がんばれ!マーチャント
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非常事態発生!非常事態発生!

船内ニイル方ハ至急1階ノ緊急避難所ニ避難シテクダサイ!

非常事態発生!非常事態発生!

 

 

けたたましいサイレンと無機質な船内放送が繰り返されるなか、逃げ遅れた二人の少女は

2階デッキ近くの倉庫に身を潜めていた。ジュノーからイズルードへ向かう定期便。

どうやらこの飛行船は不運なことにモンスターの襲撃に遭ったらしい。

 

 

「ねぇねぇカナ、」

「はい?」

「今さ…すっっごく重要なことに気づいたんだけど」

「…はい」

「何かねトイレに行きたくなっちゃったっていうか…」

「冗談ですよね…」

「うん」

 

 

新人アルケミストのカナは思わず深いため息をつくと同時に、隣で不敵な笑みを浮かべる

同僚のクリエイターに軽い怒りを覚えるのだった。それもそのはず今船内は見たことのない

バケモノたちに囲まれ孤立無援の危機的状況――

不気味にきしむ床の音、バケモノの息遣いが壁一枚を通して聞こえてくる。

さらに鳴り止まないサイレンが心臓の鼓動に拍車をかける。

 

「顔がひきつってるぞう?」

 

この状況をまるで楽しんでいるかのような邪悪な笑み。

そしてなにやらカートの中をゴソゴソと漁り始めた。

 

「いざとなったらコレを10発ほどぶちまければいいし」

 

 

そう言うと邪悪なクリエイターは両腕に抱えきれないほどのマインボトルを取り出した。

 

「ちょっ…!船ごと爆発しますよ?バイラン島にもう一個沈没船作る気ですかー!?」

思わず上ずりそうになった声を何とか抑える。

 

「ちぇー、カナちゃんは手厳しいですなあー」

そう言うと仕方なく、といった表情で大量のマインボトルをカートに戻した。

 

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壊れた機械人形のようにメッセージを発し続ける船内放送。

息の詰まりそうな暗闇の部屋に2人はちょこんと座っていた。

 

「ねぇねぇカナ、」

「今度はなんですか…」

 

邪悪なクリエイターは先ほどとは打って変わって神妙な顔つきで声をかけてくる。

 

 

「もし…これから私たちがバケモノに食い殺されるとしたらどうする?」

「え…!?食い殺されるってそんな…どうするって言われても…」

「死ぬ前にやり残したことはないかって聞いてんの」

 

気圧されたカナは覚悟を決めたように話し始めた。

 

「私…本当はケーキ屋さんになりたかったんですよね」

 

意外そうな顔をするアルケミストに、誰かさんにそそのかされて錬金術の道に進むことになった

と続け、乾いた笑みを浮かべた。

 

その瞬間、大地が引き裂かれるような轟音をたてて飛行船は動きを止めた。

相変わらずサイレンは鳴り止まないものの、そういえばギィギィと奇声を上げていたバケモノの

気配はいつの間にか感じられなくなっていた。

それと変わるように階段を急ぐように駆け上がる人とおぼしき気配。

飛行船がイズルードに無事着いたと理解するのにそう時間はかからなかった。

 

「おい!大丈夫か?」

 

勢いよく開かれた扉の向こうにはギルドメンバーの姿があった。

 

「飛行船が襲撃されたって聞いたから心配したぞ」

「いやーそんなことより聞いてよ」

 

先ほどの騒動など無かったように話を変えるブロンドのクリエイター。

 

「ぷぷっ…カナちゃんってばさー、錬金術士じゃなくてケーキ屋さんになりたかったんだって!」

「そんでさー私にそそのかされて人生設計が狂ったとか何とか…」

 

「ちょー!!ミーナさん!?」

 

真っ暗な空に散りばめられた星と月に照らされたイズルードと飛行船――

これから「ミーナさん」と呼ばれるクリエイターに翻弄されることをカナは知る由も無かった。

 

説明
昔書いたラグナロクオンラインの小説。
続編を書きたい!
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