艦隊 真・恋姫無双 91話目
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【 延焼対策 の件 】

 

?  司隷 洛陽 郊外の原野 にて  ?

 

 

━━━━━━━━\\ ★☆★ //

 

 

ーー

 

島風「─────オウッ!?」

 

イク「────戦っているなのぉ!?」

 

一刀「なぁ、何だ──あの爆発音は!?」

 

明命「あ……あれは……春蘭さんの……………」

 

一刀「明命、今の破壊音が何だか分かるのかい!? あれだけ大きい音だと周辺の被害が心配だ! 一度様子を見に行かないと!!」

 

明命「えっ!? だぁ、だだだ………大丈夫です! 被害なんて……きっと、絶対、間違いなくありませんよ! そ、それよりも──早く行う事を教えて下さい!! 一刀様!!」

 

一刀「まあ……被害が無いのなら良いけど………ね。 え〜と、俺が君達に頼みたいのは──」

 

イク「提督ぅ〜! イクも魚雷発射したくて、うずうずしてるのっ!!」

 

島風「提督、駆けっこしたいんですか? 島風、負けませんよ?」

 

明命「え、えぇえええ───ぎょ、魚雷ぃ? 駆けっこ……!? これも天の国の違う言葉なんでしょうかぁっ!!? 意味が全く理解できません!!」

 

一刀「こらこらっ! 話が進まないから静かにしてくれ!!」

 

ーー

 

島風とイクの二隻の言葉を遮り、一刀は明命に教える。

 

ーー

 

一刀「今から行うのは『バックファイヤー』だよ。 訳すと『逆火』と言うんだけどね。 火元と風向きを考えて、延焼方向の反対から新たな火を付ける。 すると火勢と火勢が合わさり、火が消えるか弱くする事ができるんだ!」

 

明命「す、凄いです! 火を以て(もって)火で制す……冥琳様や穏様が聞けば、興味を持たれ………あ、穏様は……当分黙っていた方がいいかな……」

 

一刀「ただ、このやり方は風向き、火の勢い、状況を確認して行わないと危険だ。 だから、二人一組で着火役と警備役をしなければならない。 くれぐれも注意してやって貰いたいんだよ!」

 

イク「じゃあ……提督とイクで行うなのぉ──!!」

 

島風「違うよ! しまかぜと提督が組めば、イクと組むより早く終わるんだからね! 疾きこと島風の如し………だもんっ!」

 

明命「………一刀様…………」シュン

 

一刀「ああ…………わかった、わかったからっ! 仕方がない、四人で行うか。 効率も下がるけど、危険度も比例して下がるからね……」

 

ーー

 

一刀の新たな提案により、喜ぶ者達であった。

 

 

★☆☆

 

 

艦娘達は、白蓮の懇願により、辺りの『防火帯』作成作業と消火活動の指揮を行っている。 

 

――

 

赤城「この辺一帯の燃える物を、根刮ぎ片付けて下さい! 草の根、木の枝、葉っぱ一枚さえもですよ! ダメコンは大事、ダメコンは絶対と、身体に覚えさせなさい! 良いですねぇ!?」

 

兵士「………この木もそうですか? 幹の太さが四尺(約1b)もある……大木ですが──『ギロッ』──ヒッ!!」

 

赤城「延焼する物は全て、全てですよっ! 慢心して残せば……その害は自分に掛かってきますよ!? だから………絶対に禁止ですっ!!」

 

兵士「「「───は、はいっ!」」」

 

赤城に睨まれ叱責されて、慌てて作業を開始する兵士達!

 

―――

 

加賀「…………赤城さん」

 

そんな様子を横目で見る加賀。

 

 

………そして頭に過るのは────

 

─────かの『ミッドウェー海戦』で轟沈する……戦艦『赤城』の勇姿。

 

―――

――

 

『───真上…直上!? きゃぁっ!!』

 

 

『早く、消火活動を! お願い──誘爆を防いで!!』

 

 

『い、一航戦の誇り………こんなところでぇ、失うわけにはぁぁぁ──』

 

 

 

『海の武士(もののふ)は……死して……屍を晒さず。 ………私に……介錯……を………。 加賀……さん………』

 

 

――

―――

 

そんな遥か昔の事を思いだし……赤城の考えを理解する加賀。

 

そんな視線に気が付いた赤城が──後ろを振り返り……加賀を見る。

 

赤城「─────?」 

 

今は艦娘として──加賀の側に寄り添い、一航戦の誇りを胸に秘め、たまにボーキを盗み食いする──信頼できる?仲間として存在している。

 

――

 

加賀「赤城さん………」

 

赤城「───? どうしたんですか、加賀さん?」

 

加賀「───いえ、なんでもないわ……」

 

赤城「……………?」

 

――

 

赤城の指揮は、確かに厳しい………だけど、それもこれも……自分と同じ目に遭って欲しくないと考える故の優しさ。

 

―― 

 

加賀「赤城さん……貴女も、あの戦果を恥じて改めようというの?  そう、良いでしょう。 私も、ぜひ見習わせて貰います、貴女の背中を──」

 

――

 

その為、同じように『ダメコン大事』と厳しく指揮し、赤城の姿をダブらせる加賀の姿。

 

――

 

加賀「………… 私達も徹底的に行う! 妥協など……提督が許しても、この一航戦が許可などさせないわ。 理解できたのなら……返事。 ………いいわね?」

 

兵士「「「───アッハイ!!」」」

 

――

 

加賀から溢れるコトダマ力に思わず縮み上がる兵士達。 実際、口答えをすれば……デスノボリが立つかも知れないアトモスフィア。 コワイッ!

 

――

 

山城「こらっ! 熱意を持ってやるのは構わないけど、この兵士達は一航戦の配下じゃないのよ! 後で提督に苦情が来たらどうするのっ!!」

 

加賀「────!?」

 

――

 

扶桑「──皆さん、無理は絶対にしないで下さい! 此方の方は、それだけ作業が重要だと説明しているだけですから!!」

 

兵士「「「 ………………………はっ! 」」」

 

――

 

瑞穂「はい、大丈夫ですから……どうか、安心して下さいね。 加賀さんは、皆さんの事を気に掛けていただけ。 そうですよね、加賀さん? 心配されて御声が少し……大きくなってしまったんですよね? …………よしよし」

 

加賀「………………………」シュン

 

――

 

後で、扶桑が兵士に再説明し、山城に叱られ、瑞穂に慰めらる事になった。

 

 

◆◇◆

 

【 艦娘達の思惑 の件 】

 

?  洛陽 郊外の原野 にて  ?

 

鳳翔「さて、私達も仕事を行ないましょう!」

 

川内「鳳翔さん……少し話をしても……良い?」

 

鳳翔「え? ええ……少しでしたら………」

 

川内「鳳翔さんに…………事情を説明しとこうって……」

 

鳳翔「あの別行動をした理由ですね………それは聞きません。 どうしても知りたくなったら、後で提督から教えて貰います」ニコッ

 

川内「えっ、えぇ……どうして、私は独断で動いたんだよ? 提督の指示に反して、艦隊まで編成して──」

 

鳳翔「つまり、味方さえも欺く必要があった……と言う事ですよね。 誰よりも夜戦に精通する貴女だからこそ、気付いた深海棲艦の存在。 その御蔭で、私も反応できたんです。 敵艦からの砲撃を予測できたんですよ?」

 

川内「…………そ、そうだけど………」

 

鳳翔「じゃあ……いいじゃないですか。 一刀提督は聡明な方……川内さんの話を聞けば、納得してくれます。 それに、結果は敵艦一隻撃沈、味方艦の被害も軽微、おまけに諸侯の皆さんも救えた。 大金星じゃないでしょうか?」

 

川内「そ、そんな………それは、ただの結果だよ。 それに鳳翔さんの活躍も………」

 

鳳翔「ですから、説明は必要ありません。 提督に伝えて下さるだけで、結構です。 ………納得して頂きましたか?」

 

川内「う、うん………ありがとう、鳳翔さんっ!」

 

鳳翔「いえいえ……それでは任務に戻って下さいね?」

 

川内「───うん!」ダッ?

 

―――

――

 

鳳翔「ボソッ(それに……川内さんから理由を聞いたら、提督と話をする機会が無くなっちゃいます。 ただでさえ、お逢いするのが難しいのに………)」

 

★☆☆

 

鳳翔「──では、皆さんも提督の指示がありました通り………」

 

菊月「……すまない、一つ質問させてくれ」

 

鳳翔「──良いですよ。 では、手短で……お願いしますね?」

 

菊月「うん、聞きたい事はな。 鳳翔、貴女は………本当に軽空母か?」

 

鳳翔「はい? ええ………御覧のように軽空母です。 じ、自慢ではありませんが……胸部装甲も………この通り慎ましいモノですし………」

 

――

 

不知火「それ以上は……禁句。 不知火は、自虐的趣味はありませんし、もちろん胸部装甲の大きさなんて……興味無いです。 ただ、菊月が言いたいのは、貴女の力が……不知火達とは何か違う……それを案じていただけですよ?」

 

如月「そうよ、世の中には『規格外』って言葉があって………ね。 同じ駆逐艦なのに、なんであんなに自己主張が激しい艦娘が居るのか、思いっきり問い質したい気分なんだけど。 ねぇ〜、不知火だって、実はそう思うでしょう?」

 

不知火「──言った筈です。 不知火に……そのような自虐的趣味も胸部装甲の大きさも──興味は無いと。 それでも……言いたいのなら……如月の胸部装甲を陥没させて、飛行甲板にでも変えてあげます!」

 

如月「嫌だぁ、もう〜不知火ったらぁ! 冗談が通じないんだもん……幾ら如月の胸部装甲が大き───」

 

不知火「………フフフ………この不知火を、そんなに怒らせたいのですか……!? いいでしょう、徹底的に追い詰めてあげます………」

 

如月「ちょっと、不知火やめぇ──ふわぁぁぁぁ! そこは〜駄目ぇえええ! やぁ、やあぁ……そこもぉ……うっ……あぁ〜ん! 駄目駄目駄目ぇぇぇ──い、嫌ぁあああ〜っ!!」

 

――

 

夕立「こ、これが………噂に聞く『我、夜戦に突入す!』っぽい!?」

 

神通「い、いえ………私には何の事やら………」

 

那珂「那珂ちゃん、路線変更する気なんか全然ないけど………お色気も人気アイドルの必須科目だって聞いてるよ〜! えぇ……枕営業ぅ〜? そんなの実力派の那珂ちゃんに必要ないもんっ!!」

 

磯風「ふむ………なかなか興味深い寝技だ。 女性にしか使えないのが残念だが、非常に面白い! だ、だが………何故、あの二隻の行動を見てから、胸の奥が熱く……高鳴るのだ……!?」

 

――

 

菊月「……………何やら騒がしくなったな?」

 

鳳翔「わ、私の胸部装甲のせい……なんでしょうか?」

 

菊月「いや、関係ないだろう。 まあ……こう五月蝿くては……聞く事もできん。 またの機会にさせて貰うとしようか……」

 

鳳翔「………………」

 

――

 

如月「あ………はぁ、はぁはぁ……ぁん……ぃぃぃ………」

 

不知火「ふぅ………つまらないわ。 もっと骨があると思っていたけど……」

 

「「「「 …………………… 」」」」

 

 

◆◇◆

 

【 仮面…… の件 】

 

?   洛陽 郊外の原野 にて  ?

 

左慈「よし……これで良いだろう。 急激な気圧の変化で脳に衝撃を受けた為……『ブラックアウト』を起こしたようだな。 身体が幾ら丈夫な奴でも、内部の精密な部分までは、どうしようもないか……」

 

華雄「──き、貴様は………い、いや! その前に月様方は───っ!?」

 

月「華雄さぁーっん!! 大丈夫、大丈夫ですかっ!?」

 

詠「この馬鹿ぁあああっ! 人を心配させる前に、さっさと早く起きなさいよっっっ!!」

 

華雄「ご、御無事で………良かった。 ゆ、月様……この者達は?」

 

月「こ、この方達は…………」

 

于吉「ふふふ……私の名は───『北郷一刀 二号』!!」

 

「「「 はぁ───っ??? 」」」

 

于吉「…………通称『技の二号』といいます。 そして、今──貴女の目の前に居る者は───『北郷一刀 一号』……通称『力の一号』です!」

 

華雄「な、何だとぉ!」

 

左慈「おいっ、于吉──っ! その設定は何だぁっ!?」

 

華雄「き、貴様は───いや、貴方達は………至高の武を身に付けていらっしゃるのですか!? な、ならば………不肖、この華雄!! 何卒、私に修行を付けて下さい!! 月様を護るべく力が欲しいのですっ!!」

 

左慈「お、俺は………もう弟子など取らん! 自分で考えろぉおおおっ!!」

 

――

 

港湾棲姫「ワ、私ハ…………?」ドキドキ

 

于吉「………港湾棲姫は………『港湾棲姫』じゃないですか? 他に何か……ありました?」

 

港湾棲姫「ソ、ソレダケェ───ッ!?」

 

于吉「……ああ………申し訳ありません。 私とした事が………忘れていましたね。 確か………別の呼称が………」

 

港湾棲姫「………………」ドキドキ ドキドキ

 

于吉「────『爆乳大要塞』」

 

港湾棲姫「────!!!」

 

左慈「他にも………『わんこ姫』とかだったか?」

 

港湾棲姫「────!?」

 

――

 

月「……………………………」

 

詠「『名は体を表す』──于吉達に比べて、遥かに違和感が無いわね、月……って!? ど、どうしたの……そんなに頬を膨らませてぇ?」

 

――

 

港湾棲姫「ナニモ………ナニモ……ワカッテイナイ………!! ワタシ……ダッテ……ワタシ……ダッテ………ッ!!!」

 

北方棲姫「イツカ………ワカッテ……クレル。 イツカ……イツカ………」

 

――

 

そんな……やり取りをした後で、左慈達は脱出路を作る。 

 

具体的には……于吉が傀儡兵を召喚し、火の壁に突込ませて熱を遮断して、『その間に通行しなさい』……との力業である。

 

勿論、月達は反対するが……傀儡兵士には生命が無い事、傀儡兵の耐えれる時間が少ない事を語り、無理矢理その場所を渡らして脱出させたのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 助っ人 の件 】

 

?  洛陽 郊外の原野 にて  ?

 

一刀、艦娘、恋姫達が………炎の包囲網から脱出、延焼防止に働いている中、一刀の居る場所に音も立てずに『三人』が降り立つ。

 

その者達は、一刀達に害を与える者では無く、逆に味方する為に参上した次第である!

 

――

 

??「一刀ちゃん〜! お・待・た・せぇぇぇ〜!! こぉの私達にぃ任せてぇおけば……万事解決よぉぉぉん!!」

 

??「ムハァ────ッ!! だぁりんよ、儂らの高速移動で、身体に不調とか起きなかったか? も、もし……苦しければぁ、儂が身体を擦って──」

 

??「ああ──大丈夫だ! 日頃から、どんな病魔も退治できるよう、身体を鍛えておいてあるんだ!」

 

??「……………そ、それは何よりだ!」

 

??「だけど、??が俺を気遣いながら運んでくれた事は………分かっているよ。 ───その御蔭だ、ありがとう!!」

 

??「─────だぁ、だぁりん!!」

 

――

 

かの者達は…………言わなくても判る独特の口調、その身に暑苦しい気を纏わせた──『漢』!

 

貂蝉、卑弥呼、華佗の三人である。

 

一刀と明命は当然、島風も一応………見知っている。

 

だが………イクだけは初対面であり───島風も、貂蝉に自分の衣装を着られたトラウマ的みたいな物がある為───こうなった。

 

――

 

明命「あ、あなた様方………ああ───っ!?」

 

イク「きゃああああっ──なのぉ!! 筋骨ムキムキのキモいオジサンが近付いてきたなのねぇ! 提督、こわぁいなのぉ〜!!」ムギュ!

 

島風「提督ぅ……島風ね、あの人……苦手なんだよ………」ギュッ!

 

一刀「こ、こらぁ………味方だ! 味方だから──離れなさいっ!!」

 

――

 

一刀の両腕に掴まる二隻。 恥ずかしがり赤面する一刀に………明命が面白いわけが無い。 その様子を目撃した明命は、しかめっ面の顔をしたと思えば、ツカツカと歩いて一刀の前まで近付き、顔を見上げる。

 

――

 

明命「むぅ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

一刀「……………えっ?」

 

明命「じゃ………私は一刀様の前に行きますっ!! ───えいっ!!」

 

一刀「ちょ、ちょっと!?」

 

「「 ─────あっ!? 」」

 

――

 

明命は、両腕を塞がれ、身動き出来ない一刀に抱き付き、一呼吸をすると……幸せな顔で頭を一刀の胸に預けた。 

 

横の二隻は、唖然として見守るしか無い!

 

――

 

明命「ふにゃあ〜〜。 あぁぁ………あの時の一刀様と同じ、包み込まれそうな温かさです〜。 それに一刀様と同じ日溜まりのような匂いが〜!!」

 

イク「むぅ……………なの!」

 

島風「はう………この私が、先を越されるなんて……」

 

――

 

この……余りにも酷い対応に、貂蝉が憤慨する。

 

――

 

貂蝉「ひ、ひどぉぉぉいっ! あんまりだわぁん!! 毎日毎日……美容に気を付け、このプロモーション維持や肌のエステを欠かした事が無いのに、加齢臭漂うオッサン呼ばわりするなんてぇ───どういう事よぉっ!?」

 

卑弥呼「ふはははっ! 貂蝉よぉ──お前の漢女道に対する精進が、未だに足らないから言われるのだぁっ!! 儂のように、二十代のピチピチスベスベの肌でなければ、そう言われても仕方あるまいっ!!」

 

貂蝉「でもねぇ、卑弥呼ぉ……この子は『二人』って言ったのよぉ? 私の他に該当するような人………卑弥呼しか居ないわぁ?」

 

卑弥呼「───な、何だとぉおおおっっっ!?!?」

 

――

 

この後で、騒ぎが少し拡大したが……一刀と華佗の対応で、何とか収まりをみせた。

 

★☆☆

 

華佗「───久しぶりだな、一刀!」

 

一刀「華佗! そして………貂蝉と卑弥呼……かっ?」

 

貂蝉「うふっ──『漢女、三日会わざれば刮目して見よ』って言うでしょう? 私の美貌に磨きが掛かって、誰だか判らなかったかしらぁん?」

 

卑弥呼「儂もだろうがぁっ! 南蛮の国で受けた秘伝の美容効果で、肌や髪が……ほれっ、この通り艶やかになったのだぞぉ!?」

 

一刀「い、いや………念の為に聞いただけ──や、止めてくれぇ! か、顔を二人して近付けるな!! 分かったぁ! 分かったからぁあああっ!!」

 

貂蝉「うふっ……相変わらずウブなんたからぁ〜。 でもぉ〜だからこそ、女の子の母性本能を擽って、何かと世話をしたくて集まるのよぉう。 もぉう〜貂蝉、妬けちゃうぅぅぅぅ!!」

 

卑弥呼「その前に貂蝉っ! 儂らを探し出し、力を求める機転は褒めてやろう! だがぁ……しかぁしぃぃ──何故、うぬまで………だぁりんの五斗米道(ゴットヴェイドォー)の力を受ける必要など──あるっ!?」

 

貂蝉「あらぁん! 卑弥呼の力だけじゃ……この状況を変えるのが不可能……と思ったからよぉん! 私達の力を合わせればぁ………」

 

卑弥呼「───うぬは下がっておれぇ! だぁりんの掩護を受けるのは儂一人で充分! 貂蝉の力が無くとも……この状況を変えてみせ───」

 

華佗「──二人共、鎮まるんだ! そのような荒ぶる気を身に纏えば、俺の五斗米道(ゴットヴェイドォー)を二人に打ち込む事が出来なくなる! 俺も親友と仲間達を救いたいんだ! ───頼む、力を貸してくれぇっ!!」

 

貂蝉「あらぁ〜ん、私とした事がぁ〜。 一刀ちゃんを助けたいあまりぃ、漢女に相応しくない行動を取ってしまうなんてぇ……。 もぉう〜何時も冷静な私を、此処まで苛つかせるぅ……罪なお・と・こ!」

 

卑弥呼「くうぅ………だぁりんより叱責を受けるとはぁあああ……っ! 漢女道前伝承者として──恥ずかしい限りだぁ!! だが、何時ものだぁりんの言葉と違い……別の愛を感じるぞ! この幸せぇ……これも、また心地よし!!」

 

――

 

この二人が、言い争いと悶えている間に、華佗が一刀達に説明する。

 

『卑弥呼と貂蝉の力で、雨を降らすそうだよ。 だが、長い間の旱魃で……水の氣が失せてしまっている。 だから、俺の五斗米道で氣を増幅させて、卑弥呼達の氣を活性化させた後に、技を仕掛けるという話だ!』

 

どんな方法かは、全く聞いていないと───華佗が首を横に振る。

 

一刀としては、一刻も早く行って野火を鎮火したい為、華佗達に願い出た。

 

勿論、三人とも……直ぐに準備に取り掛かったのは言うまでも無い。

 

★★☆

 

卑弥呼の氣を受けてパワーアップした華佗が、逆に卑弥呼と貂蝉の気血に針を打ち込む! 

 

ーー

 

華佗『注魂! ゴットヴェイドォー!!!』

 

卑弥呼「むぅはぁあああああ────っ!!!」

 

貂蝉「ぶるぅうううわぁあああああ────っ!!!」

 

ーー

 

通常の状態でも巨大な氣を纏う二人に、更なる氣の高まり──周りに居る将の何人かが反応する!

 

ーーーーー

 

華琳「────!? な、何なのっ! まるで──淵で身を潜む竜が、今にも天へ駆け昇らんと準備しているかのような………巨大な氣の塊は!!」

 

秋蘭「華琳様、どうか……………御用心を!!」

 

春蘭「……………」

 

ーーー

 

雪蓮「─────っ!!」ガタガタ

 

冥琳「雪蓮………足が震えているぞ?」

 

雪蓮「め、冥琳は…………何も感じないの? この──化け物みたいな氣を!?」

 

冥琳「……………ふっ、感じているさ。 だかな………雪蓮、その言葉を言わないでやってくれ。 容貌の割りには……心が繊細な者達なんだよ」

 

雪蓮「──へっ? 冥琳は知ってるの!?」

 

――

 

華雄「ぐう────っ!!」

 

霞「な、なんやぁ………この馬鹿でかい氣の塊わぁあああっ!!」

 

ねね「──ふぅ、相変わらず……無茶苦茶な輩ですなぁ………」

 

霞「───ねねは知っとんのか!」

 

恋「……………大丈夫。 霞も……華雄も……知ってる………」

 

華雄「何だとぉ?」

 

霞「──ウチらがぁ──?」

 

ーーーーー

 

卑弥呼は、目を光らせ、片手を拳に変えて氣を集中させる。

 

卑弥呼「ぬぅん! 漢女道四十八の奥義の一つ『漢女の清らかな祈り』! 天よ、我が願い───叶えぇええええいいいぃぃぃぃっっっ!!!」

 

卑弥呼は、片手を天に向けて拳を突き上げる! その拳からは、強大な氣の柱が天に昇って行く! 

 

まるで、某世紀末覇者のような姿勢を作り、氣を送り込んだ!

 

―――

 

貂蝉「さて、次は私の出番ねぇん! ぶるわぁあああああっ!!」

 

貂蝉は、指を北斗七星の数だけ伸ばし、天に向ける!!

 

貂蝉「外史暗殺拳奥義───『天破活殺』よぉぉぉ!!」

 

両目から溢れた氣が漏れるのか光輝き、貂蝉の指から七つの光が放射され、暗い夜空に北斗七星を描き出す!!

 

───すると

 

『━━━━━!!』

『━━━━━━━━━!!!』

『━━━━!』

 

天より雷鳴が何度も鳴り響き、辺りの闇が更に濃くなっていく。

 

ーー

 

華佗「…………成功したのか、卑弥呼?」

 

卑弥呼「勿論だ、だぁりん! 儂らの願いが聞き届けられ、天が喜んで感涙しているわい!! 」

 

貂蝉「これでぇ、私達の役目は無事に済んだわねぇん!」

 

ーー

 

そう言って───卑弥呼と貂蝉が空を見上げると、頭上より『雨』が降りだした! 地元の者が話すには、この数年振りの纏まった雨だという。

 

一刀「天が感涙している? 俺には天が怯えているような…………」

 

そう、様子を伺った一刀が……ボソリと呟いた。

 

ーーーーー

 

この『雨』と『一刀の指示』────そして『皆の活躍』により、火災は鎮火、おまけに雨も振り……土地も潤った。

 

一刀は、諸侯の皆に丁重に礼を述べた後、一度帰還を提案する。

 

雨の御蔭で火災が鎮火したのも事実。 しかし、雨具の準備などしていない為に、そのまま居れば体調わ崩す恐れもある。

 

だから、帰還をして明日改めて………報告やら礼などをさせて貰うと説明すると、皆が納得して撤退の準備を始めた。

 

こうして───この白波賊の戦いは終わった。

 

結果的には、一刀達の勝利だったが……色々な問題も残る。

 

これが───後に、大陸を震撼させる出来事になるとは──誰も思わなかった。

 

 

◆◇◆

 

【 ?? の件 】

 

?  洛陽 郊外の原野 にて  ?

 

焼けた草木、雨の濡れた大地、辺りを夜中から朝に移り代わる頃。

 

誰も居なくなった場所で、動く人のような物が………ユックリと手を伸ばす。

 

??「ハァ………ハァハァ………ハァ………!」

 

所々に火傷と思われる傷、有らぬ方向に向いてしまった四肢、服と思われし布切れを肌に纏い、元は白い肌だった所が………赤く、または黒く色が真鱈になってしまっている。

 

長い髪もバラバラになり、片目は潰れ……残りの片目は大きく見開き………それでも生きようと……もがき苦しむ───『戦艦棲姫』!

 

戦艦棲姫「………カ、身体ガ熱イ………。 ダ、ダガァ………マダ………死ネナイ! ア、アノ子ヲ………残シタ……ママ………死ネナイ………ッ!!」

 

だが、味方であった白波賊も闇に紛れて既に去り、憎き艦娘達も仲間を連れて既に去った。 

 

つまり…………誰も居ない。 

 

いや、後少し経てば……王允の配下の者が検分に訪れ、戦艦棲姫の姿を見つけるだろう。 そうなれば、兵士は戦艦棲姫を見付け次第、殺しに掛かる。

 

そうなれば、戦艦棲姫は──娘として接して来た離島棲鬼に二度と逢う事もなく………命脈を絶たれる事になるだろう。

 

――

 

戦艦棲姫「………イ、生キタイ………生キ延ビタイ! 生キテ………アノ子ニ……」

 

??「…………これが深海棲艦………ね。 無様だわ………貴女………」

 

戦艦棲姫「───!?」

 

――

 

自分の後ろより───声が聞こえた。

 

しかし、今の原野には誰も居ない。 敵味方も退き、近辺の民さえも近付かないのに。 そんな場所に関わらず、声が聞こえたのだ。 

 

――

 

戦艦棲姫「誰モ……………居ナカッタ。 誰モ戻ッテ…………」

 

??「思っていたより……遥かに弱い存在。 確かに艤装は強そうだし、身体も魅力的だわ。 だけど……ねぇ? あまりにも……考えが甘いわよ。 一発だけで、攻撃を終わらすなんて………慢心。 話にならないわ………戦艦棲姫サン」

 

戦艦棲姫「─────ッ!?」

 

――

 

そこは、ユックリと匍匐全身で動いた場所、敵も味方も……誰もかも居なかった場所に、何故か──若い女の声が聞こえた!? 

 

――

 

戦艦棲姫「キ、貴様………ハ……」

 

??「────見られるのは……嫌いなのよ!」ドン!

 

戦艦棲姫「グゥウガァアアアアア───ッ!?」

 

――

 

振り向こうとした戦艦棲姫の顔に、上から急に裸足の足が踏みつける!

 

ーー

 

??「対等な口を……利けると思うの? 貴女は負け犬………私は……貴女を救える唯一無二の存在。 この話で、どちらが上か………よぉく判るわよね?」

 

戦艦棲姫「名、名前ヲ………名乗ッテ………カラダ………ッ!!」

 

??「私? この世界に呼ばれた………『艦隊の疫病神』よ。 前は……『残紅』って……ふざけた名前で呼ばせて………いたけどね?」

 

戦艦棲姫「カ………艦隊ノ疫病神? キ、貴様ァア…………サウスダ『ゲシィ!』───グワァアアアアッ!!」

 

ーー

 

戦艦棲姫が、背後で自分の顔を踏みつける……女の正体を覚り、名前を呼ぼうと試みると………更に頭を強く踏まれる。 傷口が余計に広がり、声にならない悲鳴が上げるが、女……サウスダコタの力は……強くなるばかり。

 

サウスダコタ「………同国生まれか知らないが……黙れ。 まさか、二つ名で正体が露見するなんて……思わなかった。 慢心、傲り──怖い言葉だ……」 

 

戦艦棲姫「グウ………矢張リィ───」」

 

サウスダコタ「………正体が分かれば、丁寧な口調で喋るのも面倒臭いだけ。 この身体も………『まだ』借り物だから……丁寧に扱わないとな……」

 

ーー

 

戦艦棲姫の顔より足を離して、前に移動して話すは黒髪の美女。 ただ、片腕を見れば気付くのだが──手首から先がなかった。

 

ーー

 

サウスダコタ「貴様の言う通り──『サウスダコタ級ネームシップ サウスダコタ』──この世界の屑に呼ばれて降り立ってやったのさ!」

 

戦艦棲姫「キ、貴様程ノ艦ガ………何故………深海棲艦ニ……ナラナイ!?」

 

サウスダコタ「簡単な事。 私は……あの戦いで……最新鋭という慢心を突かれ、轟沈する恐怖を……嘲笑の屈辱を与えてくれた………憎むべき戦艦『霧島』を捜し出し、報復するため──単独で行動していたからだ!」

 

戦艦棲姫「ソ……ソウイエバ………『ワシントン』ト………喧嘩シテ………」

 

サウスダコタ「やはり………同国か? まあ、そんな事は……どうでもいい」

 

戦艦棲姫「………………」

 

サウスダコタ「後は、何かの組織に入れば、必ず強制的に行わなければならない事ができる。 例えば、霧島が仲間で居たら、奴を殺す事が遠退くだろう? 敵になっても直ぐに殺す事が出来ないかも知れない。 そんな縛りが不自由だった訳だ!」

 

戦艦棲姫「ダケド………ナンデ………私ノ前ニ?」

 

サウスダコタ「………貴様が困っているようだから……私が来てやった」

 

戦艦棲姫「──エッ!?」

 

その意外な言葉に思わず顔を上げる───!

 

サウスダコタ「───なんて言うと思うか? 改めて……垂直に言おう! 貴様の深海棲艦としてのBodyを……私に譲れ! 貴様程度の者が扱えれるToy(玩具)では無い! 私が入れば……霧島に対して十全に扱えれる!」

 

戦艦棲姫「ダ……黙レェエエエ『ボゴォッ!』──ガァハァァァ!!」

 

サウスダコタの非情なる言い方に、思わず噛み付かんばかりに騒ぐ戦艦棲姫だが、サウスダコタは……逆の足で更に踏み躙る!

 

サウスダコタ「この私がな、優しく話している内に……聞けば良かったものを。 貴様の精神が混じったままだと後が面倒だが仕方がない。 私にも時間が無いんだ。 そのまま『貰う』ぞ? 戦艦棲姫──いや『ワシントン』!」

 

戦艦棲姫「────!? ナ、何故……ワカッタノ!?」

 

サウスダコタ「戦艦ワシントンを呼ぶ時、愛称である『マイティ W』と呼ぶのが一般的。 それなのに『ワシントン』と呼ぶのは………異国の艦か、お前が本艦だからだと言う証拠だ!」 

 

戦艦棲姫「────!」

 

サウスダコタ「それに、乗務員同士が喧嘩した事は知れ渡っているが、私とワシントン同士が喧嘩した事は、私と貴様……二隻しか知らない! その事実を合わせれば、貴様がワシントンだと簡単に導かれる!」

 

正体を見破っていたサウスダコタは、戦艦棲姫の顔を掴み………無情にいい放つ! 戦艦棲姫の驚愕する様子を……嘲笑いながら!

 

戦艦棲姫「─────ヤメテ、ヤメテェ! 私ハ……アノ子ニィ───!」

 

サウスダコタ「貴様の身体───このサウスダコタが貰い受ける! この『借り物』では、弱すぎて話にならんのだ。 貴様の身体なら……霧島打倒に充分使えるからな!」

 

戦艦棲姫「ワ、私ハ────」

 

サウスダコタ 「心配するな………私と貴様の仲ではないか!」

 

戦艦棲姫「─────ソレジャアッ!?」

 

サウスダコタ「私と一体化すれば………私に吸収されて……貴様は完全に消滅する! 貴様のウザイ記憶は残るがな。 ───あーっはっはっはっはっ!!」

 

戦艦棲姫「ソ、ソンナァアアアア──────」

 

ーー

 

───────!

 

この時、原野で眩い光が見えたと───報告がもたらされたが、付近には遺体と壊れた武器、酒宴の痕跡しかなかったと言う。

 

この出来事は、漢王朝に記録されるが──後に、歴史の彼方へ埋没する事になる。  

 

 

 

 

 

戦艦棲姫「私ガ………戦艦棲姫ダ。 霧島………待ッテイルガ………イイ! 貴様ハ……コノ『サウスダコタ』ノ手デ…………息ノ根ヲ……止メテヤルッ!!」

 

 

 

 

ーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 

本当は12月の末頃に投稿予定でしたが、義輝記も今年中に投稿したいと思い、急いで作りあげて出してみた次第です。

 

三週間の休みというのは………実家で葬儀があったため、すぐに小説作成に着手できないと考えていたものですから。

 

実際、喪主でしたので……今も……かなり疲労困憊。

 

ですが、投稿を長期止めますと………書き辛くなり、義輝記やこの小説も未完のままで終わっちゃう可能性もあったので、時間の空いてる時に書いて出してみました。 

 

次回、義輝記を出す予定ですが…………まだ、片付けとかあるため、年末まで投稿できるか分かりません。

 

そんな作者の作品ですが………どうか、宜しくお願いします。

 

 

説明
予定を変更して、夜戦の最終話を投稿します。
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コメント
スネーク提督 コメントありがとうございます! イメージ的には北斗の拳に出てくるような場面、具体的に言えば聖帝様との対決シーン。 サウスダコタの憎しみは……友を葬り、敵対する者に牙を剥き、大陸全体を巻き込み……恐怖へと追い込んでいきます。 (いた)
天が感涙…?どう考えても怯えて泣いてますわwサウスダコタが戦艦棲姫に…友だったであろうワシントンすら消すとは、そこまで霧島への恨みが深いのか…(スネーク)
天龍焔提督 コメントありがとうございます! 不知火「 …………不知火に落ち度でも?」  如月「んあぁぁぁ! そこは〜ダメぇ──」(いた)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! サウスダコタの怖さは………まだ始まったばかりなのです。(いた)
此処でサウスダコタ登場か…しかも戦闘棲姫になるというオマケ付きで。霧島さんも大変そうだ。(mokiti1976-2010)
雪風提督 コメントありがとうございます! 両陣営に何をもたらすのかは……今後の活躍次第。 一刀達には、負しか振り撒かないでしょうけど。  (いた)
かの船魂・・、まるで怨霊なりや・・・。そして、かの霊・・両陣営にとっても害なりや・・。(雪風)
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