ひがやどる | 次 |
説明 | ||
ほのちゃんは母親の愛情を知らずに育ちました。お母さんと言えたことはほとんどありません。彼女にとって、家は「ただいま」と帰ってくる場所ではなかったのです。そのような場所がなかったのです。 ほのちゃんは高校へは進学していません。パン屋のおばあちゃんのところに住むようになったからです。 おばあちゃんと過ごす時間は、ほのちゃんの心を温かく包んでくれました。今のほのちゃんがいるのも、おばあちゃんの優しさあってこそだったのです。 しかし、おばあちゃんもずっと傍にいるわけではありません。別れは必ずやって来ます。 ほのちゃんはおばあちゃんが亡くなった後、パン屋をひとりで切り盛りするようになりました。 おばあちゃんとの思い出残るお店、いつも来てくれるお客さんの笑顔、それだけで十分幸せ…一人は寂しくない、それが当たり前だったんだからと自分に言い聞かせていました。 ある、夕日がひときわ美しかったその晩のこと 知らない女性が夢に出てきました。彼女は優しく微笑んで、知るはずもないのに、ほのちゃんの本当の名前を呼びました。そしてビックリするほのちゃんをぎゅっと抱きしめ 「ありがとう」 そう言って消えていきました。 目が覚めて、ほのちゃんはいっぱいいっぱい泣きました。 おかあさんおかあさんおかあさん 辛くて苦しくて寂しくて、でも、夢に出てきたあの人のことを思い出すと、それら全て愛おしく思えてしまうのでした。 こころのなかにおひさまがやどったように やさしい、あったかい、なつかしい… あのひとはだれだったんだろう また、あいたいな… 「アノリミア」 ほのか と さなえ |
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