管理者からの御遣い 魏√8
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兵士「張遼様!本隊、左翼、共にもう限界です!」

張遼「ちぃっ!アホ何進め・・・・・・こないな無茶な作戦で、黄巾の連中に勝てるとでも思うたんかいな・・・・・くそ!撤退すんで!」

兵士「本隊から伝令!ここが正念場だ、踏ん張れ、奮起せよ!だそうです!」

張遼「あの馬鹿!もう正念場なんぞ終っとるちゅうねん!もうええ、お前ら!ウチに指示に従い!責任はウチが取る!撤退や!」

兵士「よろしいので?」

張遼「かまへん!ウチら右翼は戦線の維持不能により撤退や!そう連絡し!」

兵士「はっ!撤退!撤退ーーーーっ!!」

張遼「・・・・・・けど、黄巾の連中、此処まで規模が膨れ上がったら・・・・・暴徒どころやないで、軍隊と何も変わらへん・・・・・?なっ・・・・・敵の増援か!」

兵士「いえ!旗は曹と夏侯!恐らくは、陳留の曹操軍と思われます」

張遼「今頃か・・・・・・っ!まあええ、連中の相手は何進がやってくれるやろう。ウチらはさっさと撤退すんで!」

兵士「本隊より伝令!我が右翼に、左翼の華雄と協力して殿を務めろとのことです!」

張遼「華雄は?」

兵士「進撃を止めている様子が見えませんが・・・・・」

張遼「それ、殿やのうて、放置されとるだけとちゃうか」

 

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凪「夏侯惇さま。官軍の指揮官から、連絡文が届いているようです」

春蘭「・・・・読まずとも良いぞ」

凪「良いのですか?」

春蘭「いらん。どうせ、到着が遅いだの早く蹴散らせだの書いてあるのだろう。そのようなもの見てる間も惜しいわ」

季衣「春蘭さま!部隊の展開、完了しました!」

春蘭「よし。官軍の援護は凪、貴様らに任せる」

凪「はっ」

春蘭「季衣はわたしに続け!腑抜けた官軍には荷が重過ぎる相手やもしれんが・・・・・真の精兵たる我が兵には、黄巾など赤子同然! 突撃ーーーーっ!!」

 

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???「な・・・・・何という強さだ・・・・・」

兵士「あの黄巾党が、まるで相手にされてない・・・・・」

凪「華雄将軍!華雄将軍はどちらか!」

華雄「おお!此処にいるぞ!」

凪「我が名は楽進。陳留が州牧、曹操の代理として馳せ参じました」

華雄「ああ。本隊は既に下がり、こちらも苦戦を強いられたいたが、貴公らのお陰で何とか命を繋ぐことが出来た。礼を言う」

凪「はっ。ここは我らが引き継ぎますゆえ、官軍は撤退なさいませ」

華雄「すまん。ならば、その言葉甘えさせてもらおう。張遼にも連絡せよ、撤退する!」

凪「はっ」

華雄「総員、撤退せよ!撤退だ!」

 

 

華雄は、部隊を連れ撤退していった。

 

 

凪「・・・・・・本隊が既に撤退だと・・・・・・?華雄殿には殿の自覚がないようだったが・・・・・どういうことだ?」

兵士「楽進さま」

凪「どうした」

兵士「それが・・・・・夏侯惇さまが・・・・・」

 

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春蘭「追え追えー!地の果てまで追い詰めろ!」

季衣「春蘭さま・・・・・なんか今日の相手、すっごく弱くありません?」

春蘭「うむ・・・・・・ここまで派手に逃げられると、追い詰めてやりたくなる」

季衣「そ、そんなもんですか?」

春蘭「当然だ!季衣、隊の速度を上げるぞ!これ以上逃げられるのも気に食わん!」

季衣「わかりましたっ」

 

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チビ「アニキ。予定通りに追いかけてきますぜ」

アニキ「だな。なら、もう一息だな」

チビ「へい!」

アニキ「陳留の夏侯惇なんぞと正面から戦っていられるか。こっちの計略に乗ってもらうぜ!」

チビ「へいっ!てめぇら、全力で逃げるぞ」

 

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春蘭「なんだか沼が増えてきたな・・・・」

兵士「あの・・・・・夏侯惇さま。この辺りは、少々まずいのではないでしょうか?」

 

 

兵士の忠告で辺りを見回す春蘭。

 

 

春蘭「む?・・・・・ここはどこだ」

兵士「は。確か・・・・・」

季衣「春蘭さまー。大変ですー」

春蘭「何だ!」

季衣「敵の姿が消えちゃいました!」

春蘭「・・・・・何?さっきまで目の前に必死に逃げていたではないか!」

季衣「それが、どこに行ったのさっぱり・・・・・・・・・・あっ、春蘭さま!砂塵です!」

春蘭「どこだ!・・・・・・あれか?」

季衣「でも、こっちに向かってきますよ?逃げるのをやめてんですかね?」

春蘭「腹を据えたなら可愛げもあるが・・・・・そういう潔い連中ではあるまい」

季衣「あれ・・・・・?あの旗・・・・・?」

 

 

向こうの旗印が、近づくにつれ明らかになっていく。

 

 

春蘭「孫に・・・・・袁だと・・・・!?不味い、季衣!ここは袁術の領土だ!」

季衣「袁術さんって・・・・・隣の領土の・・・・・?」

春蘭「・・・・・くっ。連中に一杯食わせれた・・・・・撤退は」

季衣「無理です!間に合いません!」

???「そこの部隊!所属と名を名乗れ!」

季衣「春蘭さま・・・・・」

春蘭「仕方がない・・・・・。わたしは夏侯惇。こちらは許緒。陳留州牧、曹孟徳の元で将軍を務めている」

???「陳留・・・・・?随分と北ね。遠征お疲れ様と言いたいけど、ここは陳留の領土ではないはずよ。軍を率いて踏み込み・・・・・どう説明するつもりかしら?」

春蘭「官軍を助けた後、黄巾の追撃で深追いし過ぎてしまったのだ。貴公らの領地を侵略する意志は無い」

???「そんな言い訳が通用すると思ってる?」

季衣「春蘭さまぁ・・・・・どうするんですか?」

春蘭「正直に言うしかなかろう!・・・・・・とはいえ、急にせいもあり、こちらは何の証も持っていない。同行してもらっても構わんから、連中を追わせてくれんだろうか」

???「都合の良いことを言ってくれるわね・・・・・まずは、こちらの問いに答えなさいよ」

春蘭「むー。何と頭の硬いヤツだ・・・・・すまんが、本当に今は一刻を争うのだ」

 

 

また一人、春蘭たちの前に一人の女性が現れる。

 

 

???「策殿。こちらの準備、整ったぞ」

???「・・・・・あら、思ったより早かったのね。つまんないの。もうちょっとゆっくりしていっても良かったのに・・・・・・・・・夏侯惇と言ったかしら?消えた敵部隊がどこにいるか、知りたくない?」

春蘭「何・・・・・」

???「この辺りは沼地が多いから、身を隠すには丁度良いのよ。下手に追いかけると気付かれて、さらに逃げられちゃうからね」

春蘭「・・・・・ということは」

???「わたしの領だったら許しはしないけど、袁術の土地に誰が入ろうと知ったことではないわ。盗賊退治をしてくれるというなら、今日だけは目を瞑るわ」

春蘭「何・・・・・?お主が袁術ではなかったのか?」

???「・・・・・笑えない冗談ね」

春蘭「では、お主は・・・・・・?」

孫策「我が名は孫策。袁術の客将よ。こっちは副官の黄蓋」

黄蓋「如何する、夏侯惇?」

春蘭「答えるまでも、なかろう」

孫策「ん。なら、道筋はこちらで案内するわ。付いてきて」

春蘭「うむ!」

 

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春蘭「・・・・・とまぁ、そういうわけです」

 

 

春蘭は長々と華琳に報告をしていた。

 

 

華琳「・・・・・呆れた。それで、孫策に借りを作ったまま帰ってきたの?・・・・・で、どうなの」

春蘭「え、ええっと・・・・・連中の領に逃げ込んだ盗賊の退治は手伝ったのですから、差し引きで帳尻は・・・・・」

一刀「合ってない。他国の領に入る前に討っておけば引く必要は何処にもない」

春蘭「・・・・・わたし達が仕掛けた瞬間、ものすごい勢いで逃げられまして・・・・・。今思えば、あれも連中の策略だったではないかと」

桂花「・・・・・策略?凪、それは、本当なの?」

凪「すいません、自分は官軍の撤退の支援をしていたもので・・・・・」

桂花「季衣は・・・・?」

春蘭「わたしに聞けよ!」

季衣「ええっと・・・・・それまでは都の軍を一方的に攻めてたんだけど・・・・・ボクと春蘭さまが攻撃を仕掛けたら、ばーって撤退していって」

秋蘭「・・・・・華琳様」

華琳「・・・・・ええ。春蘭や季衣相手だったとはいえ、黄巾党はそれだけの作戦を展開できる指揮官を得たことになる。幸いは、その将を討てた事ね」

一刀「・・・・・指揮官か・・・。状況は最悪の一歩を辿っているな」

 

 

先日の焼き討ち以来、黄巾の活動は小さくなっていた。

だが、それも一時的。

今回の軍議では連中が焼き討ち以前の勢力をほぼ取り戻している、という結果が報告された。

 

 

華琳「こちらの予想としては折り込み済みの事項だから、驚くことはないけれど・・・・・これからは苦戦することになるでしょうね。以後、奴らの相手は気を引き締めるように。特に春蘭と季衣」

春蘭「はっ!」

季衣「はい!」

華琳「・・・・・それから春蘭。その孫策という人物。どんな人物だった?」

春蘭「はい。風格、雰囲気、気配といい・・・・・袁術の客将と名乗っていましたが、そうは見えませんでした」

華琳「難しい言葉を無理して使わなくてもいいわ。武人としては、どう見るの?」

春蘭「・・・・檻に閉じ込められた獣のような目をしておりました。袁術とやらの人となりは知りませんが、あれはただの客将で収まる人間ではないでしょう」

華琳「そう・・・・・。春蘭、その情報に免じて、今回の件についての処分は無しにするわ。孫策への借りは、いずれ返す機会もあるでしょう」

春蘭「・・・・・ありがとうございます」

華琳「それでは、他に何か報告すべき意見はある?」

一刀「春蘭のもので終わりだ」

華琳「黄巾党はこちらの予測以上の成長を続けているわ。官軍はあてにならないけれど・・・・・私達の民を連中の好きにさせることは許さない。いいわね!・・・・・・それにもうすぐ、わたし達が今までに積み重ねてきたことが実を結ぶはずよ。それが、奴らの最後よ」

 

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一刀「やはり、華琳と俺達では見ている部分が違う」

凪「ただ、今までの華琳様の判断で、間違っていたことはありませんよ?」

一刀「分かってはいる・・・・・凪はいいのか?南から戻ったばかりなのだろう?」

凪「大丈夫です」

一刀「真桜たちもいる、倒れたら元も子もないぞ」

凪「自分・・・・・・こういう事しか、出来ませんから」

一刀「・・・・こういった地道な作業が一番重要だぞ。こうして情報収集してくれるお陰で、華琳も正確な判断が出来るのだからな」

凪「はい」

 

 

一刀は、その真面目さを真桜や沙和に飲ませてやりたいと思っていた。

 

 

一刀「・・・・・・・・・凪」

凪「・・・・・・・はい、分かっています」

一刀「・・・・・・はっ!」

凪「はああああああっ!」

黄巾党「ぐはっ!」

一刀「・・・・・全員、警戒態勢!」

凪「・・・・・あと一人」

黄巾党B「がはっ!」

凪「他は・・・・・大丈夫か。一刀様、終りました」

一刀「ご苦労。周囲を警戒!敵部隊が伏せている可能性があるかもしれん。何人かはこっちに来てくれ」

兵士「はっ!黄飛様、彼らはどうしましょう」

一刀「途中で逃げられては面倒だ。縛っておいてくれ」

兵士「はっ」

 

 

兵士たちは、一刀の指示に従い各々が行動を開始する。

 

 

一刀「・・・・・偵察か・・・・」

凪「そうだとしたら、本隊が近い可能性がありますね・・・・・・?」

一刀「どうした?」

凪「・・・・・・何か、手紙が。一刀様、これを・・・・・」

 

 

凪が、手紙を渡してくれた。

開くと、なにやら地図らしきものと、汚い字で何か記してある。

 

 

一刀「・・・・・っ!?」

凪「一刀様?」

一刀「・・・・・こいつら、連絡兵だ!」

凪「これで、敵の主要地点が一つ分かりますね」

一刀「あぁ。だが・・・・・ここまで、明確な連絡を取っている様子はなかったが・・・・・」

 

 

実際のところ連絡兵は何度か捕まえたがどれも口頭連絡ばかり。

中には連絡事項すら間違えていたものもいる。

 

 

凪「自分も覚えがありませんが・・・・・本当に我々のような作戦行動を取るようになっているようですね」

 

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その日の軍議は、一刀たちが見つけた文について取り上げられた。

 

 

華琳「大手柄よ。一刀、凪」

一刀「どうも」

凪「はっ」

秋蘭「先ほど偵察に出した部隊が戻ってきました。連中の物資の輸送経路と照らし合わせて検証もしてみましたが、敵の本隊で間違いないようです」

一刀「・・・・・ようやく見つけたか」

秋蘭「ああ。張三姉妹の三人が揃っているとの報告も入っている」

華琳「間違いないのね」

秋蘭「何というか・・・・・・・三人の歌を取り囲んで聞いており異様な雰囲気を漂わせていたとか」

華琳「何かの、儀式?」

秋蘭「詳細は不明です。連中の士気高揚の儀式ではないかというのが、偵察に行った兵の見解です」

一刀「・・・・ライブみたいだな」

春蘭「らいぶ?」

一刀「・・・・・大人数で歌い手の歌を囲って聴く行為のことだ。規模によっては、幾千、幾万と集団が出来るくらいだ」

春蘭「良く分からんな」

華琳「で、それは何をする集まりなの?宗教儀式?」

一刀「娯楽の一環さ。ただ、今回の場合・・・・・・士気高揚も兼ねてるんじゃないか」

華琳「ふぅん・・・・・・」

 

 

そういった、雰囲気を味わってみないことには概念は知らないことには違いない。

 

 

一刀「詳しいことは、奴らにでも聞け」

華琳「そうね、ともかく、凪たちのお陰でこの件で一気にカタが付きそうね。動きの激しい連中だから、これは千載一遇の好機。皆、決戦よ!」

「「「「御意!!」」」」

 

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張角「れんほーちゃーん。おーなーかーすーいーたー」

張梁「はいはい・・・・・。そんなこと言われなくても、分かっているわよ」

張宝「人和。わたし、もうこんな所いたくないわよ。ご飯も少ないし、お風呂だってちょくちょく入れないし・・・・・何より、ずーっと天幕の中で息が詰まりそう!」

張梁「それも分かっているわよ。でも仕方がないでしょ・・・・・糧食が焼かれちゃったんだから」

張宝「仕方がなくないわよ。別のところに行けばいいでしょ。今までだって、他場所に移動してたじゃない」

張梁「・・・・・私たちの活動が朝廷に目をつけたらしくね。大陸中に黄巾党の討伐命令が回っているのよ」

張宝「・・・・・はぁ?わたし達、何もしてないわよ」

張梁「周りの連中がね」

張角「えぇ?じゃあ、今までみたいにいろんな国は回れないの?」

張梁「連中が付いてくると、どうしても大きな動きになってしまうわ」

張宝「じゃあ、置いていけばいいじゃない」

張梁「出来ることならやっているわ。何度か試したけど・・・・・その度に誰かが寄ってくるのよ・・・・・・はぁ・・・・」

 

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一刀「秋蘭。本隊、到着したぞ」

 

 

一刀たち先遣隊が偵察を終える頃、伝令兵がそんな報告を持ってきてくれた。

 

 

秋蘭「そうか・・・・・各隊の報告はまとまったか?」

真桜「ちょうど終ったところやで。連中、かなりグダグダみたいやな」

秋蘭「やはりな・・・・・。華琳様の予想通りか」

一刀「そうみたいだな」

秋蘭「まずは報告を聞かせてもらおう。真桜」

真桜「はいはい。まず、連中の総数やけど、約二十万」

一刀「随分と集まったな」

沙和「ものすごい大軍団なの・・・・・」

秋蘭「なにせ本隊だからな。数が多いのは当然だろう」

季衣「それって、ボク達だけで、勝てるんですかね」

真桜「まぁ、聞きや。総数は二十万やけど、そのうち戦えそうなには・・・・・三万くらいやないかな」

秋蘭「・・・・・ふむ」

一刀「・・・・・・」

季衣「どういうことなんですか」

真桜「武器も食糧も全然足りてるように見えんのよ。その割には、さっきもどっかの敗残兵みたいなのが合流してかたら・・・・・」

凪「さっきの大兵力は、その非戦力を合わせた上での数ということか」

真桜「せや。あちこちで内輪同士の小競り合いも見えたから、一枚岩ですらないみたいや。指揮系統もバラバラなんちゃうかな?」

一刀「・・・・・大きくなりすぎも問題だな」

秋蘭「そういうことだ。受け入れる本拠地がないのだから陣内に取り組むしかないだろう。その結果が、あれだ」

凪「神出鬼没の大熊も、太りすぎればただの的、ということですね」

一刀「・・・・・凪、もう少し良い例えは無かったのか」

凪「す、すいません・・・・・・。しかし・・・・当初の予定通りの作戦で大丈夫でしょうか?」

秋蘭「問題なかろう。華琳様の本隊に伝令を出せ。皆は予定通りの配置で、各個撹乱を開始しろ。攻撃の機は各々の判断に任せるが・・・・・張三姉妹にだけには手を出すなよ。以上、解散!」

 

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黄巾党「張角さま!張宝さま!張梁さま!」

張梁「なに?慌ててるわね」

黄巾党「すみません!しかし急用だったもので・・・・・!」

張角「何なの?」

黄巾党「敵の奇襲です!各所から、火の手が!」

張梁「なんですって!」

黄巾党「各々でやっているようですが、火の手が多いのと誰に指示をすればよいかが分からず・・・・!」

黄巾党B「張角さま!大変です!火事です!」

張宝「あーー。もうーー!」

張梁「くっ・・・・・。無駄に増えているから・・・・・!」

黄巾党「どうしましょう」

張梁「ともかく、敵の攻撃があるだろうから、皆に警戒するように伝えなさい!火事も手の回るものが消せばいいでしょう!」

黄巾党「はいっ!」

張梁「・・・・・まったくもう・・・・・もう潮時ね。応援がどうこう言っている場合ではないわ。・・・・・よっと」

張角「何?その荷物」

張梁「逃げる支度よ。三人分あるから・・・・みんなでもう一度、やり直しましょう」

張宝「・・・・仕方ないわね」

張角「そーだよね。三人いれば何度だってやり直せるよね」

 

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桂花「華琳様、秋蘭たち先遣隊が行動を開始したようです。敵陣の各所からは火の手が上がりました」

春蘭「秋蘭から伝令が届きました。敵の状況は完全に予想通り、当初の作戦に奇襲を掛けると。こちらも作戦通りに動いて欲しいとの事です」

華琳「了解・・・・・桂花。決めておいた通りに動きなさい」

桂花「御意!」

春蘭「しかし、先日はあれほど苦戦したというのに・・・・・なんですか、今日の容易さは」

華琳「少数の兵で春蘭程度を扱える器はいても・・・・・あれだけの規模の兵をまとめ、扱える器はいなかった。ただそれだけよ」

春蘭「なるほど・・・・・って華琳様!それは酷いです」

桂花「華琳様!そろそろ、こちらも動こうと思うのですが・・・・・・号令を頂けますか?」

華琳「分かったわ・・・・・・・皆の者、聞け!汲めない霧は葉の上に集い、既にただの雫と成り果てた!山を歩き、情報を求めて霧の中を彷徨う時期はもうおしまい。今度はこちらが飲み干してやる番!ならず者どもが寄り集まっただけの烏合の衆と、我等のとの決定的な力の差・・・・・この私に、しっかりと見せなさい。総員、攻撃を開始せよ!」

 

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一刀「動いたか、華琳」

 

 

大地を揺らすは曹の旗を掲げた華琳の本隊。

 

 

凪「さすが華琳様。予定通りですね・・・・・」

 

 

一糸乱れぬ軍団は、混乱の極地にある黄巾党の大軍団とは雲泥の差。

 

 

一刀「俺たちも合流と行こうか。秋蘭と沙和の隊が右翼。俺たちは季衣と真桜と合流し左翼」

凪「はい。後は季衣と真桜が来るのを・・・・・」

季衣「兄ちゃーん」

真桜「一刀はん、おまたせー」

一刀「来たか」

凪「一刀様、指示を」

一刀「なんで、俺なんだよ」

凪「自分は、黄飛隊ですから」

真桜「うちもや」

季衣「ボク、そういうの苦手で・・・・・」

一刀「・・・・・凪、真桜は良いとして、季衣は成れておけよ。将軍なんだし・・・・まぁいい・・・・・・・・・・これより俺たちは本隊と合流し、左翼として攻撃を続行!ただし最優先事項は張三姉妹の生け捕り!総員、突撃せよ!」

「「「「「応ーーーーーーーっ!!」」」」」

 

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一刀の号令で左翼の部隊は士気が格段に上がった。

季衣は、愛用の反魔を振り、黄巾党を吹き飛ばす。

凪は、氣弾で一気に数人を吹き飛ばす。

真桜も負けじと、螺旋槍で一掃する。

一刀も右手に"桜華"持ち、舞の一つでも踊るかのように華麗に黄巾党を斬り裂いていく。

黄巾党の悲鳴は、一刀の所だけは無かった。一刀の剣舞は、黄巾の悲鳴が上がる前に消えていく。

 

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張宝「この辺りまで来れば・・・・・平気かな」

張角「もう声もだいぶ小さくなってるしねー。・・・・・でも、みんなには悪いことしちゃったかなぁ?」

張梁「難しい所だけれど・・・・・正直、ここまでのものになるとは思っていなかったし・・・・潮時でしょうね」

張宝「けど、これでわたし達も自由の身よ!」

張梁「・・・・お金ないけどね」

張角「そんなものまた稼げばいいんだよ」

張宝「そう・・・・そうよ!また三人で旅をして、楽しく歌って過ごしましょうよ!」

張梁「で、大陸一の・・・・」

張宝「そうよ!今度こそ歌で大陸一番に・・・・・っ!」

一刀「・・・・・・盛り上がっているところ悪いが、張三姉妹か?」

張宝「な・・・・・っ!」

張梁「く・・・・・っ、こんなところまで・・・・・!」

張角「・・・・・・・・」

一刀「大人しく付いて来てもらうぞ」

張梁「・・・・・付いて行かなかったら?」

 

 

一刀は、小さいものだが覇気を出して答える。

 

 

一刀「・・・・・・・殺す」

張三姉妹「「「・・・・・・・」」」

黄巾党「張角さま!」

一刀「っ!」

黄巾党「てめぇ!俺達の張宝ちゃんになにしようとしてんだっ!」

一刀「・・・・・・邪魔。・・・・・・・・"桜華一刀流"・・・・・・((桜龍円舞|おうりゅうえんぶ))」

張角「・・・・・・綺麗・・・・」

張梁「・・・・・諦めましょう、姉さん。・・・・・・いきなり殺したりはしないのよね?」

一刀「あぁ。我が主、曹操は君たち三姉妹の生け捕りを命じたからな」

張梁「・・・・・ならいいわ。投降しましょう」

 

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秋蘭「華琳様。敵部隊の追撃隊、出発させました」

華琳「後で暴れられても困るものね。まとめて捕まえて、郷里に送り返させなさい」

秋蘭「はっ」

華琳「・・・・・で、あなた達が・・・・・・張三姉妹?」

張宝「そうよ。悪い」

華琳「季衣、間違いない?」

季衣「はい。ボクが見たのと同じ人達だと思います」

一刀「しかし、どう見ても普通の旅芸人のようだが・・・・・」

張梁「・・・・・色々あったのよ」

華琳「色々ねぇ・・・・?ではその色々とやらを話してみなさい」

張宝「話したら斬る気でしょう!わたし達に討伐命令が下ってるのだって、知ってるんだから!」

華琳「それは話を聞いてからよ。それから、一つ誤解をしているようだけれど・・・・・」

張宝「何よ」

華琳「あなた達の正体を知っているのは、おそらく私たちだけだわ」

張宝「・・・・・へ?」

華琳「そうよね、一刀」

一刀「あぁ、張三姉妹はここ最近は、俺たちの領内から出てなかったろう」

張梁「それは、あれだけ周りの捜索や国境の警備が厳しくなったら・・・・・・出て行けないでしょう」

一刀「現状、首領の張角の名は各地に知られてはいたがな・・・・・・諸侯連中では、張角という正体は不明のまま」

張宝「・・・・・どういうこと」

一刀「誰に尋問しても正体を口にはしなかった。そういうことだ」

張梁「・・・・・そんな!」

華琳「それに、この騒ぎに便乗した盗賊や山賊は、そもそも張角の正体すら知らないもの。そいつらの出鱈目な証言が混乱に拍車をかけてね・・・・・・。確か、今の張角想像図は・・・・一刀」

一刀「あぁ・・・・・凪。持ってきてくれ」

凪「はっ」

 

 

凪は、一刀に言われ張角の想像図を持ってくる。

 

 

凪「一刀様。どうぞ」

一刀「ありがと・・・・・これだ」

 

 

広げられた、想像図は一言で表すと化け物。

 

 

張角「えー。お姉ちゃん、こんな怪物じゃないよー」

華琳「・・・・まぁ、この程度ということよ」

張梁「なにが言いたいの」

華琳「黙っててあげてもいい、と言っているのよ」

張宝「・・・・どういうこと」

華琳「あなた達の人を集める才覚は相当なものよ。それを私のために使うというなら・・・・・その命、生かしてあげるわ」

張梁「・・・・目的は?」

張宝「ちょっと、人和」

華琳「私が大陸に覇を唱えるためには、今の勢力では到底足りない。あなた達を力を使い、兵を集めさせてもらうわ」

張梁「その為に働けと・・・・・?」

華琳「ええ。活動に必要な資金は出してあげましょう。活動地域は私の領内なら、自由に動いて構わないわ」

張宝「ちょっと、それじゃあ、私たちが自由に動けないじゃない」

張梁「・・・・・待って。ちぃ姉さん」

張宝「何よ」

張梁「・・・・・曹操。あなた、これから自分の領土を広げていく気なのよね」

華琳「それがどうかして?」

張梁「そこは私たちが安全に旅が出来る所なの?」

華琳「当たり前でしょう。平和にならないのなら、わざわざ領土を広げる意味はないわ」

張梁「・・・・・分かったわ。その条件、飲みましょう。その代わり、私たち三人の全員を助けてくれる事が前提」

華琳「問題ないわ。決定ね」

張宝「人和なんで勝手に決めちゃうの?」

張梁「ちぃ姉さん。もともと選択肢なんか無いのよ。ここで断れば、私たちはこの場で殺されるわ」

張宝「むぅ」

張梁「生かしてくれる上に、自由に活動するための資金までくれて・・・・・正直、破格の条件だと、私は思う」

張宝「分かったわよ」

 

 

こうして、張三姉妹改め、天和、地和、人和が仲間に加わった。

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