けることに。でもいきなり霞と華雄が一刀に仕えたら、いきなり董卓軍の将がコマ不足でいないな。(殴って退場)
愛紗がかかんで→愛紗が屈んで かな?(真山 修史)
これで愛紗ともずっと一緒やな♪ あの人の元にいれば我らは今よりずっと強くなれる・・・・・・ま、まさかそっちが本心!?一刀ェ・・・(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
いままで読んだことのない展開なので面白いです。二人は桃香と出会うのかが今一番気になります。(竜羽)
神速さんと猪さんゲットですね。丁度いいので二人の活用方法は某銀河帝国の疾風さんと黒色槍騎兵に倣えばいいでしょう。猪さんは同じような失敗もやらかしそうですが。(h995)
何だろう・・・・・霞と華雄が無印の愛紗と鈴々に見えて来た。 華雄のセリフが無印で愛紗が一刀に出会った時に言った言葉とどことなく同じなのが良いですねぇ〜。(劉邦柾棟)
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