故郷の記憶 〜ソードワールド・西部諸国シアター 投稿原稿1
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新規設定

 

・命晶石

形状:赤色の握り拳大の水晶

魔力:抵抗ロールを行うとき、1点の消費につき1点、生命力抵抗値と精神力抵抗値を上昇させることができる。この水晶は霊体を吸収しやすく、吸収された霊体は水晶に封印される。負の生命を持つ霊体は封印されている間、1年に1回精神力抵抗ロールを行い、失敗すると精神点の上限が永遠に1点失われる。これはこの水晶が強い正の命の精霊力を持つためである。よって、レイスはこの影響をうけない。命晶石の点数が0点になると、水晶は崩れ封印されていた霊体は(精神力ボーナス)年間浮遊霊となる。

追加:この水晶を媒介に霊体は憑依を行うことができる。ただし、霊体の行動が犠牲者の意思に強く反した行動を行おうとする場合、犠牲者の精神力抵抗ロールの値を目標に精神力抵抗ロールを行う必要がある。これに失敗すると犠牲者は自らの心を取り戻してしまう。また、この水晶による憑依はエンチャンターによる束縛ににており、神聖魔法を使うことが可能である。なおレイスも憑依を行うことができるようになる。

 

・ソウル・マテリアル(呪歌)

効果開始:瞬間

効果:精神点が0以上の時、目標が抵抗に失敗すると1ラウンドごとに(レーティング0+呪力)点の精神点を失う。それと同時に同じ点数の魔晶石が呪者の前に現れる。歌を続けかつ目標の精神点が残っている限り、魔晶石は成長を続け、その点数を増していく。

   精神点が0の時、目標は歌を聴いているラウンド毎に抵抗ロールを行い、失敗すると(レーティング0+呪力)点の生命点を失う。それと同時に同じ点数の命晶石が呪者の前に現れる。このとき激痛を伴うため、例外的に精神点0でも気絶しないが、能動動作はできない。抵抗に成功すれば呪歌の効果を離れ気絶する。

   なお、精神点ダメージ、生命点ダメージ双方とも冒険者レベルで減少させることができる

説明:他系統の魔法で代替可能なことが多い呪歌が無限の魔力が存在した古代王国末期に生き延びることができたのは通過である魔晶石が呪歌でしかできなかったためである。

 

・シール・フィールド(古代語魔法8レベル)

基本消費:40 距離:5メートル 範囲:半径1mの空間

持続時間:永遠 種別:遺失、目標値 拡大:範囲面積

効果:ある空間をマナのフィールドで包み、その中のマナの動きを封じる。このフィールドの中では古代語魔法を使うことができなくなり、魔法の品物もその効果を発揮できない。意思を持った魔法の品物は眠っているのと同じ状態となる。解除されれば即座に通常空間にもどる。外部からかけられた魔法も内部の物体には効果をおよぼさない。

 

・バシリスク・アイズ(毒、接触/魔法)

効果:表面を石化させる

毒性値:− 知名度:17 効果開始:即座

持続時間:永遠

説明:白色のガス。このガスは命の精霊力を持つものの周囲を石化させる能力をもつ。石に包まれた箇所は簡単にはがすことが可能だが、素肌を包まれた場合激痛を伴う。このガスに全身を包まれ6ラウンド過ぎると、全身の表面がすべて石化し窒息する。これ以降息を止められる時間についてはルールを参照。キュア−ポイズン、レストアヘルス、リフレッシュなどで石化を取り除くことは可能だが窒息死した後に行っても生き返らせることはできない。非常に拡散しやすいため、大量に大気中に放出されると非常に危険。このガスはその名前の通り、バシリスクの視覚組織から作成される。

 

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登場人物

 

・リザルード=ゲイヴィン(リザン) 人間:男

 海神ミルリーフを解放してしまったという理由から、オランをでて旅を続けている。その目的は危険な古代の産物を破壊、もしくは無効化することである。彼は古代王国期のソーサラーの意識が宿った杖『エルドース』を所持しており、古代王国期の知識も豊富である。今作では、『化石の町』でおこった惨事の原因を調べ、それを無効化するためにタイデルを訪れた。

技能:ソーサラー8 セージ6 ファイター2

 

・アスリール=リィズィア 人間:女

 ラムリアースの良家の娘、魔法の品物を元の遺跡に戻すことに一生を費やそうとしている。呪われた護符により、リザンに襲いかかってきたところを助けられた。彼女の目的の原因はかつて飼っていた水晶でできた小鳥にある。この小鳥は意思をもっていて、彼女の話し相手となっていた。ついにその魔力が切れたとき、彼女に伝わってきたのは古代王国の情景であった。彼女は小鳥が故郷に帰りたかったと解釈する。それ以来、彼女はすべての存在が故郷に帰りたいと願っており、またそうなることが当然と考えるようになった。護符に呪われる前は、魔法のフルートを遺跡に返すためにタイデルを訪れた。

器:12 敏:19 知:20 筋:12 生:16 精:17 魔力:古代語(7) 呪力:10

技能:セージ7 バード5 ソーサラー4

呪歌:ララバイ、レストア・メンタルパワー、ヒーリング、サモン・スモールアニマル、マーチ

 

・エルドース 男

 リザンの持つ黒い杖、先端に赤い水晶がついている(死せる神の島、口絵参照)それが命晶石で、エルドースという古代王国期にレイスになってしまったソーサラーを封印している。専門は召喚魔法。

 

・ティフィリィ 女

 アスリールの持つミスリル銀のフルート。自らレイスとなり、命晶石に吸収されることを選んだ。専門は付与魔法。

知:23 精:20 精抗:12 魔力:古代語/神聖(12/8) 呪力:11

技能:ソーサラー9 セージ8 バード8 プリースト5(マーファ)

呪歌:モラル、マーチ、レストア・メンタルパワー、サモン・スモールアニマル、ヒーリング、

   ピース、ララバイ、ソウル・マテリアル

 

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本編

 リザンは前述の理由で、タイデルの『化石の町』にいこうとしている。町まであと1日程度まで来た晩、リザンが野宿をしていると、一人の女性が襲いかかってくる。その女性を『スリープ・クラウド』で眠らせたリザンは、『エルドース』の助言により、この女性が魔法の品物によって操られていたことに気づく。『センス・マジック』を唱えると、女性の全身が光で包まれる。女性は体中に魔法の品を身につけていたのだ。リザンはとりあえず女性の身につけた魔法の品をすべて取り外す。最後にミスリル銀のフルートをとろうとしたとき、地面に置いておいた『エルドース』に足を引っかけ転んでしまい、『エルドース』は弾かれ、女性が背負っていたフルートに当たる。一方リザンは女性の上に倒れこみ、それによって女性は目覚め、悲鳴をあげリザンを突き飛ばす。

 

 なんとか誤解を解いたリザンは女性の話を聞き、女性が身につけていた護符が、自分が襲われた原因と理解しその護符を破壊しようとする。女性はそれを止め、護符を布で丁寧にくるむと自分の服にしまう。女性の名はアスリールといい、自己紹介をすると、リザンにも自己紹介を促す。リザンは自分の名前のみを告げる。アスリールは出身地を問うが、リザンは自責の念から故郷を捨てたという。アスリールは悲しげな顔で、傍らの『エルドース』をとりあげ、前述の小鳥の話をする。リザンもまた哀しい顔をして言う。「僕は許されない罪を犯して故郷を捨てたんだ。」その言葉に、アスリールは『エルドース』をなでながら「どんな罪人にも最後まで開かれているのが故郷なのよ。」といい、前述の目的を話す。アスリールが寝てしまってリザンが夜の見張りをしていると、『エルドース』が話しかけてくる。オランを出たときにどう思ったかを問うその言葉に、リザンは応えずただ、「故郷が恋しくなってきたよ。」とつぶやく。『エルドース』は「故郷がなくなってしまったものはどこに帰れるのだろうな」とつぶやいた。リザンは何も答えない。

 

 翌朝、アスリールより少し遅れて出発したリザンは『化石の町』に入るが、人の気配を感じる。町の中心に近づいていくと、大きな建物が見えてくる。ふと気づくと一人の女性が中へ入っていこうとしている。アスリールだった。声をかけようとするリザンを『エルドース』が止める。リザンは『エルドース』の意見でアスリールを尾行することにする。アスリールはどんどん建物の内部に進んでいく。その迷いのない歩みにリザンは疑問を持つ。やがて、アスリールは地下室に降りていきリザンもその後を追う。途中、二人はバシリスクの大群にであるが、アスリールはその中をどんどん進んでいく。『コンシール・セルフ』で気づかれないように通り過ぎたリザンはさらに疑問を深める。「なぜ、彼女はバシリスクに襲われない?」『エルドース』が舌を打つ。

 やがて広い部屋にたどり着くと、そこには大きな机と機械が置いてあり、机の上にはノートの山とフルートのケースが乗っている。アスリールは開かれたままのそのケースにフルートをしまおうとするが、急に動きを止める。一瞬の後、彼女はフルートを背負い直し、机の上のノートをあさり出す。『エルドース』はうめくと、リザンに彼女が操られているのではないかと言う。『エルドース』は昨晩接触したフルートがエンチャンターの品物であったという。そしてアスリールが支配されているように見えなかったため、すでに調服しているのだと思ったと付け加える。アスリールはノートをあさり尽くすと、大きな機械のところへ行く。この機械は冷蔵庫のような形をしていて、扉が一つついており、アスリールがその扉を開けると中から白いガスが吹き出す。アスリールは中から素早く握り拳大の意思を取り出した。石を持ったアスリールの手は石化しているように見えたがアスリールが何かを唱えるとすぐに元に戻った。その石をみて『エルドース』がつぶやく。「ティフィリィ・・・」

 

 時は今から五百五十年ほど前、王宮の研究員だったエルドースは魔法王の命令で魔精霊アトンの調査を行った。彼は生身でアトンに近づく危険を避け、『レイス・フォーム』の魔法でレイスとなり、アトンに近づいた。しかし彼は周囲の精霊ごと、アトンに食われそうになる。やっとの思いで逃げ出したときには日はもう昇る寸前。元の体に戻るには遅すぎた。ここで消滅することも考えたが、エルドースは自分の任務を思い出し生きることを選ぶ。近くにあった岩陰で次の夜まで待ち、彼は王宮に飛んだ。

 報告を受けた魔法王は彼を哀れに思い、彼を造貨局の中にいる女魔術師の元に連れて行く。女魔術師は彼を赤い水晶に封じ、その水晶と黒い杖を組み合わせ蛮族の青年に与えた。すると青年は『エルドース』となり、彼は再び人間の生活を送れるようになった。女魔術師は言う。「これであなたは自分の家に帰れる。」不思議そうな顔をする『エルドース』に魔法王は言った。「彼女は魔晶石を作り出すことができる。だからここから出すわけにはいかないのだ。」

 数年後、ある女魔術師が造貨局を逃げ出した。その女魔術師の名はティフィリィ、『エルドース』を助けた女性だった。

 

 アスリールが石をハンマーでたたくと、中から赤い輝きが見える。『エルドース』はアスリールを操っているのが『ティフィリィ』だと確信し、それをリザンに伝える。そしてつぶやく。「アスリールにはどうしても聞きたいことがあるのだ・・・」それを聞き、リザンは昨晩の会話を思い出していた。

 リザンはついにアスリールの前に姿を現し彼女の体を返すことを要求する。しかし『ティフィリィ』はそれを拒否、戦闘になる。『ティフィリィ』は呪歌『ソウル・マテリアル』を中心に戦いながら、バシリスクを呼ぶ。リザンはアスリールの体だと思うと攻撃できず、主にバシリスクと戦い、すべてのバシリスクを倒すが、魔晶石は尽き、精神点も呪歌と魔法使用のせいでボロボロになる。

 『エルドース』はこの状況に、自分をアスリールに触れさせるよう言う。リザンはやっとの思いで『エルドース』をアスリールに触れさせると、精神力が尽き気絶する。『エルドース』はアスリールに意識を強く保つよう呼びかけつつ、『ティフィリィ』にアスリールの身体を束縛する理由を聞く。『ティフィリィ』は「罪を償うため・・・」と答える。

 

 ティフィリィは逃亡生活からいろいろあった末、故郷に戻る権利を正式に得て故郷の町に戻ってきた。そこで命晶石の研究を再び始めたが、ある日、彼女が街を開けている時に命晶石の表面を石化し、霊体の侵入を防ぐ保存装置が壊れ、中の強力な石化ガスが漏れてしまった。彼女が街に戻った時にはすでに手遅れで街は全滅していた。自分は取り返しのつかないことをしてしまった。彼女は死を選ぼうとしたが、それが自分を楽にするだけと気づき、永遠を何もせずに生きる事を選ぶ。自らレイスとなり、命晶石に封印された彼女だったが、封印された状態では永遠を永遠と感じなくなってしまうことに気づく。彼女は当時奴隷階級だった魔力の使えない蛮族を待った。人間になり永遠の苦痛を味わおうとした。やがて人間はやってきたが、その人間は強く、彼女に支配することはできず、外の世界へと出て行った。そして今、支配できる身体をもって、彼女は故郷に戻ってきたのだった。

 

 『エルドース』は問う。「では今犯している罪を・・・この女の一生を奪うこの罪をどうやって償うつもりなのだ・・・。」『ティフィリィ』は言葉に詰まり、その瞬間アスリールが『ティフィリィ』の支配を破り、フルートを手放す。『エルドース』はかすかな声でつぶやいた。「支配を破られ、蛮族の中で生きて・・・私も甘くなったものだ。」『エルドース』についている命晶石が静かに割れる。

 

 リザンは気絶している間、『エルドース』を通じて今までの会話を感じていた。リザンは自分と同じ立場の『ティフィリィ』に同情する。「自分を責めるのはやめて・・・もう眠りなさい。」リザンはそう言い、マナを遮断する特殊なフィールドをフルートの周りに展開すると、ノートの山をあさり出す。するとすぐアスリールから声がかかる。「貴方にもそれはいえることじゃないかしら。」リザンはノートの山から顔を上げて言う「確かに故郷はいいものだ。でも世界に一人くらいそれを持たないものがいてもいいではないか。」理由を聞くアスリールに答える。「『エルドース』や『ティフィリィ』の故郷は時空の彼方だ。故郷を持たない彼らの仲間が今の世に一人くらいいてもいいじゃないか。」ノートをきれいにまとめ、片付けると彼は言う。「『エルドース』はしばらく浮遊霊となる。でも記憶を取り戻したとき、きっと仲間のところへ、故郷へ帰りたいと思うだろう。僕は・・・僕は彼らの故郷になりたい。」

 

 リザンは考え込むアスリールをみやり、保存庫の中から石化した命晶石を一つ取り出すと、黒い杖をもって去って行った。リザンがこの悲しみの『化石の町』ですることはもう何も残っていない。

説明
過去に、富士見書房のドラゴンマガジンで行われていたソードワールド・西部諸国シアターに投稿したプロット文章がルーズリーフで発掘されたので劣化喪失する前にデータ化しておこうと思います。

西部諸国シアター3「鏡の国の戦争」の5分間シアターに山本弘先生が読みやすく簡潔にブラッシュアップしたものが載っていますので、表題作含め探し回って読んでいただけると幸いです。「魂の絆」という作品がすごくてゾゾゾっと来たのを覚えてます。

#あと3作(うち1作は完全に何を言ってるかわからないのが)あるんだよなぁ・・・

(追記)
どうも、本設定を見て、化石の町の石化解除計画を真剣に話し合っていた場所があったらしいですね・・・。シアター本編の設定は公式かもしれませんけど、5分間シアターの設定を公式だと思うのはどうでしょうかね・・・(苦笑
ちなみに、四大魔術師の塔に山本先生のシナリオで生命の水晶がどうのこうのという設定が載っていると聞きました・・・知りませんでした。知ってたらすげぇ考えてるなと自分を見直したところですが。
この作品は最初の投稿で、まだ西部諸国ワールドガイドを手に入れていなかったので、石化解除計画について書かれたときにはあ〜あって思いました。
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コメント
ありがとうございます。シアターはどうも後半投稿が伸び悩んだようで、高校生だった自分でも紙面で講評をもらえまして、うれしかった経験でした。サーラはラノベをほとんど買わなくなったあとでも追いかけ続けて最終巻を買うことができたのがうれしかったですね。『時の果てまでこの歌を』は本当にしっとりと感動しました。(VieMachine)
懐かしいですね。SWは初めて知ったTRPGで、以来のファンでした。この作品も確かに5分間シアターで読んだ覚えがあり、リザンファンだったということも有りますが、秀逸な作品だったと覚えています。俺が好きだったのは『魂の絆』はもちろん、王道的展開と半ダークエルフ(笑)の『帰ってきたドラゴン』、成長したサーラの登場した『時の果てまでこの歌を』です。(いあいあ)
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ソードワールド ファンタジー TRPG プロット 

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