真・恋姫†夢想〜世界樹の史〜第二章・歩みの葉編
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第二章・最終話

『胡蝶の夢』

 

 

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---外史のはざま---

 

左慈「貂蝉…!これはどういう事だ!」

 

貂蝉「どういう事も何も、私はご主人様をお守りするだけよ。」

 

二人が火花を散らし、対峙する。

貂蝉の傍らにはボロボロになった于吉が居た。

 

于吉「ぐっ…左慈、いけません…我らは力を…。」

 

左慈「…っ!」

 

貂蝉「さあそろそろ退場して頂戴。この外史にあなた達の居場所は無いわ。」

 

貂蝉は腕を交差させると、白い球体が現れた。

その球体は左慈達を吸い込んでいく。

 

左慈「貂蝉、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!!」

 

貂蝉「ふんっ。」

 

怒りも虚しく、球体に閉じ込められる二人。

 

左慈「(北郷…!)」

 

 

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---長安、町中にて---

 

そこでは、一刀と恋、そして音々音が友人である何進と話していた。

 

恋「(もきゅもきゅ…)」

 

音々音「恋殿、口の横にいっぱい付いておりますぞ。」ふきふき

 

恋「(ごくん)…ありがと。」

 

何進「はぁ〜…可愛いですね〜…。

   もっとたくさん食べて下さいね!」

 

恋「…(こくっ)」

 

一刀「おい、目がお金になってるぞ。」

 

何進「い、いけないいけないっ!てへへ〜。」

 

一刀「それより、話って何だい?なにか困りごと?」

 

何進「あっ、そうでした!すっかり忘れてました!」

 

音々音「困った方なのです。」

 

何進「え〜っとですね、私がいつも贔屓にしてる旅商人さんが居るんですが…。

   その方によるとどうも中原の劉表の動きが怪しいみたいです。」

 

一刀「ん?それはどうしてだろう。

   あの人は連合にも参加してなかったし、そんなに好戦的だと聞いたこともないけど。」

 

何進「聞くところによると、隊長さんを目の敵にしているみたいなんですけど…。」

 

音々音「お父さ…か、一刀殿を?!」

 

何進「お父さん?」

 

音々音「な、なんでもないのです!」

 

一刀「まぁ、色々あってね。

   ねね、お父さんで良いよ。ひと目を気にして変える必要はないから。」なでなで

 

音々音「お父さん…へへへっ♪」

 

恋「恋も…。」すりすり

 

一刀「おっと、はいはい。あははっ」なでなで

 

恋「〜♪」

 

何進「あ、あの〜、話を続けても?」

 

一刀「あ、ごめん。

   で…なんで俺を?」

 

何進「ん〜、それがわからないんですよね〜。

   酷く恨んでるというのは確かのようですが…。」

 

一刀「…なにか悪いことしたかな?」

 

 

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時は遡り、ひと月ほど前のこと---

 

劉表は部下たちを玉座の間へと呼び寄せていた。

 

刺客「…。」ぶるぶるぶる

 

劉表「さて、皆ももう知っていようが…

   この者が北郷の暗殺に失敗し、さらに酷いことに心に深い傷を負ってしまった。」

 

将A「あんなに震えて…一体どんな惨いめにあったというのか!」

将B「許せん。見よ、遠目に中庭を横切った女中の姿にもあんなに怯えておる…。」

将C「殿、これは黙ってはおけませんぞ!」

 

劉表「まぁ落ち着くが良い。

   策は…既に練っておる。」

 

将A「おぉ〜…!流石は劉表様!」

 

劉表「ふっふっふ…。

   北郷に近いものが駄目ならば、少し遠めから攻めるものよ。」

 

将B「ふむ…と言いますと?」

 

劉表「既に新たな刺客共を、天水と洛陽に向かわせておる。

   北郷を背後から攻めよとな。」

 

将C「なるほど!」

 

劉表「今頃は既に説得に成功しておる頃じゃろう。ほっほっほっ。」

 

 

 

---その頃、天水では---

 

女刺客「ふ〜、すんなり潜入出来たわね。ここの太守は間抜けなのか?」

 

女は音を立てずに一番奥の部屋へと向かう。

隙間から部屋を覗くと、そこには司馬朗が夜遅くにも関わらず政務にあたっていた。

 

女刺客「(なんだい、かなり良い男じゃないか。これは楽しめそうだ…。

    私の手練手管でモノにしちまえば、色々な意味でこっちのもの…ふふふっ。)」

 

司馬朗「そこに居るのは誰ですか?」

 

女刺客「…ふ〜ん、私に気がつくとはやるわね。」

 

司馬朗「刺客と見受けるが…私に何か用かな?」

 

女刺客「率直に言うわ、長安の北郷を殺しなさい。」

 

司馬朗「…断る。

    (俺だってそうしてぇよ…でも時暮たんに口聞いてもらえなくなったらと思うと…!)」

 

女刺客「そう…残念ね。なら、私の房中術で言いなりになってもらうわ。」

 

そう言うと、女は服をゆっくりと色っぽく脱ぎ始めた。

腰をくねらせ、司馬朗のあごにそっと手を添える。

 

司馬朗「…。」

 

女刺客「ほぉら、い・い・こ・と、しましょ♪」

 

司馬朗「…。」

 

女刺客「ふふふっ、我慢しないで…。」

 

もう片方の手で司馬朗の股間をまさぐる。

 

女刺客「ほら、こっちだって…

 

    あれ?」

 

司馬朗「…。」

 

女刺客「もしかして…貴方不能なの?!」

 

司馬朗「言いがかりは止してもらおう。」

 

女刺客「なら何で…!こうなったら性感帯をこうして…!」

 

司馬朗「…。」

 

女刺客「ど、どうしてピクリとも反応しないの?!」

 

司馬朗「いいことを教えてやろう…。」

 

女刺客「何よ…。」

 

司馬朗「お兄たまたる者!!妹以外の女に反応することは無い!!」

 

女刺客「は?」

 

司馬朗「お兄たまたる者!!時暮たん以外の女に価値を認めん!!」

 

女刺客「…。」

 

司馬朗「お兄たまたる者」

女刺客「わ、わかった!わかったから!」

 

司馬朗「いや、まだ分かっていないな。」

 

女刺客「え?」

 

司馬朗「一晩じっくり、お兄たまの愛を語り尽くしてくれよう!!」

 

女刺客「いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 

 

 

天水にて司馬朗が刺客を撃退?している頃、洛陽では…

 

 

 

司馬防「…。」

 

刺客「へっ、こんなジジイ。

   シメちまえば余裕だろ。」

 

司馬防「…。」

 

刺客「どうしたよ、怖くて声も出ねぇか?

   言うとおりに北郷とかいう奴をぶっ殺せば見逃してやるぞ。」

 

司馬防「…ハァ。」

 

刺客「あぁん?」

 

司馬防「愚かな若者も居たものじゃな。

    なぁ、爺?」

 

爺「誠にその通りで御座いますな。」

 

刺客「な、なんだこのジジイ!?いつの間に表れやがった?!」

 

司馬防「爺、掃除じゃ。」

 

爺「はっ、仰せのままに。」

 

刺客「掃除だぁ?爺の分際で俺に勝てるとでも…っ?!

   か、体が動かねぇ…!!」

 

爺「お主の体は私の糸で絡め取らせてもらった。

  さぁ…小便はすませたか? 神様にお祈りは?

  部屋のスミでガタガタ震えて、命乞いする心の準備はよいか?」

 

刺客「ひっ…!」

 

 

かくして刺客達もとい劉表の策は尽く敗れ去るのだった。

 

そんなことも露知らず、董卓達はいつもの日常を過ごしていたある日の事。

 

世界の綻びは、いつも唐突に訪れる。

 

 

月「はぁ…いいな、恋さん達。

  一刀さんと街にお出かけなんて…。」

 

蘭「まぁまぁ月さん。一刀様たちもお仕事ですから。」

 

詠「…ボク達も連れて行ってくれたらいいのに。」

 

花蘭「…ぅ〜。」

 

桜花「かゆ!お花あげゆ!」

 

華雄「劉協様?!わ、私に花は…!あちょっと?!」

 

霞「平和やなぁ…。」

 

その時、執務室に心が飛び込んできた。

珍しく息を切らせるその姿が、事態の悪さを物語っていた。

 

霞「なんや、どないし…」

心「一刀様が…倒れました!!!」

 

「「「 ?! 」」」

 

まさに青天の霹靂である。

 

 

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Another view  ???

 

 

 

俺は夢を見ている。

 

子供の頃から時折見る同じ夢。

 

物悲しい真っ暗な空間で、一人の女性が俺に言う。

 

「また…ね。」

 

いつもそうやって終わる夢。

 

そしてこの体はいつからか草を踏みしめ、ただ歩く、歩く、歩く。

 

枯れ葉を拾い集め、宙へ撒く。

 

浮かぶ枯れ葉達は踊るように舞い、木々へと還っていった。

 

俺はその葉を指折り数えてみることにする。

私はその葉を指折り数えてみることにする。

 

 

 

---壱---

 

一刀「手を伸ばして…!愛紗!!」

愛紗「ご主人様!!」

 

 

---弐---

 

桃香「天下三分か〜…やったね、ご主人様♪」

一刀「おっ、華琳達が着たみたいだぞ?行こう!」

 

---参---

 

華琳「行かないで…!」

一刀「愛していたよ、寂しがり屋の女の子。」

 

---四---

 

一刀「くっそー!皆まとめて遊んでやる!」

蓮華「一刀、子供を舐めてると死ぬわよ?」

 

 

 

荘周「あ゛…あ゛…

   ア゛アアアア…!アが…アアアアア…アアアアアア…!!!」

 

貂蝉「…無理よ、もう限界だわ!!

   あなたにはもう出来ない!!」

 

荘周「割レル…!!あだまガ…割れル!!!」

 

貂蝉「まるであの時のご主人様と同じ…!!」

 

荘周「がずど…タスげテ…!」

 

??「哀れだな。」

??「えぇ、本当に。」

 

貂蝉「誰?!」

 

 

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---長安---

 

一刀が倒れてから、もうふた月ほどが経っていた。

一向に目を覚ます気配がない状況に、ただただ悲壮感が漂う。

 

そんなある晩。

 

一刀の部屋に月と花蘭が居た。

物言わぬ一刀を見ながら、二人は一刀に語りかける。

 

月「…一刀さん、今日もお仕事大変でしたよ?

  警邏って大変なんですね…。焔さんにたくさん助けてもらっちゃいました。」

 

花蘭「私、一刀様に食べてもらうために、料理を勉強してます。

   まだ失敗ばかりしちゃってますけど…。」

 

こうして、彼の枕元にはいつも人が絶える事はなかった。

 

しかし、その晩は少し違っていた。

 

ガラリと音を立て、窓が開けられる。

 

何事かと身構える月と花蘭。

 

そこには見知らぬ二人の青年が居た。

 

月「…誰…ですか?」

花蘭「…。」

 

青年はチラリと横たわる一刀に目を向ける。

 

月「っ…!一刀さんに何かしたら私は」

左慈「黙ってろ!!」

月「?!」

 

于吉「左慈、落ち着きましょう。」

 

左慈「…あぁ。」

 

花蘭「か、一刀様に何か御用ですか!」

 

左慈「…コイツを助けたいか?」

 

月・花蘭「?!」

 

左慈「どうなんだ!」

 

月「助けたい…助けたいです!!でも…!」

 

于吉「でもは余計です。」

 

花蘭「助け…たい!」

 

左慈「最初からそう言え馬鹿が。」

 

月「へぅ…。」

花蘭「ぅー…。」

 

于吉「ならばこれより、親しい人間を集めて下さいますか?

   …大事なお話がありますので。」

 

そう言うと、彼はそっと壁に寄りかかった。

 

暫し時間を置き、一刀の部屋には董卓軍の主要な将達が集められた。

 

皆訝しげな表情で二人の青年に目をやる。

 

于吉「さて、ではお話を始めましょうか。」

 

蘭「…。」

 

于吉「皆さんは北郷一刀が何に見えますか?」

 

「「「???」」」

 

霞「何にて…見た通り人やろ。」

 

于吉「そうですね。間違いなく見た目は人です。」

 

華雄「何が言いたい?」

 

于吉「ですが人ならば…あの強さはあり得ないでしょう?」

 

霞「そら一刀が天の国で頑張って修行して」

于吉「修行してあそこまで強くなれると?

   司馬懿さんらと同年代にしてそれほどに修行の時間が?成果が?」

 

蘭「どういう事でしょうか?」

 

于吉「呂布さんならわかるでしょう。

   彼は何に見えますか?」

 

呂布「…。」

 

左慈「正直に答えろよ。」

 

呂布「…化物。」

 

詠「れ、恋っ!あんた…!」

 

呂布「恋のすきなひと。でも、ひとじゃないひと。」

 

時暮「…。」

 

于吉「ご名答です。流石天下無双ですね。

   そう、彼は『今や』人ではありません。」

 

詠「…今や?」

 

于吉「これから話す事は到底信じ得ぬようなお話ですが…宜しいですか?」

 

音々音「勿体ぶらずに早く言うのです!」

 

于吉「…北郷一刀は既に死んでいます。ここではない、薄暗い闇の中で。」

 

「「「 ?! 」」」

 

于吉「驚いたでしょう。

   ここに居る北郷一刀は大変曖昧な存在です。生きてもいるし、死んでもいる。」

 

焔「か…一刀様が死んでる?」

 

左慈「それは間違いない。天の国で生まれた北郷一刀は、この世界で消えた。」

 

詠「ならどうしてボク達の眼の前に居るのよ!」

 

于吉「それが彼を曖昧たらしめているのですよ。

   ですが…原因が分かりました。」

 

霞「なんやて?」

 

于吉「想い、ですよ。人の想いが彼の形です。

   劉宏陛下は心当たりがあるのでは?一度想いを形にしたことがあるでしょう。」

 

蘭「…。」

 

于吉「彼が今ここで意識を失っているのは、想いが届かなくなったからです。

   …たった一人の少女の、ね。」

 

時雨「少女?」

 

于吉「だから私達は、彼女の想いをつなげるために…。」

左慈「北郷一刀をもう一度殺す。」

 

「「「 ??!! 」」」

 

華雄「…!!!」

恋「させない。」

霞「やらせてたまるかいな!!」

 

于吉「…落ち着いて、と言っても無駄でしょうか。」

 

焔「当たり前だろうがコラ!!潰すぞボケが!!!」

 

左慈「チッ…話は最後まで聞けよ。」

于吉「困ったものですね。」

 

月「どうして…一刀さんを殺すんですか?」

 

左慈「別に首を取るわけじゃねぇ。

   一度この世界から消すだけだ。」

 

于吉「そうですね。肉体的にどうこう、というわけではありません。」

 

心「…それが目的なら、私達をここに集めたりはしない?」

 

于吉「冷静な方が居てくれて助かります。」

 

月「で、でも、一刀さんが消えてしまったら…!」

 

左慈「結果的には消えない方法がある。」

 

月「えっ?」

 

于吉「あなた達が北郷一刀を想い続ける事です。

   それは一瞬かもしれない、もしかすると何十年もかかるかもしれませんが。」

 

焔「そんなん楽勝だ!!」

 

于吉「心強いですね。」

 

詠「本当に…一刀は戻ってくるの?」

 

左慈「それはお前たち次第だ。」

 

于吉「それに、彼はまだまだ秘密がたくさん有りまして…

   身の消滅だけで言えば、幾度と無く彼は経験していますからね。」

 

音々音「?」

 

于吉「そして…幾度と無く彼は再会を果たしています。」

 

花蘭「か、一刀様は一人じゃない?」

 

于吉「惜しいですが違います。彼は間違いなくひとり。

   …世界が一つじゃないんですよ。」

 

左慈「…そろそろ行くぞ。」

 

于吉「そうですね。」

 

蘭「…一刀様を…。」

 

左慈「ん?」

 

蘭「一刀様をお頼みします。」

 

時暮「陛下…。」

 

于吉「…任されました。」

左慈「貴様らも、北郷一刀を失いたくなければせいぜい想うことだ。」

 

時暮「想うことなら慣れてます。一刀様と出逢った時から。」

 

于吉「ふふっ、この方の魅力も大したものですね。

   それでは…『散』!!」

 

青年と一刀は、音もなく消えた。

 

何もなくなってしまった布団の側では…。

 

月「あれ?私どうして…ここに居るんだろう?」

 

北郷一刀は『消えて』いた。

 

 

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---外史のはざま---

 

 

貂蝉「まるであの時のご主人様と同じ…!!」

 

荘周「がずど…タスげテ…!」

 

??「哀れだな。」

??「えぇ、本当に。」

 

貂蝉「誰?!」

 

左慈「おいおい、俺達を忘れたのか?貂蝉。」

 

貂蝉「そんな…!!あなた達は」

于吉「えぇ、消されちゃいました。

   貴方に、ね。」

 

貂蝉「一体どういう事?!こんなこと在り得ないわ!!」

 

荘周「…あ…ア゛…か…」

 

左慈「ひでぇ面してやがる。クククッ」

 

于吉「当然の報いです。

   この女が北郷一刀にしたことを思えば。」

 

貂蝉「…ご主人様が、何ですって?」

 

左慈「やはり気がついてないか。」

 

貂蝉「…。」

 

于吉「貴方がたは、大層この方を護るなどと吐いておきながら…困ったものですね。」

 

荘周「はぁ…はぁ…かずと…かずと…!」

 

何もない空間に必死に手を伸ばす荘周。

既に目には力がなく、口や鼻からは夥しい体液が溢れ出す。

 

左慈「ふん、そんなに奴に会いたいか。」

 

荘周「会いだい゛…!会っで…あ゛やまりだい…!」

 

貂蝉「荘周ちゃん…。」

 

于吉「ですって、北郷一刀さん?」

 

貂蝉「え?」

 

カツ…カツ…とゆっくりと近づいてくる足音。

 

荘周「あ…!あぁ…!」

 

その音に惹かれるように這いずって行く少女。

 

やがてその少女のすぐ目の前に足が迫り、直前で止まった。

 

もはやそれが誰なのか、確認するまでもなかった。

 

荘周「ごめんなさい…!!ごめんなさい!!」

 

ずっと言えなかった言葉を、悠久の時を経て伝える。

 

震える全身を抑えながら、懸命に紡ぐ。

 

荘周「貴方の時を、生を…全てを奪ってごめんなさい!!」

 

???「…。」

 

荘周「ごめん…なさい!!」

 

???「顔を上げてよ。」

 

荘周「え?」

 

一刀「久しぶり、かな?なんとなくそんな気分だよ。あははっ。」

 

荘周「かず…と…。」

 

一刀「全部わかったよ。俺がここにいるわけも…俺が消えたわけも。」

 

荘周「私、私どうしたら…。」

 

左慈「どうしたもこうしたも無いだろ。

   お前の物語はここで終わる、それだけだ。」

 

貂蝉「何ですって!?そんな事」

一刀「そうだね、終わらせよう。」

貂蝉「ご主人様?!」

 

荘周「…はい。

   どうかひと思いに…いえ、存分に苦しめて殺して下さい。」

 

一刀「…はへ?」

 

荘周「え?」

 

一刀「あれ?なんか、あれ?!

   違う違う!なんでそうなるかな?!」

 

荘周「え?え?」

貂蝉「ご主人様?」

 

一刀「言っただろ?全部わかったって。」

 

荘周「ですから…!」

 

一刀「俺はね、すべてを知った今…ただ感謝してるんだ。

   もう一度チャンスをくれたことにね。」

 

荘周「…。」

 

貂蝉「チャンス?」

 

一刀「だってそうだろ?曖昧だろうが何だろうが、俺は今ここに居る。

   なら、前の俺が出来なかったことを、成長した俺なら成し遂げられる。」

 

貂蝉「…出来なかったこと?」

 

一刀「まだ…約束を果たしてない。全ての外史を修繕するって。」

 

貂蝉「そんなの無理よ!もう荘周ちゃんは…!」

荘周「…。」

 

左慈「まだ気がついていないのか?」

 

貂蝉「どういう事?」

 

于吉「荘周、そろそろ目を覚ましなさい。」

 

荘周「…。」

 

一刀「この物語は…いや、さっきまで居た外史は君が創ったんだろ?」

 

貂蝉「?!」

 

 

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Anotherview 荘周

 

 

あぁ…いつから忘れていたのだろう。

 

遠いあの世界で…人々が傷つけ合い、涙を流すあの世界で。

 

私は願っていた。

 

この世界を救ってくれる英雄の登場を。

 

命を落とすその瞬間まで、私はただそれだけを願っていた。

 

管理者となり、真っ暗なこの空間に辿り着いた時、そこでも絶望が待っていた。

 

無数に広がる外史が、全て悲しみに包まれていたから。

 

幸せな世界を探し、樹を育てながら、私はただただ願う。

 

誰か助けてと。

 

その時、頭上を一筋の光が流れていった。

 

その光は外史をまたぎ、ひとつの世界に足を踏み入れる。

 

身を守る力を持たないその光の少年が、その器一つで世界を救った。

 

それから私は彼に力を渡し、全てを託した。

 

そう、彼の生を無視し、私の願いだけを勝手に押し付けて。

 

知らず知らずのうちに心が押しつぶされた彼は…。

 

文句の一つも言わずにただ消えてしまった。

 

どこまでも欲深い愚かな私は今一度想う。

 

『また彼に会いたい』と。

 

 

Anotherview 一刀

 

まどろむ世界の中で、俺は見ていた。

 

『想い』が雫となり、水面に落ちる。

 

その水面で、俺が生まれる。

 

そう、俺はここで生まれたんだ。

 

外史で生を受けた俺は、力を蓄えるために正史に転生した。

 

いつかの約束通り、毎日修業に励み、いつかの言葉の通り、成長という形で力を得た。

 

世界が急かすように、外史は息を吹き返す。

 

そして再び外史に舞い戻り…。

 

 

Anotherview end

 

 

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貂蝉「そ、そんな事…!」

 

左慈「まぁ、信じられないだろうな。

   俺達も貴様に消されて気がついたんだ。」

 

貂蝉「?」

 

左慈「消された先に何があったと思う?」

 

貂蝉「…。」

 

左慈「外史だよ。

   ピクリとも動かない葉が無限に広がってやがった。

   要するに、消されたというより箱庭から追い出されただけっだったわけだ。」

 

貂蝉「な、何よそれ…。」

 

于吉「外史は人の想いで誕生するもの。

   彼に力を与え、弱り切った一人の少女が創れるのはただの箱庭が限界だったようですね。

   まぁ、外史の葉には違いありませんが。」

 

左慈「通りで力が使えないわけだ。壊す権限が用意されてない世界だからな。」

 

貂蝉「なら私はどうして力が使えるの?」

 

左慈「貴様は外史の守り手だろう?

   俺達は元々外史の管理者であり、こんな下らん外史の樹は破壊するつもりだった。

   だが…北郷一刀の馬鹿野郎が介入したせいであんな数にまで膨れ上がりやがった。」

 

于吉「あれを壊すのは…気が滅入りますね。ふふふっ。」

 

左慈「あぁ、御免こうむる。

   だったらその馬鹿野郎に任せて、と思ったら今度は消えやがった。」

 

一刀「…スイマセン。」

 

于吉「アレだけの外史が一気に崩壊でもすれば、間違いなく正史にまで影響を及ぼします。

   ただ不思議なことに、崩壊はおろか突然息を吹き返した。

   何事かと思いあちこちを飛び回りましたよ。」

 

左慈「その時に銅鏡の前に行ったら、このクソ野郎に出くわしたわけだ。

   それも、外史のファクターとしてな。」

 

于吉「荘周が夢を見て蝶になり、蝶として大いに楽しんだ所、夢が覚める。

   果たして荘周が夢を見て蝶になったのか、あるいは蝶が夢を見て荘周になっているのか。」

 

左慈「これでは…どっちが蝶かわからん。」

 

一刀「曖昧なところにちょっと親近感。」

 

于吉「ふふっ、やはり変わったお人ですね。

   普通は怒るところですよ?二度も人生を使われたのですから。」

 

一刀「ん〜、いいんじゃない?二度も人生味わえるなんて中々できないよ?」

 

左慈「くくくっ、違いない。」

 

荘周「私は…。」

 

一刀「でこぴん!」

 

荘周「痛っ…ってホントに痛い!!なにこれ超痛い!!」

 

一刀「いつまでも湿気た顔しない!」

 

荘周「でも…。」

 

一刀「これからまたヨロシクな?次は消えたりしない。絶対に。」

 

荘周「一刀…。」

 

一刀「でもさ、俺はどうしてこんな力を貰えたんだ?

   いくら管理者でも、成長のリミッターを外すなんて凄いこと…。」

 

于吉「あぁ、簡単な話ですよ。

   我ら管理者はそれぞれ((役目|ちから))があります。」

 

貂蝉「私は守る力。左慈は壊す力。于吉は止める力。」

 

荘周「…私は、育てる力。

   それを全て貴方に押し付けたのよ。」

 

一刀「あれま、凄いことしたのね。」

 

左慈「本来ならそんな馬鹿なことはしない。身の消滅も在り得た暴挙だ。」

 

貂蝉「それほど誰かに頼りたかったのね。」

 

于吉「度が過ぎていますが…まぁ、本人が許しているのだからいいのでしょう。」

 

一刀「よし、じゃあそろそろ帰るか!」

 

于吉「あ…それなのですが…。」

 

一刀「ん?」

 

于吉「とても言いにくいのですが、先ほどの外史は扉が閉じました。

   外史の葉もその動きを止めています。」

 

一刀「うそ…」

 

于吉「本当です。

   何というか…その…貴方が完全に『消えた』のかと。」

 

一刀「(´・ω・`)」

 

左慈「まぁ、なんだ。

   き、きっと思い出すんじゃないか?」

 

于吉「えぇ、きっと大丈夫ですよ。」

 

一刀「…ありがとう。ちょっと泣きそうだったよ。

   よし、なら次の外史に行きますか。」

 

于吉「随分あっさりですね。」

 

一刀「何度も経験してるみたいだしね。こういう事。」

 

荘周「本当に行くの?私との約束なんてもう…。」

 

一刀「それは今更言いっこなしだ。長い付き合いなんだろ?」

 

荘周「…では、今更ついでに…」

 

一刀「ん?」

 

荘周「胡蝶です。私の真名。」

 

一刀「…行っくるよ、胡蝶。」

 

胡蝶「はいっ、行ってらっしゃい一刀。」

 

扉に手をかけ、大空に飛び出す。

 

そうして、新しい外史が幕を開けた。

 

 

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貂蝉「行ってしまったわね…。」

 

左慈「そうだな。

   ところで于吉、あれは本当なのか?」

 

于吉「何がです?」

 

左慈「さっきの外史が閉じたって。」

 

于吉「嘘です♪」

 

左慈「…やはりか。」

 

于吉「あのままじゃ、あまりに救われませんから。

   力が戻ったのであの外史ごと『縛』をかけました。」

 

貂蝉「流石ね。」

 

于吉「こんなサービスめったにしな」

左慈「やめておけ殺すぞ。」

 

胡蝶「…頑張って、一刀。

   私、何も出来ないけど、貴方を誰よりも『近く』で見守るわ。」

 

左慈「ん?

   …ちょっと待て!!あいつ何処に落ちるんだ?!」

 

于吉「…おやおや、これは荒れそうですね。

   一体誰の想いなのやら。」

 

貂蝉「(胡蝶の夢…ね。

   だけど夢の行く先は…いいえ、そんな考えは捨て置きましょう。

   ご主人様ならきっと大丈夫よ。)」

 

 

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今回もお読み頂き、誠に有り難うございます。

第二章最終回でした。

だいぶ物語の核が見えてきたのではないでしょうか。

盾や剣に関してはまだ先です。

 

そして…第三章は皆大好きなあの国です。お楽しみに!

説明
遅れてしまってスイマセン!
ということで、第二章最終回です!
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コメント
最高の終幕ですね(阿修羅姫)
ここまで一気に読ませて頂きました。これからも頑張ってください。続きを期待しています。^^(k.m)
司馬家は相変わらずでw皆大好きなあの国とは・・・魏?魏だといいなぁ〜(nao)
ぶれない司馬家........ここまでくると逆に素敵に見える(≧m≦)(タカキ)
ちょっと難しいな。(あいりっしゅ)
なるほど…世界樹とはそういうことだったのか…。そして司馬家は歪みない、と。(Jack Tlam)
表題どおりの流れになってきましたけど・・・司馬家は永遠に不滅です(笑)・・・よね?(サレナ)
この話だけだと分からないので最初にお戻ります〜(act)
単体だとちょっとよく分からないので一から行ってきます!(アルヤ)
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