真・金姫†無双 #35
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#35

 

 

あけぼの時。朝日が顔を出し始めた頃、見張りのローテに入っていた部下に起こされた。

 

「――――どうした」

「へい、虎牢関より、張遼将軍がお会いになりたいと」

「ナイス・タイミング」

 

開戦してからじゃ遅すぎるからな。

 

見張りの部下を労い、俺は地面で丸くなっている副社長を起こしにかかる。

 

「おら、起きろ、波才」

「んにゅ…あと3刻ぅ……」

 

長ぇよ。朝どころか昼に差し掛かっちまうよ。と言う訳で。

 

「おらぁっ!」

「んにゃぃっ!?」

 

朝一番の乳を揉んでみたり。

 

「ほらほら、起きないと指が山頂に到達しちまうぞ」

「んっ、やっ…起きます……起きますからぁ!」

 

朝〇ちの所為で、ちょっとだけエロ方面に走ったり。

 

 

 

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で、虎牢関に入る。張遼って人はなかなかに頭が切れるらしい。すぐに俺たちを捕らえようとしなかったのが、その証左か。

 

「お招きいただき、ありがとうございます」

「ま、楽にしぃ」

 

あるいは、自分の武に絶対の自信を持ってるか。

 

「時間も惜しいから、率直に行かせてもらうで。質問は2つや」

「どうぞ」

 

だって、眼が怖いし。

 

「一つ、自分ら、何処の軍から抜け出してきた。

 二つ、何が目的や。

 これに答えてもらわな、対応も決められん」

 

ギャグに持っていく事も可能っちゃ可能だが、そうすると収拾がつかなくなるので真面目にいく。

 

「まず一つ目。我々は、軍の人間ではありません」

「……はぁ?」

 

おっと、度肝を抜いてしまったようだ。

 

「我々は商隊の人間です」

「商隊……って、商人なんか!?」

「そうですが?」

「なんで商人なんかが……」

 

そいつは2つ目の質問とかぶってるぜ?

 

「二つ目の答えですが、至極単純です。我々は商人。なれば、商売の為に動くというもの。今回も、それが理由です」

「商売て…いや、それは今はえぇ。それを示す証拠は?」

「証拠になるかは分かりませんが……波才」

「はい、社長」

 

俺は波才に促す。波才は懐から竹簡を取り出し、張遼さんに渡した。

 

「どうぞ、目を通してください」

「……んじゃ、読ませてもらうで」

 

さて、どっちになるのかにゃー。

 

 

 

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竹簡の中身は、董卓ちゃんとやらから張遼さんに送られた文だ。簡単に説明すると、俺たちの協力の申し出を受ける事と、その対価について。

張遼さんは2度ほど竹簡を読み直し、パタンとそれを閉じた。

 

「……確かに、董卓様の文字によぉ似とるわ。よくこんなん準備できたな」

「という事は、信じる事は出来ないと」

「せや」

 

ま、そうだよな。だから、俺は奥の手を出す事に。

 

「波才、お前が董卓様に会った証拠を示してみろ」

「アタイっすか!?……まぁ、いいですけど」

 

俺の指示に、波才は張遼さんに向き直り、口を開いた。

 

「そっすね…董卓さんの口癖が、『へぅ…』って事とか、どっすか?」

「……なんで知ってんの?」

 

眼を見開いた張遼さんが可愛かったです。

 

 

 

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どんな証拠だよと思ったが、張遼さん曰く、董卓の軍師である賈駆は、董卓を出来るだけ表に出したくなかったとの事だ。何かあれば、自分を董卓に見せかける事もしていたらしい。つまり、董卓を目にしても、それが董卓本人であると知らせる事はしていなかった。

 

「でも詠が、まさか自分らからの取引を受けるとは思わんかったわ」

「そりゃ、いきなり商人が手伝うなんて言い出しても、信じやしないっすよね」

 

それなのに董卓の口癖を知っているとなると、これはもう信じるしかないと決めてくれたのだ。

 

「で、そっちの兄ちゃんは北郷、言うたか? 自分、孫策より強いらしいやん」

「まぁ、何度か勝負を挑まれてますので」

「あぁ、もう口調なんか気にせんでえぇて」

「あ、そう? 俺はもともと長沙に店を構えてんだが、孫策ちゃんはうちの店の常連でね。そんで、酔っては勝負を吹っかけられてたんだよ」

 

俺の言葉に、張遼さんはニヤリと口角を上げる。その瞳に浮かんだ悪戯な光を、俺が見逃す筈もなく。

 

「おいおい、勘弁してくれよ。この後も戦わないといけないんだぜ?」

「わかっとるなら、話は早い。さっさと行くで、北郷!」

「あぁぁぁぁ……」

 

結局、襟首を掴まれて、関の外までずるずると引きずられていくのだった。

 

 

 

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「――――ま、予想はしてたんだけどね」

「時間もないし、ちゃっちゃと初めてちゃっちゃと飯にしようや」

 

虎牢関を挟んで連合の反対側。俺は張遼さんと対峙させられていた。向こうが持っているのは、偃月刀。そういや、関羽ちゃんも偃月刀使ってたな。

 

「いやいやいや、勘弁してくださいよー。俺って低血圧だから朝はキツイんすよー」

「知らんわ。さっさと得物構えぇや」

 

両手を空に向けて肩を竦め、首を振る。勘弁してくれよー。

 

「じゃぁさ、一発勝負にしない?」

「一発?」

 

だから、俺は楽な方向に走る。

 

「張遼さんって、『神速の張遼』なんて二つ名があるんだろ?」

「せや。いつの間にかそう呼ばれとったし、ウチも気に入ったから受け入れとるけどな」

「だから、張遼さんの本気を、俺がきっちりと躱すか止めたら仕合は終わりにしよ。張遼さん程の腕だったら、それだけで俺の実力はだいたい掴めるだろ?」

「へぇ? 面白い事言うな、自分。なんや、ウチの本気の一撃を捌ける言うてるように聞こえるで?」

 

顔は笑ってるのに、眼は笑ってない。怖いよー。だけど。

 

「そう言ってんだよ。自分が言ったんだろ? ちゃっちゃと終わらせようぜ」

「舐めた口きくなや。死んでも知らん……でっ!」

 

張遼さんが飛び出してきたが、ま、こうやって挑発に乗らせりゃ、楽に捌けるだろ。

 

 

 

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そう思っていた。

 

おいおい。

 

だが、見当違いも甚だしい。同じ偃月刀使いなのに、関羽ちゃんとは精神力に差があるようだ。怒りに任せて攻めて来たかと思えば、その眼は冷静に俺を見据えている。

 

「社長!」

 

うるせぇよ、波才。商売の為なら、俺はなんだって出来るんだぜ?

 

「もろたぁっ!」

 

胸元に迫る偃月刀。体幹のど真ん中を僅かにも外していない。こりゃ凄ぇ。でもな。

 

「俺の勝ちだな」

「えっ――」

 

俺は、背に回していた右腕を振るう。その手には、いつもの逆手ではないクナイ。それを、

 

ガギンッ!!

 

力任せに、偃月刀の刃に打ちつけた。あと少しで俺の服にかすろうかという位置にあった偃月刀は、その軌道を逸らして俺の身体からも外れていく。

 

「まだやっ!」

 

だが、そこは流石の張遼さんだ。すぐに体勢を持ち直し、返す手首で俺の横腹を狙いに来る。だけど。

 

「おしまいだよ」

 

刃が、俺の服の脇腹に触れるか触れないかの位置で、ピタリと止まる。

 

「なんで、得物しまった?」

 

視線だけで殺されそうな眼で、張遼さんが睨んでくる。だから怖いって。

 

「最初に決めただろ? 張遼さんの本気を、止めるか躱すかしたらお仕舞だって」

「……」

「別に、これで張遼さんに勝ったなんて思わないさ。でも、俺の実力を知るには十分じゃないか? さっきも言ったけど、張遼さんなら、これだけで大体の力量は計れただろ?」

 

俺の言葉に、張遼さんはガシガシと頭を掻く。

 

「なんや、まいったわ。確かに、最初に取り決めたな。えぇで、アンタを認めたる。ウチの真名は霞や。これからはそう呼びぃ」

「ありがと。俺の真名は一刀だ。よろしくな」

「ん。それから波才、アンタにも預ける。しっかり働いてぇな」

「はぃっ! アタイに真名はないので預けられないのが残念ですが、しっかり働かせてもらいやす!」

「えぇ気概や」

 

さて、そんじゃ。

 

「朝飯を作りに行くぞ、波才」

「うっす」

「なんや、飯も作ってくれんの?」

「店を構えてるって言ったろ? 少しでも士気が上がるなら、そんくらいはやるのさ。霞たんも待っててくれ」

「おぅ、楽しみにしとるで!」

 

俺たちは、朝食の準備をしている部隊の下へと向かう。

 

「……霞たんっ!?」

 

反応遅いなぁ。

 

 

 

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おまけ

 

 

作題『時々』

 

 

 

 

http://upup.bz/j/my79034LznYt37Xd6jdLbnE.png

 

 

 

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あとがき

 

 

という訳で、#35でした。

 

 

絵をあぷろだに変えたけど、考えたら3ヶ月でリンク切れちまう。

 

 

…………

 

 

……ま、いっか。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 

説明
そんなこんなで#35。

今回も割とマジメ。

どぞ。
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コメント
>>かぐ様 次回も反応の遅いあの娘がいじられるんだよ(一郎太)
>>yosshiosumaru様 でも次回はその本命がないんだよ(一郎太)
>>更夜様 霞たんも、一郎太のなかではトップ10に入ってるんだよ(一郎太)
>>ロンギヌス様 可愛いだろう?(一郎太)
>>観珪様 よねや?(一郎太)
>>アルヤ様 でも可愛い世ね(一郎太)
>>envrem様 ま、ギャグだからな(一郎太)
>>AliceMagic様 リアルでいたらしばきたくなるけどな(一郎太)
>>ヒトヤん ……微妙だな(一郎太)
>>一丸様 ……ギャグがほとんどないと思うんだよ(一郎太)
>>きまお様 可愛くないから却下なんだよ(一郎太)
>>本郷刃様 でしょー?(一郎太)
>>D8様 これほど明確な証拠もないだろう(一郎太)
>>summon様 柔らかくていいよねー(一郎太)
>>MNF様 可愛いだろう?(一郎太)
>>とことん様 アサシン様 あれだよ、ホラ、おまけを打ち間違えたんだよ(一郎太)
面白い 霞たん反応が遅いwww (ほいほい)
おまけ? いやいや、そっちが本命でしょう    しかし、へぅ・・・はすごいなw(yosshiosumaru)
霞たんwww(ロンギヌス)
なんでもかんでもかわいく呼んでしまうのが一刀くんクオリティww はっちゃんは特別な訓練を受けているんですよねや?ww(神余 雛)
後ひとつ進言しますがリンク切れがあるならその期限を併記しておいたほうが良いかと。(アルヤ)
性格を鑑みたらどこから出てきたってあだ名だからな、そりゃ反応も遅れるわwww(アルヤ)
「神速の張遼」の名が泣きますよそんな鈍さじゃwww それにしても「へぅ・・・」の説得力は凄まじいですな(笑)(happy envrem)
「へぅ・・・」は特徴的だからねぇwww(Alice.Magic)
なら俺は「ヒトヤん」で!!(親善大使ヒトヤ犬)
うむ!波才が可愛い!!・・・まじめの回なのに、ところどころで見受けられるギャグが良い味出してますねえ〜〜〜・・・さてはて、まじめ回が続いてますけど、しばらくはこのままなのかな?それとも、そろそろギャグ回に?・・・・続き楽しみに待ってます。(一丸)
うぐぅ!あうー!だがや!口癖は偉大なり・・・。霞たんかあ。ならうp主は「一郎太ん」で!!(きまお)
はっはー! 『へぅ…』は十分すぎるほどの証拠だぜ!(本郷 刃)
霞たんwwまさか「へぅ」が証拠になるとはww(D8)
霞たんって呼んじゃうとか、さすが一刀さんですねーというか、はっちゃんの起こし方w(summon)
↓↓ほんとだ『あまけ』だ、・・・・・・・・張遼たん♪wwwwww(アサシン)
絵に関してはもはや何も言うまい・・・oh...(M.N.F.)
あまけ?(とことん)
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真・恋姫†無双 一刀 金姫 かしこかしこまりましたかしこー 可愛いなぁ、もう。 こいつぁ、流行るぜ! 

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