天神乱漫SS『初夏のお買い物』〜必殺スペルシウム光線〜
[全4ページ]
-1ページ-

「じゃあ俺ここにいるから出来るだけ早くしてくれよ」

「うむ」

「迷子にならないで下さいね」

俺は小学生か・・・

 

日曜日、俺と卯ノ花、佐奈の3人はデパートに来ていた。

卯ノ花の夏服を買いに来たんだが、当然俺はただの付き添い。

だがこの前のように一人でフラフラしてて絡まれても困るので、ここで待つことにしたのだ。

 

「ふぁ〜」

デパートの中ってのは昼寝するのに適温過ぎる。

座ったまま寝たりするとあとで身体が痛くなりそうだが、することも無いしちょっと寝るか・・・

 

 

 

 

「・・・ハルキ・・・ハルキ」

「・・・あ?」

「ようやく起きたか」

気付くと卯ノ花に揺り起こされていた。

腕時計に目をやると2時間ほど時間が経っている。

出来るだけ早くって言ったのに。

 

「買い物は終わったのか?」

眠い目を擦りつつ二人に尋ねる。

 

「あと一つなのじゃが、ハルキは何色が好きじゃ?」

「なんだよ、唐突に」

「いいから早く言うのじゃ」

「え〜?」

好きな色ねぇ〜

 

「じゃあ白、ピンク、オレンジ、水色、黒から一つから選ぶのじゃ」

「ん〜白?」

「男らしくないの」

「何で白が男らしくないんだよ。・・・じゃあ黒で」

よく分からんが、その中だと黒が一番男らしいだろ。

 

「ふむ、ハルキはエロエロなのが良いわけじゃな」

黒がエロエロ?何のこっちゃ?

 

「に、兄さんは黒が好みなんですか・・・

分かりました!恥ずかしいですけど、兄さんがそんなに望むのなら私も買って来ます!」

そう言って卯ノ花と佐奈はあるコーナーの方へ歩いて行く。

 

「は?何を言って・・・」

そこでようやく気付いた。さっきの問答の意味を。

 

「おいいいいい!ちょっと待てええええ!」

二人が行こうとしていたのは下着コーナーだった。

-2ページ-

「全く、何てことするんだ、お前は」

「何を言っておる。お主の好みの下着をつけて上げようという妾の優しさが分からんのか」

「どこが優しさだ。しかも佐奈まで巻き込もうとしやがって」

何とか二人を思い留まらせ、黒を買うことは避けられた。

 

「せっかくハルキ好みの黒いアダルチックな下着を買おうと思ったのにのう」

「何が俺好みだ。思いっきり誘導尋問だっただろうが」

「じゃあ兄さんは何色が良かったんですか?」

と佐奈が聞いて来る。

 

「さっきも言っただろ?俺の好みなんてどうでもいいって」

「でも、やっぱりその兄さんの好きな下着の方が・・・」

「頼むからもうその話題は止めて」

さっきも下着コーナーでやいのやいの騒いでご婦人方の注目を浴びて、羞恥プレイを味わったばかりだ。

こんな街中でまた同じように注目を浴びるのは避けたい。

 

「てめぇ、あの時の!」

「ん?」

突然後ろでそんな声がしたので振りかえって見るとどこかで見たDQN二人組が俺の方を見ていた。

茶髪とスキンヘッド・・・あ〜そうだ、そうだ。この前俺に絡んで来た奴らだ。

最終的に卯ノ花曰くハルキビームで抹殺した連中。

だが覚えてると思われるのもバカらしいので知らないフリをする。

 

「え〜っと、どちらさんでしたっけ?」

「なんだと、コラァ!?てめぇのせいで俺らがどんな目に遭ったと思ってんだ!」

「って言われても、知らない人に因縁付けられても」

「てめぇが覚えてなくても俺らが忘れられねぇんだよ!」

よくもまぁあんな酷い目に遭ったというのに、また俺に絡んで来るものだ。

君子危うきに近寄らずって言葉を・・・知ってる訳無いか。

 

「兄さん、この前の人達ですよ」

ご丁寧に佐奈が教えてくれるが、教えてくれなくてもさすがに覚えてる。

 

「何ブツブツ言ってんだ、コラァ!」

どうしよう?卯ノ花や佐奈がいるし、殴るっていうのは見せたくないんだが。

俺だけ路地裏に行こうとしてもこいつらのことだから付いて来るだろう。

 

「に、兄さん!喧嘩はダメですよ」

「俺は喧嘩したいわけじゃないんだけど、こいつらがしつこいわけで」

「うるせぇ!てめぇらのせいであの後どんな目に遭ったと思ってんだ!?」

「同じことを言うな、しつこい」

「やかましい!」

「俺らは、俺らは・・・」

別に興味は無いんだけど、勝手になんか語り出した。

 

「あの後精神科医に診せられて、精神鑑定までされたんだぞ!」

「本当のことなのに、ポリ公共は全く信じやがらねぇ!」

思わず噴き出しそうになった。

そりゃそうだろ。俺だって目からビームを出したなんて信じたくない。

 

「それは災難じゃったのう」

「何他人事みたいに言ってんだ!てめぇらのせいだろうが!」

「とは言っても自業自得みたいなもんじゃしのう」

「ってか自業自得だろ」

勝手に絡んで来て、撃退されたわけだし。

まぁちょっと過剰防衛な気もしないでも無いが。

 

「今日はあの時とは訳が違うぜ」

そう言うと茶髪の方がスタンガンを取り出す。

 

「げっ・・・」

素手なら問題ないが、さすがにスタンガン相手だと分が悪い。

まぁ超絶弱いし、気を付ければ問題なく倒せるだろうが。

というか街中、しかもこんな人通りの多い場所でそんなもん取り出すか?

周囲もこっちに注目している。

 

「しょうがないのう」

そう言って卯ノ花が俺と佐奈の手を引いて走り出した。

 

「え?お、おい逃げるのか!?」

「ヒメさん!?」

「コラァ、待ちやがれ!」

当然二人組が追い掛けて来る。

-3ページ-

「お、おい、どこ行くんだ?」

「もう着いた」

そう言って立ち止ったのはこの前と同じ場所。

コンクリートに焦げ跡が付いたままだ。

すぐに二人組がやって来る。

 

「ハルキ、目を凝らせ!相手を見ろ!」

「ちょっと待て〜〜〜!!またビームを出させる気か!?そうだな!?そうなんだな!?」

「だっててっとり早いし」

「だっても何もあるか!」

またあんな人外の技をさせられては堪らない。

 

「へ、へへ。どうやらビームは出せねぇようだな」

ビームという言葉に少し怖気づいたのか、声が震えている。

 

「そ、そうですよ、ビームなんて危ないです!」

佐奈もこの前のことを思い出してか、止めようとする。

 

「ふむ、それでは面倒臭いが仕方ないな。ハルキ、腕を十字に組め」

「腕を十字に?」

「うむ」

仕方なく言われるがまま両腕を胸の前でクロスさせる。

 

「違う違う、稲妻十字空烈刀(サンダークロススプリットソード)の方ではなく、スペルシウム光線のようにじゃな」

「こうか?」

言われた通りウルトルマンの必殺技をイメージして腕を十字に組む。

・・・必殺技?

 

「って、おいまさか!?」

「受けよ、我が力を!」

ビームの時と同じように俺の身体の中を何か熱のようなものが駆け巡り、それが今度は腕に集中して行く。

もう止められそうも無い。俺は慌ててバカ二人組に照準を合わせた。

 

「何ぶつくさ言ってやがる!死ねや!」

「くらえ必殺ハルキ光線!」

卯ノ花の声がしたと同時に真っ白な光線が二人組を直撃した。

 

『ぎゃーーーーーーーすっ!』

と同時に二人組の悲鳴が上がる。

なるほど、ビームの時もこんな感じの奴が出てたのかと思わず冷静に状況を分析してしまう。

 

「兄さんが光の巨人になっちゃいました!?」

「巨人じゃないな」

と慌てふためく佐奈に冷静に返せる余裕がある。

 

「どうじゃ、ハルキビームと違って視界を遮られることも無いので、狙いは正確じゃろう?」

「それはよく分かった」

「熱っ!熱っ!た、助けて〜!」

「勘弁してくれぇ!」

さっきまでの威勢はどこへやら。完全に降伏モードだ。

 

「とりあえずそろそろ止めてやろう」

「む、もうよいか」

すぐに光が収まり出し、熱も引いて行く。

二人組は死屍累々といった感じだ。

 

「どうじゃ?以前と違って正確な狙いによってコンクリートなどが焦げていないであろう?」

「そこは大した問題じゃねぇよ」

「右腕にマイナス、左腕にプラスのエネルギーを蓄えて、それをスパークさせて発射するのがスペルシウム光線なんですよ」

これまた佐奈がマニアックな知識を披露してくれる。

 

「大丈夫かね!?」

さっきの騒ぎを見て誰かが交番に駆け込んだのだろう。

この前と同じ警察官がやって来た。

-4ページ-

「あいつらスペルシウム光線出したんだって!」

「俺ら焼かれたんだ!ほら、服焦げてるだろ!」

「前にも言っただろ?もう少しマシな言い訳を考えろって」

当然今回も信じて貰える訳もなく、二人は連行されて行く。

 

「少しは信じろよ!」

お前らのツラで信じて貰えると思ってんのか?

連行される二人を見送って俺達はその場を後にした。

 

「はぁ、全く今回も酷い目に遭った」

「まぁまぁいいじゃないですか。この前と違って調書はいいって言ってくれたんですから」

「はは・・・」

佐奈がトイレに行っている隙に、卯ノ花が警察官に怪しい催眠術を掛けたことは黙っておこう。

 

「妾に感謝するのじゃな」

「はいはい、感謝してるよ」

「ハルキ、次の技は何がいい?」

「何でもう次の技!?また絡まれること前提!?」

「ヒメさん、兄さんが絡まれないようにする方法がありますよ」

おお、さすが佐奈。何か良いことを思いついたらしい。

 

「ウルトルスラッシュにすればいいんです!」

・・・え?

 

「さすが佐奈じゃの。二度と立ち向かって来れないようにするというわけじゃな」

ウルトルスラッシュって・・・

 

「七つ裂き光輪じゃん!相手を殺す気か!?」

「いえ、あくまでまた来るなら、ですよ。兄さんを危険な目に遭わせようとする方達ですし」

佐奈さんが黒い。まぁ確かに今日はスタンガンまで出して来たからな。

 

「さぁ早く帰りましょう。今日はカレーですよ」

「おおカレーか。佐奈のカレーは絶品じゃからのう」

頼むからバカ二人組、二度と俺に絡まないでくれ。

そう思わずにはいられない初夏の夕方だった。

 

 

 

 

 

終わり

 

------------------------------------------------------------

初の天神乱漫SSでした。

今回のは体験版見て書いただけなので、もしかしたら本編と被ったりするかも。

まぁ丸まま被るってことはさすがに無いでしょう。

葵も出すと必殺技が出来なくなるので、葵はカットして春樹、姫、佐奈の3人をメインにしました。

佐奈がちょっと黒いのは麻衣やすももに比べて黒く感じたからです。

かと言って音夢並に黒くするのはやり過ぎだと思ったので、兄に仇名す敵にだけ黒くしましたw

また天神乱漫のSS書けるといいですが、そもそもいつプレイ出来るかな〜

説明
季節は初夏。夏服が足りない卯ノ花姫の為に春樹と佐奈は買い物に行くことにします。しかしそこではまた事件が・・・
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
5651 5253 3
コメント
俺、佐奈が好きっす。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
ラストにも書いたんですが、体験版プレイして書いた奴です。忙しくてまだ買えてません(汗)(のかーびぃ)
発売当日に書かれるとは……。(lypoD)
タグ
天神乱漫 卯ノ花姫 卯花之佐久夜姫 千歳佐奈 千歳春樹 小説 SS 

のかーびぃさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com