月夜桜花【第三部 治癒魔法の行使】
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三、治癒魔法の行使

 

こうして俺は、新しい学校で部活も見つけられ、魔弓道部をしていく事になり、学校を後にした。

家に着くと、入部届けや防具の購入書類などの後処理をしていた。

「おーい、幸助起きてるか〜」

親父が声をかけてきたのだ、二階から顔を出して質問に答えた。

「何か用?」

俺が顔を出すと親父が言った。

「お前、魔弓道部に入ったのか」

「入ったけど何で?」

「いや、お前の事だから、又、サッカー部に入るかと思ったのだが」

俺は、小学校から中学校までサッカーをしていた。しかし、転校前の高校に入学したのは良いのだが、良い部活も無く、部活には所属していなかったのだ。

ところが、今回の高校は、全国でも有名なサッカー名門校だった。

(まぁ、そう考えると親父が疑問を抱くことも無理はないだろう)

「うんうん」

などと一人で納得していると

「何、一人で納得してるんだよ!俺の質問に答えろ〜」

親父の声が聞こえた。

「おー、ゴメンゴメン」

俺はそう言い

「俺が魔弓道部に入ることを決めたのは、自分の特技を活かすためだよ」

と、俺は単刀直入に言った。

「お前が、魔弓道をやるなんてね」

確かに自分も驚きを隠せない、だが、勝にあそこまでからかわれるとさすがに自分のプライドが許さないからそうしたのだ。

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「まあ、別に良いじゃないか、たまにはこういう部活に入って魔法の実力を上げるのも・・・」

俺は、自分が納得できないと、あきらめられないタイプだと思っている。

俺は親父の話が終わったので入部届けの費用時事項を書いていった。

書類も目を通して、ファイルに入れてカバンに入れた、次に防具の購入書類を書こうとしたのだが

疑問に思った。

「はて、俺はシールド魔法を使えるから必要ないのでは?」

俺はふと疑問に思ったので、川島先生に連絡を取った。

「もしもし、桜木ですけど、夜分遅くすみません」

「どうした?」

俺は部員規約を手に取り、

「部員規約では、防具は必ず付ける事と書いてありますが」

「ああ、そうだが」

「俺はシールド魔法を使えるので、必要はないのでは?」

お金を使わない事に越したことはないのでそう言った。

「う〜ん、そうだな必要は無いな」

川島先生は思いのほか普通に許可をしてくれた。

「ただし、条件がある」

(はは…やはり、そうは上手くいかなかったか…)

「なんでしょうか?」

「大会等に出て貰う可能性があるが、その時は必ず付けろよ?もちろん貸し出しで」

それはそうだ、何せ、全国から審査員が集まる。

しかも、大衆の前であんな高等魔法を使うわけにはいかない、

(どんな噂を立てられるか分かったもんじゃ無いしな…)

そう俺は思って

「はい、大丈夫です」

「ならば、話は早い」

「え?」

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俺は疑問に思い

「話は早い、ってどういう事ですか?」

俺は話の内容がつかめず、川島先生に聞いた。

「ああ、今年の春に関東大会の予選会があるんだよ…」

(まさかな、俺みたいな新人がいきなり大会に出るだなんてある訳が…)

「そこでだ、今日、お前に見せて貰った魔弓を見て、関東大会に出られるのではないかと

思ってな」

(あるか…)

案の定、俺の予測は当たってしまった。

「どうだ、出てみないか?」

そんな、突然言われても困ると思ったので、

「すぐには答えられないので、後日までに答えを考えておきます」

俺はそう言った。

「そっか、突然言われれば当たり前か…」

俺の答えに先生は少しばかり動揺していた。

「まぁ、そんなにあせらなくても良い、何せ大会は3月だしな、まあ、そういう事だからよく

考えてくれ、じゃあまた明日」

ガチャ…

そう言って前島先生は電話を切った。

大会どうしようかな〜、そこに電話がかかってきた。

「もしもし、桜木ですが」

「あ、もしもし幸助君?」

電話の主は月だった。

「どうした?」

「ん〜、魔弓道部に入ったって、聞いたから電話をしたの」

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月はそう言うと

「あのね、私は運営委員会だから、一応注意事項を説明しようと思ったから」

月はそう言うと、部活動をやる上での注意事項や、帰宅時間等について説明をしてくれた。

「…と言うわけだから、平気かな?」

「ああ、もちろん平気だ」

俺は返事を返してから聞いた。

「なぁ、月は新入部員が大会に出るのってどう思う?」

俺は気になっていることを月に聞いた。

「私は良いと思うよ、大会に出て上を目指す後輩は、良いと思うし」

月はそう言ってくれた。

「そうだよな…、分かった、ありがとう」

俺はそう言って、

「じゃあ、また学校で・・・」

そう言って電話を切ろうとした。しかし、

「あ、そうそう、明日からお昼ごはん一緒に食べない?」

月はそう言ってきてくれたのだ。

「一緒に食べるのは、良いけど周りから見るとカップルに見られかねないか?」

俺はそう言った。

「カ、カップルー!?」

電話が壊れるかと思うくらいに、月が叫んだ、すると電話越しに、

「月〜、どうしたのカップルなんて?」

月の母親の声がした。

「何でもありませ〜ん・・・」

と月が慌てて解釈しているのが聞こえた。

「カップルなんて言わないでよ〜、あービックリした」

「そんなに驚くなよ…」

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俺はそう突っ込みを入れて、

「保健室で食わないか?」

「何で、保健室なの?」

月は質問してきた、まあ、確かに普通に考えたら、保健室で食べるなんて言わない、

「俺の義理姉が居るし、あの人の事だから、OKしてくれると思う」

俺はそう言った。

「まー、二人だけとはいかないけど、俺の義理姉は一応先生だから、変な誤解を招くこともない

だろうしな…」

俺がそう言うと、

「うん、そうだね、その方が良いかも知れないね」

と、月は素直にOKしてくれた。

「じゃあな月、また明日」

「うん、おやすみ〜」

こうして、俺は月から必要なことを教えて貰い、明日の準備をして、眠りに就いたのだった。

「―くん、こうすけくん、幸助君!」

月の叫ぶ声が聞こえた。

「ふぁ〜」

俺は大きなあくびをして、目を空けた、すると目の前に月の顔があった。

「うわぁ!?」

俺は突然のことに動揺して、後ろにある壁にへばりついた。

「な、な、何でお前が俺の部屋に居るんだよ!?」

俺は大きな声で叫んだ。

「フフ、昨日のお返しよ」

そう言ってにっこり笑い、笑顔を俺に作ってくれた、本当に可愛いよなと思って、自分の顔が少したるんでいる事に気がついた。

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「それで、さっきも言ったが、何でここにいるんだ?」

時刻を見ると七時ぐらいであった。

「うん、この前みたいに料理を作ったの」

確かに、さっきから、食欲をそそる臭いがしているな、そう思って、俺は月に連れられ一階に行った。リビングに入ると、美味そうな料理が置いてあった、椅子に座り料理を見た。

「美味そー」

「美味しそうでしょう」

月がそう言って、俺に見せたのは料理本だった。

「自分の事を考えて、料理が出来るように努力することにしたの」

そう言って月がその本をしまう、

「いただきまーす」

月と俺は、二人で食事を始めた。俺はテレビを付けてニュースを見る。

ここの地方では地方TVも見ることが出来るので、地方ニュースにしてみた。

「ニュースの時間です、今日の朝方五時、県立桐嶋高校で障害事件がありました。被害にあったのは、この高校の教師をしている前島さんで、現在は意識不明の重態で、市内にある病院へ搬送されて、手当てを受けています。警察では…」

ガタッ!!

俺と月は二人して立ち上がった。

「月!」

「うん」

俺達は急いで食事を摂り、学校に病院の場所を電話で教えて貰い、病院へと向かった…。

病院に着くと、受付で前島先生の病室を教えてもらった。

「今は、まだ意識が回復されておらず、集中治療室に居ます」

「ありがとうございます」

俺は、そう言うと急いで集中治療室に向かう、集中治療室の前には観里姉と、勝が立っていた。

「観里姉、前島先生は?」

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観里姉は首を横に振った。

「まだ意識は回復してないし、回復できるかどうかも、まだ…」

観里姉の話に俺は、膝を落とした。

「何でだよ、何で…」

「そう言えば!病院には魔法治療系統に携わる先生が居るはず!!」

診断を終えた先生が出てきた。

「先生!」

俺は先生の元に駆け寄り、聞いてみた。

「先生、魔法系統の治療が出来る医者はここには居ないのですか?」

先生は首を横に振った。

「魔法系統の治療が出来る医者はこの病院には居ないのですよ…」

先生は暗い顔で言う、

「魔法系統の治療が出来る医者が居れば、ああいう方を治療できるのに…」

そう言って、医者はその場を後にした。

(くそっ!魔法系統の治療が出来る人が居れば…!?魔法系統の治療…)

「はは…」

俺は苦笑した。

(魔法系統の治療が出来る人が居なければ、『俺』がやれば良い)

「このぐらいの症状なら反動も起こらない…」

「え?」

俺がボソッと言うと、観里姉が俺の方を見た。

「何をするの?」

俺は観里姉に振り向き、軽く頷いた。

「駄目よ!!」

俺は観里姉の制止を振り切り、集中治療室のドアを開けた…。

俺は来客用の白衣を身にまとい中へと入ってく、すると

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「あなたは、ここに入ってはダメです!」

中でモニターを見ていた看護士が俺の事を制止する。しかし、俺はおかまいなしに進んで行く

俺は前島先生の頭の上に手をかざす。

「だめだ…」

そう言って看護士は、警備員を呼ぶ

「お願いだ早く来てくれ!患者が危ない!」

看護士はそう言って、ボタンを離す…。が、すでに俺は、精神統一を終えていた。

「わが汝の名において、治癒魔法を行使し、この者の意識を回復させる」

俺がそう言うとあたりは暖かいオレンジ色の光が漂っていた。

「うぁ…」

看護士が驚く、俺はいっそう精神を統一させる。

「発動!」

俺の一言と共に、あたりの光は前島先生の全身にまとわり、光が一瞬、強い光を帯びて光は終息した。

「ふぅ…」

俺はため息を吐くと、そばにあった椅子にへたり込んだ。

「ん…」

前島先生の意識が戻る。

「あれ?俺は何でここに…」

俺に気がついた前島先生は

「桜木?」

前島先生は俺にそう問いかける。

「先生は誰かに腹部を刺されて、意識不明の重態で、ここに運ばれてきたそうです」

俺はそう説明した。

「じゃあ、何で俺は目が覚めた?」

前島先生は不思議そうに言う

「俺が魔法で意識を戻しました」

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俺がそう言うと

「そうか、本当にありがとう。それと、どんな状況なんだ?」

先生は自分の容態に関して聞いてきた。

「俺も詳しくは知りません・・・、申し訳ないです」

先生が笑った。

「いや、謝らなくても、本当にありがとう」

そう前島先生は言った。

「はい、では失礼しました」

俺はそういって病室を後にしようとした。その時!

「!!!」

俺は何者かの殺気を感じた、誰だ?俺は辺りを見回した。

「変だな、確かに何者かの殺気を感じたんだが…」

辺りを警戒しながら、待合室に居る月と観里姉の所に戻った。

「ただいま〜」

俺はそう言った。

「おかえり〜」

月と観里姉は、笑顔で言ってくれた。するとロビーの方から一人の少年が歩いて来た。

「よー」

そこに現れたのは勝だった。

「何だ、お前か…」

「何だ、お前かとは失礼な奴だな!」

そう言って俺のことを軽く殴った。

「痛って〜」

俺がそう言うと月が、

「勝君、人のこといきなり殴るのはダメよ!」

と勝るに一括した。

「わ、悪かった」

勝がそう俺に謝ってきた。

「べ、別に平気だよ、このぐらい大した事はない」

俺はそう言って、勝に先生の事について話した。

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「幸助が意識を戻したのか」

そう勝は、言った。

「ああ、俺が治癒魔法を使って、意識を戻した」

俺はそう勝に答えて、

「まあ、先生も意識は戻ったし、退院できるまで二ヶ月だから平気だろ」

俺はそう言った、しかし・・・

「だけど、俺としては先生が居なくては困る…」

勝は真剣な顔で言う、

「そうだよな、大会の予選会まで、後五ヶ月だから、退院出来たとしても、監督が務まるかどうか・・・」

俺がそう言うと、

「先生に聞いてみよう」

下を向いていた勝が、そう言ったので、一緒に先生の元に再び向かった。

「失礼します」

俺と勝はそう言って病室に入る。

「おう、どうした?」

「はい、大会までの間先生の代わりに、誰が責任者をやるかについて聞きに来ました」

勝はそう言って先生に質問した。

「うーむ、そうだったな…」

先生は考え込んでいた、すると俺の方を少し見た。

(おいおい、バカな考えはしないでくれよ…)

「そうだな〜、幸助は大会に出ることにしたのか?」

先生は俺に対してそう言ってきた。

「はい、自分のためにもと思って、やることにしました」

俺が真剣に答えると、

「そうか、じゃあ、お前がやれ、その責任者」

先生は俺に対して、笑いながら言ってきたのだ。

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「ええ〜!!!」

俺と勝は声を上げてしまった。

「患者さん、もう少し静かにしてください!」

あまりにも大きい声にナースコールが入ってきた。

「すみません」

先生はそう言ってナースコールを切った。

「せ、先生こいつはまだ入ってきたばかりなんですよ、それをいきなり魔弓道部の責任者に任命する

のはどうかと…」

俺も勝ると同意見だ。

昨日入って来たばかりの新入部員に部活の責任者をやらせるのはどうかと思う、

「平気だよ、実力も経験も、幸助のほうが俺より全然上だ。問題はないだろう」

そう先生は答えた。

「しかし、学校側にはどう説明するのですか?」

俺は先生にそう問いただした。

「そうだな、学校側には『魔弓道部を任せられるような、魔力を持つ先生が居ないので、有名な血統の生徒を臨時顧問にする』とでも言うか」

先生はとんでもない事を普通に言う、

「まあ、大会までだし問題はないだろう」

「やるのは良いのですが、手続きとかはどうするのですか?」

俺はそう言った。

「平気だよ、俺が全部やる。また何かあったら連絡するから、お前らはそろそろ学校に行け」

前島先生はそう言って、俺達にそう言って、学校に行くように促した。

「では、お大事に」

俺と勝はそう言って病室を後にした。その後、観里姉の車に乗って学校に向かった。

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「しかし、幸助君が臨時顧問なんてね〜」

観里姉は俺にそう言う、

「確かにそうだよな…」

俺が観里姉にそう言うと、

「何がそうだなだよ、俺なんて心臓が飛び出そうなくらい、びっくりしたんだぞ」

勝は俺にそう言うと、

「まぁ、臨時顧問に就任したんだからな、指示はしっかり出してくれよ」

と、勝は俺にそう言った、先生から渡された部活の細かい指示や予定の紙を見ながら、

「分かっている、しっかりとやるよ」

俺はそう言うと、

「あれ?そう言えばさっきから、月だけ声が聞こえないな?」

俺はそう言って車の中を見渡す、すると、3列目の席で、月が寝ている事に気付いた。

「なんだ、寝ていたのか…」

俺はそう言うとブレザーを脱ぎ月にかけてやった。すると・・・

「お熱いねー」

そう観里姉が言ってきた。

「ば、バカやろう!人として当たり前だろ!」

俺は慌てて解釈をするが、

「へー、月と幸助って、そういう関係だったんだー」

今度は勝が茶化してきた。

「いじめだ…」

俺はそう言って後部座席で落ち込んだ…。気が付くと校門に着いていた。

「じゃあ、また」

俺はそう観里姉に言って、月と勝と共に、教室に向かった…。

「ふぁー」

俺は大きなあくびをして、昼休みを迎えた、そこに、

「幸助君、一緒に昼ごはん食べよ〜」

と月が言ってきた。

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「おう」

俺はそう言って、カバンを持って月の方に歩いて行った。

「幸助君が魔弓道部の臨時顧問だなんて、ビックリしたよ〜」

月がそう言う、

「ば、バカ!そんな事廊下で言うな!」

「あ、そうだった…」

月がそう言ったのだが、時すでに遅し・・・

「な、なんですと〜それは本当ですか?桜木君!」

あ〜あ、言うのが遅かった、やっぱ来たか…

「そこんところ、どうなのですか!?」

そう言って、マイクを向ける。この男の名は徽章山 孝治(きしょうやま こうじ)その名の通り、

考えて直す事が好きな奴だ。

いや、考えて直すと言うよりも、考えてでっち上げる事が好きな奴だった…。しかも、こいつを敵に回すと後が大変だ、何故かと言うと広報委員なので、でっち上げの記事をいくらでも書く事が出来てしまうからだ。めんどくさい・・・

「あ!UFO!」

俺がそう言うと

「おお」

とお構いなしにあさっての方向へと飛ぶ。で、あさっての方向とはどこかと言うと…

「うわぁ〜」

外だった、見事に飛んだのは良かったのだが、二階の窓から見事に下に落ちたのだった。

「桜木君〜、これはひどすぎでしょ〜」

と徽章山の声が草むらから聞こえた。

「さ・く・ら・ぎ〜」

そこにリーダーがやって来た。

「私の従姉弟で遊ばないで」

怖い笑顔で俺にそう言って来た。

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「分かった、分かった」

「リーダーさん、幸助君も悪気があった訳じゃないから、許してあげて」

月がそう言うと、

「まあ、今回は許すわ、月に免じて…」

そう言って、徽章山の元に行った。

「そう言えば、何でリーダさん、徽章山君の事、従姉弟って呼んでいるの」

「そのまんまだよ」

と俺が答えると

「え?徽章山君って、リーダさんの従姉弟さんだったの〜」

「何だ、知らなかったのか?徽章山はリーダーの従姉弟だって」

あの二人は従姉弟で、ああして、リーダーと徽章山はほとんどの行動を共にしている。

「へぇ〜、知らなかった」

そんな事を話しているうちに

「ほら、保健室に着いたぞ」

俺はそう言うと

「失礼します」

とドアを開けた。

「あら、どうしたの桜木君?」

そう観里姉が言ってきた。

「こんにちは〜」

「あら、月ちゃんまで」

観里姉が、そう言うと

「いやさ、俺と月だけで食べていると、変な噂がたつか分からないし」

と俺は、ドアを閉めてそう言った。

「変な噂ねぇ〜」

そう観里姉は俺たち二人を見た。

「幸助にはもったいないわね…」

観里姉が苦笑しながら言う

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「な、何でそーなるんだよ!」

俺は思わずそう言ってしまった。

「あら?何も私は言ってないわよ」

と、観里姉が言う

「え?え?」

月がとても不思議そうに、俺と観里姉の会話を聞いている。

「月って、本当に鈍感だよな〜」

俺はそう言いながら、弁当を食べようとすると

「そう言えば、幸助君の弁当って、誰が作っているの?」

「そうそう、私も前から気になってたんだよね」

と月と観里姉が聞いてきた。

「まさか…、彼女が居て作ってもらっているとか?」

観里姉がからかいを含めながら俺に言う、

「ん?自分で作っているよ」

俺は普通に答えた。

「へぇ〜、幸助君って、自分で作っているんだ〜」

月が感心しながら言う、すると

「幸助君はえらいねー、私なんかまだ、親に作ってもらっているわよ」

と観里姉が言う

「もう、成人しているんだから、親に頼るなよ〜」

と俺が言い返す。

「だって〜、私が作ろうとすると、とんでもない物が出来るんだもん」

「自分から言うなよ…」

俺はそう言って、月の弁当に目をやった。

「これは、お前が作ったのか?」

「うん、そうだよバランスを考えてしっかりとしたお弁当を作ったの」

月がそう答えてきた。

「へぇ〜、月は料理が美味いな〜」

俺がそう言うと

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「あれ?ちょっと待ってよ!」

観里姉がそう言うと

「月ちゃんはって、どう言う事よ!」

「だって事実だろ〜」

そう言って、悪夢の一日を思い出す…。

確か親戚一堂集まって、俺の高校入学パーティーがあった時の事だ、俺はそんな物やる事ないと言った

のだが、親戚中がやると言って集まって、観里姉の手作り料理を食べた後、親戚一同そろって病院に運ばれたのだった…。

「頼むから、前回みたいな大騒動に発展させんなよ…、とは言えど、大騒動に発展したのは、

あれで二度目だったか…」

「うぅう〜」

そう言って観里姉は落ち込んだ。

「さてと、飯も食い終えたし教室に戻るか」

そう言って、

「月、戻るぞ」

「うん」

「じゃあな観里姉」

俺が言うと

「はーい、分かったわよ」

そう観里姉が答えたのを聞いて、保健室を月と共に後にした。

「そう言えば、保健委員ってあるのか?」

俺は月にそう質問をした。

「うん、あるよ一クラスから三人選出されて、運営されているよ」

月は俺に、そう説明してくれた。

「なるほど、保健委員に入るのも良いな」

俺がそう言うと

「何で?」

そう月に質問をされた。

「いや、俺は治癒系統の魔法が使えるし、大抵のケガは直せからな」

「なるほど」

と月が隣で納得していた。

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クラスに戻ると、クラスメートから前島先生の事について、質問攻めにされ、

授業担当の先生からも質問攻めにされた…。

「ふぅ〜」

HRを向かえ、俺は机に顔をしずめていた。

「HR始めるから、席に着け〜」

担任の藤潟がやってきた。

「おーい、桜木、ここから呼び出しがかかっているぞ」

そう俺に茶封筒を手渡してきた。

「?」

とりあえずHR終わったら見るか、明らかに周囲の目線を感じるし…、俺の周囲のクラスメートは、

明らかに俺の手元に集中している。

「気をつけ、礼」

「ありがとうございました」

リーダーの声によって、放課後を迎えた。周囲の人気がない事を確認してから、茶封筒の中身を確認し、呼ばれた場所に向かった。

コンコン…

「入りたまえ」

誰かがそう言うと、

「失礼します」

と俺は校長室の扉を開けた。そう、先程返事をしたのは他でもなく

「やあ、桜木君」

ここの学校の校長であった。

「それで、用件は何でしょうか?」

俺は冷静に校長の顔を見て言った。

「まぁ、まぁ、そう怖い顔をするな」

校長はそう言うと、俺をソファーに座るように促した。

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「さっそくだが、この魔方陣に見覚えは無いかね?」

校長はそう言うと、二枚の写真を渡してきた。一枚の写真には、校庭に生えている一本の椿の木が

写っていて、もう、一枚の写真には、その木に描かれた魔方陣が写っていた。

「…、いえ、見覚えはありません」

俺はそう言うと、その写真を校長に返した。

「これが、どうしたのですか?」

俺が質問をすると

「うむ、今朝の事件で発見されたのが、この魔方陣だ」

俺は、そう言われて気が付いた。

「前島先生は、この魔方陣によって殺害されそうになったと言うことですか?」

「そうだ、幸い魔力が弱まっていたために急所は外れたみたいだが、前島先生の背中に刺さっていた

物から、やはり同じ魔力が検出された」

校長はそう言い窓の方へ行き

「これを、ほっとく訳にもいかず、朝から夕方にかけて捜査を行った。そして、検出された魔力を持った者が、この学校に居ることが分かった。そして、浮上した数名の中に含まれていた一人が、桜木君なのだよ」

校長の言葉に、俺は耳を疑った。だが・・・

「そうですか、しかし、自分ではないです。何せ、今年の冬に転校したばかりですし、第一、

自分は前島先生に感謝している身ですので、そんな事はしません」

と、俺は伝えた。

「そうか、なら良かった。私もね、君みたいな生徒が、こんな事をするはずがないと思って、呼ぶかどうか迷っていた所なのだよ」

校長は俺にそういって

「本当にすまなかった」

と、謝ってきた。

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「そういえば、ここ以外にも調べたのですか?もし、無差別殺人だとしたら、大変な事になりますよ」

と俺はそう校長に言った。

「そうだな、そこのところも調べた方が良いな」

と校長が言い

「では、失礼します」

「ああ、すまんかったな」

と校長が言った。俺は校長室を出た。

「待っていたよ、幸助君」

「うわぁ!」

俺はいきなり声をかけられたので、びっくりした。

俺は後ろに目をやった。

「何だ月か…」

と俺はそこに立っていた、月に対してそう言った。

「何だとは、失礼だよ〜、私、幸助君が心配で、ここで、ずっと待っていたんだから〜」

月はそう言うと、俺の横に並んで

「じゃあ、帰ろう」

そう言って俺と歩き始めた。学校を出ると、外はすでに日が落ちていて、ライトアップされた桜が

印象的だった。

「そう言えば、もう、部活届けは出したの?」

と、月が言ってきた。

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「聞く必要性はないよ、ほら」

と俺は言って、月に一枚の紙を渡した。

「あ、なるほど」

月はそう言って入部届けを見た。

「うんうん、必要事項の漏れは無しっと」

そう言って、月は入部届けをファイルにはさんで、カバンにしまった。

「しかし、いったい誰があんな事したのかな〜」

俺は不思議にそうに言った。

「そうだよね、でも、早く前島先生良くなると良いね」

「ああ、そうだな」

俺はそう答えると

「はぁ〜、部活は決めたのは良いけど、委員会どうしよう…」

そう、この学校では規則が厳しく、規則では・・・

『生徒は、必ず委員会と部活に、属してなければならない』

と記されている。…あ、そうか、そう言えば、その手があったか。

「月、委員会に入るための用紙、今、持っているか?」

俺はそう言って月の方を見る。

「うん、持っているよ」

月はそう言うと、カバンの中から用紙を取り出した。

「お、サンキュー」

俺はそういって、ファイルにはさんで、カバンにしまった。気が付くと、すでに家の前だった。

「じゃあな、月」

俺がそう言うと

「うん、また明日」

月はそう言って家に入っていった。飯を食べ終え、部屋に戻った。

「ふぅ〜」

俺はベッドに倒れこんだ。さすがにあれだけの魔力を使えば当たり前か…。

「寝よ!」

俺はそう言って、月明かりの下寝た…。

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