小説17
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車でさんざんっぱら走り回って、やっとこさ、荷物置き場の倉庫の前までついた時点で、―その時、時刻は既に夜の時間帯で軽く8時は超えていた―澄のヒステリーは正に頂点に達したかのようだった。たった今辿り着いたばかりの荷物収容所のすぐ目の前の地面の上にへたりこみ「私、長時間のドライブでとっても疲れてしまったからもう一歩も動けない、お願い後はあなたが全部きちんと中に運んでちょうだい!」などと甲高い声で叫んでその場にへたりこんだまま一歩も動こうとしなかった。そのような行動はいつものことだった。

 

しかし、だからといって本当に芯からか弱いお嬢様タイプでもなんでもなく、本気で動けばハイヒールの足であっても、驚くようなハイスピードで運動靴の時と殆ど変わらぬ速度で走り回ることも平気だった。このような状況下になっていた原因の多くは、その状況に陥る直前にたいてい出会い系で知り合った男にかなりの高額な洋服やアクセサリー類を買わせていた。

 

―澄は生まれつきお洒落で華麗な装いがお好みでそのような雰囲気を演出するために必須な高品質な服飾品やアクセサリーを常に身辺にそろえておく事を常識としていたが、その時は、いつも手段を選ばなかった―なので澄は、いつでも誘いがかかればそれなりの金持ちの相手をするための準備はいつも整っていたのだ―

 

買い物が全て終わった後は、都内の通り抜けできる一方通行の穴場に即効で駆け込み驚くほどの速さで駆け抜け、まるでこそどろのようにその場から姿を消し去っていた。さっきまで買い物が終わったら澄と心行くまでデートを楽しめると思っていた買い物の主はその場に呆然と立ち竦んでいたり、後部から外に出ることができる作りになっているトイレから逃げられてしまい喫茶室やレストラン内に待たされていた場合は、いつ澄が帰ってくるのかと心配そうに、ご苦労様にもずっと喫茶室やレストランの席で待ち続けていたのだろう。

 

だが、今日は走ったりしない、そればかりか、走ったりすることもありえないかのようにその場にへたりこんで、いけしゃあしゃあとお芝居をしている。自分はか弱いお姫様で体力はまったくないふりだろう。しかし、その場の状況の変化だけでどうしてこうも変われるものなのか。順応性があると言えばそれまでだが。

 

車でコスプレのパンパンにつまった大き目のたくさんのダンボールを運んだ男は結局一回では運びきれず、二往復もしてしまった。運ぶたび一緒に車で同乗した澄とその友人の二人のうち澄は車から外にすぐ出たが友人は少し車の中で休んでから外に出た。その時点で既に澄は、高度のヒステリー状態に陥っていた。

 

「この倉庫の中にはいつまで保管して置けるの?」

「ずっと大丈夫だよ、僕が倉庫の鍵を持っているからきちんと管理しておくよ」

「本当に!?じゃあ頼んだわよお願いするわ、きちんと荷物を大事に預かっておいてね」

「もちろん、そのつもりだよ」

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倉庫での男と澄の会話は以上のような内容だった。結局その場はどうにかこうにか荷物の収容が終わり、―男が一人で運んで整頓していた―無事に家路に辿り着くことができた。その後、京都にいる間二度とその倉庫の話題は澄の口から出ることはなかった。ただ、たとえそうであったとしても、もしも澄がその男に連絡をとる前に男が勝手に澄が預けてあったコスプレのたくさんつまっている大きな段ボール箱の山の全てを勝手に除去したり、何処かに捨ててしまったなら、その後その事実が澄の耳に入ったら、とてつもなく恐ろしい事態になることは間違いなかったと思う。もしそういう行動を荷物を預けた相手が仮に取ったとしたらその後は、おそらく澄がそれ相当の代償を受けるまでは地獄の果てまで無責任な態度を取った相手を追い回すことは容易に想像がつく、澄とはそういう女なのだ。それは、たった一言ではとても簡単に説明できるような状況と自体ではとてもないことだけは本当だ。

説明
過去の体験談をおもしろおかしくアレンジして小説にしてみました。教養とたしなみのための訓練でもあります。><
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