えいぷりるふーる大謀戦! in 魏 〜謀略は女郎の如くあれ〜
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「はぁ〜……何でこんなことになったんだろう…?」

 

俺はため息つきながら、城内を歩く。

それは、十日ほど前のこと……

 

 

 

 

 

ある日俺は、華琳と軍師三人のお茶会に呼び出された。

面子からして、よからぬ予感がビンビンなんだが…

 

嫌な予感と言うのは当たるもので、華琳は俺が顔を出すなり

 

「一刀、洗いざらい吐いてしまいなさい」

「は?」

 

いきなり何を言ってらっしゃるの、この娘は?

 

「一刀殿。華琳さまは、天の行事に深い興味を持たれているのです」

「だから必要なことをさっさと吐いて、さっさとこの場を去りなさいよ」

「まぁ〜、度々あのような騒ぎを起こされては、こちらもたまったものではありませんから〜」

 

要するに、天界の行事が知りたいと。

……バレンタインデーもホワイトデーも、俺のせいじゃないんだけどな?

 

「今のうちに私たちに話しておけば、誰かの抜け駆け……コホン、騒ぎを食い止められると言うわけよ」

 

華琳…今、抜け駆け、って言ったよな?

 

「まぁ、事情は分かった。…と言っても、前の二つみたいな行事は、そうそうないぞ?」

「そうなの…?」

「ほぅ…?」

 

……なんで、華琳と風ががっかりするんだ?

 

「それで一刀殿。そのような行事以外で、何かないのですか?」

「ん〜〜…ホワイトデーが終わって、四月って言うと花見かな?花見は、こっちでもやるんだろ?」

「え、えぇ。もちろん、春の花を愛でることはするわよ」

 

春の花と言っても、日本のように桜ではなく、桃の花だ。

 

「いやまぁ、天界での花見ってのは、花を見て愛でると言うよりは、花の下で飲んだり食ったりするんだよ。下手すると花が咲く前や、散った後でも、花見をする人たちもいるくらいなんだ」

「はぁ?花見なんでしょ?何言ってるのアンタは」

「ま、飲む口実が欲しいだけなんだよな。言うだろ、花鳥風月って?」

「使い方に疑問は残るけど、言いたい事は分かるわ。花を愛でながら、皆で酌み交わすと言うのも、確かに乙かもね」

「霞ちゃんが喜びそうですね〜」

「…確かに」

 

霞にこの話をしたら、俺たちはすぐにでも花見に狩り出される(?)だろう。

 

「それで、他にはないの?」

「他か…そうだな……」

 

んーーー…と

 

「…あ、そうだ」

「何かありましたかー?」

「あるにはあったけど、行事って訳じゃないなぁ〜…」

「とにかく言ってごらんなさい」

「まぁ、華琳がそう言うなら……天界には、エイプリルフールっていうのがあるんだ」

「「「えいぷりるふーる?」」」

 

初めて聞く単語に、みんなが同様の反応を示す。

 

「これまた、不思議な響きの言葉ですねぇ〜」

「それは一体、どのような行事なのですか?」

「んまぁ、行事って言うか、この日は嘘をついても良い、って日なんだ」

「はぁ〜?何よそれ。他の日は嘘をついちゃいけないってわけ?」

 

桂花は、さもおかしいと言うばかりに、鼻で笑い飛ばす。

 

「天界には、特に俺のいた国には、あまり戦がないからな。騙し合うって事が少ない。それに国の根本が商業なんだ。やっぱり信用が第一だし、嘘をつくことは、あまり美徳とはされていないんだ」

「確かにそうね。戦術規模での謀ならともかく、戦略規模や平時の契約で虚偽を働くようでは、その人物の資質が問われてしまうわ」

「そしてこれからは私たちも、卑劣な嘘や暴力を罷り通さず、真面目に田畑を耕す人や、商いに勤しむ人たちが報われる国を、作っていかなければならないのですー」

 

その場にいる全員が首肯する。

今、風が言ったような国を作るための、戦いがあったんだ。

そしてそれは、徐々に形になっている。

 

 

…………

……

 

 

「まっ、そういうわけで、嘘をついても良い日ってのを作ったわけだ。…と言っても、本気で嘘をつくんじゃなくて、冗談みたいなもんだけどな」

「なるほどね…」

 

華琳はそう言うと、あごに手を当てて考え込む。

華琳の思案を邪魔しないようにと、再び沈黙が辺りを包む。

しばらくすると、華琳がにやりと笑い、口を開いた。

 

「…面白そうね」

「……は?」

「戦がなくなったのはいいけど、やはり謀略の訓練もしなければならないと思っていたところなの」

「はぁ…」

「かと言って、日常で訓練は難しいし……この、えいぷりるふーるを使って、謀略大会を開きましょう!」

「はぁあ〜〜〜!??」

 

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翌日、曹孟徳の名の下、城内に触れが出された。

 

 

 

『来る四月の朔日、えいぷりるふーる謀略大会を執り行う

 

 一つ、参加希望者は、事前に申し出ること。締め切りは、大会の三日前とする

 一つ、優勝者には、曹孟徳から直々に褒美を下賜する

 一つ、参加したにも関わらず誰も騙せず敗退した場合、厳罰に処す

 

 

 大会規則

 

参加者同士が出会った場合、必ず会話をし、騙し合いを始めること

誰か一人が敗退するまで、会話を続けること

 

 大会期限・四月朔日の日の出をもって開始し、日の入りをもって終了とする

 勝利条件・相手に嘘を信じさせる、または相手の嘘を暴く。あるいは本当のことを嘘だと相手に言わせること

 敗退条件・相手の嘘を信じてしまう、または相手に嘘を暴かれる、あるいは本当のことを嘘だと相手に言ってしまうこと

 一度敗退したものは、大会への参加資格を失う

 

 また、日の入りまでに参加者が一人とならなかった場合、全員を敗退扱いにする

 日の入り前までに、自分以外全ての参加者がいない場合、その者を優勝とする

 騙した人数は問わない

 

 

 先の先で、会話の主導権を握り、己が勝利条件を満たすも良し

 後の先で、あえて会話の主導権を握らせ、相手の敗退条件を満たすのも良し

 

 審判は別途設けるが、勝敗は己が誇りの問題である。

 負けを潔く認めることも、大事なことである。重々承知せよ。

 大勢の参加を期待する。

 

                                             曹孟徳

 

                                  荀文若 郭奉孝 程仲徳』

 

 

 

曹孟徳の名において発布されたこのお触れには、魏の頭脳である荀文若、郭奉孝、程仲徳の軍師三人の連名もある。

こう書くと誰のことかさっぱりだが、桂花に稟に風の三人だ。

普段生活していると忘れてしまうが、彼女らは恐ろしく優秀な頭脳を持った軍師なのだ。

 

あの三人の連名を参加宣言と受け取ったのか(実際参加するのだが)一応、全ての将・兵卒・役人その他その他、に開かれた大会だったのだが、エントリーはほとんどないらしい。

まぁ、軍師三人が相手では、華琳からのご褒美の目はほぼない。

罰則規定もあることから、こうなることは火を見るより明らかだ。

そんな中エントリーしたのは、春蘭に秋蘭、季衣と流琉の四人だけだった。

 

「……はぁっ!?」

 

 

…………

……

 

 

季衣はともかく(でもないが…)春蘭がどうして参加するのっ!?

大会の意義を勘違いはしてるんじゃないか?

とりあえず、本人に聞いてみることにした。

 

俺は廊下を歩く、春蘭と秋蘭を見つけた。

 

「お〜い!春蘭、秋蘭」

「ん……何だ、北郷か」

「どうした一刀。何か用か?」

「うん。春蘭に、少し聞きたいことがあってな」

「私に?」

「あぁ…なぁ、春蘭?春蘭はどうして、今度の大会に出ようと思ったんだ?」

「はぁ?何を言ってるんだ。馬鹿か貴様は?」

 

…………

…はっ!

春蘭に馬鹿と言われて、ショックのあまり、一瞬意識が飛んでしまった…

 

「華琳さまが、御自ら褒美を下さると言うのだ。どうして私が出ずにいられようか!」

「いやいやっ!…だって騙しあいの大会だよ?春蘭に勝ち目があるわけ……」

「馬鹿にするな!私とて一軍の将だ!!謀の一つや二つ、朝飯前さっ」

 

わっはっはっは…と笑い声を残し、春蘭は去っていった。

 

「……秋蘭」

「なんだ、一刀?」

「春蘭が何か、自分で計略を使ったことは?」

「……私が知る限りでは、無いな」

 

………秋蘭が知らない春蘭ってのを、見てみたいもんだな。

 

「ん、まぁ…春蘭のお守り。頑張ってよ、秋蘭」

「……さぁ、どうだろうな?」

 

にやっと笑い、返事をぼかして秋蘭も去っていった。

 

 

…………

……

 

 

次いで、中庭で鍛練中の季衣と流琉を見つけた。

声をかけても相変わらず気付いてもらえず、何度か死にそうになったけど…

 

「ん…?兄ちゃんだ〜。どうしたの〜?」

「兄様?いらっしゃったんですか?」

「あ、あぁ、まぁね……」

 

今度から、鍛練が終わるまでは離れて待とう。

 

「二人とも、今度の大会に出るんだって?」

「あぁ、うん!出るよ〜♪」

「え、えぇ…一応」

 

……やっぱり、季衣が流琉を引っ張って参加した感じかなぁ〜

つーか春蘭もそうだけど、分かってるのかな?

……これ、個人戦だぞ?

 

「え〜…っと、またどうして、季衣は大会に出ようと思ったんだ?」

「だって兄ちゃん、華琳さまからのご褒美だよ!きっと、すごく美味しいものに決まってるもん!!」

「あ〜…そうだな、季衣。決まってる…かも、な?」

「はぁ……」

 

嘆息し、頭を押さえる流琉。

……流琉も苦労するなぁ〜

 

「…まぁ、陰ながら応援してるから、頑張れよな?」

「うんっ、ありがとう兄ちゃん!もしボクが優勝したら、ご褒美、兄ちゃんにも分けてあげるからね!」

「お、おう……流琉も、頑張れよな?」

「はい…私、頑張ります……」

 

流琉の、半ば悲壮な決意を聞き届け、俺はその場を後にした。

 

 

 

 

 

「で、霞は出ないんだ?」

 

またある日、俺は霞、沙和、真桜、凪の四人と一緒に、食後のお茶と洒落込んでいた。

話題は自然と、今度の大会に。

 

「あ〜〜、アカンアカン!ウチ、あぁいうのはアカンねん」

 

霞は椅子の背もたれに片腕をかけ、もう片方の手を顔の前で大仰に振った。

 

「えっ、そうなのか?」

「そらぁ〜必要とあらば計略も使わんでもないけど、やっぱりウチは正面から正々堂々が好っきゃねん」

「なるほど…」

 

確かに霞は一人の士としても、一軍の将としても、それを可能にするだけの能力がある。

やって出来ないことはないが、霞の気性からして、騙し合いのようなことは好きではないのだろう。

 

「それで、お前らは?」

 

俺は三人に話を振る。

 

「隊長…いくらウチらが祭り好きやからって、何でもかんでも飛びつく思たら大間違いやで…」

「なのー」

 

いや…別にお前らが祭り好きかっつーのは、そんなに関係ない気がするんだが…

 

「軍師殿が三人も出られるとあっては、私たちに勝ち目はありませんからね」

「まあな」

 

これが一応、一番常識的な意見だろうな。

 

「それに個人戦ってことは、私たちの中でも戦わなくちゃいけないの〜」

「せや。団体戦ならともかく、個人戦じゃちょっと勝ち目ないで」

「そうなんだよなぁ…」

 

そこの所を、どうも春蘭と季衣は分かってないみたいなんだよな…

 

「じゃあ、みんなは当日は普通に仕事か?」

「いえ、私たちは華琳さまから審判の依頼を受けまして」

「審判?」

「えぇ、お触れの中にも書かれていましたが、勝敗を見定める審判です」

「まぁー華琳が言うには、当事者同士で勝ち負けを認め合うのがいっちゃんえぇっちゅーことなんやけど…」

「参加者ん中には、自尊心がめっちゃ高い人もおるし…」

「一応って感じなの!」

「一応、ね…」

 

そんなんで良いんだろうか?

 

「ま、揉め事が起こったときの仲裁人ってやつやな」

「そういう事です」

「…まぁ、よろしく頼むよ」

「それで、一刀はどないすんのん?」

「ん?…一応その日、俺は非番なんだけど…華琳から何も言われてないしなぁ〜…」

「でしたら、華琳さまにお尋ねになられては?」

「ん〜…そうだな。後でサボってたとかで怒られたら嫌だしな。今から行ってくるわ」

「いってらっしゃいなのー」

 

俺は華琳のところへ御用聞きに行った。

 

 

…………

……

 

「あなたは出場するのよ、一刀」

「……はい?」

 

なんだって?

 

「あなたの話を基にした大会ですもの。あなたが参加するのは当然でしょう?」

「当然……なのかなぁ…」

「思ったより参加者も集まっていないみたいだし、大会を盛り上げてちょうだいね、一刀?」

「あ、あぁ……ちなみに、俺が一人も騙せなかったときは?」

「……例外はなしよ」

「…………」

 

春蘭辺りを捕まえよう。

俺は一瞬だけ、本気でそう考えた……

 

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で、当日と言うわけだ。

朝から大会が始まっていると言うのに、何故か俺は華琳に呼び出されていた。

……華琳のところに行くまで、誰にも会わなきゃいいんだけど。

 

 

 

 

 

一刀が華琳のところに向かうより、しばらく前…

日の出とともに、春蘭は動き出していた。

 

 

「よしっ!行くぞ!!」

 

部屋の窓から太陽が出たのを確認すると、自らの輝かしい未来に向け、春蘭は部屋を出た。

 

「お?」

「む…」

 

部屋を出たところで、隣の部屋から同じタイミングで秋蘭が出てきた。

 

「秋蘭…」

「姉者か…」

「…おはよう」

「あぁ……おはよう」

「「…………」」

 

…沈黙

それもそのはず。

ルールでは、日の出以降参加者と出会った場合、必ず会話をし、相手を負かさなければならない。

今、部屋の前で鉢合わせてしまった二人。

当然ルールは適用され、ここでどちらかが敗退するということになる。

春蘭は心の中で、この出会いを呪った。しかし、そうも言っていられない。

 

(すまんな、秋蘭……例え妹と言えど、蹴落とさねばならんのだ…勝負は、厳しいものなのだっ)

 

春蘭は前の晩、寝ずに考えた会心の嘘を口にした!

 

「秋蘭…今まで隠していたが、実は私は………男なのだ!!」

「…………」

(ふっ…完璧だ……)

 

春蘭の脳内シミュレーションでは、完璧だった。

 

(「実は私は男だったのだっ!」

 「そ、そうなの!!?」

 あまりにも大きな衝撃に、全ての者は思考が止まり、信じ込むに違いない!

 それが実の妹であれば、その衝撃は、私でも計り知れない……

 秋蘭……すまん!)

 

春蘭はこの嘘一つで、今日を勝ち抜く気でいた。

そんな春蘭を尻目に、秋蘭に動揺の色は見られない。

と、おもむろに秋蘭も口を開いた。

 

「……実はな姉者、私も一つ、隠していた事があるのだ」

「…ん?な、なんだ、秋蘭?」

 

勝利を確信していた春蘭は、虚を突かれる形になる。

あっと言う間に、会話の主導権は秋蘭に移った。

 

「実は……私は男だったのだよ、姉者」

「な、何ぃ〜〜〜!!?そ、そそそ、そうなのか!??」

 

驚天動地の如く、声を上げる春蘭。

 

(そ、そんな馬鹿な!…秋蘭とは小さいときから一緒に風呂にも入っているし、華琳さまと共に伽をしたときも……待てよ?そう言われてみれば、あったかも知れんな…アレが……)

 

重度の混乱状態に陥った春蘭は、あるはずのないモノまで見えてきてしまっていた。

 

「そ、そうか……秋蘭は、男だったのだな……」

(これからの付き合い方とかどうしたらよいか?うぅむ…男だからと言って、今までの態度を急に変えるのも変だし…)

「…姉者」

「…共に風呂に入ろうと誘われたら、どうしたらよいか…?しかし、今までは普通に入っていたわけだし…」

「姉者」

「はっ!……わ、私の体を狙われたらどうしよう!?い、いかんぞ秋蘭!私たちは姉弟であってだなっ…」

「姉者!」

「うわぁおっ!」

 

バネ細工のように、間近に迫っていた秋蘭から離れる春蘭。

防衛本能からか、胸の辺りを両手で隠している。

 

「な、何かな、秋蘭くん!?」

「嘘だ」

「ななな、な、何がだ?」

「だから…私が男だと言うのは、嘘だ」

「…………は?」

 

口はポカンと開き、目は丸。

言われたことの意味が分からず、春蘭の体中の細胞が一瞬眠り、そして……起きた。

 

「しゅ、しゅしゅ、秋蘭!!私を謀ったな!?」

「……姉者」

「な、何だ!!?」

「これは、そういう大会ではなかったか?」

「…………あ」

 

春蘭、大会開始直後に敗退…

 

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春蘭の敗退と、ほぼ同時刻

 

「う〜〜〜〜〜んっ!……今日も気持ちのいい朝だなぁ〜!!」

 

季衣は朝日と共に起床した。

意外にも(?)季衣は早起きだ。

毎朝、日の出と共に起き、流琉と共に軽く朝の訓練。

軽くと言っても、園丁†無双の皆さんを出動させないと言うことで、常人の基準から言えば決して軽くはないのだが…

 

…それはさておき、季衣にとって朝の訓練は鍛練の意味もあるが、何より朝ごはんを最高に美味しく頂き、一日を気持ちよく過ごすための意味合いの方が強かったりもする。

この日は大会と言うこともあり、朝の訓練はないのだが、習慣からいつも通り起きてしまった。

 

「んっ……んっ……」

 

部屋の中で軽く体を動かし、まだ少し寝ている体を起こす。

 

「よ〜〜しっ!!」

 

一通り体がほぐれたところで、パァンと頬を一叩き。

大会には必要ないが、愛用の大鉄球を手に部屋を出る……と

 

「「…あ」」

 

隣の部屋から同じタイミングで、流琉が出てきた。

それもそのはず。

毎日同じ時間に訓練に行くうちに、部屋を出るタイミングまでピッタリ一緒になっていた。

そしてそれは、訓練があろうとなかろうと、変わらなかったのである。

 

「流琉…おはよう」

「おはよう……季衣」

 

流琉はもちろんのこと、季衣も最低限のルールは理解している。

今ここで鉢合わせてしまった相手と、何をしなければいけないか。

そしてそのうちの一人に、何が待ち受けているかも……

だが季衣には、負けられない事情があった!

 

(華琳さまのご褒美は、きっと美味しいものに違いない!!)

 

先のホワイトデーの、一刀からのプレゼントは手袋だった。

それは季衣にとって、とても嬉しいものだった。

だがしかし、食べ物だと思っていた期待のモヤモヤは、未だ胸に燻っていた。

そして今度こそ、と意気込んでの今回の大会。

例え相手が流琉と言えど、負けるわけにはいかなかった。

 

季衣は一晩寝ずに考えた、会心の嘘を解き放つのだった!!

 

「流琉さ〜…ボク今日ちょっと、食欲がないんだよね〜〜」

「…………」

「…………」

「………嘘でしょ?」

「何で分かったの!!?」

 

瞬殺だった。

 

 

春蘭と季衣。

魏が誇る、前線最強の武将は、早々に姿を消すのだった……

 

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「華琳、いるか〜?」

 

俺は玉座の前に入った。

そこは、今日は大会運営本部となっている。

まぁ、本部と言っても、審判からの伝令を聞く人、そして記録係の二人。

これを親衛隊が交代交代で務めるらしい。

 

「あぁ…来たわね、一刀」

 

華琳は玉座にいた。

手元には書類や竹簡があるところから、仕事をしながら、大会運営委員長を務めているのだろう。

ま、何の役目があるわけでもないんだろうけど…

 

「何か用か、華琳?一応大会参加者だから、忙しいっちゃ忙しいんだけど…」

「分かっているわ。その大会のついでに、一つ頼まれごとをしたいのだけれど?」

「頼まれごと?」

「えぇ、実はね……」

 

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ところ変わって、許の城壁の上。

何故かこんな場所に、木箱が置いてあった。

良く見ると、穴が二つ開いている。

一体これは……?

 

 

 

 

 

「ふふふ…完璧だわ……」

 

私は木箱の中に身を潜めていた。

華琳さまが開催された、この謀略大会…

形式上は方々に参加を呼びかけていたけど、これは私に稟、風の三人の力量を見極めるための勝負に違いない。

 

「ということは、如何に騙したかより、如何に勝利したかが問われるはず…」

 

王者たる華琳さまは、正々堂々と勝利することを至上となさるけど、私たち軍師はそうではない戦い方もしなければならない。

 

「正を持って合し、奇をもって勝つ」

 

華琳さまが正を司り、そして私が奇を司る…

そして二人で、この魏という国を、頂にまで昇華させるのよ!

 

「華琳さまのお側付きに相応しいのは、この私……今日、稟や風に勝ち、それを証明してみせるわ!」

 

そのために、日の入り直前まで身を潜め、最後に残った稟か風と決戦よ!

 

…………

 

「…こんな格好で何やってんだ?」

「ひゃあっ!!?」

 

突然木箱が持ち上げられた。

誰!?敵襲!!?

振り返るとそこには……

 

「北郷、一刀?」

「おう」

「…………」

「…………」

 

 

 

 

 

三人を探すため城壁に上がったところ、コンポか何かと疑うような、音を発する木箱を見つけた。

耳慣れた声だったので、そっと近づき木箱を持ち上げると、そこには膝を抱えた桂花がいた。

……どこの蛇だよ。

 

「きゃああぁあぁぁぁ〜〜〜!!!」

 

桂花はビクンッと飛び跳ね、一気に俺との間合いを広げた。

 

「な、なな、何よ!!どうしてアンタがここにいるのよ!どうして私がこれに隠れてるって分かったのよ!?」

「そりゃ〜、この木箱はホワイトデーのときに桂花が使ってたやつだろ?それに…」

「…それに?」

「……声、丸聞こえだったぞ?」

「し、しまったーーー!」

 

…………

……

 

「ま、何でもいいや。桂花、華琳が呼んでるぞ」

「華琳さまが私をっ!?……何でよ?」

「さぁ?……分からんけど、なるべく早く来いって」

「ふ〜〜〜ん……」

 

何故か桂花は、俺を訝しげに一睨みすると、顎に手を当て考え込んでしまった。

そしてしばらくし、口を開くと……

 

「ふっ……嘘が下手ね、北郷一刀」

「……は?」

「そんな嘘で私を謀ろうなんて、百年早いわよ!」

「いやいやいやいや、本当だってば!さっき華琳に呼ばれて……」

「お黙りっ!この期に及んで、まだ白を切るつもり?華琳さまを出しにしてまで私を騙そうだなんて、恥を知りなさい!!」

 

参ったな……桂花はすっかり、華琳の呼び出しを大会のための嘘だと思ってやがる…

こういう場合って、どうすればいいんだろうな…?

 

「こういうときのために審判がいるのよね?誰かいるんでしょ!?出てきなさい!」

「……はぁ」

 

出てきにくそうに、城壁側から凪がぬぅっと姿を現した。

……城壁にへばり付いてたんだろうか?

 

「凪ね……さぁ!審判として裁定を下してちょうだい。そして高らかに、敗北者の名前を叫ぶのよっ!」

「はぁ、でしたら……桂花さまです」

「………へ?」

「規定により『本当のことを嘘だと言ってしまう』が適用され、桂花さまの敗退となります」

「な、なんですってーーーー!!!!」

 

 

……

…………

 

 

「えぇ、実はね、桂花、風、稟の三人に言伝を頼まれてくれないかしら?」

「言伝?」

 

華琳の頼みごとは、三人への言伝だった。

何でまた……

 

「……まぁ、構わないけど」

「それじゃ三人に、私が呼んでいると伝えてちょうだい」

「分かった……んと、急ぎの用事か?」

「いいえ、そこまで急ぎではないわ。でも、なるべく早くくるように言ってくれるかしら?一刀が三人を見かけたらで構わないから」

「ん、じゃあ行ってくるわ」

「えぇ、よろしくね」

 

 

…………

……

 

 

「な、何かの間違いじゃないの!?」

 

桂花は凪に慌てて詰め寄る。

肩をガクガクと揺さぶられ、凪も困り顔だ。

 

「い、いえ…確かに華琳さまは、桂花さまを呼んでいらっしゃいました」

「凪…あなた、こいつの部下だからって、肩を持ってるんじゃ…」

「今の私は一審判ですので、不正は致しません。それに、華琳さまの言を偽るなど、私に出来るはずがありません」

 

桂花のよからぬ嫌疑にも、凪は冷静に対処する。

……さすがだ、凪。

 

「納得できないのでしたら、直接華琳さまに聞いていただくしか……」

「か、華琳さまーーー!!!」

 

華琳は疾風の如く、華琳のもとへ向かった。

 

 

…………

……

 

 

「……俺、勝っちゃったのか?」

「はぁ…一応、そうなりますね」

「「…………」」

「おめでとうございます、隊長……」

「あぁ……とりあえずこれで、罰されることはなくなったな…」

「そうですね…」

 

こうして俺、北郷一刀は、優勝候補の一角・荀文若こと桂花に勝利したのだった……

それは制限時間を示す太陽が、中天にかかる頃だった。

 

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桂花が華琳の元に駆け寄った頃、あと二人の軍師も動き始めていた。

 

 

 

稟は張り切っていた。

 

(この大会で優勝すれば…か、かか、華琳さまの寵愛を、一手に集めることが……)

 

「っお!っと……危ない危ない…」

 

稟は鼻腔にほんの少し漂う鉄の香りに、鼻血の気配を感じ、妄想を止めた。

若干ながら、鼻血に対する自己防衛機能が備わりつつあった。

……あまり機能はしていないが…

 

「ふがっ…さてと、そろそろ私も動き始めるとしますか」

 

いざ華琳の寵愛へ、と廊下の角を曲がると…

 

「むっ…」

「り、稟さん!」

「流琉、ですか…」

 

流琉がこの日、二人目に出会ったのは、運悪く稟だった。

まぁ、この段階で残っている面子は、誰も彼も強敵なのだが……

 

「流琉は、もう既に誰かを?」

「えぇ、まぁ……季衣を、少々…」

 

歯切れの悪い流琉。

形はどうあれ、一応流琉は季衣を負かした。

なんてことはない、日常会話の中ではあったが…

 

「稟さんは、今日はもう、嘘はつかれたんですか?」

「えぇ、つきましたよ」

「そうですか……それは、大会でって事ですか?それとも……」

「…嘘です」

「はい?」

「先ほどの『私が嘘をついた』というのは、嘘です」

「えっと…さっきの『稟さんが嘘をついた』と言うのが嘘ということは、稟さんは今日嘘をついていないと言うことで…あれ?でも、さっきの言葉が嘘だと言うことは、嘘をついてるって事に……あれ、あれ?」

 

よくある、とんちのようなものだが、稟に言われたということもあり、流琉の頭では処理しきれなくなり、頭を抱えた。

 

 

…………

……

 

 

「えっと……すいません、稟さん。どうやら、私の負けのようです」

「賢明な判断、感謝します、流琉。私も仲間を騙すと言うのは、あまり良い気はしませんので…」

「そう、ですよね……でも稟さん、大会頑張ってくださいね!」

「はい。自分の力は出し切るつもりですよ」

 

こうして稟は、流琉に勝利した。

一方……

 

 

 

 

 

「…………」

「…………」

「………風か」

「……秋蘭ちゃんですかー」

 

魏軍において数少ない(?)知勇兼備の将である秋蘭。

その英知は、軍師を務める三人に勝るとも劣らない。

 

一方、風はどこか抜けているように見えるが、ここ一番の頭の回転は、他を圧倒することもある。

三国を見渡しても、随一の知将だ。

 

この二人が、一体どのような攻防を繰り広げるのか!?

魏に籍を置く士ならずとも、一見の価値があるに違いない!

 

 

………………

…………

……

 

 

「…………」

「…………」

「「……………………」」

 

…沈黙

時代が時代なら、放送事故となりかねないほどの、沈黙。

元々、二人とも多く語るほうではないものの、お互い全く口を開かず、四半刻弱。

しかしその間、視線はお互いに外すことはなかった。

 

……と、おもむろに秋蘭が口を開いた。

 

「ふっ……私の負けで良い」

「そですかー。ありがとうございます、秋蘭ちゃん」

 

無言の中で何を語ったのか。

二人は握手をし、健闘を讃えあった。

 

「なに…あの規定に沿い、負けぬ戦いをするならば、相手に何を言われようとだんまりを決め込めばいい。ただ、これは千日手になるからな」

「そうなんですよ〜…だから、相手が秋蘭ちゃんでよかったですー」

「まぁ私は元々、姉者に無理やり出場させられたようなものだからな。それほど勝利にこだわりはない」

「そですかー。まともに秋蘭ちゃんとやり合うことにならなくて助かりましたよ」

 

声の調子からは判断しにくいが、風なりに胸を撫で下ろしているようだ。

そんな風を、秋蘭は何かを探るように、じっと見つめる。

 

「風……お前、何か企んでいるな?」

「…いやぁ〜、秋蘭ちゃんにはかないませんねぇ〜」

 

やはり分かりにくいが、風は図星を突かれたらしい。

 

「まぁ、せいぜい頑張ってくれ…」

「はいー。ありがとうございますー」

 

果たしてその企みは、大会で優勝するための企みなのか

それとも……?

 

-8ページ-

 

俺は桂花に勝った(?)あと、稟と風を探して再び城内に戻ってきた。

が、懸命の捜索にも二人の姿は見つからなかった。

いい時間なので、ここで俺は一旦休憩することにした。

 

(グゥ〜〜〜……)

 

休もうと思った途端、腹の虫が鳴き出すわけで…

何か食べようと、厨房に顔を出すと……

 

「あれ?稟」

「これは、一刀殿」

 

稟が昼食を取っていた。

メニューを見ると、豚のレバーの唐揚げに、鰹節がかかったほうれん草のおひたし。

………鉄分補給、かな?

 

「一刀殿も食事ですか?」

「あぁ、そのつもりだよ」

「でしたら、そちらへどうぞ」

 

と、稟は向かいの席を示した。

 

「お、サンキュ」

 

俺はありがたく稟の申し出を受け、席に着く。

 

「これ食べますか?精力もつきますよ?」

 

何を気遣ってか、唐揚げを勧められる。

 

「お、おう…頂くよ」

「流琉のお手製ですから、美味しいですよ」

 

口にすると、確かに美味い。

血抜きがしっかりされていて、レバー特有の臭みが一切ない。

かと言って旨味も逃がさず、下味もバッチリだ。

さすが流琉…いい仕事してるぜ!

 

「美味いな、これ!」

「えぇ……ところで一刀殿。大会は順調ですか?」

「ん……まぁな。一応さっき、桂花に勝ったよ」

「………そうですか」

 

お互い大会参加者と言うことか。

稟は少し俺の発言を値踏みしたが、嘘ではないと判断したのだろう。

まぁ、特別俺は勝つ気はないんだけどな?

 

「そういう稟はどうなんだ?まだ誰かに負けたりは、してないよな?」

「えぇ…私は先ほど、流琉に勝ちました」

「そっか、まぁさすがって感じだよな」

 

他の人には悪いけど、そう簡単に稟が負けるわけないもんな。

 

「…あ、そうそう、忘れるところだった。稟に言伝があったんだ」

「……言伝?」

「あぁ、華琳からなんだけどさ…」

「か、華琳さまからっ!?」

 

ガタッと椅子を倒して立ち上がり、俺に迫る稟。

顔をグッと近づけられ、気圧される。

 

「あ、あぁ、そうだ……華琳が稟のこと呼んでるんだ。まぁ、そこまで急ぎじゃないみたいなんだけど…」

「華琳さまが……私のことを……」

 

…って、こりゃ後半聞いてないな?

 

「華琳さまが私を……あぁ、いけません!こんな日が高いうちから!!」

「…お〜い、稟さ〜ん?」

 

色々と叫びながら、身悶え始める稟。

な〜んか、この後の展開が見えないでもないんだけど…?

 

「そんなっ…そんな所に……あぁっ!動いてる!動いてます!!」

「稟!?おい稟!!」

「華琳さま…あぁ、直接そんな…あぁ、あぁぁ………」

 

ビクンビクンッ、と稟の体が跳ねた。

かと思うと……

 

「ぶーーーーーーーっ!!!」

「あー……」

 

案の定、稟の鼻からは大量の鮮血が噴き出した。

先の料理のおかげか(?)いつもより多めに出ております……

 

「っておいっ!マジで止まらないぞ!?」

 

床に出来た血溜まり湖の中央で横たわる稟からは、未だに滾々と血が溢れ出ている。

 

「ちょっ……お〜い、誰か!メディック!!メディ〜ック!!」

「あ〜、そない大声出さんでも分かるわ!」

「真桜!!」

 

真桜が厨房の入り口から入ってきた。

恐らく、審判として俺たちの様子を影で伺っていたのだろう。

 

「お、おい真桜…これ、どうにかなるか?」

「どうにかせんとアカンのやろ……はぁ〜…ウチ、この手のボケは苦手やっちゅーてんのになぁ」

 

と言いつつ、稟のもとへ

鼻に何かを詰めると、面白いように鼻血が止まった。

 

「真桜?一体何を詰めたんだ?」

「ふっふっふ……備えあれば憂いなし!こんなこともあろうかと、っちゅーやつや!!」

「えー……っと?」

 

いつもの真桜のご都合主義。

胸を張られても、説明してもらわんと分からん。

 

「まぁ万が一、稟のこういうところの遭遇したら敵わんっちゅーことで、風から鼻紙を借りとったんや」

「風から?」

「せやっ!毎度毎度、稟の鼻血を止めるんわ、大抵風の鼻紙やっちゅーことに気がついたんよ。それで、事前に何枚か貰っといたってわけや」

「なるほどな…」

 

風の鼻紙は、対稟用の魔法でもかかっているんだろうか?

 

「ところで、稟は大丈夫なのか?」

「まぁ、命に別状はないやろうけど、今日は安静にせなあかんやろな」

「そっか……」

「っちゅーわけで、この勝負稟の負傷退場によって、隊長の勝ちや!」

「……へ?」

「『……へ?』やあらへん。稟をこないしてもうたんやから、ツケは埋めてもらわんと」

「あ、あぁ……そうだな」

「ウチは稟を、部屋に寝かせてくるわ」

 

そう言うと、真桜の新作か、ストレッチャーみたいなものを引っ張り出し、それに稟を乗っけた。

 

「いや、でもさすが隊長やわ。桂花と稟に勝ってしまうなんて」

「……まぁな」

「これで大会がますます面白くなったわ!大本命の桂花と稟が負けてまうんやからな」

 

……もしかして、華琳の狙いはこれか?

 

「じゃ、ウチは行くで。隊長、ここまできたら優勝狙ってまいや!あと残ってるのは風だけやからな〜」

 

と、真桜は行ってしまった。

……これで勝っちゃったら、一体どうなるんだろう?

 

…………

……

 

ま、とりあえず気にせず、改めて風を捜すことにした。

 

-9ページ-

 

太陽が傾き、空が夕焼け色に染まる頃

中庭に、長く伸びる影が二つ、あった。

 

「風、まだ残ってたんだ。さすがだな」

「そういうお兄さんもー」

 

この時間で出会ったと言うことは、恐らく最後の二人。

この大会の決勝戦と言うわけだ。

……と言っても、華琳に言われた事を言っていったら、桂花と稟に勝っちゃっただけなんだけどね?

どうしよう……大会が終わるまでは、風に言伝しない方がいいんだろうか?

いや、でも……

 

「「…あの さ」ですね」

 

同時に喋りだす。

 

「あー……なんだ?風から喋ってくれていいぞ」

「いえいえー、私のは大したことでもないので、お兄さんからお先にどうぞ〜」

「そうか?じゃあ……」

 

本当に用があったら事だし、一応話しておくか…

 

「あのさ、風。華琳が呼んでるんだけど…」

「…………」

 

返事がない。

やはり、大会中に伝えるのは無理か……

 

「そですかー、分かりました。後で伺うことにします〜」

「………え?」

 

あっ……そうか!

別に嘘をついているわけじゃないんだから、普通に会話すりゃいいんだ。

桂花と稟が、ああだったから、逆に新鮮だ。

 

「あぁ、よろしく頼むよ。…ところで、風の話は?」

「いえいえ、お兄さんのお話と比べたら、取るに足らないお話なのですが〜…」

「この際だしさ、どんなことでも、とりあえず話してみてよ」

「そですか?じゃあ……」

 

と、風は折り目を正し、俺に向き直る。

 

「実はですね……来ないのですよ〜」

 

来ない?

 

「え〜っと…何がだ?……あ、猫か何かかな?」

「いえ、そうではなくてですね……いわゆる一つの『女の子の日』ってやつが〜」

「………………は?」

 

今なんて?

オンナノコノヒって?

 

「「「えぇ〜〜〜〜!!!!」」」

 

絶叫と共に、そこかしこから審判をしている面々が現れる。

青い顔をしてる者、赤い顔をしてる者。

反応はまちまちだ。

 

「ふ、ふふっ、ふっふふふっふっ…!」

「姐さん落ち着き!字だけ見てると、笑ってるようにしか見えへんで」

 

かなり青い顔をして風に詰め寄るが、動揺を隠せない霞。

 

「隊長……っ!」

「隊長!これは本当なのっ!?」

 

俺には凪と沙和が詰め寄ってくる。

 

「い、いやいや!俺に分かるわけないだろ!?」

「…本当ですか?」

 

冷たい!凪の視線が冷たい!!

 

「……隊長♪」

「な、なんだ…?」

 

急に沙和が明るくなったんだけど…

 

「た〜いちょっ、心当たりとかは、ないの〜?」

「こ、心当たりなんか、あるわけっ……」

 

ないこともないんだけど……

 

「あぁ〜お兄さん。そんなつれないことを言うんですねぇ〜……あの夜は風の耳元で、あんなに激しく愛を囁いてくれたというのにぃ〜」

「な…っ」

「「「に〜〜〜〜!!!!」」」

 

何で!?どうして風さんは、炎にガソリンをぶちまけるような真似をするのかな、かなっ!??

 

「隊長……」     「か〜ずと〜〜…」

     「隊長ぉ〜?」       「隊長!!」

 

ジリジリと俺に詰め寄る、凪以外の三人。

目が完全に、戦場での武将の目だ!

凪は俺に詰め寄らないまでも、氷のように冷たい視線で、俺を射抜く…

 

「ま、待て…話せば、話せばきっと……分かり合えるはずだ!!」

 

と、戦場で吼えたところで、果たして何人の将が、話し合いに応じてくれるだろうか?

そうこうする間にも、包囲網は確実に狭まっている。

 

…………

 

何かある度に、こうなるのは極めて遺憾だが……男にはそうしなけりゃならないときも、あるっ!!

 

 

 

 

 

「逃げろ!!」

 

一刀は完全に包囲される前に、さっさと逃げ出した!

 

「あ〜〜!!また逃げたの!!」

「沙和!真桜!追うで!!」

「「応っ」なの!!」

 

逃がしてなるものかと、霞を先頭に、沙和と真桜が後を追いかける。

その場に残されたのは、凪と風。

凪は何故この場に残ったのか?

それは、どうしても確かめたいことがあったからだ。

 

「風さま……お聞きしたいことがあるのですが…」

「なんですか〜?」

「先ほどの、その……隊長のお子を授かったと言うお話は、本当なのですか?」

「…………」

 

凪の問いに、だんまりの風。

やがて風は、その日一番の笑顔でニコッと(ニヤッと?)微笑み

 

「さぁ〜、どうでしょうねぇ〜?」

 

と言い残すと、悠然とその場を去っていった。

 

 

 

 

 

風が真相を語らないため、また一刀の敵前逃亡のため、風と一刀の勝敗は闇の中。

結局、勝者なしということで、華琳のご褒美にありつける者は、誰一人としていなかったのであった。

説明
約三週間ぶりご無沙汰です、DTKです。

毎度毎度ですが、前置きが長くなりまして申し訳ありません。
個人的に後書きを書くのがあまり好きではないので、書きたいことは全てこちらに書かせて頂きます。


これは前作を書いている最中に浮かんだものですが、実際の日から二週間以上遅れるという体たらくです^^;
こういった行事もしばらくないので、次は前に凪にスポットを当てて書いた『外史○○伝』をやりたいと思っています。
http://www.tinami.com/view/55935
もしもリクエストなどありましたら、応えられるか分かりませんが、よろしければお願いします^^
と言っても、気まぐれに全然違うものを書くかもしれませんが…^^;

今作中、他の方の作品のネタと丸被りの部分ございますが、一応構想段階からあったことをお断りしておきます。
どうかご了承下さいm(_ _)m

サブタイトルの出典は、自分の好きな漫画からです。
響き重視で、内容とはあまり関係ありませんw

今作の翌日、罰の執行のお話も用意しているので、折を見て投稿するかもしれません。
楽しみに待つという方いましたら、待っていて下さい^^


また、前作で初めてランキングを獲得しました!
これも皆様のご支援あってのことです。
真にありがとうございます!
よろしければ、今後も変わらぬご支援、よろしくお願いします^^


さて、前置きも長ければ本編もかなり長いです。
お時間ありましたら、是非読んでみてください^^
ご意見ご感想、誤字脱字、またリクエスト等々ありましたら、どしどしお寄せ下さい!
よろしくお願いしますm(_ _)m
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コメント
リー>見事にオチました^^ やっぱり風が最強です!w(DTK)
風かわいいw 最後の展開、最高でした(ボボボ10)
motomaruさん>ですっ!!(DTK)
やはり風が最強か!!(motomaru)
ブックマンさん>実は風が魏最強かと!(DTK)
だめぱんだ♪>桂花も稟も、華琳を害する敵には無類の強さを発揮するんですが、それ以外やそれが裏目に出ることも…w(DTK)
フィルさん>実は特に用事はなかったり…w(DTK)
キーパーさん>この世の真理です^^(DTK)
Poussiereさん>華琳が参加すると、それだけで半分は無力化してしまいますからね…^^;次は参加の方向で!(DTK)
ルーデルさん>あの深い笑みには、男は吸い込まれますからねw(DTK)
零壱式軽対選手誘導弾さん>風の魅力に、自分の筆が追いつかないのがもどかしいです^^;(DTK)
逢魔紫さん>本当に何でも許される娘です^^(DTK)
komanariさん>面白くするためには、あらゆる手を尽くしますから^^(DTK)
@@さん>風と秋蘭の一戦を白熱させると、恐らくそれだけで一話になりますからね^^;(DTK)
sinさん>きっと、永遠に春蘭はこのままです^^(DTK)
cheatさん>風の手は既に自分の手を離れていますw(DTK)
wataさん>ですねw(DTK)
いつもながらみごとですね風は・・・みんな手のひらで踊ってるよwww(ブックマン)
さすが風w確かに一番冷静沈着な風が一番強そうですねー。桂花も稟も精神的に穴がありすぎw(だめぱんだ♪)
風はやっぱり可愛いなwww でも華琳の用事ってなんだったんだろ???(フィル)
かわいければ許される!(キーパー)
風・・・・・かわいいぞ〜wwww  個人的に 華琳も参加していればさらに面白い事があっただろうなって思いました^^;w(Poussiere)
微笑みながら破滅させそうな・・・ww(ルーデル)
風め!!! かわいすぎるぞ!!!(零壱式軽対選手誘導弾)
さすが風・・・でも可愛いから許すw(トウガ・S・ローゼン)
華琳の策略がすごいですねw(komanari)
春蘭、いつまでもバ…もとい素直な君でいてww(sin)
勝つべくして勝つ まさに最高の妙手ですね ( ̄▽ ̄;(cheat)
風、恐ろしい子・・・www(wata)
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