独立国家ヤマト戦記 〜異世界チートは鉄の味〜
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第三話 サンドリア王国 馬賊撃滅編

 

 

 

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「機動部隊は馬車の護衛!戦車隊は最後尾に付け馬賊集団へ主砲攻撃を続行!機動偵察隊は弾幕の間隙を縫って馬賊を攪乱せよ!総員兵器使用自由!撃って撃って撃ちまくれぇ!!」

 

「「「「「「「ウオオオオオオオォォォォォォォーーーーー!!!」」」」」」」

 

 3両のT-34中戦車の41.5口径76.2o戦車砲F-34が轟然と吠え、ヴィルベルヴィント対空戦車による4連装2cm Flakvierling 38機関砲の水平掃射は並み居る賊を瞬く間に挽肉に変えてゆく。またハーフトラックから身を乗り出した歩兵達がStG44突撃銃による弾幕を張り、ジープ部隊の中で攻撃可能なものは車上に据えた12.7o重機関銃M2を放つ。さらにその隙間を縫うようにオートバイ部隊が突撃。乗員の巧みなハンドル操作によって馬賊は彼らを捉えられず、反対に百式短機関銃の一連射を食らって次々と落馬していく。

 

 

「す、凄い・・・一方的じゃないか」

 

 目の前の光景に、シルヴィアは呆然と呟く。それほどに今目の前で行われている戦闘は凄まじかった。

 

 いや、これはもはや戦闘などという生易しいものではない。蹂躙である。

 

 彼女たちにはわからなかったが、今T-34が撃っているのはキャニスター弾と呼ばれる対人戦用の散弾である。オリジナルのT-34ではキャニスター弾運用は視野に入れられてなかったが、亮輔の判断で運用出来るようになっていたのである。

 

 ショットシェル内部の散弾には、余剰品や不良品のボルトやナット、廃棄物の鉄片などが使われており、殺傷力は並みの弓矢の比ではない。

 

 また、対空戦車ヴィルベルヴィントに搭載された20o機関砲は、強靭な防御力を有する爆撃機などにも通用するよう設計されているもので、対人戦、それもろくな防具もつけていない馬賊風情相手には明らかにオーバーキルである。

 

 さらにジープからはブローニングM2重機関銃の他、ハーフトラックからはStG44突撃銃以外にもシモノフPTRS-1941対戦車ライフルが投入され、馬賊を引き裂いていた。

 

 

「なんだ・・・なんなんだ、彼らは・・・」

 

 自分達が散々手を焼かされた馬賊どもを、こうもあっさり討ち滅ぼしていく、底知れぬ戦闘能力を有する正体不明の武装集団。シルヴィアは恐怖を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 だが、今この場には恐怖以上の感情に支配された人間がいた。そう、反撃にあっている真っ最中の馬賊集団だ。特にその頭は恐慌の極みにあった。

 

 

「うぎゃあああああ!!」

 

「う、腕が、腕があああああああ!!!?」

 

「助けてくれ!熱い!熱いぃぃぃぃ!!」

 

「な、なんなんだよ・・・なんなんだよあいつらはァッ!!!?」

 

 次々と一方的に屠られてゆく手下達の姿を前にして、頭の思考はまともに働いていなかった。ただ受け入れがたい現実を前に混乱を加速させてゆくだけ。

 

 何故こんなことになったのか。

 

 何故自分達がこんな目に遭わなければならないのか。

 

 

「クソッタレがあああああああッ!!!」

 

 理不尽極まりない現実を目の当たりにして喚き散らす頭。そんな気の触れた頭を無視して三々五々に散り逃走を図る手下。それを逃すまいとブローニングM2の弾幕とシモノフPTRS-1941の狙撃がことごとくを射抜いてゆく。

 

 

 やがて、頭と数人の側近を除き、馬賊の生存者がいなくなった時、黒い鉄の箱の集団から一人が進み出てきた。

 

 

「・・・貴様が、賊の頭か?」

 

 自分達が地獄を見ている最中に、さらに神経を逆撫でするかのような冷静な声で、その男は問い掛けた。

 

 

「黙れえええ!!野郎ぶっ殺してやらああああああ!!!」

 

 その平静な態度が癪に障り、頭は絶叫したが、そのせいで配下の側近達よりも飛び出すのが一瞬遅れた。

 

 それが彼の生死を分けた。

 

 

「微温いわ」

 

 静かな声で、狂叫する賊の幹部と擦れ違う男。そして、擦れ違って一拍の後、過ぎ去った賊の幹部達は一人残らず肉片と化し、息絶えた。

 

 

「ヒィッ!?」

 

 そのありえない光景を見た頭は、相手の底知れぬ不気味さ恐ろしさに思わず竦み上がり、武器を取り落として後退る。しかし、それを上回る速さで男は歩み寄ってくる。

 

 

「な、なんだ・・・なんなんだよ、お前らはぁッ!?」

 

 

「我らは神の代理人。神罰の地上代行者」

 

 男が二振りの刃を頭に向ける。

 

 

「我らが使命は」

 

 男は両腕を広げる。

 

 

「我が神に歯向かう愚者を」

 

 男が目にもとまらぬ速さで踏み込む。

 

 

「その肉の」

 

 男は頭の脇をすり抜け、

 

 

「最後の一片までも絶滅すること」

 

 頭の背後で刃に付いた血を払う。

 

 

「南無三ッ!!!」

 

 そのまま胸の前で、刃を向かい合わせて刃を立て、両の拳を突き合わせる。

 

 

「ぎぃやああああああああああああああああッッッ!???!?!!」

 

 その瞬間、馬賊の頭は頭部を除いて側近達よりも遥かに微細な肉の粒子と化して、断末魔とともに砕け散る。

 

 

「(あ、悪魔・・・め・・・――――)」

 

 急速に薄れゆく意識の中、頭部だけになった元賊の頭は、上下反転した視界の中で自身に背を向けて佇む謎の男を睨めつけながら、襲い来る睡魔に身を委ね、やがね眠りに就いた。

 

 二度と覚め得ぬ、永の眠りへと。

 

 

 

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「ば・・・かな・・・。なんなのだ・・あれは・・・ッ」

 

 同時に、第三者の立場から今の二人の事の成り行きを見届けたシルヴィア以下、近衛騎士6人は、目の前で起きた異常事態に未だ理解が追いついていなかった。

 

 未知なる組織に、未知なる人々。未知なる道具に未知なる技。何もかもが謎に包まれたこの集団は、一体何者なのか。分からない。わからない。ワカラナイ。・・・・・・。

 

 

 

「総統閣下。全敵勢力の排除を確認。付近に敵影、ありません」

 

 戦闘終了後、いささかの着衣の乱れ汚れもなく、凛とした佇まいのまま星田少佐は報告した。

 

 

「はいご苦労さん。さて、それでは先方にご挨拶に伺うことにしましょうかいねっと」

 

 

「お供いたします」

 

 そして亮輔は彼女を引き連れ、こちらを恐々とした様子で眺めやる救援対象の方へ向かって歩みを進めた。

 

 

 

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「初めまして。お加減の程は如何でしょうか?」

 

 両者邂逅時の第一声は、亮輔のこの一言から始まった。

 

 

「あ、あぁ。私は大丈夫だ。ただ、部下達の中に幾人か怪我人が生じている。また、賊どもから逃げるため、足枷となる荷馬車と軍馬の多くを破棄してしまったため、食料なども不足している」

 

 先程の戦闘時における残虐性からは想像だに出来ない穏やかな問を掛けられて再度動揺しつつ、シルヴィアはなんとか答え切った。

 

 

「ところで、こちらからもひとつ質問したい。君達は一体、何者なのだ?あぁ、私はサンドリア王国王立近衛第四騎士団団長の、シルヴィア・ノースロックだ」

 

 

「俺、いや私の名は森岡亮輔。この傭兵団『ヤマト』の長を務めています。本日は新装備の実戦試験のため、この近隣地域で魔獣狩りを行っていました」

 

 まだ自分達の本性を明かすには時期尚早であると判断した亮輔は、すぐさま自分達の経歴を偽って伝える。

 

 

「ヤマト?聞いたことがないな。お前はどうだ?ネルフェア」

 

「いえ、私も聞いたことがないですね」

 

「そうか。これほどの戦闘能力を持つのならば、さぞかし名の売れた傭兵団なのだろうと思ったのだが・・・ところで、先程のあれは一体何なのだ?私達も銃というものは知っているが、あそこまで連射の利くものではないし、あの一際巨大な鉄の箱が持っている大砲や大きな連射銃も、見かけの割にかなり強力なものだと見受けたが?」

 

 そう言いながらシルヴィアは興味深げに、特にT-34とヴィルベルヴィントを見ている。

 

 

「えぇ。まぁ連射銃の方は本来の用途とはちょっと違う使い方しちゃいましたけど」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「えぇ、まぁ」

 

 そう言って亮輔は言葉を濁す。

 

 

「ところで、リョウスケ殿。助けてもらっておいて厚かましいのだが、負傷者の治療に協力していただけないだろうか?あと、先程の馬賊の襲撃を逃れるために荷馬車や軍馬をほぼ全て放棄してしまったので、物資の支援も可能ならばお願いしたいのだが・・・」

 

 

「ふむ・・・部下と相談した上で決断しますが、可能な限りのことはさせていただきましょう」

 

 突然支援を求められた亮輔は、先程までの人懐こい笑みを引っ込め、指揮官としての顔つきになり、答えた。

 

 

 

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 星田少佐以下、部隊指揮官達との相談を終えた亮輔達は、早速負傷者の治療に取り掛かった。どうやら外に出ていた6騎以外にも、馬車の内部には幾人かの負傷者が収容されていたらしい。

 

 彼らはハーフトラックM3A1に積んでいた医薬品類を用い、怪我人の治療に当たった。軽度の者には消毒と傷薬の塗布、ガーゼによる保護を行い、重い切り傷や骨折などの患者には傷口消毒後に縫合して傷を塞ぐ、あるいは棒を当てた後布を巻いて固定するなどといった応急処置を行う。

 

 

「これは凄い。どれもこれも見たことのない技術ばかりだ。特に、魔法も使わずに傷口を針と糸で縫い合わせ治療するなど、聞いたこともない」

 

 治癒魔法による治療が主な治療法でしかないこの世界の住人であるシルヴィアにとって、目の前で行われている“科学”による手当ては全く未知のものであった。

 

 

「とりあえず、一通りの手当ては済ませました。と言っても、応急処置には違いないので、なるたけ早く本格的な治療を受けられる場所にかかったほうがいいでしょう」

 

 

「あぁ、すまない、ありがとう。助かったよ。」

 

 

「いえいえ、人として当然のことをしたまでです。お礼を受けるほどじゃありませんよ」

 

 一通りの処置を終えたのを確認した亮輔に、シルヴィアはそう言って頭を下げた。実際問題、彼らの助けがなければけが人の大半は助からなかった可能性が大きいのだ。感謝するのは当然のことであった。

 

 

「そうか。・・・ところで、突然脈絡のない話になるが、君達、傭兵団『ヤマト』を雇いたいのだが・・・」

 

 

「確かに急ですね・・・内容は?」

 

 

「我々を王都『サンドリオン』まで護衛してもらいたい。見ての通り、我々は満身創痍でな。おまけにここら一体は先程のような賊の他にも、多数の魔獣が生息している危険地帯なのだ」

 

 

「だから、王都に辿り着くまで我々の力で護衛して欲しい、と?」

 

 

「その通りだ。もちろん、報酬は責任を持って支払わせてもらう。どうかな?」

 

 

「・・・部下と相談して決めたい。しばしお時間を頂戴してもよろしいかな?」

 

 

「構わない。納得のいくまで、話し合ってもらいたい」

 

 

「わかりました。では、一旦失礼します」

 

 そう言うと亮輔は、報酬について相談するために一旦星田少佐達の元へと戻っていった。

 

 

 話し合いの結果、シルヴィアからの依頼を受諾することを決めた亮輔達は、オートバイを斥候に出し、T-34を先頭に、ハーフトラックを後方に配置しつつ、一路王都目指して行進を再開する。王都までは残り3日ほどの行程を予定している。

 

 

 

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 キリがいいので、今回はここまでにさせていただきます。

 

 

 ところで、書いてる途中で気がついたんですが、希望特典とは別に神様が主人公に授けたはずのスペシャル特典の方を書いてませんでした。なんとか近いうちに辻褄合わせのためにも捩じ込むつもりですんで、もう少しだけ待ってやってください(汗)

 

 では、今回はこの辺で失礼します。

 

 

 

 

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四日も間が空いてしまい、申し訳ありませんでした
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タグ
異世界 チート ミリタリー 早速のチート 

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