真・恋姫†無双 外伝:こんな夏の日 その5
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こんな夏の日 その5

 

 

「――――はぁっ…はぁ……」

 

湿気のこもった部屋に、男の荒い息が響く。

 

「はぁ…はぁ……んぐっ……」

 

それに対応するかのように、女の息もまた、部屋の空気を震わせる。

 

「まだか…?」

 

男は問い掛ける。『その時』を待ち切れず。

 

「まだ…です……」

 

女は答える。男と同じように逸る、その焦燥を抑えながら。

 

「「……っ」」

 

そうしたなか、2人の耳に、振動音が届いた。続いて、何かが開閉をする音。そして、2人のいるこの部屋が揺れる感覚を得る。

 

「やっとか……」

「もぅ…耐えられません……」

 

その振動も収まり、甲高い音が鳴る。そして、第三者の声。

 

『こんにちはー、〇川急便でーすっ!』

『はーい』

 

「「ざっけんなぁぁああああああああああああああああああああっ!!!」」

 

『『ひぃっ!?』』

 

隣の部屋から響いてくる叫びに、宅配便のスタッフとそれを受け取った住人は震えあがった。

 

 

 

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「――――いやぁ、直ったな!」

「えぇ、ようやく文明人らしく快適な時間が過ごせます」

 

1時間後。宅配便の男に次いで――今度こそ彼らの部屋に――来訪した電気店店員の修理を受けて回復した文明の利器の風を浴びながら、2人は安堵の息を洩らす。

 

「しかし、この猛暑の中、エアコンが壊れるとは思いませんでしたね」

「まったくだ。正直、扇風機の風を浴びても茹だるかと思ったよ」

 

電気屋の店員を労う為に淹れたコーヒーの残りをカップに注ぎながらカップルのうちの女性――稟は苦笑をしつつ零し、相方の男性―― 一刀は冷凍庫から大きなバニラアイスの箱を取り出し、ひと掬いずつ黒い悪魔の注がれたグラスに浮かばせながら、同じく苦笑を返す。

 

「――――ふぅ、落ち着いた」

「まったくです」

 

今や涼しさで満たされたリビングルーム。その中央に置かれたテーブルに向い合せで座った2人は、同時にグラスを口に運ぶ。

 

「うまっ」

「愛情が入ってますので」

「そりゃ美味いわな」

 

そうした軽口を叩き合う2人。かつての稟からは想像も出来ないほどに、落ち着いている。鼻血を出す事もない。それだけ、2人の過ごしてきた時間が濃密なものだという事だろう。

2口目の即席コーヒーフロートを口元に運びながら、稟は何気なしに一刀の方を見る。

 

「あ、一刀さん」

「ん?」

 

そして気づいた。彼の口元についた、白い液体を。外ではいつも隙の無い彼が、2人だけの時にだけ見せる、子どもっぽい面。

 

「ふふっ」

「なんだよー」

 

それが無性に可笑しくて、稟は思わず噴出した。それに対する返答も年齢に合わぬ語尾で、それがまた彼女を笑わせた。

 

「――すみません」

「で?」

 

からからと笑った後、ようやく稟は指摘をする。

 

「口元にアイスが付いていますよ」

「ん?」

 

言われ、一刀は口元を乱暴に手の甲で拭う。だが見当違いの場所。

仕方がないですね。稟は微笑ましげに呟き、テーブルに身を乗り出した。

 

「こちらですよ」

「んっ」

 

手を伸ばして、右の人差し指で一刀の口元を拭う。

 

「取れましたよ。……ちゅっ」

「おぉぅ…」

 

椅子に座り直し、人差し指を口に咥える稟。

 

「ドキっとしました?」

 

一刀が思わず漏らした声に、稟は問い掛ける。

 

「いや、昔の稟からは考えられないなぁ、と…」

「ふふっ、私だって成長しているのですよ。……まぁ、一刀さん以外では無理でしょうし、貴方以外にするつもりはありませんけど」

「……」

「ドキっとしました?」

「さてね」

 

からかうような稟の口調に、一刀はそっぽを向く。それがいっそう可愛らしく、稟は再三笑い出してしまうのだった。

 

 

 

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「――――それにしても」

 

一頻り笑い、謝罪をした後、稟は話題を変えた。

 

「なんだ?」

「夏休みももうすぐ終わりですね」

「そうだな」

 

稟の言葉に頷き、しばらくして一刀は顔を上げた。

 

「いやいやいや、俺たちはまだ1ヵ月残ってるだろ」

「上の人が大変らしいですよ。U期の準備とかで」

「あぁ、メタな話ね」

「なんでも、書き上げた報告書がサーバー管理部門側の所為で消失したとかで、また打ち直しらしく」

「あぁ、今回コレ書いてるのは現実逃避か」

「おそらくは」

 

閑話休題。

 

「――――それにしても」

「なんだ?」

「私との夏休みは2度目ですが、どうでしたか?」

「あれ? 1年目の夏って、2年前じゃなかったけ?」

「我々に時間の概念など存在しないのです」

「さっきの台詞と矛盾しているな」

 

閑話休題。

 

「――――それにしても」

「なんだ?」

「こうして久しぶりに我々の日常を描き始めたのはいいのですが、特に思いつきもしませんね」

「グダグダだな」

「という訳で、妄想ゲームでもしましょうか」

「あれ?」

 

…………まぁ、いつもの2人である。

 

 

 

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水滴の浮かぶグラスを手に取り、見た目に違わず冷えた悪魔を口に流し込む。喉を通り、胃袋までその冷たさが広がったところで、一刀は口を開いた。

 

「それで、本日はどういったテーマなのですか、教授?」

「おや、君も随分慣れたようだね。このゲームにも」

 

助教授になり切った一刀の発言に、稟は眼鏡をクイと上げて返す。一刀の口から、呆れとはまた違った、無邪気な子どもを見る時のような溜息が漏れた。彼女の言葉通り、一刀もこの遊びに慣れているらしい。

 

「まぁ、良いでしょう。さて、今回のテーマですが、何でも上の人がまた何処ぞで披露したネタで行こうかと思っております」

「めめたぁ…」

 

一刀の口から洩れたオノマトペも気にせず、稟は言葉を続ける。

 

「ここのところ、ずっと暑い日が続いていますね」

「暑いというよりは、熱いですが」

「さて、その最大の要因は、言うまでもなく太陽です」

「ふむ」

 

さて、この度はどのような無茶振りが来るのだろうかと一刀は身構える。そんな彼の心境を知ってか知らずか、稟は構わず言葉を止めることはしない。

 

「太陽と言えば、古代――キリスト教以前の人間は、太陽を崇めていました」

「ふむ…エジプトのラーやギリシャのヘリオス、日本だと天照大神などが有名ですね」

「流石です、助教授。基礎知識に抜かりはありませんね」

「教授のご指導の賜です」

 

互いに笑い合う。その口元は、不適。

 

「なに、カッコつけたモノローグをしてるんですか、教授?」

「メタな発言をしてはいけませんよ、助教授君」

 

お前が言うな。その言葉を、喉から飛び出す直前で一刀は飲み込む。機嫌を損ねても面倒くさい事が待っているだけだ。彼はそれを理解している。

 

「それでは、ここで今回の((主題|テーマ))です」

 

ゴクリ……。一刀は唾を飲み込む。緊張によるそれではない。教授に対するご機嫌取りだ。

 

「『何故、人は太陽を崇めるようになったのでしょうか』

 

 

 

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今回の妄想ゲームの主題が発せられた。

一刀の額からこめかみと頬を伝い、顎にまで汗が流れ落ちる。再び黒い悪魔で喉を潤すが、緊張を解す事など出来はしない。悪魔を包むのは透明の壁だけで、そこに白い天使はいないのだから。

 

「教授……ひとつ、いいですか?」

「……なんなりと」

「これって……普通に論文が書けるようなテーマですよね?」

「そこを何とかするのが妄想学でしょうに」

「oh…」

 

思わず一刀は頭を抱える。稟の言葉も当然。如何なる問いにも、妄想でもっともらしく答えるのが妄想学なのだ。

 

「あら。まさか、ギブアップですか?」

「いえ…やります」

「それでこそ、私の見込んだ助教授です」

 

教授からの激励を受け、一刀は意気を取り戻す。

 

「さて、『何故、人は太陽を崇めるのか』でしたね」

「えぇ、準備はよろしいですか?」

「当然」

「拝聴しましょう」

 

再三喉に悪魔を流し込み、一刀は言葉を紡ぎだした。

 

 

 

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「人が何故太陽を崇めるか、そこには、実は科学的な事象が含まれているのです」

 

一刀が切り出した言葉に、稟はおや、と眉をひそめる。

 

「なかなか面白い導入ですね。続けてください」

「言われずとも」

 

とりあえず、教授の興味を引くことが出来た一刀は、一言返し、そのまま言葉を続けた。

 

「食物連鎖はご存知でしょう?」

「当然です。弱い生き物が強い物に捕食され、そしてその強い生き物すら、死後は菌類によって分解され、再び植物に取り込まれ……その繰り返しです」

「その通りです。そのようにして、生物は生きるために必要なエネルギーを得ていきますが……では、そのループの始まりは一体何処に?」

「これもまた、中学生でも解答可能な問いですね。植物です。光合成によって植物は酸素と栄養分を生み出し……なるほど、そういう事ですか」

「辿り着いたようですね。そうです。生ある者の営みは、太陽のエネルギーをその根源に抱えます」

「つまり…」

「はい。人は本能的に、その事を知っていたのです。『母なる海』という表現はよく聞きますが、実際には、その海ですら太陽によってその形を保っている。すべての命の源である太陽を人が崇拝するのは、当然のことといえるのです」

「……」

「そして、本能的に感じ取った漠然とした感情を具体化したものが、先述したラーやヘリオス、天照なのです。さらに、そこから発生したのが――って、この妄想微妙だな。やめとこう」

「今さらですね」

「たかだか数行で終わっちまうしな」

 

正直、書き始める前に、既に駄目そうな予感はしていた。

 

 

 

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***

 

「――――という夢を見ました」

「あれっ?」

 

朝食にと稟が作ったトーストを食みながら、一刀は疑問符を浮かべる。

 

「おいおいおい」

「まったく。現実の一刀さんならば、その妄想に隙なんてないのに、夢のなかの貴方ときたら――」

「まさか、稟…」

「――なんですか」

 

一刀と同じく、バターを塗ったトーストを齧り、頬を膨らませ、向かいに座る彼を睨みながら稟は答え、そして問う。

 

「『ネタは微妙だが、文字数稼ぎ程度には使える』から、そんな夢オチなんて最悪の手法を使ってるんじゃないだろうな」

「ななななにを世よよよまま迷いい事ととととを……」

「いや、逆にそれは不自然過ぎるだろ……」

 

夢の中の冷静な姿とは異なり、あからさま(過ぎる程)に狼狽する稟に溜息を吐きながら、一刀はトーストの残りを口に放り込んだ。

 

「そういえば」

 

誤魔化すようにコーヒーを淹れ直してきた稟に、一刀は話題を変えようと言葉を向ける。

 

「夢の中で『上の人が披露したネタ』とか言ってたけど」

 

いや、変わってなかった。

 

「あんなショボくれた妄想でスベったりしたのか?」

「いえ、あのテーマはこのうだるような熱さ(?暑さ)におかしくなってしまった上の人が何も考えずに書き始めたものです。流石にあのレベルのものを口外する度胸はなかったようで」

「冷静な判断だ」

 

頷き、一刀は悪魔の上で揺れる天使の塊をスプーンですくい、口に運ぶ。

 

「やっぱこのアイス美味いよな」

「えぇ。バニラビーンズが入っているだけで、こうも味わいが違うというのが驚きですよね」

「こんな小さい粒なのにな」

 

閑話休題。

 

「んで」

「はい?」

 

グラスの中身も半分ほどにまでその量を減らし、天使と悪魔が中途半端に溶け合っているような((状態|カオス))になった頃、一刀は再び話題を変える。

 

「今回はいつにも増してグダグダだけど、大丈夫なのか?」

「リハビリも兼ねていますし」

「?」

「もう1つ、こちらこそ本当に授業中に子どもたちに向けて放(ってしま)った妄想があるのですが、量的にどうかと思ったのでやめておく、らしいですよ」

「そんな誘い受けみたいな発言をしたら、こぞって※欄に書かれるぞ」

「『先生、何やってんのwww』などですか?」

「そんなポジティブな方面じゃないと思うけど」

 

それじゃぁ。一刀は言葉を続ける。

 

「今回はどんな風に話を進めるんだ? このままグダグダのまま終わるとか?」

「ぺぃっ」

「いてっ?」

 

一刀の発言に、稟はコルク素材のコースターを投げる事で返す。額に当たった。

 

「……なんで投げられたの?」

「貴方が恐ろしい発言をしているからです」

「恐ろしい、って……」

「これまでこのシリーズがどのようにしてオチを迎えたか覚えているのですか?」

「ちょっと待って。上の人が久しぶりにTINAMIを開いて読み直してるから」

「そういうメタな発言がグダグダに繋がっていくのです」

「いや、自分もしてn……なんでもないです」

 

稟の一睨みで、一刀は縮こまった。弱い彼氏である。

 

「という訳で」

「どういう訳だ」

「と!い!う!わ!け!で!」

「……ハイ」

「ここからは、私たちの日常を披露いたしましょう」

「日常?」

「えぇ。某ちゃんねるでも、そういったSSが多いではありませんか。『男「そうだ、京都に行こう」女「あたしと?」』みたいな」

「咄嗟にそんなスレタイが出てくるのが凄いな」

「ふふっ、よく読んで妄想してますので」

「……」

 

あぁ、上の人の話か。一刀はそんな感想を抱くが、また怒られそうなので、その言葉を飲み込む。

 

「という訳で」

「3回目だな」

「……」

「……」

「と言う訳で」

「4回m――」

「あ?」

「……」

「私たちの日常を描くとしましょう。大学生の夏休みらしく、特にする事もなく、なんとはなしに昼間から行為に至るような――――ぷはっ」

「ほい、ティッシュ」

 

稟が日常云々を言い出した辺りから用意し、丸めておいたティッシュを彼女の鼻に詰め込む一刀。慣れとは恐ろしいものである。

 

 

 

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「それでは、いつものように妄想ゲームをしましょう」

「あれっ?」

 

稟の口から出て来た言葉に、一刀の口から疑問の声が上がる。

 

「俺たちの日常を描くんじゃなかったの?」

「私たちの日常なんて、妄想しかないではありませんか」

「間違いじゃないけどさぁ…」

「では、準備はいいかな、助教授君?」

「えぇ、いつでも……」

 

溜息を吐きながら、一刀はコーヒーで喉を潤した。

 

「それではいきます」

「……」

 

ゴクリ。緊張により、一刀は唾液を飲み込んだ。稟の口が開かれる。

 

「これから、『私たちの高校生活』を妄想しましょう」

「……………………は?」

 

そして掲げられるテーマ。一刀の口から洩れるのは、当然疑問符だ。

 

「……どゆ事?」

「そのままです。私たちの出身高校が異なるのは知っていますよね」

「そりゃ、まぁ」

「だから、私たちが同じ高校だったという前提で、妄想をするのです。妄想をするのは一刀さんなので、私がフランチェスカに入学したという設定で構いませんよ」

「構いませんって言われてもなぁ」

 

色々と言いたい事はあるが、断ると無限ループに陥る事は分かっているため、素直に従う事にする。まぁ、これが彼らの日常な訳であったり。

それはいいとして、ぶっちゃけメンドイと否定的な感想を抱く一刀。だが。

 

「……」

「……」

「……ジー」

「…………うっ」

 

無言の圧力に彼は呻き声を上げる。その後も十数秒無言の攻防はあったが。

 

「……わかったよ」

「Fuu!☆」

「なんだソレ?」

「いいからやりなさい。貴方のアイスを食べつくしますよ?」

「そりゃかなわん」

 

この日、何度目になるか分からない溜息を、彼は吐くのだった。

 

 

 

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***

 

pppppp……―――。

 

「うぅ……」

 

毎朝耳にする電子音が鳴り響いている。もぞもぞと身体の向きを変え、その音源へと腕を伸ばした。

 

「……朝、か」

 

時計を見れば、短針は時計盤の5を指している。窓へと顔を向ければ、まだ陽も射していない。これは別に、今朝だけ早起きをしたという訳ではない。毎朝の恒例行事だ。

さて起きるかと身体を起こせば。

 

「……おはよう、稟……って、またか」

「」

 

乾いた赤い液体が、布団と彼の腕の間でバリバリと音を立てた。

 

 

 

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***

 

「――――ちょっと待ってください」

「なんだよ」

 

折角の妄想を中断され、一刀は不満顔だ。だが、稟の不満顔は一刀のそれ以上である。

 

「何故、『幼なじみは〜』シリーズと同じ始まり方なのですか?」

「いや、俺たちの高校生活だろ? そうでなくても、よくある設定じゃん」

「ぶっちゃけマンネリです」

「いや、同じ出だしなのがまた、人気の秘訣じゃないかと――」

「調子に乗るなよ」

「――ハィ」

 

調子に乗ってすみません。

 

「まぁ、設定はいいでしょう。上の世界にも、これを望んでいる方が居る事ですし」

「じゃぁ怒んなくてもいいじゃん」

「何か言いましたか?」

「いいぇ、何も」

 

再開。

 

 

 

-11ページ-

 

 

 

***

 

稟と出会ったのは(ry。

 

「――何をしてぷっはぁああああ!」

 

稟が初めて鼻血を噴きだしたのは(ry

 

***

 

「いやいやいや、待て待て待て」

「口調が変わってるぞ」

「うるさい」

 

というか。

 

「なんでこう、ちまちま中断してんの?」

「ぁ、貴方が完成度の低い妄想を流してるからではありませんか」

 

一瞬口籠った稟を一刀は見逃さない。口元から稟の瞳に眼を移した一刀は、その視線がほんのわずかに彷徨っている点に気づく。数瞬の黙考。そして気づく。

 

「あぁ、そういう事か」

「はい?」

「要するに、落とし所が分からないのか」

「……#」

 

おぉ、怖い怖い。

 

 

 

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「さて、グダグダになってしまいましたが、そろそろ終わらせるとしましょう」

「だな」

 

気づけば、太陽が西に沈みかかり、部屋の中を紅く染めている。いい時間だ。

 

「夕飯の支度をしなければなりませんね」

「冷蔵庫、中身あったっけ」

「昼食で使い切ってしまいました。現在調味料と麦茶しかありませんね」

「じゃ、外に食べに行くか」

 

稟の言葉を受け、たまにはいいかと、一刀は切り出す。

 

「おや、貴方から言い出すのは珍しいですね」

「今日で夏休みも終わりだしな」

「え? 大学の夏休みは9月まであるはずですが?」

「上の世界だよ」

「あぁ、だからこんなにグダグダなのですね」

 

納得だと言わんばかりに、稟は演技っぽく額に手を当て首を振る。

 

「ホントは先々週に書き始めて、週末あたりに上げる予定だったんだけどな」

「暑さのくだりですね」

「熱すぎて頭がおかしくなったから、熱冷ましにでもと書き始めたはいいが、なんだかんだでサボっちまったんだよ」

「まぁ、上の人はあんな性格ですしね」

 

どんな性格だ。

 

「あと、実は他にも色々とネタは考えてたんだが……」

「考えたが?」

「ぶっちゃけ、明日から新学期が始まるから、もう寝たいらしい」

「使えない人間ですね」

 

酷い言われ様だ。

 

「という訳で、飯を食いに行こう」

「その接続詞がおかしいと思うのですが。それより……」

「ん?」

「オチ、がないのですが」

「あぁ、そんなの楽勝だろ」

「また貴方はそのような事を……」

「まぁ、見てろって」

 

呆れ顔の稟に、一刀は立ち上がって近づく。

 

「な、なんですか?」

「今度、俺と稟のR-18 SSでも書いてみるか」

「へっ? 私と一刀さんのR18……? あぁ、なんと甘露な響きか……。きっと『恋共#69』にも『After#5』にも劣らぬ文字数の素晴らしき饗宴が……。きっと彼の事ですから、直接的な表現は一切使わずに、その事が一層興奮度を高め――――」

「いや、鼻血だせよ」

 

ある程度耐性がついた為か、なかなか((鼻血|アイデンティティ))を出さない稟を横目に、一刀は本日の夕ご飯へと想いを馳せるのだった。

 

 

 

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あとがき

 

 

という訳で、稟ちゃんグダグダシリーズでした。

 

 

没ネタだったものをSSの体にまで持っていったけど、まぁ駄作。

 

 

だけど、久しぶりに過ぎるので、夏の締めとして上げてみた。

 

 

金姫やらAfterが終わるのは、いつになるやら……

 

 

ではまたいつか。

 

 

バイバイ。

 

 

 

説明
おひさです。

そしておやすみなさい。
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コメント
>>ロドリゲス様 これぞシュールという訳ですな(一郎太)
>>きまお様 BBAを使って幼なじみか……どう考えてもエロ本的展開です本当に(ry(一郎太)
>>ファイズ様 昔過ぎる作品に※するのもどうかと思ったり(一郎太)
>>summon様 もう少し盛り上げられる気がしたんだけど、鈍った腕では無理ですたorz(一郎太)
>>デーモン赤ペン様 身体は元気ですよ? 慢性的な疲れに慣れてしまったという点でw(一郎太)
>>envrem様 稟ちゃん可愛いからね(一郎太)
>>叡渡様 リハビリにと思ったんだけど、リハビリにすらなっていなかったorz(一郎太)
>>AliceMagic様 SSを書く事自体が現実逃避になっている件について(一郎太)
>>呂兵衛様 ふひひ、さーせん(一郎太)
>>北郷刃様 何故か一定の流れを外れないという、ね(一郎太)
>>ヴィヴィオ様 お前はゴ〇をグラスに淹れんのかw(一郎太)
>>観珪様 最近、ようやく朝夜が涼しくなってきたんだぜ(一郎太)
>>一丸様 腕が落ちてるんだぜ(一郎太)
>>牛乳魔人様 真夏に北海道を車で駆け巡りたい(一郎太)
>>プロフェッサー様 初コメありがとうございます。ネタを思いついても、どのシリーズに使えるかで迷ってしまうのですよ(一郎太)
>>鈴音様 乙ですです(一郎太)
オチが無いのがオチなんだろうなぁwww(ロドリゲス)
大丈夫だよ皆!きっといちろうたんは幼馴染シリーズをしおんB...ゲフンゲフン、お姉さんで書いてくれるよきっと!無論未亡人のままで(え(きまお)
GWにだした小説(虐姫)の感想は返信しないのですか?(ファイズ)
朝起きたら、ベッドが鼻血でぱりぱりとか嫌ですね…しかし、やっぱりこの二人の話は面白かったです!(summon)
この二人の話はむしろグダグダな日常がウリでもあると思うので、いいと思いますよ?体の具合には気をつけてください(デーモン赤ペン)
久しぶりの妄想学キター!と思ったらメタネタグダグダ満載な話だったでごさるΣ(・□・;) それでも2828してしまう自分がいるんですけどねwww(happy envrem)
あわわ・・・一郎太しゃん・・・半分くらいがメタとか現実逃避とかwww お仕事頑張ってー!w(Alice.Magic)
この妄想魔神め(誉め言葉(呂兵衛)
相変わらずのグダグダで安心しました、安定感がありますしw(本郷 刃)
更新お疲れ様です(>Д<)ゞ黒い悪魔がGにしか思えなかったorz(ヴィヴィオ)
お久しぶりでごぜーます。 ボクは、このグダグダ感か結構好きですよ? ちなみに茨城北部は夜は扇風機だけで十分くらいの気温ですねー(神余 雛)
ぐ〜だぐだ〜wwでも、おもしろいww・・・・お久しぶりです。更新お疲れ様です。・・・・次の作品楽しみにしています。(一丸)
こっち(北海道)はもう寒いくらいだよ 夏はやっぱり北海道がいいね 冬が地獄だけど(牛乳魔人)
お気に入り登録はしてましたがコメントは初めてです。春のように〜や風の流るるままに〜も続きが読みたいです。お忙しいでしょうがご考慮ください。(プロフェッサー.Y)
更新お疲れさまです(音狐)
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