真・金姫†無双 #21
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#21

 

 

黄巾党最後の討伐遠征から帰還し、城内の仕事が落ち着いた後に開かれた飲み会の時の事である。

 

「ねぇねぇ、ますたぁ」

「どうした、雪蓮ちゃん」

 

地和の独唱をBGMに、それぞれが酒や俺の料理を楽しんでいる時の事である。冥琳ちゃんは穏ちゃん・雛里と真面目な話をし、亞莎は祭ねーさんに絡まれ、天和と人和が卓の間を忙しなく駆けまわっている間、俺は鍋の様子を見たり、串を焼いたりしていた、そんな時の事だ。カウンターにやって来た雪蓮ちゃんが、俺に話しかけてきた。

 

「こないださぁ、私と祭が酔っ払ってますたぁの部屋に突入しちゃったじゃない?」

「あぁ、そんな事もあったな」

「あの時ってさ、本当にヤるつもりだったの?」

 

赤ら顔で問いかけてくる。この酔っ払いめ。

 

「どういう意味?」

「ほら、亞莎はともかく、雛里はまだ小さいじゃない?」

「雛里ぃ、雪蓮ちゃんが、雛里の胸がぺったんこで憐れみ通り越して絶望したってさ」

「あわわっ!?雪蓮様酷いでしゅっ!」

「ちょっと、そんな事言ってないじゃない!」

「雪蓮様は、今月のお小遣いを減らしますので、そのつもりで!」

「そんなぁ!?」

 

雛里も強かになったものだ。そういや、財政は雛里んが握るようになったんだっけ。

 

「持つ者は持たざる者に与えよ。雪蓮ちゃん、ちょっと位そのおっぱいを雛里に分けてやってもいいなじゃないか?」

「怖い事言わないでよ……」

「雪蓮様の今月のおっぱいも減らします!」

「どうやってよ!?」

 

あぁ、雛里んも酔ってんのか。

 

「つーかお前らずるいよな。亞莎と雛里が入る前は、巨乳ばっかじゃん。亞莎たちと、ついでに地和と人和が可哀相だ」

『巨乳反対!』

 

反対…はんたい…はんたぃ……ハンタイ……

 

地和の怒号が店内に響いた。歌はともかく、私怨を術で拡大すんな。

 

「はやっ、私は別に……」

「私も、不便はない」

 

眼鏡っ娘たちは、謙虚だなぁ。

 

「眼鏡っ娘って、私ですかぁ?」

「おっぱいの大きい穏ちゃんは黙ってような」

 

余計な茶々が入った。

 

「大丈夫だよ、地和ちゃんも人和ちゃんも。お姉ちゃんの妹なんだから、すぐにおっきくなるよー」

『厭味にしか聞こえないわよ!』

 

聞こえないわよ!…きこえないわょ…きこぇなぃゎょ…キコエナイワヨ……

 

だからエコー掛けんな。

 

 

 

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話が進まないので、雪蓮ちゃんに戻そう。

 

「それで、あの時のがどうかしたのか?」

「だから、雛里は『身体』が小さいのに、やる気だったの?ってこと」

 

『身体』という単語を強調しやがったが、そんな事したって胸も含まれるがな。

 

「あー…まぁ、ゆっくり慣らしていけば大丈夫だろ」

「なに玄人っぽいこと言ってんのよ。童貞の癖に」

 

なに言ってんだ、コイツ。

 

「いや、俺、童貞じゃないし」

 

ガタタッ!!

 

俺の反駁に、みなが座っている椅子が揺れた。

 

「え…なに……?」

「どどどどういう事ですか、一刀さん!私というものがありながら、ほほ、他の女とだなんて!?」

「お兄ちゃん酷いっ!私が筆下しをしてあげる予定だったのに!?」

「雛里ちゃんったら、ちゃっかりしてますねぇ」

「おっぱいの大きい穏ちゃんは黙ってような」

「関係ないですよぉ!?」

 

おっぱいちゃんは放置するとして。

 

「え、一刀って恋人とか居たの?」

「こらこら、店ではマスターと呼びなさい」

「マスターは恋人とか居たの?」

 

誤魔化そうとしたら、しっかり言い直してきやがった。

 

「実はな」

「はやややややっややややっやややゃゃやややや――」

「あわわわわわっわわわわわゎゎゎっゎわわわわ――」

 

亞莎と雛里が奇声を発しながら絶望の表相を浮かべる。面白いのでこいつらも放置。

 

「へぇ、どんな娘?」

「どんな娘もなにも……」

 

言い淀みながら、俺は冥琳ちゃんに視線を送る。

 

「……何故、私を見る」

「いやいや」

 

冥琳ちゃんのジト目を受け流して、俺は焼き上がったササミ串を皿に乗せ、調理場から出て冥琳ちゃんの席に置く。そのまま彼女の隣に座り、そのなだらかな肩に右腕を回し、空いた左手でその細い((頤|おとがい))に優しく手を添えた。

 

「一刀…まさか……」

「マスターと呼べと……まぁ、いい。そういう事さ」

「「「「「ええええええええぇぇぇえええええええぇぇええええええええぇええええええええええええええっ!!?」」」」」

「はぁぁぁああああああああっ!?」

 

皆の、驚愕の絶叫が響き渡った。1名だけ、そのニュアンスを異にしているが。

 

「え、どういう事!?一刀と冥琳が!?」

「待て待て待て、一刀!何を言って――」

「俺も告白された時は吃驚したんだよ。城にいる時、冥琳ちゃんが夜部屋にやって来たんだ」

 

冥琳ちゃんの言葉を遮り、俺はその時の記憶を言葉に乗せる。

 

「あんな時間におかしいなとは思ったんだよ。で、その事を問えば、有無を言わさずに押し倒されてな」

「だからお前は何を言って――」

「そのまま朝までしっぽりと……なっ?」

「『なっ?』ではないっ!貴様、勝手に適当な事を――」

「寝取られた!なにヤダ悲しい!私の冥琳が寝取られた!!」

「人の話を聞けぇぇええええええっ!」

 

ま、嘘だけど。

 

 

 

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冥琳がそろそろブチ切れそうだったので、ネタバラシをすること数分。ようやく皆も納得してくれた。

 

「はややややや……」

「あわわわわわ……」

 

亞莎と雛里は壊れたが、まぁいい。

 

「なんだぁ、よかった……私の冥琳が本当に寝取られたのかと思った」

「ったく、冗談にしては性質が悪いぞ」

「悪い悪い」

 

言いながら、俺は再び冥琳ちゃんの頬に手を添える。

 

「いまのは冗談だけどさ、冥琳……」

「なんだ!」

「俺は、本当にしてもいいと思ってるよ?」

「っ!?」

「今夜、いまの夢を((現|うつつ))にしてみないか?皆が寝静まった後にでも……」

「―っ!?―――っっ!?」

「冥琳が頬を赤らめた!なにヤダ寝取られそう!本当に寝取られそう!」

「かっかっか!公瑾もそんな表情をするのだな。昔の純朴な頃を思い出すぞ」

「そこ、うるさいっ!」

「夢を…現に……」

 

涎を垂らしている穏ちゃんは、もいっちょ放置。

 

「一刀、お前は誰に対してもこんな風に口説いてるのか!?」

「だからマスターと呼べって。そんな訳ないだろ。仕事でやってただけだよ」

「はいはーい!仕事ってなぁに、お兄ちゃん?」

「姉さん、蚊帳の外だからって無理に入らなくても……」

 

天和が、反対側から抱き着いてきた。なんだ、ヤキモチか。可愛いなぁ、もぅ。

 

「そういう仕事だよ。女に一夜の夢を見させて、お金と時間を貰うお仕事。昔ちょいとやっててな」

「初めて聞いた!なにヤダ初耳!もっと詳しく!」

 

だって言ってないし。

 

「という訳で、俺は童貞じゃないのでした。オシマイ」

「恋人とかはおらんかったのか?」

「まー、そういう感情を持つ以前に、そっちの世界に入っちまったしな。考えてみれば、性体験はしていても、恋愛経験はしていないかもしれない」

「恋愛童貞だ!なにヤダある意味童貞!」

「黙れ、真性処女」

「「「「「はうぅっ!?」」」」」

 

しまった。雪蓮以外をも撃ち落としてしまった。

 

「祭ねーさんは普通だね」

「ま、儂もそれなりに人生経験はあるからのぅ」

 

大人のお姉さんは対応が違う。

 

 

 

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「なーんか騙された気分」

 

いつの間にか舞台を片づけた地和が、空いている席に座る。仕事はどうした。

 

「だって姉さんも人和も座ってるし」

「お兄ちゃんが優しくないから仕事する気しなーい」

「休憩時間」

 

マジか。

 

「騙されたって何だよ」

「だって、兄貴は命の恩人なのよ。最初は妹として大切にされていたけど、次第に抑え切れなくなる恋心。そしていつしか、2人は一線を越え……とか素敵じゃない?」

「あぁ、地和は俺の事が好きだったのか。ありがとう。俺も好きだよ」

「ばっ!そんな訳ないじゃない!自意識過剰ってもんよ!」

「えー?お姉ちゃんはお兄ちゃんの事好きだよー?」

「おう、俺も天和の事は好きだぞ」

「わーい」

 

可愛いなぁ、もぅ。

 

「ほらほら、冥琳。早くしないと、一刀が盗られちゃうわよ?寝取られるわよ?」

「何故私を急かす」

「だって、面白そうじゃない」

「ふんっ、くだらぬ。それよりも、私は一刀がそのような軽い男と知って、若干の軽蔑の念を覚えたよ」

「さっきはドキっとしてた癖に?」

「うるさいっ!」

 

雪蓮ちゃんも冥琳ちゃんをからかうのが好きだなぁ。

 

「それより一刀」

「ん?」

「そんな仕事して、自分は恋愛とかしてみたくならなかったの?中にはいい家柄の娘とか、可愛い娘とか居たんじゃない?」

「あー…否定はしないけど……」

 

雪蓮の問いに、俺はゆっくり考えながら、答えてゆく。

 

「けど?」

「俺ってさ、そういう仕事をしてた所為か、たぶん恋愛に向いてないんだよ。愛とか恋とかは理解出来るし、いつかはしたいと思うけどさ」

「じゃぁ、今すればいいじゃない。こんなに美人どころが揃ってるのに」

「皆が綺麗なのは否定しないよ。俺は相当恵まれていると思う。もしかしたら、この中から本当に恋人が出来るかも知れない。でも、少なくとも今は、この関係が心地いいんだ。可愛くて慕ってくれる妹が居て」

「えへへー、私の事だよねー?」

「私に決まってるでしょ!」

「姉さん達、喧嘩しないの……私の事?」

 

妹達(亞莎と雛里は絶賛気絶中)が寄ってきて。

 

「そんな俺たちの店で、楽しく過ごしてくれる美人の常連さんが居てさ」

「だってさ、照れるわね、冥琳」

「まぁ、な」

「祭様、美人って言われましたぁ」

「そういう言葉は、幾つになろうとも嬉しいものじゃな」

 

雪蓮ちゃん達も、照れた笑いを隠さずに。

 

「こんな状況が、俺は好きなんだよ。だから、今は恋愛よりもこの時間を大切にしたいんだ」

「「「「「……」」」」」

 

酒の所為もあるかもしれないが、皆が皆、顔を赤らめている。目元と口元も緩んでいた。

 

「――――とまぁ、こんな言葉で好意を簡単に得られるからな。別に恋愛に本気にならなくてもいいんじゃね?」

「「「「「…………………………は?」」」」」

「さーて、鍋の様子でも見るかー」

 

俺は立ち上がり、厨房に戻ろうとする。次の瞬間。

 

「――いってぇ!?」

 

俺の後頭部に何かがぶつかった。

 

「うぉい、何するん――――」

 

振り返れば、間髪入れずに徳利やら皿やら何やらがどんどんと投げつけられる。

 

「ひっどーい!信じたのに!お兄ちゃんを信じたのに!」

「この馬鹿兄貴!ほんっとムカついた!マジムカついた!」

「今のはないと思う……」

「一刀さん、酷いですぅ……」

「こんな儒子に……」

「貴様は何度人を虚仮にすれば……」

「騙された!なにヤダ悲しい!簡単に騙された自分が悲しい!」

「ちょ、まっ――」

 

皆がそこらじゅうにあるものを手に取り投げつけ、

 

「冥琳ちゃん、流石に串は危ない!料理道具は基本的に凶器だから!あ、置いてくれる?ありがとう!って椅子もヤバいから!鈍器と鋭器の違いは歩あるけど、同じくらいヤバいからぁ!」

 

俺は逃げるも厨房の酒瓶を庇わずにはいられず、

 

「ぎゃぁぁああああああああああああああああああああああっ!?」

 

ボッコボコにされるのでした。

 

 

 

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「あー…疲れた……」

 

酒を飲んで暴れるものだから、すぐに酔いが回ったらしい。あの祭ねーさんですら、卓に突っ伏して眠ってしまった。

 

「布団は数があるからいいが……俺の分はないんだよなぁ……」

 

妹達+αを居住スペースに1人ずつ抱えて運び、俺は店内に戻る。残すところもあと1人だ。あと1人なのだが――

 

「お疲れ様、一刀」

「なんだ、起きてたのか」

 

――そのラス1が、カウンターで普通に酒を飲んでいた。

 

「あれくらいで潰れる訳ないじゃない」

「祭ねーさんは潰れたぞ?」

「ほら、私は別に暴れてないし」

「あー……」

 

よくよく思い返してみれば、そうだったかもしれない。冥琳ちゃんが椅子で、祭ねーさんが卓で殴りつけ、穏ちゃんが徳利やら杯やらを投げ、天和と地和は皿を投げ、人和は倒れた俺を、串でチクチクと刺していた。うん、雪蓮ちゃんはたいして動いてないな。

 

「まだ飲んでるか?」

「そうしたいけど……なに、一刀も寝るの?」

「んにゃ、片づけ」

「あー……」

 

納得という風に頷く雪蓮の背後は。惨憺たる状況。

乱暴に扱われてグラつく卓と椅子を直し、無事な食器類を片づけ、割れた物はまとめて捨てる。料理のゴミも綺麗に拭き取り、後は食器を洗うだけだ。

 

「一刀、オツマミちょーだい」

「あんな目に遭った俺に対して、よく注文できるな」

「自業自得じゃない。それより、何かないの?」

「んー…煮込みが少し残ってるな。待ってろ、温めるから」

「はーい」

 

僅かに残っていた火を強め、再び皿洗いに没頭。鍋の残りも少なかった為、洗い終わる頃にはすっかり食べ頃になっていた。

 

「お待ち」

「ありがと」

 

小鉢に注いで出せば、美味しそうに食べてくれる。うん、この表情はいつ見てもいいね。

 

「洗い物終わった?」

「あぁ」

「じゃ、こっち」

 

言いながら、雪蓮ちゃんはカウンターの臨席をぽんぽんと片手で叩く。

 

「一刀ってば、料理ばかりで全然飲んでないじゃない。付き合ってよ」

「俺、そんなに強くないぞ?」

「一緒に飲むって状況が欲しいの。少しでいいから」

「へーい」

 

仕方なしに、俺は濡れた手を拭いて、カウンターまで周る。雪蓮ちゃんの隣に腰を下ろせば。杯に酒を注いでくれた。

 

「お疲れ様」

「ん、あんがと」

 

カチンと杯をぶつけ合わせ、それを呷る。喉から胃にかけて、一気に熱が通った。

 

「……ぷはっ」

「いい飲みっぷり。さ、もう1杯」

「あんま進めないでくれ……」

 

口答えはしながらも、断るつもりはない。これだけの美人の酌だ。酒が進むのも当然と言えよう。

 

 

 

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「――さっきの話だけど」

 

しばらく2人で飲んでいると、ふと、雪蓮が思い出したように呟いた。

 

「さっき?」

「えぇ、一刀が恋愛に向いてないって話」

「そんな話もしたな……」

「あれって……本当?」

 

どういう意味だ?

 

「そのままよ。本当に向いてないの?」

「言った通りだよ。やり方が分かってしまうっていうか……亞莎たちや天和たちが大事なのに変わりはない。求められたら、応える覚悟もある。こないだは、実際にそうだったしな。でも、『大切』とか『愛』のベクトル……方向性が違う気がするんだよな」

「恋をした事がないのに違いがわかるの?」

 

痛いところを突かれた。そりゃそうだ。自分で言ったんだし、恋愛を出来ないという証拠にはならない。

 

「……そういう見方もあるか」

「えぇ。でも、一刀はある意味恵まれてるのよ?」

「確かに、これだけの美人が周りに揃っちまえば、恵まれてないなんて口が裂けても言えないさ」

「そういう意味じゃない」

「ん?」

「私は……いえ、私だけじゃないわ。冥琳も、祭も、穏も、恋愛なんて出来ない。してはいけないの」

「どうして?」

「だって、私は王族。冥琳や穏も名家の娘。祭だって、孫呉の宿将。どうしても身分がついて回るわ」

「……」

 

言われて、ようやく思い出す。こうして仲良くなってはいるが、それでも彼女達は政治を動かす立場の人間なのだ。そこらの市井の人間が、おいそれと近づけるような存在じゃない。俺が、相当幸運だったって事か。

 

「特に私なんて、いずれは後継者を産まなければならない。それなりの身分の男でなければ、結婚も出来ない。出来ないなら、それはそれで構わないんだけど、そうすると、蓮華やシャオにだけその責を押し付ける事になってしまう。勿論2人も孫家の人間だから当然なんだけど、でも、やっぱり考えちゃうの……」

 

寂しげな瞳で、雪蓮は続ける。

 

「だからかな。そうなってしまう前に、本当に好きな人と結ばれたいって思うのは」

「……え?」

 

どういう事だ。俺が問う前に、雪蓮はこちらに身体ごと向き直った。それどころか、手を伸ばして俺の頬に添える事すらしてくる。

 

「雪蓮…?」

「一刀が思ってる以上に、私は貴方の事を気に入っている。……いいえ、『気に入ってる』なんて程度のものじゃない。私よりも優れた武を隠し持ち、冥琳や穏が認めるくらいの智を抱えている」

 

料理も美味しいし。最後に、軽く笑いながらその言葉を付け加え、そして再び、真面目な表情となった。

 

「貴方に軍に来て欲しいのは、それもあるの。例え民の出であっても、孫呉を導いていけるような働きをしてくれるならば、王の夫となっても不自然ではない。いえ、武を重んじる呉の地では、ある意味最も重要な資格にもなる」

「……」

 

雪蓮は潤んだ瞳で俺を見つめる。俺は、その視線から眼を逸らせないでいた。

 

 

 

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「一刀…」

「……あぁ」

 

雪蓮の端整な顔が、少しずつ近づいてくる。そのコバルトブルーの双眸が、俺の思考と身体を麻痺させる。

 

「私、貴方の為ならどんな事でもするわ?貴方が抱いてきたどの女よりも、本当の愛を貴方に贈る事が出来る」

「雪蓮……」

 

俺たちの顔の――唇の距離はほぼゼロとなる。それらが触れ合うか触れ合わないかとい最後の時に、雪蓮は呟いた。

 

「一刀、好き――」

 

 

 

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「うへへ…ダメよ一刀……そんなにがっついちゃ……」

「……」

「あっ…いきなりそんなとこ……」

「……」

「ふふっ…素敵だったわ……むにゃむにゃ」

「起きろコラ」

「――んがっ!?」

 

途中で起こし、欲求不満なまま襲われても堪らんので、とりあえず夢の中だけでも事が終わるのを待ち、俺は雪蓮の頭を叩く。スパァンと小気味よい音が鳴った。

 

「いてて……あれっ、私たちの新居は?」

「そこまで進んでたのかよ!?」

 

ったく、どんだけ妄想の進みが速いんだよ。

 

「なんだ、夢かぁ…残念」

「色々と言いたい事はあるが、とりあえず、こんなとこで寝ると風邪ひくぞ」

「……あぁ、あのまま寝ちゃったのね」

「いま上まで冥琳を運んできたとこだ。起きてるなら、自分の足で上がってくれ」

 

店内の片づけも終わったし、俺もさっさと寝たい。

 

「いや」

「あ?」

「一刀、抱っこ。お姫様抱っこ」

「なんで」

「だって、他の娘たちはしてあげたんでしょ?私もしてよ」

「……」

「……」

 

両腕を伸ばしたまま、雪蓮ちゃんは微笑む。女はズルい。そんな顔されたら、断れないじゃないか。

 

「はいはい。我が侭なお姫様だよ」

「でも抱っこしてくれるんでしょ?ありがと」

 

背中と膝裏に腕を挿しこんで抱き上げれば、雪蓮ちゃんは俺の首に腕を回す。

 

「――――これで最後だな」

「えぇ…」

 

最後の燭台の火を雪蓮ちゃんが吹き消せば、店内は完全な暗闇になる。とはいえ、少しもすれば、わずかに射し込む月の光に眼が慣れて来るのだが。

 

「ねぇ、一刀」

「なんだ?」

 

階段を一段ずつゆっくりと上がっていれば、腕の中のお姫様が口を開く。

 

「どこまでが夢だったのかな?」

「始点すらわからないのに、終点なんて余計にわからないよ、俺には」

「そっか…じゃぁ、現実にしちゃおうかしら」

「ん?」

「ほら、一刀の口説き文句。夢を現に、って。……してもいい?」

「……」

 

さて、寝言から大体の内容は想像がつくが、どうしたものか。

 

「皆も寝静まったし、一刀の言葉通りになったわよ?」

「皆が起きるぞ」

「声は我慢するわ」

「出来るのか?」

「一刀が抱いてくれるなら」

 

強情な女の子だ。だが、ここまで言われて断るなど、男が廃る。

 

「寝かさないからな」

「あら、楽しみね」

 

青白い光のなかで俺は微笑み、彼女にそっと、口づけた。

 

 

 

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「――――えへへー、可愛かったわよ、一刀」

「……」

「ホントに経験あるの?」

「……」

「あ、やっぱり?」

「……」

「一刀の童貞もらっちゃったぁ…へへー」

 

冥琳ちゃんを2階に上げて店に降りれば、なんともだらしない寝顔の雪蓮ちゃん。

 

「こんなので、よく王様が務まるな」

 

さて、この娘も運んでしまおう。

 

「よいしょ、っと……」

「あぁん、ダメよ、一刀……人参はともかく、大根はぁ……」

「どんなプレイだよ!?」

 

そんな、一夜の祭の後。

 

 

 

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あとがき

 

 

あんな展開のエロゲってあったよね。

 

 

とういか未だに大好き、一郎太です。

 

 

前回は、まさかオマケがあそこまでウケるとは思わなかった。

 

 

ぶっちゃけると、今回の雛里んは黒くしたくなかったのと、

 

 

マニュアルのくだりはなんとなく残したかったので、

 

 

急遽付け加えただけです。

 

 

何が流行るか分からないのと一緒で、何がウケるのかわかりません。

 

 

そんなこんなで、今日からまた1日1話を頑張っていこうと思うので、

 

 

適当に見てやってください。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

説明
お久しぶりです、一郎太です。

前回のあらすじ。

たった5行のおまけに対するレスが、全体の2/3に。

という訳で、今回も見切り発車。

どぞ。
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コメント
夢オチかよ(ほいほい)
儒子ではなく孺子では? まさかの夢のまた夢wwwwwwwwwww(スターダスト)
>>将軍様 雪蓮はたぶん登場ごとにそれを言うと思うんだ、今後も(一郎太)
>>summon様 さすがは元ホスト出身なだけあるんだぜ(一郎太)
>>アサシン様 最後から1つと2つ前のページ、かな……(一郎太)
>>デーモン赤ペン様 え、俺?俺は24時間妄想の中に生きてんよ(一郎太)
>>envrem様 ※ただしイケメ(ry(一郎太)
>>D8様 おひさです。頑張って可愛く描いてるんだぜ(一郎太)
>>一丸様 ふひひ、10日間もサボってたんだぜ。次の話上げましたよー(一郎太)
>>morikyou様 少しくらいおっぱい分けてあげてもいいのにね(一郎太)
>>駆逐艦 可愛そうだけれど、もう手遅れのようね、この病人は……(一郎太)
>>ロンリー浪人様 絶倫なら、あるいは……っ!(一郎太)
>>AliceMagic様 めーりんちゃんをいじるのたのしいれす(^q^)(一郎太)
>>本郷刃様 その気になればループで延々ページを稼げると思うんだ(一郎太)
>>神木ヒカリ様 いやいや、きっと冷蔵庫に入りきらないとかそっち方面だよ!どこに入れるとは言ってないし!このSSは全年齢対象だし!(←保険(一郎太)
>>nozomu様 寝言って聞かれたら恥ずかしい事言ってるんだろうね(一郎太)
>>狭乃 狼様 そう思った時点で、お前はもう夢の中にいるのだッ!(ジョジョ風(一郎太)
>>wakuwaku様 〇の中に入るのは? 1.う  2.ち  3.ま  いやいや、お気に入り頂きありがたいですぜ(一郎太)
>>きまお様 一郎太(、´・ω・)??┻┳?一・( Д)゚゚きまお  こうですね、わかります!(>_<)(一郎太)
>>MNF様 ふひひ、さーせんw(一郎太)
>>アルヤ様 起きたら朝なんだぜ(一郎太)
>>根黒宅様 でも前回のあとがきに書いたように、フラグをバッキバキにへし折っていくんだぜ?……あぁ、ある意味終わりかw(一郎太)
>>叡渡様 恋姫シリーズがあっという間に抜きゲーに!……あれ、元から?(一郎太)
>>T4号様 雪蓮ちゃんとのフラグをへし折ったんだぜ!(一郎太)
夢落ち2連チャンww 雪蓮の何やだ〜〜が定着しとるしwww雛里んがいい具合に壊れてる(将軍)
【審議中】 ( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )  【結論】パンチo-_-) 〇)゜Д゜)・;'. (ゆっきー)
夢オチ2連続とはw しっかし、一刀さんの話術すごすぎですね!(summon)
何処から!?何処からが寝落ちなんだーーーー!?(アサシン)
どこが夢でどこが現なのか・・・それはこの世界でも言えること・・・あなたは今、どっちにいますか?(デーモン赤ペン)
恋愛のやり方を熟知していて、なおかつそれを実現可能な男って危険すぎるじゃないですかエロゲー的な意味でwww それにしても夢オチ2連発で残念な雪蓮が可愛くてしかたないです(笑)(happy envrem)
お久しぶりでございます。夢オチ2連続とはwwみんな可愛いなぁ。(D8)
久しぶりの更新お疲れ様です。そして、皆さんの感想にもありますが・・・夢落ち二連発ww・・・というか、雪蓮可愛い><・・・大好きな恋姫なので、余計にです。・・・ではでは、続きを楽しみに待ってます。(一丸)
結局、どこまでが夢かわからなくて、何度も読み直したのはボクです← とりま、妄想雪蓮さまがかわいい!(神余 雛)
夢オチとはwww雪蓮は乙女やなぁ、そしてひなりんはかわいい^^(morikyou)
巨乳は要らん帰れ! 貧乳万歳! ひなりんハアハア(駆逐艦)
ちょwww読者まで騙すとか一郎太さんマジ策士wwww  雪蓮は結婚しても旦那とはイチャイチャ出来ないと思う(性癖的な意味で)(ロンリー浪人)
夢オチ二連発www顔真っ赤なめーりん可愛いよめーりん!(Alice.Magic)
夢オチ2連ってどんだけだよwww(本郷 刃)
夢オチ2連発とか予想外ww しかし夢の中の雪蓮はマニアックだな。(神木ヒカリ)
二段階の夢オチとは……最後の雪蓮の事後っぽい会話は寝言だったとはwww(nozomu)
どれが夢で現実かもう分からない( ゜д゜)(狭乃 狼)
〇んことくらそう、恐ろしくキャラ立ちした主人公でしたね。それとこの小説どっちも好きですよ〜(wakuwaku)
うp主に何があったw純情な妹を騙すんじゃないw(、´・ω・)??┻┳?一・( Д)゚゚(きまお)
騙された。( ゚Д゚)ポカーン(M.N.F.)
起きたときの雪蓮の反応が楽しみだwww(アルヤ)
玄人一刀だと? 恋姫世界がマジでやばくない?(根黒宅)
まさかの夢オチ2連発…雪蓮ちゃんの残念さに泣けてきますね…(T4号)
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真・恋姫†無双 一刀 亞莎 金姫 可愛いなぁ、もぅ。 かしこかしこまりましたかしこー。 こんな展開のエロゲあったよね 

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