覇道の意味
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「この邑も特に問題もありませんね」

「えぇ、私の領土で問題なんて起きて欲しくもないけどね」

春蘭、秋蘭と共にとある邑の視察に来ていた華琳は街並みを見渡し、満足そうに歩きだした。

「先日の賊軍討伐より3日ですが、もうここまで復興するとはな・・・」

「姉者、無駄な大立ち回りで家屋を無駄に壊したこと、忘れるなよ」

「う・・・、いや、あれはだな家屋の中から奇襲されてだな」

痛いところをつかれ、春蘭はどもりながら言い訳をする。

「別に良いわよ、けが人も無し、こうして復興も上手くいってるしね」

「華琳様・・・」

華琳の助け舟に春蘭は目を輝かせ、秋蘭はやれやれと頭を抑えていた。

「では、そろそろ引き上げましょうか」

「そうね」

 

邑の入り口に差し掛かった辺りで華琳は足を止めた。

「華琳様・・・」

「えぇ、尾行られてるわね」

「如何致します?」

華琳は軽く鼻を鳴らすと構わず歩き出した。

「構わないわ、こんなあっさり気取られるような輩に臆する事はないわよ」

瞬間、華琳に向かって高速で何かが飛んできた。

「ふっ!」

春蘭がそれを寸でのところで叩き落とす。

手ごろな大きさの石がごろんと転がる。

「何者だ!」

春蘭が怒鳴りつけると、近くの家屋の屋根から誰かが落ちたのが見えた。

「そこか!」

春蘭は一気に駆け寄り刃を突きつけた。

「な、子供!?」

春蘭の素っ頓狂な声が辺りに響いた。

 

華琳達は近くの茶店の一角を陣取り、子供を尋問していた。

「華琳様に危害を加えようとしたものを生かしておくんですか!?」

「姉者、落ち着け。相手は子供、話してわからん事はないだろう」

「そうね、それとこんな子供を切り捨てようものなら、それこそ私の風評にも関わるでしょうよ」

そんなやり取りを聞いて、子供は顔を青くしている。

「あなた、名前は?」

「・・・竜胆」

竜胆と名乗った少年はふいっと目を逸らした。

「貴様!華琳様が直々にお話しているのだぞ!その態度はなんだ!」

机を叩き春蘭が立ち上がった。

「姉者」

「春蘭、私が許可するまで口を閉じてなさい」

「なっ!?華琳様」

「聞こえなかった?」

春蘭はうなだれて席についた。

「何故、こんな事をしたの?」

華琳は極力優しく問いかける。

「・・・お前達のせいで、父ちゃんは死んだんだ」

途端、華琳の眉間に皺がよった。

「お前達が!ここで戦なんかしたから!」

「賊軍がここを根城にしていたのよ?それでも?」

「確かに生活は苦しかった、でも父ちゃんと一緒で俺は幸せだった」

「あなた個人の幸せのためにこの邑全体を見捨てろと?それこそ身勝手な話だわ」

竜胆は腑に落ちない様子で目を逸らした。

「あなたの父上はどうやって死んだの?我軍の兵には民間人に手を出すなと命令していたはずだけど」

「・・・流れ矢から俺を庇って」

「そう・・・、あなたの父上は私を恨んでいる?」

「決まってるだろう!戦さえなければ父ちゃんは死ななかった!」

竜胆の息がひどく荒くなっていく。

「そう、お気の毒ね」

「お前が言うか!」

「えぇ、あなたの考えが及ばないばかりに愚弄され続けてる、あなたの父上がね」

「なっ!」

華琳はそれだけ言うと席を離れた。

「どこに行くんだよ!」

「あなたもいらっしゃい、少しは父上の考えがわかるかもしれないわよ?」

秋蘭も驚いた様子で立ち上がった。

「都へ連れ帰るのですか?」

「春蘭、その子を担いでいける?」

「はっ!」

春蘭は暴れる竜胆を背中に抱え華琳の後を追った。

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「華琳、帰って来たって?」

「はい〜、お兄さんに話があるからすぐに来て欲しいそうですよ〜」

一刀は中庭で風から季衣と肉まん片手に報告を受けた。

「何かお土産でもあるのかな〜♪」

季衣は嬉しそうに跳ね回る。

「遊びに行ってた訳じゃないんだぞ」

そういって季衣の頭をなでる。

「いや〜、それが大層なお土産があるそうなんですよ〜」

「へ?俺に?」

一刀はきょとんとした様子で聞き返す。

「何だろう?風は知ってるの?」

「ぐー」

「寝るな!」

風の額にデコピンをお見舞いする。

「おぉ!まぁ、行ってみればわかる事かと」

 

「未だにこの空気は慣れないな・・・」

一刀は一呼吸おいて玉座に足を踏み入れる。

「華琳、話って・・・」

「貴様ーー!!」

「は、はい、すいません!」

(ってなんで誤ってんだ?俺)

しかし、室内を見渡してみれば怒号の矛先は自分ではない事に気づく。

「華琳様に向かってその口の利き方は何だ!」

「俺の勝手だろうが!」

(何だ、あの子?春蘭と互角にガン飛ばしあってる、すげぇな)

「一刀、遅かったわね」

「ごめん、話って何?」

「その子、名を竜胆と言うのだけれど、次の出陣まで預かってもらえる?」

「俺が!?」

「えぇ、お願いね」

余りにも急な申し出に一刀は混乱した。

「何で!?」

「そうね・・・」

華琳はざっと事の顛末を話した。

「命知らずな子だな〜」

「度胸だけならあなたよりも上よ」

一刀はちょっと傷ついた様子で引き受けた。

 

「次の出陣までと言われてもな〜」

「兄貴でいいかな?」

「ん?」

「兄貴って呼んでいいか?俺、兄弟が欲しかったんだ」

一人っ子の一刀も兄貴と呼ばれて悪い気はしなかった。

「あぁ、いいよ」

笑顔の奥で一刀は考えていた。

(出陣までって華琳は何をするつもりなんだ?)

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それから5日ほど立って、少数の盗賊が近くの村落を襲撃したと報告が入った。

「これくらいの相手なら大丈夫でしょう、珪花」

「敵は少数、且つ農民崩れ、この程度の相手に策はいらないでしょう」

華琳は満足そうに頷くと一刀と竜胆を呼びつけた。

 

「一刀、竜胆、今回は私について出陣してもらうわ」

「やっぱりか、こんな子供を連れて行ってどうするんだ?」

竜胆は一人押し黙ってる。

「それは一刀が知るところではないわ、あなたはついて来ればいいの」

「俺の弟、いじめないでくれよ」

「弟?」

「まぁ、気にするな」

一刀は肩を竦めて見せる。

「俺の村の時みたいに人を殺すのか?」

不意に竜胆が口を開く。

「あなたの父上の真意がこの戦で見えるといいわね」

竜胆の肩が震えている、一刀はそれを感じ取り声をかける。

「大丈夫だ、俺が守ってやるから、といっても逃げるくらいしかできんがな」

一刀は軽く笑い飛ばす。

竜胆の震えは収まる事はなかった。

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戦が始まり半刻ほどたったころ、華琳は竜胆に問いかけた。

「何かわかったかしら?」

「何にも・・・、わかんねぇよ」

人が死んで、人を殺して。

その最中に竜胆は逃げ惑う少女を見た。

「・・・あの子だって、戦さえなけりゃあ、お〜い、こっちだ!」

子供はおそるおそる竜胆の元へとやってきた。

「お前、父ちゃんは?」

少女は黙って首を横に振る。

「ほら見ろ!結局は不幸になる奴のが多いじゃないか!」

華琳は少女に問いかける。

「あなたは不幸?」

少女は首を横に振った。

「な、何でだよ!」

「この子はわかってるみたいね」

「私は・・・、お父さんが守ってくれて、・・・生き残れた」

涙を流しながら少女は言葉を続ける。

「だからお父さんに愛されてるって感じれた、・・・だから不幸じゃないの」

「そ、そんな・・・、じゃあ、俺は・・・?」

「過去ばかり、それも自分の都合のいい部分しか見てなかったのよ」

「う、うわぁぁああああ」

竜胆は発狂したように駆け出した。

「ば、そっちは!」

戦地のど真ん中に向かって行った。

「一刀!追うわよ!」

「おう!」

 

「何だ?この餓鬼、逃げ遅れか?」

竜胆は盗賊に囲まれていた。

「あっ、あ」

声が出ない、涙ばかりが流れる。

「どうせ、負け戦だ殺っちまうか」

男達は腹いせといわんばかりに騒ぎ立てる。

「それじゃな、小僧!」

刀が振り下ろされる。

ッガキン!

(・・・あれ?俺、生きてる?)

固く閉じた瞳をそっと開ける。

そこには盗賊の亡骸と返り血に染まった華琳の姿があった。

「大丈夫か!」

「あに・・・き」

緊張の糸が切れて気を失いかけた竜胆に背を向けたまま華琳は言葉をかける。

「確かに、私がやってることは万人すべてを幸せにはできない。でもね、戦で死んだ人たちの思いを受け継ぎ、それを守ることはできるの。この乱世を平定してあなたのような子供も出さない世を作って見せるわ。・・・だから、ごめんなさい」

そして竜胆の意識は闇に落ちた。

戦を終え、帰ってきた華琳は季衣に命じて竜胆の働き口を探させた。

そして竜胆の宮廷への立ち入りを禁じた。

 

「一刀、その後のあの子はどうなの?」

「問題なく、心配なら見に行けばいいのに」

「一人を特別扱いできるわけないでしょ?」

「素直じゃないな」

 

決して人に理解される道じゃないし、恨まれるであろう道

しかし、その先にあるのは何よりも輝く理想

曹孟徳の覇道とはそういうものなのかも知れない

説明
魏軍 華琳様メイン 楽しんでいただければ
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コメント
>ブックマンさん オリキャラって苦手だったんで実験してみたんですが、心が折れましたwww(瀬領・K・シャオフェイ)
竜胆は魏のいしずえになってほしいな(ブックマン)
ありがとうございます、展開を急ぎすぎた感があったので、もっとゆとりを持てればなと思ってました 自分の中の華琳様はこんな感じですw (瀬領・K・シャオフェイ)
Good!厳しく、優しい華琳がいいね!(ファビアン)
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