なぜなのかしら？

私は苦悩する。

ブランとのアイドルイベントも見た。

今思い出してもゾッとする、紅の円環ルートで

リーンボックスの教会が私のコレクションごと燃えていく光景も見た。

特殊イベントも隠しキャラもありとあらゆる可能性を探求しましたわ。

それなのに、それなのにっ、どうしてイベント・ＣＧの達成率が１００％にならないのでしょう。

これはどういうことなのかしら？

同じような問題がユーザーの間でも話題になっているようで、

ここまで分からないのは製作側のミスやバグなのではないか？と言われている。

このままではいけませんわ！

もしそんなことだったら守護女神や、開発・販売の一部に関わっている教会にまで

悪評がつきまとってしまうことになるかもしれませんわ。

そして何よりゲームを楽しんでくれたユーザーの皆さんにきちんと謝らなければいけませんし、

改善にも取り組まなければなりません。

駆け引きという名のごまかし、夢のような世界の裏側に存在するしがらみ、

私たちの知らない所で動く巨額のお金。

そんなものはうんざりですわ。

私たち守護女神が志したゲイムギョウ界の繁栄という夢は、

いつしか大きな流れに身を委ねてしまったのでしょうか……

私は居てもたってもいられずに、ゲームの特別プロデューサーの一人であるチカの元へと向かった。

「どういうことか説明していただけないかしら！」

「どうしたんですかお姉さま！一体なんのことです？。」

「とぼけないで、チカ。」

もしかしたら開発スタッフ側のミスでチカたち教祖は何も知らないのかもしれない。

それでも私はチカは問い詰めた。

「そうですよ、あれはどこまで攻略しても９９％までにしかならないんです。」

「えっ！？」

予想していたどの反応にも当てはまらない回答に思わず声を上げてしまう。

「ひっ、開き直るつもりですのっ！」

なんてことなのかしら……

確かにこの問題を認め発表することは大きな波紋を呼ぶでしょうけど、

そんなことよりももっと大切なことが……

「わかりませんか？お姉さま。」

チカは……私に背を向け寂しそうにつぶやいた。

「チカ……？」

「創られたものを観る、聴く、読む、そして体験する。そしてそれをみんなで共有する……

　人は人と「わかりあいたい」って気持ちを持っていますからね。　

　それは素晴らしくて楽しいことだと思います。」

私はチカの言葉をかみ締めるように受け止める。

「お姉さまは昨夜どんな夢をごらんになりましたか？」

「えっ！ゆっ、夢ですの……そうですわね…

　トール・ファンタジーの完成版を四女神オンラインのギルドのみなさんと遊んでいましたわ。」

トール・ファンタジー

それはオンラインＲＰＧのタイトルだ。

我がリーンボックスのハードで発売する予定でしたのに開発中止になってしまった。

「そんなイベントはあのゲームにありましたか？」

「いえ……さすがにありませんでしたけど…」

「夢を見ててお姉さまは楽しかったですか？」

「それは…まあ…」

チカは一体なにが言いたいのかしら……？

「そうでしょう？本当の夢というものは、自ら生み出して自らの手でつかみとるものです。

　今のご時世、９９％決まりきった世界だとしても可能性はゼロではないのです。

　残りの１％は……お姉さまが見つけてください。

　ブランさん、ノワールさん、ネプテューヌさん……みんな、それぞれが。」

「チカ……」

私は、私は大切なことを見失っていたのかもしれませんわ……

「それぞれの明日を、それぞれの夢を追いかけてほしい。

　それが私たち教祖と開発チームからのメッセージです。」

いつしか私は涙を流していた。

夢……か……

……ゲイムギョウ界タイムスより……

緊急速報！

女神ゲーの続編が発売決定！

ついに女神候補生たちも主人公に！

もちろんヒロインとしても攻略することも可能で、

前作よりも大幅にイベントがパワーアップされているぞ！

そしてなんとなんと、前作を持っているみんなには嬉しい特典がついてくる！！！

本作のクリアデータを使用して前作をプレイすると特別なイベント・ＣＧを観ることができる！

これで達成率１００％フルコンプリート！二作揃って楽しさも二倍！

ただいま絶賛開発中！続報を待て！

定価６８００クレジット(税別)　初回特典あり