真・恋姫無双 覇王伝 第三話
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〜一刀視点〜

異世界に来て、二日目の朝を迎えた

朝起きた時、昨日の事は全て夢なのではと期待したがそれは都合の良い逃げの考え

全て現実 俺が人を斬り殺した事も含めて

 

部屋を出て、直ぐに鞘姉と巴に会う

「おはよう、一君」

「おはよう、一兄」

二人共、普通に挨拶をしてくる

精神的に女性の方が男性より強い、なんて話をよく聞くが事実かもしれない

「おはよう、二人共」

俺も挨拶を返すが、昨日の夜、鞘姉の胸で泣いた事を思い出して、気恥ずかしい

「あれ?一兄、どうかした?」

俺の挙動の僅かな違和感を指摘された

我が妹ながら、鋭すぎる

「どうもしないさ

 強いて言えば、これからの事を考えると、な」

「ああ、まあそうだよね」

なんとか誤魔化せた

「ふふふ」

そんな俺と巴のやり取りを、鞘姉は笑って見守っている

どうやら、気恥ずかしい思いをしているのは俺だけのようだ

まあ、泣いたのは俺だけだし 仕方が無いか

 

俺達は世話になっている村長の所へ行き挨拶、そしてこれからの事を話す為、凪達の所へ向かう

 

凪達は既に村の広場に集まっていた

そして少し凪達と話会った後、村長に話を向ける

「村長、俺達をこの村に置いてください

 この村の復興作業を手伝い、そして村の自警団の様な役目を果たします」

この提案に村長は

「貴方達はこの村を救って下さった恩人

 更に復興の手伝いをして下さり、自警団を、となれば有り難い限りです

 しかし、ここは見ての通り貧しい村です

 恥ずかしながら、皆様を満足におもてなし出来ないのが現状です」

村長は申し訳なさそうに言う

「分かりました

 その件に関しては、俺達の方で考えてみます

 取り敢えずは復興作業を始めます」

そう言って、作業に取り掛かる

 

焼かれた家の廃材撤去、立て直し

野盗が荒らした田畑の修復

約百人の元義勇兵の寝床の確保

する事は山積みだった

そんな中

「巴、お前は村を見回ってこい

 意味は分かるな」

俺は巴に別の指示を出す

「うん、分かったよ 一兄」

「凪、巴の護衛を頼む

 大丈夫だと思うが一応な」

この俺の言葉に凪は

「え?しかし・・・」

「頼むよ」

俺が軽く頭を下げると

「分かりました」

 

「なあ、一刀はん

 人手はいくらあっても足らへんのに、妹を遊ばせて、しかも護衛に凪まで就ける

 って、いくら何でも・・・」

「沙和もそう思うの〜」

真桜と沙和(真名は預かった)が不満そうに話しかけてくるが

「俺は巴を遊ばせたんじゃないよ」

「それって・・・」

「直ぐに分かるさ」

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〜巴視点〜

私は楽進さんと村の外れまで来ていた

何も話さないが、不満そうなのは感じ取れた

「ねえ、楽進さん」

「は、はいっ」

私が突然、話しかけたので少し慌てている

「『なんで、復興作業の忙しい時に妹を遊ばせておくんだ?

 更には人手はいくらあっても足らないのに護衛まで就けて

 一刀さんは何を考えて、いや、妹を甘やかせ過ぎだろう』

 って考えているでしょ?」

「いっ、いえ、そんな」

楽進さんは私の言葉を否定するが

「いいの、確かにそう見えるからね

 でも、一兄は私を遊ばせてる訳じゃないの

 ちゃんと考えが有るのよ」

「どういう事です?」

 

暫く見回った後、皆の所に戻る

「皆、昼食だよ〜」

鞘姉が皆の分の昼食を運んで来るところだった

昼食を取りながら

「巴、収穫は有ったか?」

一兄の質問に

「その前に、村長

 紙って貴重品ですよね

 結構高値で売れませんか?」

「確かに紙は貴重品ですが・・・」

村長の言葉を聞いて

「それなら、紙を造ろう

 この村の周りは紙の材料になる木の宝庫だったよ」

「なんとっ!?」

村長が驚いている

紙の造り方はテレビで見て、知っている

更に、体験学習で昔ながらの紙すきをした事が有る

だから出来る

伊達に「明晰な頭脳を持つ赤点予備軍」なんて云われていない

でも、この二つ名は何とかしたい

 

「問題は紙すき器を作らないといけないけど・・・」

「それなら、うちの出番や

 どういう物か教えてくれれば、注文通りに作って見せるで」

李典さんが引き受けてくれた

私達は午後から紙すき器の製造に取り掛かった

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〜一刀視点〜

復興作業を始めてから10日が過ぎた

この間に紙造りは5台の紙すき器を使い順調に進んでいる

もっと作ろうにも木を切るところから始めると、手間や人手が掛かる

復興作業も並行して行うとなるとこれが限界だ

だが、売り物になる質と量が出来た

 

この10日、他にも出来事があった

それは凪達が率いて来た元義勇兵達が

「我々に剣術を教えて下さい!」

と言って来た

向上心がある人達の願いは無碍に出来ない

だからと言って、北天一心流は習得に時間が掛かりすぎるので、教えるのには無理がある

だから俺達は剣道の基礎を教えた

これは莫迦に出来ない

なにしろ義勇兵になる人達だ 度胸と基礎体力は充分に持っている

今までは力任せに武器を振り回して来たが、剣道の効率的な剣の振り方を覚える

これで、この人達は飛躍的に強くなる

後は連携を覚えれば同程度の数なら、正規兵にも負けない部隊になる

まあ、それはもう暫く後の事だろうが

 

出来上がった紙を売りに、建業に向かう

面子は俺、鞘姉、巴、凪

巴は建業を見る事で、何かを掴むかもしれないので同行

後の三人は貴重品を運ぶので(そんなに多くは無いが)強い順に選んだ

 

建業の付近まで来た時、俺達の前方から走って来る人影が有った

その後ろから10人程が追いかけている

無視する訳にも行かないので俺達も向かう

 

「へっ、もう逃げないのか」

「なら、たっぷりと楽しませてもらうか」

「まあ、俺達の頭は呉郡太守の許貢様の甥だからな

 訴えても無駄だぜ」

追いかけていた男達が倒れた女性に賭ける言葉で状況が簡単に理解できた

「うん、なんだお前等

 っていい女が三人もいるじゃねえか

 獲物が増えたぜ」

そう言いながら此方にも向かって来る

 

「ひっ、何だこいつらは?」

大将と思われる一人を残して、全て叩き伏せた(殺してはいない)

「くそっ」

そう言って男は自分だけ乗っていた馬を駆って逃げて行った

「馬には追いつけないから諦めるか」

 

襲われていた女性は気を失っていた

見た感じ俺達と同じくらいの年恰好だな

体格は凪に近い

つまり、充分に胸が有り、スタイルが良い

ただし凪より華奢な感じだ

「一君、そんなにじろじろ見るもんじゃ無いわよ!

 一応、連れて行きましょ

 はい、一君 背負って」

彼女を背負った時、その胸の感触が背中に当たる

嬉しいような、恥ずかしいような・・・

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建業に入り、紙を売れそうな店を探す

「一君、ここなら良いんじゃいの?」

鞘姉の指して店は『魯店』

店に入ると

「おや、御新規さんですね

 私は店主の魯粛と申します

 今日はどのようなご用件ですか?」

対応に出た女性は胸の大きな若い女性だった

この人が店主なのは良いけど「魯粛」って・・・

この世界はどうなっているんだ?

そんな俺の考えは置いておき、紙の売買の事を伝えると

「実際に見せて頂けますか」

そして

「この質とこの量ならこの位で如何でしょう?」

交渉は鞘姉とこの世界の一般常識を持っている凪に任せた

 

「結構良い値で売れたわね」

店を出て今度は食料を買う為に別の店に向かう途中、

「待て」

後ろから呼び止められ、振り向くと

「お前達に襲われたと訴え出た者がいる

 大人しく同行しろ」

桃色の髪の女性と、お団子の髪の女性が居た

その後ろには先程逃げた男がいる

男のにやつき、勝ち誇った表情から全てを察した

俺達に襲われたと虚言を使い、官憲の力でねじ伏せる

無理があっても、太守の甥なら道理が引っ込む

そんな所だろう

 

〜桃色髪女性視点〜

(こんな奴の言う事が信用出来ないのは分かり切っているのに・・・!)

(蓮華様、今は耐えるしかありません)

(分かっているわ、思春)

 

〜一刀視点〜

「さあ、来い」

桃色の髪の女性が前に進み出た時、

「断る!」

そう言い放った

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「何だと!」

声を荒げる女性に対して

「そいつの言う事が真実か否か

 その吟味はしたのか!」

俺の問いに

「貴様、それ以上の無礼は許さんぞ!」

お団子の髪の女性が割って入る

向こうは刀を抜いて臨戦態勢に入っているので、もう話し合いは無理だ

俺は背中の女性を凪に任せる

「鞘姉、その巨尻さんは任せる」

と言ったら

「誰が巨尻よ!」

「一君、どこ見てるの!」

「一兄、それ私への当てつけ?!」

怒られてしまった

 

「おい」

お団子の女性が殺気を向け、刀を構えたまま話しかけて来る

「あの方が巨尻なのは否定しない」

否定しないんだ

「だが、巨尻だけでなく美尻なのも付け加えておく」

素敵な情報に感謝します

「しかし、人の身体的特徴を莫迦にするのは感心しない」

莫迦にしてないよ

「だから死ね」

論理が飛躍しすぎだろ!

一瞬で踏み込み、斬りかかって来た

それを何とか躱すが直ぐに追撃がやって来る

全て防ぐが、反撃が出来ない

それならばと、その場に小さく屈みこむ

すると攻撃が止まる

この態勢だと攻撃しずらいのはどの武術でも同じ

そして、此方が反撃を仕掛ける

屈んだ態勢から一気に斬りかかる

相手は受け止めるが、此方の全身の力を使った斬撃で刀を弾き飛ばす

「勝負あり、だな」

そう言うと

「だが、お前達を逃がす訳には・・・」

巨尻さんは尚も諦めない

まあ、当然だが

「いえ、その人達は襲われてた私を助けて下さいました」

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気絶していた女性が目を覚まして証言した

これで無理も通らなくなったな

すると男は

「覚えてろ〜」

と捨て台詞を残して逃げ出した

男は直ぐに追手を巻く為、路地に入り俺達の視界から消えた

だが、追う必要はなさそうだ

既にお団子さんがこの場から居なくなってる

 チリーン

 

「本当に申し訳なかった」

巨尻さんが謝罪をしてくるが

「いいよ、別に

 俺の相手をした女性も本気で俺を殺そうとしてなかったしね」

そう、あの女性は攻撃の際刃を寝かせて”斬りかかる”のではなく”殴りかかって”来ていた

だから、あの攻撃を受けても斬られはしなかった 骨は折れてたかもしれないが

「だが、それでは此方の立つ瀬がない」

尚も食い下がる巨尻さんに

「それなら、俺達はこれから食料を買って村に返るんだけど・・・

 結構な量を買うつもりだから運ぶのを手伝ってくれないか?」

この提案に

「分かった

 私はこの街を離れられないが、手の者に手伝わせよう」

こうして食料を買い村に帰還する

 

その帰り道、俺達が助けた女性も同行する

「私の姓は徐、名は庶、字は元直

 真名は静里です

 恩人の皆様のお役に立って見せますので、御一緒させて下さい」

徐庶元直 稀代の軍師まで美少女とは

いや、もう諦めよう

 

尚、この日の事で魯粛さんが俺達に興味を強く持ったのを知ったのはずっと後の事だった

 

あ、巨尻さん達の名前訊くの忘れてた

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〜あとがき〜

 

今回は先ず巴の活躍です

「明晰な頭脳を持つ赤点予備軍」の面目躍如です

今後もこのような活躍をする予定です

 

魯粛は「英雄譚」に出て来る「ひゃわわ軍師」ではありません

もっとしっかりした人物になっています

軍師にすらならないでしょう

商人のまま一刀達に関わらせるつもりです

 

蓮華は呉ルートの最初の時同様、考え方が一面的です

まあ、今回は許貢の甥の依頼を客分の蓮華が断れなかったんですが

好きなキャラなので前作で書けなかった「成長」を書けたら、と考えてます

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
村の復興と新たなる出会い
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コメント
ナック様>確かにそうですね。しかし原作でも一刀が字の勉強をする際に紙が貴重品と云うような事を言ってますし、春蘭の「メモ」のエピソード等から見ても紙が安価とは思えないんですけどね。外史は不思議が一杯です。(ZSAN)
この外史では紙が貴重品ということは、『阿蘇』が二つのファッション誌なんて存在してないんですね。…別の外史の于禁が見たら涙目になりそう。(ナック)
睦月様>蓮華の扱いならこれは外せないでしょう。(ZSAN)
nao様>蓮華を一言で表すなら、やはりこれでしょう。(ZSAN)
mokiti1976-2010様>陣営に足りなかった軍師が加わって、人材面では凄いですね。(ZSAN)
kazo様>「萌将伝」の身体検査の話で蓮華の体重の件を話したり、思春は結構ヒドイ事しますから。(ZSAN)
Jack Tlam様>仰る通りですね。でも俗っぽいから良い面もありますよね。あと、この外史でどうなるかは伏せておきます。(ZSAN)
相変わらず、蓮華の扱いは巨尻なのねw(睦月)
巨尻ってw蓮華の扱いがひどいw(nao)
此処で静里登場…軍師も増えてさらなる義勇軍の戦力アップが見込めるか?(mokiti1976-2010)
何気に思春がヒドイw(kazo)
今更だけど、呉陣営って明確な形で「敗北」しませんよね、恋姫原作でも。ZSANさんの外史で呉は毎回かなり優遇されているような気がしますが、その理由もなんとなくわかる気がします。思想として尖っているわけじゃないから、色々変化させられるというか。その割には原作でも節々でただの逆恨みで喚いていたような気もしますが。一番俗っぽいですよね。王族なのに。(Jack Tlam)
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