リリカルHS 62話
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今日は12月31日。この世界における一年最後の日である。

日本では年末になると大掃除をするらしく、一年間で溜まった汚れを綺麗にし、

新年を新しい気持ちで迎えるのだとか。

うちでもその文化に乗っ取り、大掃除を実行する事にした

 

レーゲン「士希さん!寝室のお掃除、完了しました!」

 

士希「ご苦労だレーゲン二等兵!冷蔵庫のプリンを食う事を許す!」

 

レーゲン「ありがとうございます!」

 

レーゲンはピシッと敬礼し、そそくさと冷蔵庫に向かい、プリンを食べ始めた

 

タナトス「マスター、仕事部屋の掃除も終わりましたよ」

 

プロメテウス「主よ。こちらは窓拭きが終了した。ピカピカだぞ」

 

オケアヌス「風呂場も終わったぞ。ワシの力を使えば、風呂掃除なぞ容易い」

 

アルテミス「こっちも掃除機かけ終わったわ。まったく、ガイアは何をやってるのかしら」

 

他の神器も続々と掃除を済ませてプリンを食べ始めた。人手があると、大掃除も楽だな

 

ガイア「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!あたしを呼んだのは誰かしら!」

 

勢いよく玄関が開けられたかと思うと、ガイアがアクロバティックに登場した

 

士希「おうガイア、プリンあるけど食うか?」

 

ガイア「マジで!?食う食う!あ、それとこれ!バイト先のおすそ分け!」

 

ガイアは手にしていた袋をこちらに投げつける。

中身は…蕎麦か。何人前だこれ?かなりあるぞ

 

ガイア「んー!プリンうま!こりゃこの後のバイトもはかどるぜ!」

 

タナトス「そう言えば、ガイアは一人暮らしをしているのでしたね」

 

アルテミス「相変わらず自由ねー」

 

みんなプリンをつつきながら、和やかに談笑していた。

とても命を狙われていたとは思えない程、アットホームな空間である

 

ガイア「あ、そうそう。そう言えばさっきミネルバに会ったわ。

士希ん家に行くって言ったらよろしく言っといてくれって言われた」

 

は?

 

プロメテウス「ほう。あやつは元気か?」

 

ガイア「元気も元気!さっきもスーパーのタイムセールでママさん連中相手に奮闘してたぜ」

 

なんだその生活感溢れる神様。

ていうか、ミネルバもガイアと同じく、人間としてこの世界に溶け込んでいるのか

 

士希「ガイア、ミネルバの住所は知ってるか?」

 

ガイア「あぁ?いや、知らねぇな。ミネルバは何でも知ってるけど、

あたしらの中の誰一人として、あいつの事をよく知る奴ってのはいないんだ。

あいつは隠したがりだからなぁ」

 

そうなのか。だが、ガイアの話から察するに、ミネルバに闘う意思はない?

もし闘う気があるなら、当に向かって来ているはずだ。

用心深いのか、情報収集しているのか、それとも…

 

ガイア「ま、あいつの家わかったら教えるよ。さて、プリンご馳走さん。バイト行ってくるわ!」

 

士希「おう!蕎麦ありがとよ。バイト頑張れよ!」

 

ガイア「あぁ蕎麦な。それ、はやてにも分けてやってくれ。

多分、夜天の連中にやっても余ると思うからさ。じゃあな!」

 

そう言ってガイアは窓から飛び出して行った。あんまり目立つようなことするなよ…

 

士希「さて、ならプリンと蕎麦持って、はやてん家に行くか」

 

 

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俺は神器の連中でも食べられるように、蕎麦の下ごしらえと一品料理を何種類か作ってから家を出た。

今日くらいは神器の連中にも、ゆっくり休んでもらおう

 

レーゲン「こんにちはー!」

 

レーゲンはインターホンを押して挨拶する。程なくして、シャマルさんがやって来た

 

シャマル「いらっしゃい、士希さん、レーゲン君。さぁ、上がって上がって!」

 

あのクリスマス以来、シャマルさんは妙に上機嫌だ。

何があったかは知らないが、きっと良いことがあったのだろう

 

八神家に上がると、既に掃除が終わっていたことに気付く。

塵一つないとはこの事だろうか。とても綺麗に掃除されていた

 

はやて「おー士希!いらっしゃい!」

 

はやては俺を見つけるなり抱きついてくる。クリスマス以来、さらに距離が近くなった。

握られる手の薬指には、お揃いの指輪もはめられてある。なんか、幸せだなぁ

 

ヴィータ「おーす士希。相変わらず二人は仲良しだな」

 

ザフィーラ「良い事だ」

 

リイン「凄く甘い空間です」

 

ヴィータちゃんとザフィーラとリインちゃんもやって来た。

この三人とは特別変わることもなく、良い関係を築けていると思う

 

士希「ようヴィータちゃん。みんなにプリンを持ってきたんだ。よければ食べてくれ」

 

ヴィータ「お!さすが士希だな!ありがたくもらうぜ!」

 

リイン「まったく、これ以上甘い物を渡して、糖尿病にでもさせる気ですか?」

 

そう言いながらも、ルンルンとした様子でプリンを開けるリインちゃん。

まだまだ子どもだなぁ

 

シグナム「………」

 

そんな和やか空間を、シグナムはジッと見つめていた。

どうもシグナム、あのクリスマス以来様子がおかしい。

はやてに聞いても何もなかったと言うが、俺とはやてがイチャついているのに、

何も言わなくなったのはおかしい。いつもならここで剣が飛んでくるのだが…

 

士希「ようシグナム。お前もプリン食ってくれよ」

 

シグナム「……あぁ。いただくよ」

 

シグナムはプリンを手にし、何処かをチラチラと見ながら食べ始めた。視線の先は…

 

シャマル「ふふ!」

 

んー?

 

 

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士希「さぁみんな!年越し蕎麦できたぞ!」

 

俺は蕎麦を準備し、リビングへと持っていく。はやては一緒に蕎麦を用意してくれて、

レーゲンとヴィータちゃんとシャマルさんとリインちゃんはテレビを見て爆笑していた。

シグナムとザフィーラはツマミを食べつつ、その様子を楽しんでいるようだった

 

レーゲン「んー!お腹空きました!」

 

士希「はは、さっきまで結構食ってたじゃねぇか!」

 

この年越し蕎麦を作る前に、俺はみんなが食べられるように軽い一品ものを何種類か作ってあげたのだ。

軽いとは言え、結構な量を作ったため、腹一杯になっていると思ったが、そんな事はなかったらしい

 

俺とはやては蕎麦を配り終え、それぞれ空いている所へと座る。

はやての家には大きなコタツがあり、そこで皆でぬくぬくと肩を寄り添って座っていた。

俺の右隣はレーゲン、左隣がはやてだ

 

はやて「さぁ、じゃあいただこか!」

 

『いただきます!』

 

はやての号令に皆が声を合わせ、今年最後の食事を始めた。

周りから蕎麦をすする小気味良い音が聞こえる。

行儀は良くないかもしれないが、麺類食ってるって音がして俺は好きだな

 

はやて「やぁ、今年も終わりやねー」

 

士希「あぁ、いろいろあったなぁ」

 

はやては蕎麦を食べつつ、しみじみと言ってきたので、俺もそれに同意した

 

この一年は俺にとっても、そして恐らくはやてにとっても激動の一年だったに違いない。

四月の頭にレーゲンと出会い、はやて達と出会い、学んで、遊んで、食って、戦って、

恋をして…そして俺や父さんは過去にも向き合って…いろいろあり過ぎた。

レーゲンやはやてと出会ってからは、本当に密度の濃い毎日を送った。本当に楽しかった

 

士希「きっと新年も、今年以上に濃い毎日になるんだろうな」

 

俺の何気ない呟きに、はやては少し驚き、そして優しい笑顔を見せてくれた

 

はやて「あは、同じこと思てたわ。今年は本当にいろいろあったけど、本当に楽しかった。

そして…」

 

はやてが何かを言う前に、はやては俺に抱きつき、そして不意打ちの如くキスをした。

5秒にも満たない優しいキス。それと同時に、時計の針が12時を指した

 

はやて「ん…ちゅ…えへへ、今年もよろしゅうな!」

 

士希「ッ!?」

 

かんっぺきにヤられてしまった!

はやてのほんのり赤い顔や笑顔に、俺はドキュンと胸を撃ち抜かれてしまった。

は、反則だ今のは…

 

士希「お、お前、狙ってたろ?」

 

はやて「さぁ、何のことやろなぁ。それより士希、言うことあるやろ?」

 

はやては少し意地悪な笑みを浮かべて、俺の首に手を回した。

こいつ、こんなSっ気のあるキャラだったか?だけど…

 

士希「あぁ。今年もよろしくな、はやて」

 

俺ははやてにキスをした。誘いに乗るのはシャクだったが、今回ばかりは悪い気はしなかった

 

リイン「わわっ!す、すごいです!」

 

ヴィータ「あ、あぁ。なんか、大人だな」

 

レーゲン「ねっとりですね」

 

ザフィーラ「子どもは見ない方が良いのでは?」

 

シャマル「いいんじゃないかしら?ねぇシグナム、私達もする?」

 

シグナム「わ、私はいい!」

 

 

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はやて「うーっ、さむっ!士希ー、さむいー」

 

士希「はいはい、ほら、手」

 

年越し蕎麦を食べてしばらくして、俺達は外へ出ることにした。

せっかくなので、初詣に行こうとの事だ。と言っても、初詣に行くメンツは俺とはやて、

レーゲンにリインちゃん、そしてヴィータちゃんだけだが。

ザフィーラは普通に留守番で、シャマルさんとシグナムは飲みたいんだとか

 

ヴィータ「あれ?もしかしてこの場で独り身って、あたしだけか?」

 

俺ははやてと、レーゲンはリインちゃんと手を繋いで歩いている。

ヴィータちゃんだけが、一人で歩いていた

 

はやて「なんやヴィータ?寂しいんかー?うりうりー!」

 

ヴィータ「わ!ちょ、やめろよはやて!あははは!くすぐってぇ!」

 

はやてはそんなヴィータちゃんが気になったのか、

俺の手を離し、ヴィータちゃんに絡んでいた。

ヴィータちゃんは振りほどこうとしているが、嫌がってるわけではないらしく、

本気ではなかった。むしろ、はやてに絡まれて嬉しそうにしていた

 

士希「ふふ、仲良いなぁ」

 

俺は皆が楽しそうに歩いているところを、少し後ろから歩いて眺める事にした。

さながら、保護者のような気分だ。

寒いはずなのに心は暖かくて、なかなか悪くない気分だった

 

歩くこと数分、神社は意外にもすぐ近くにあり、また人も多くはなかった。

というか、ここにいる人達はみんな…

 

なのは「あ!みんなー!」

 

フェイト「ふふ、やっぱりここに来たね」

 

アリサ「そうね。わざわざここまで来て正解だったわ」

 

すずか「みなさん、明けましておめでとうございます」

 

俺やはやてと仲の良い面々ばかりだった。

つまりは、いつものメンツ。新年明けて早々こいつらに会うとは思わなかったな

 

はやて「あれー?みんな今年はこっち来たんや」

 

フェイト「うん。士希もいるだろうから、近場の神社に行くだろうって」

 

なのは「予想通りだったね!」

 

海鳴市内には神社が数カ所あるらしく、それ故に人も集中することなく初詣に行けるのだとか

 

アリサ「寒いし、さっさと済ませちゃいましょ」

 

すずか「あはは、相変わらずアリサちゃんは寒いのダメだね」

 

ということで、早速並ぶことになった。並んでいる間に、俺はレーゲンにお金を渡した。

するとレーゲンは不思議そうな顔をしていた

 

士希「今あげた金を賽銭箱に入れるんだ。金をあげて、神様に神頼みってな。

金を入れたら、あそこにぶら下がってる鈴を鳴らして二拝二拍手一拝…

つまりは二回お礼をして、二回拍手して、そしてもう一度礼をするんだ。

それでおしまい。簡単だろ?」

 

レーゲン「はい、わかりました!お金を入れて、鈴を鳴らして、二拝二拍手一拝ですね?」

 

はやて「せや。そんで二拍手の時に、二回鳴らしたらそのまま手を合わせて願い事もしとくんやで。気前のええ神様やったら、叶えてくれるかもしれへんでな」

 

レーゲン「ほえー、神様が神頼みっていうのも、なかなか変な話ですけど、やってみます!」

 

そうこう話してるうちに、俺たちの番がやってきた。

俺とはやてで見本を見せる事も兼ねて、先に参拝を済ませる。二拝二拍手一拝。

そして俺は願う。今後も、はやてやレーゲン達が幸せに毎日を過ごせる事を。

願わくは、今続いている幸せな日々が、これからも続くことを…

 

俺が願い事を済ませると同時にはやても終えたらしく、目を合わせて微笑みあった。

そしてレーゲン、リインちゃん、ヴィータちゃんと変わってあげる。

三人とも、しっかりできているようだ

 

はやて「ふわぁ…さすがに眠たくなってきたなぁ」

 

士希「深夜だからな。あいつらが参拝終わったら、おみくじでも買って帰るか」

 

はやて「せやなぁ。初日の出はどうする?」

 

士希「見たいなら起こすけど?」

 

アリサ「見に行くに決まってるでしょ」

 

俺とはやてが話していると、そこへアリサ達が割って入ってきた。

こいつらも少し眠そうだな

 

すずか「毎年行ってるし、行ける時には行きたいよね」

 

なのは「そうだね。せっかくなんだから、みんなで行きたいね」

 

はやて「あ、ならうちくる?うち広いし、みんなでおったら行けるやろ」

 

フェイト「いいの?」

 

はやて「全然ええよー。士希が作ってくれたツマミもまだ残ってるし」

 

あ、ツマミで思い出した。正月料理どうしようかな

 

レーゲン「終わりましたー」

 

レーゲン達も参拝を済ませ、こちらにやってきた

 

士希「おう。しっかりリインちゃんとの仲を願ってきたか?」

 

レーゲン「はっ!それもお願いしておけばよかった!」

 

レーゲンはしまったと言ったような顔をしていた。ということは、それ以外になるのか

 

士希「あはは、じゃあどんな願いにしたんだ?」

 

レーゲン「僕が願ったのは、士希さんとはやてさんがいつまでも幸せに暮らせることです!」

 

士希「そうなのか?俺もはやてやレーゲンの幸せを願ったよ」

 

レーゲンは少し驚いた顔を見せ、嬉しそうな、それでいて少し寂しげな顔をしていた

 

レーゲン「…あはは!それは嬉しいです!ところで、皆さんは何のお話を?」

 

士希「あぁ、今からみんなで、はやての家に行くんだとさ」

 

レーゲン「あはは、なかなかの大所帯ですね」

 

ヴィータ「新年からずいぶん賑やかだな」

 

リイン「楽しいからいいと思うですぅ」

 

あ、リインちゃんがダウン寸前だな。ふらふらしてる

 

はやて「じゃあみんな揃ったことやし、おみくじだけ買って行こっか」

 

そして俺たちはおみくじを買い、全員で話しながらはやての家へと向かう事になった

 

 

 

この時の俺は、レーゲンがなぜあんな顔をしたのか分からなかったし、気にもしなかった。

もしここで気付いていたら、これから起こる事も少し変わっていたかもしれないのに…

 

 

 

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おまけ:みんなの運勢

 

 

 

アリサ「私は大吉か。まぁ当然よね」

 

すずか「私も大吉だ!お揃いだね!」

 

ヴィータ「吉か。まぁまぁだな」

 

フェイト「私も吉だ。何か良いことあるといいな」

 

はやて「私は中吉かぁ。中途半端な結果やなぁ」

 

リイン「リインもですー。凶じゃなかっただけ良かったです」

 

レーゲン「僕は小吉でした。ところで、末吉と小吉って、どっちが上なんだろう?」

 

士希「確か小吉だぞ。末吉は吉の末端ってな。ちなみに俺は末吉だった」

 

なのは「ねぇ、そしたらこれは?」

 

フェイト「なのはの運勢は……平?」

 

士希「うわぁ、それ初めて見た。確か平って、大吉や大凶より確立低いやつだよな」

 

アリサ「えぇ、ほとんど知られてないから、なかなかレアなやつよね」

 

レーゲン「へー、そんな凄そうなものがあったんですね」

 

すずか「でも内容は、末吉と凶の間で、可もなく不可もなくって感じだよね」

 

ヴィータ「なんかレアなやつなのに、あんまし嬉しくねぇな」

 

リイン「残念ですー」

 

はやて「流石オチ担当」

 

なのは「オチ担当になったつもりはないよ!?」

 

 

 

説明
こんにちは
実はこんな作品でも、地味に伏線があったりします
わかりづらいんですけどね(笑)
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