かけがえのないもの
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はなちゃんとお父さんは、離れて暮らすことになりました。

お母さんがいなくなってから、お父さんの心はとても弱ってしまい、

声もどこかへ迷子になりました。

小さなはなちゃんと、とても共に過ごせる状態ではなかったのです。

 

小さなはなちゃんは、お父さんの親戚のところに行きました。

でも、はなちゃんはお父さんのことがすごく心配でした。

 

最後に見た、お父さんの悲しく寂しげなお顔が、

目を瞑るとふっと浮かんでくるのです。

 

あんなに大好きだった絵も描けなくなりました。

 

「…」

 

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はなちゃんは、お母さんの言葉を思い出します。

 

 こころの目で見たものを、

 大切にたいせつにしてね

 

 

はなちゃんは、裸足で部屋を飛び出して、お父さんの元へ走りました。

同じ街の中だったけれど、小さなはなちゃんにとってはすごく遠い距離でした。

半分しか見えない世界で、色んなものにぶつかりました。何度も転びました。

でも、はなちゃんは走り続けました。

そして

 

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「おとうさん!!!」

 

薄暗いお家の中の、奥のおくの隅っこで、

丸くなって泣いているお父さんをぎゅうっと抱きしめました。

 

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 ずっとずっと、もうずっと

 そばにいるの、お父さんのそばに

 独りぼっちになんかしない

 わたしの、かけがえのない

 

 大好きなお父さん

 

おしまい

 

 

説明
「ふたりのこと」 (http://www.tinami.com/view/870078)
お母さんを喪った
お父さんと娘のはなちゃん
ふたりが、ふたりの道を歩み始めた日のこと
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