月夜桜花【第五部 汚れなき白き翼】
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五、汚れなき白き翼

自分は負傷し、翼で空を舞っていた。

ギィイン!!

「っく!!」

激しい金属の競り合い音が鳴る。

「クッソ!近距離戦に持ち込まれたか」

俺は対峙する、相手の刃を刀で防ぐ。

「ふっ、それでは我が剣にはかなわんぞ!!!」

相手は俺の一瞬の隙を見抜き、剣から砲撃を出す。

「がはぁあ!!!」

俺は砲撃をモロに喰らった。

しかも、片羽に大ダメージを喰らい、俺は砲撃と共に地面に叩きつけられる。

「ぐぅうう!!」

俺は仰向けに空を見る。空には第二の砲撃準備をする少年が見えた。

「はは、ここまでか…」

俺は空から、首を横に向けた。そこには、両翼の少女が倒れていた。

「天月…?」

俺は少女の名を呼ぶ…。

「喰らえ!!」

俺は相手が放った砲撃を間一髪で回避した。

「何っ!?」

空に舞う相手は俺に一瞬の隙を見せた。

「は!」

俺は、空中の少年の隙を見て矢を放つ、それと同時に、俺の矢を放つ一瞬の隙を見て、

目の前の少年が槍を放つ。

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しかし、勝負は決まっていた。俺が放った矢は、少年の心臓に命中していた。

「がはぁ…」

少年は天を仰ぐように地面に落ちた。勝負は決まり、守っていた少女に向きかえり、

近寄っていく

しかし!

「ドンッ!!」

周囲の空間だけが違う場所のように凍りつき、凄まじい衝撃が俺の体を貫いた。

「え?」

俺は目の前に自分の飛び散った臓器があるのを見て絶句し、そこに力なく跪く…。

俺は桜の木の上を見た。そこには、嘲笑する一人の少年が居た。

「くっくっく…」

人で言う白目は赤く、そして黒目は銀色をしていた。

そして、背中には大きな黒い翼があった。

その、少年は笑い声と共に闇に溶け込んでいった。

そして、俺は力なく横たえる…。

「なんで?」

気が付くと、俺の横には天月が居た。

俺が張っていたシールドが、俺の霊力の低下によってシールドが敗れたのだろう。

「なんで…」

力なく泣きじゃくる天月は、あたりに、先程の少年が本当にいなくなったのを確認し

「光乃芯様、平気ですか?今、私が助けます」

と言って、俺の体に手をかざした。

「天月やめろ…」

そして天月が呪文を唱える

「我が汝の名において、治癒転生陰陽魔術を施し、―をこの者に、転移させる」

あたりに虹色の光が灯る。

「治癒転換陰陽魔術発動!」

天月の声に合わせ陰陽魔術が発動する。

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何かの衝撃と共に、俺の背中には大きく綺麗な片羽が付き、

意識が薄れ行くなか目の前に狂うように咲き乱れる桜と、血の海、

そして、その血の海に片羽の月が倒れていくのが見えて、世界が暗転した…。

ガバッ!・・・

「つぅう・・・」

(また、この夢か…、引っ越してきてから、本当によく見るな・・・これで4回目か・・・)

そう思いながら、俺はゆっくりと目を開けた。

「?」

俺は目の前にパジャマが破け落ちているのに気がついた。

そして、背中がやけに温かい事に気がつく。

「???」

俺は疑問に思い背中に手を伸ばす。

ファサ…

手には柔らかい感触が伝わってきた。

「ん・・・?、何だ・・・?」

俺は立ち上がり、めったに使わない鏡を机に置き、背中を見た。

「なんだこれ、何か白い物が…って、!!!!わぁぁぁ――!!!?」

俺はこの世の終わりを見るかのごとく、大きい声を上げた。

「どうした!!!!」

「幸助君!?」

これを聞きつけた、親父と月が、俺の部屋のドアを開けようとした。

「開けるなー!!」

俺は慌てて、ドアを押さえ、鍵を閉める。

「何かあったんだろ!?開けろ!」

親父の切羽詰った声が聞こえた。

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「平気!平気だから、今は開けないでくれ!!」

俺は必死になってドアを押さえた。

「そうか、わかった。だが、何かあったらちゃんと言えよ」

親父はそう言って、ドアから離れていった。

「幸助君、本当に平気?」

「ああ、大丈夫だ、だから、上手い飯を用意して待っていてくれ」

「うん!」

こうしてドアの前からは、人が消えた。

「ふぅ」

俺が、親父と、月を部屋に入れられない理由は背中にあった。

「はぁ…最近、羽根が妙な所に落ちていると思っていたら、これかよ原因は…」

俺の鏡に映っていたのは、自分の背中に生えた両翼の綺麗な翼だった。

「これは困った…」

そう、本来、生身の人間に翼があるのはありえない。

(てか、翼が生えているのにこんなに冷静な俺って何?)

一人でボケ突っ込みをした後、仕方がないので親父を呼んだ。

「親父〜」

「ちょっと困った事があるから来てくれー」

「おーう、今行くよ、」

2、3分たつと親父が来た。

「開けるぞー」

「おう」

親父がドアを開ける。

そうすると、親父の目の前には、上半身が裸で、翼が生えた自分の息子の姿があった。

「はぁ…、やはり、俺の血をしっかりと、受け継いでいたんだ…」

親父はそういうと

「ウィングプロテクト解除」

一つの解除陰陽魔術を自分の体にかけた。

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すると…

バサァ…

親父の背中には俺より大きい、綺麗な翼が生えていた。

「な、何で、俺と同じ翼が生えているんだ!?」

俺は驚きの表情で、親父に質問をする。

「ああ、これはな、特殊な血を受け継ぐことによって、生えるんだ」

「特殊な血?」

俺は首をかしげ質問をする。

「未だに解明されて意なのだが、俺たちの家系は少し染色体に以上があるらしい・・・」

「それで?」

「それでって言われても、今の先進医療でも、それ以上の事が解ってないからな・・・」

俺は親父から衝撃の言葉を聴いた。

『翼が生える血族』そんな、驚きの事実を聞いて一つ疑問になった。

「只、今仮説として考えられているのは、陰陽魔術と言うのは、本来とても純粋な力あって、

この純粋な力を使えた一族の末裔が、俺たちの血族だった。

ちなみに記録によると、この力を善のために尽くす者の翼は、

その白さがさらに美しい白へとなる。

でも、力を悪用すれば、次第に翼は黒ずんでいくと記録されている」

「成る程ね」

「まあ、仮説の範囲であって、記録も相当古いものだから、信憑性が無くてな、

なので、俺の病院では、俺を試験体として様々な検査がされているんだ・・・」

「試験体って、親父の体は大丈夫なのか?」

「まあ平気さ、人体に影響があるような検査はしてないよ?さて、話も終わったことだし、

しまいますか・・・ウィングプロテクト」

親父がそういう、翼は徐々に消えていった。

「で、この生えた翼を、親父のように消すにはどうすれば良い?」

「ああ、ちょっと待ってろ」

親父はそう言うと、一階に戻り何かを持ってきた。

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「何それ?」

親父の手には、一粒のカプセル状の薬が乗っいた。

「これはな、その翼を消すために必要な、陰陽魔術を発動させるための成分が入っている薬だ。

特に体に害はない、これを飲まなければ、ずっとそのままで居る事になるぞ」

親父はそう言って俺に薬を渡してきた。

「分かった飲むよ」

俺はそう言い

「ごくっ」

薬を飲み込んだ。

「ん?」

すると一瞬眩暈がしたが、すぐに治まった。

「それで?」

「ああ、さっきの俺と同じように、陰陽魔術を自分に掛ければ分かる」

「お、おう分かった」

俺は言われた通りに陰陽魔術を掛ける。

「ウィングプロテクト」

俺がそう言うと、翼が徐々に消えた。

「き、消えた!?」

「いや、正しくは陰陽魔術により、翼が粒子分解して体に密着し、皮膚に擬似化しているだけだ」

ん?しかし消えたのは良いが、陰陽魔術なんだから持続効果って言うものがあるだろう。

「薬の持続効果はどのくらい?」

「永久的に効果は消えない」

「へー、そうなんだ」

「まあ、他人にその翼は見られないようにするんだな」

「そりゃ、そうだ・・・」

俺と親父が真剣な話をしていると

「幸助君、おじさん〜ごはんだよ」

月の声が下から聞こえてきた。

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「おーう、今行くよ」

俺がそういうと親父は

「まぁ、俺から言える事はそれぐらいだ」

「了解」

俺の返事を聞くと、親父は下に降りて行った。

「さて、服を着るか」

俺は制服に着替え、下へと向かった。

「おはよう」

月が可愛い笑顔で挨拶をしてくれた。

「お、おはよう」

「?、どうしたの幸助君顔が赤いよ、熱でもあるの?」

月が俺の顔を覗き込んでくる。

「い、いや、何んでもない!顔を洗ってくる」

俺はそう言って、洗面所に行った。

「はぁ」

俺はため息を付いてた。

今まで、月を可愛いとは思ったことはあるけど、『好き』って感情にはならなかったんだがな・・・

いつからだろう…。

「はぁ…、腹すいた」

俺は心が落ち着いたので、ダイニングに戻った。

「いただきまーす」

2人の顔を見ながらようやく食べ始めることが出来た。

「ふぅ、さてと行くか、月」

俺がそういうと

「うん、今行く!」

月は元気よく返事をして、数秒もたたないうちに戻ってきた。

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「ん?月、口の横にご飯粒がついているぞ」

俺はそう言いながらご飯粒を取ろうと顔と手を寄せる。

「あ…」

月がそう言ったのも関わらず俺はそれを手で取った。

すると、たまたま目線が合ってしまった。俺と月は目をあわすなり、両者そろって顔が赤くなった。俺と月はそこでお互いに固まってしまった。

すると・・・

「ゴッホン…」

すぐ後ろから親父の咳払いが聞こえてきた。

「お二人さん、仲が良い事は非常によろしいのですが、

そういうのは、人の目に付かぬところでおやりください」

親父がいかにも、嫌みったらしく言ってきた。

「ほ、ほら行くぞ月!!」

「え?あ、うん」

俺と月は急いで家を出た。

「いってらっしゃーい」

後方から親父の声が聞こえた…。

「…はぁ、なんなんだ家の親父は〜」

俺は月と歩きながら、文句を言っていた。

「そういえば今日からは保健委員だった。

月、学校に行くまでの間委員会の規則教えてくれないか?」

俺がそう言ったのだが、隣を歩いている月の反応がない

「…」

「ん?月、どうした?おーい」

「あ、ゴメン!聞こえてなかったみたい…」

「どうした、体の調子しでも悪いのか?」

「ううん、別に平気だよ、ただ考え事をしていただけなの」

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「本当か?止まって」

「え?」

月が止まったのを確認し月の前に出ておでこを触った。

「え?」

「うーん、熱は無いみたいだな」

俺はそう言って、月のおでこから手を離した。

「さて、行くか」

俺はそう言って、歩き出した。

何歩か歩き月が付いて来てない事に気が付く、しかも、凄く遠い所を見ている感じがする…。

(・・・本当に平気かな?)

「おい、月!ボケッとしてないで早く来いよ」

「え、あ!?待ってよ、幸助君!」

月がそう言って、俺の歩に駆け寄って来た。

「行くぞ」

「うん!」

俺と月は、そうして、また学校に向かって歩いていく…。

「おはよー」

「うーっす」

俺と月は勝に挨拶を交わす。

「おう、おはよう」

「ねえ、あなた達付き合っているの?」

リーダーがいきなり話を吹っかけてきた。

「え!?」

「はあ?何でそうなるの?」

「幸助、ネタが古いぞ」

勝がそう突っ込みを入れる。

「いや、別にそういう意味で言ったんではないが、それで、月と俺が付き合ってるって?」

「ええ、学校ではその話で持ちきりよ、取り合えず、孝治には待ったをかけといたから安心して」

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そういえば、朝から俺と月を見る周りの目が痛ったかったり、妙に温かい目で見られてたような…。

「何で、そんな話が持ち上がっているんだ?」

「ちょっと、二人とも来て」

「ん?ああ・・・」

俺と月はリーダーに連れられ、教室の端に行く

「昨日ね、月が幸助の家に月が入って行く姿を、私の後輩が見たの・・・

しかも、その後輩、今日の朝から友人にその話をしちゃったらしいの、

そしたら、すぐに広まってこうなった訳よ・・・」

成る程そういうことか

「月、昨日の話し言っとくか?」

「う、うん、分かった」

「俺から言うと、誤解が生じるから、月が説明してくれ」

「うん」

・・・・・…。

それから、数分間リーダーにしっかりと説明をした。

「…と、言う訳なんです」

「成る程、そう言う事ね、後で後輩にはしっかりと叱っとくわ

それと、孝治に言って、その誤解を解けるちゃんとした記事を書かせるから」

「すまんな、リーダー恩に着る」

「じゃあ、私は孝治のところに言って来るわ」

リーダーはそう言って、孝治の元に行った。

「幸助君、平気かな?」

「大丈夫だよ、リーダーなら、何とかしてくれるさ」

キーンコーンカーンコーン

一時間目が始まったが、結局リーダーはそのまま帰って来なかった…。

気が付くと、昼休みになっていた。

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「結局リーダー戻って来なかったな」

「そうだね〜」

すると、廊下から何やら声が聞こえて来た。

「号外だよー」

聞こえて来たのは、孝治とリーダーの声だった。

「俺にもくれー」

「私にもー」

外では、どんどん号外が配られて行く。

「ほら、桜木」

リーダーが俺に号外を渡してきた。

「お、おう」

ん〜何、何?今朝、学校で噂となっていた2年の桜木と河原さんのカップル騒動は、

独自の調査により、河原さんが桜木君の家に勉強を教えに行っている事が分かった。

また、その事については証言者も居て…。

「成る程、そう来たか」

「ええ、これなら被害を最小限に出来るでしょ」

俺は月を呼び一緒に

「ありがとう」

とリーダーに言った。

「はぁー、しかし、月にもやっと春が来たと思ったのになー」

リーダーがそう言うと、月が湯煙でも、出るかと思うぐらい、顔を真っ赤にして

「リ、リーダさん」

「分かったわよ月、冗談だからそんなに怒らないで、じゃあ、私は号外の残り配ってくるわね」

そう言って、リーダーは教室から出て行った。

「さて、騒動も一段落したか」

俺はそう言って月を呼ぶ

「月、保健室に行くぞ」

俺はそう言って、教室を出た。

「ま、待ってよ、幸助君」

後ろから慌てて月が走って来て、隣に並んだ…。

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「本当に、あの二人付き合ってないのかな?」

「あ、噂の先輩だ」

「付き合えば、相当お似合いなのになぁ〜」

周りからは色々な声が聞こえてきた。

「気にしないで行くぞ」

「う、うん…」

俺らはそうして保健室に着いた。

「失礼しまーす」

「どうぞ」

俺は保健室を開けて

「失礼するよ」

観里姉に挨拶をする。

「こんにちは」

「いらっしゃい、しかし、大変ね」

「別に気にしてないから平気だよ」

「あら、そう」

観里姉はつまらなそうに返事をした…。

俺らはそうして、飯を食べながら、たわいもない事を話していた。

「…でな、それを見た時は手遅れだったわけ」

「へぇ〜、その人、後が大変だったでしょうね」

ガラ!!

「川上先生!!」

一人の生徒が慌てて保健室に入ってくる。

「俺の友達が階段から転がり落ちて、ガラスに当たって、頭から大量出血しているんです!!」

「今、その子は!?」

「その階段の踊り場で止血しています」

「わかったわ、案内して幸助君!!」

「了解!!」

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俺はそう言って、白衣を着る。

「これで、必要な物はそろったわ!行くわよ!」

「おう!」

「私も行く!」

こうして俺たちは、階段に急いで向かった。

そこには人だかりが出来ていた。

「そこを、どいて!!」

人だかりを抜けるとすでに血の海だった。一人の生徒が、今にも息を引き取りそうな状態だった。

「一刻を争うな!」

俺はそう言って、生徒の上に手をかざす。

「解!」

俺がそう言うと、生徒の身体が青色に光る。放った光は俺の手に吸い込まれ消えた。

「ここか!」

俺は生徒の首の辺りに手をかざす。

俺は精神統一を一瞬にして終える。

「発動!」

俺が一言言うと、生徒の患部がオレンジ色の光を放ち、少しずつ速度を速め治り始める。

そして、直す過程で首を切った原因のガラス片を取るのも同時にやった。

数秒が経ち、生徒の傷はすべて完治していた。

「ふぅ、とりあえずこれで傷は完治した」

俺が一段落を終えた。すると、周りからは拍手が上がっていた。

「いや、まだ終わってない、早く輸血をしないとショック死してしまう、救急車はまだか!?」

俺がそう言っていた所にちょうど救急隊が来た。

「患者は!?」

慌ててきた救急隊に

「すでに、ケガの方は治療が終わっています。あとは、輸血を早くやってあげて下さい」

「治療が終わっているって、どういう事ですか?」

救助隊の運転手が俺に疑問をぶつける。

「ええ、治療系の陰陽魔術を施しておきました。到着するのがここまで遅いと

患者さんが助からないですよ!?」

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俺が怒りながら言う

「も、申し訳ありません!」

謝った運転士の後ろで

「本当だ、患部に何の痕跡も見当たらない…」

救急隊の人は驚いた顔で患部を見る。

…本来、陰陽魔術系の治療は魔力の制御が難しいので、下手な奴ほど幹部が盛り上がる。

患部の治し方は、その者に流れている生の流れをフルに患部に流し、

そこに、自分の意識を流して患部を正常な形に治す。

まあ、教えるのが難しいからどうとも言えないが…。

こうして、生徒は救急車で運ばれていった…。

後で、その生徒の後ろを歩いていた友達に聞くと、昼の時に、階段の踊り場でガラスの

張替え作業をやるので、気をつけるようにと放送が入った。

しかし、その生徒が面白そうだからと急いで階段の踊り場へと向かった。

友人は歩きながら、その生徒が階段を曲がる直前で

『危ないから、気を付けろよ』

と一声掛けたそうだ、すると・・・

『大丈夫だよ』

と言った瞬間、生徒が視界から消えて、下に置いてあったガラスめがけて落ちていった。

・・・と言うわけだ。俺は保健室の帰りの途中で、バカだなーと思って帰って行った…。

「しかし、本当に幸助君がいて助かったわー」

そう観里姉が言う

「そうですよねー、手をかざしたかと思えば、倒れていた子の身体が綺麗な光を放ち始めて

光が消えたとたん傷が治っていましたしねー」

月と観里姉が俺の事をベタ褒めする。

「はぁ、あんな大衆の前で陰陽魔術なんて使わなければよかった。

午後になったら、どんな噂が流れているやら…」

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俺がそうへこむ

「いいじゃない、人の命を救ったんだから」

「まあ、確かに…」

「そうだよ、幸助君、噂ぐらいたいした事…マスコミ?」

「ちょっと待て!今の聞き捨ててはならん単語はなんだ!?」

「え、気にしなくて平気だよ〜」

「おい、流すなー」

・・・結局、そんなことをしている間に、昼休みが終わってしまった。

午後の授業に入り、先生が来るたび、俺の話になってしまった…。

「ふぁああー、疲れたー」

授業が終わり俺が机に突っ伏していると、クラスメイトから

「本当に凄いね」

やら・・・

「身体は平気?」

とか・・・、質問攻めにされてしまった。

「ふぅ、やっと終わった」

ホームルームが終わり、俺は部活棟へと向かった…。

俺は胴着を着て道場に入る。

「気をつけ!礼!」

俺の後輩達が道場に入ると俺に礼をする。

「おう、よろしく」

そうして、道場での練習が始まる…。

「ありゃ、気を付けた方が良いな」

勝が何か言っていたので、横からいきなり声をかけた。

「何が?」

「うおぉ!?・・・なんだよ、幸助かよ」

「で?何が気を付けた方が良いんだ?」

「あれだよ、あれ」

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勝はその女子の方に目を向ける。

「ほう、綺麗だな、勝の趣味か?」

「ち、違うわ!!、誰が女の趣味なんぞ話している!?」

「まあまあ、落ち着けって」

俺はそう言って、もう一度、その女子を見た。

そして、その女子が放つ魔力が不安定なことに俺も気が付く・・・

「しょうがない、ちょっと注意してくる」

そう言って、勝が女子の方に行こうとする。

しかし・・・

「いや、やめとけ」

俺がそれを静止する。

「何で!?」

「失敗させた方が、人という者は伸びる」

「んーむ、分かった」

俺と勝はしばらくその女子を見守る事にした。

しばらく経つと、女子の方から、さらに不安定して無い感じの魔力が流れてくる。

「そろそろだな」

「ああ」

俺はその女子の方に手をかざす、女子が呪文を唱え矢が放たれる。

しかし、前回の男子と同様に、矢が赤い光を放ち始める。

「見えない、シールド陰陽魔術を掛けろよ」

「分かっているって」

次の瞬間、赤く光を放っていた矢が女子の方に方向を向け、

何本かの矢になり女子を襲う!!

「キャ――」

「全方位シールド発動!」

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俺はその女子の周りに、全方位型の見えないシールドを張る。

矢は俺が張ったシールドによって全部はじかれた。

「え・・・?」

女子はキョトンとした顔で周りを見る。

しかし、そこには、自分が放った矢が見当たらなかった。

「おーい皆、しばらく休憩としよう。それと、若林はちょっとこっちに来て・・・」

俺はその女子の名を呼ぶ

「え、あ、はい!」

女子は俺の方に飛んできた。

「何でしょうか?」

「何かあったのか?」

俺がそう言うと、女子が口を開けた。

「先輩と、月先輩って付き合っているんですか?」

俺はその質問を聞いて、少しびっくりした。

「いや、付き合ってはいないよ」

俺がそう言うと、さっきまで暗かった顔が、パアァーッと明るくなる。

「そうですか、良かった」

「良かったって、何が?」

「いえ、何でもありません、もう、向こうで休んでいて良いでしょうか?」

「まぁ、別に良いけど」

俺がそう言うと、友達がいる方に向かって行った。

(一体何なんだ?)

俺はそう思いながら、休憩を続けた。

・・・30分が経ち、キリが良くなったので練習を再開する事にした。

しばらく時間が経ち、勝に

「そろそろ、個々に呼び出すぞ」

「おう、了解」

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勝がそう言い、一年の季芳真(きよしま)、川村(かわむら) 、神乃(じんない)、

若林(わかばやし)、二年の米喜多(よねきた)、笈河(おいかわ)、紗軒(さのき)、

上郷(かみごう)の計7人の側を通り、小さい声でバラバラに更衣室に来るよう指示した。

俺はそのまま、更衣室へと向かった…。

しばらく経つと、勝も来た。

「さて、そろそろだな」

「ああ」

俺達がそう言うと、後輩達が間をおいて更衣室に入ってきた。

「さて、お前達を此処に呼んだのは、他でもない、来年の大会に出てもらう為だ」

後輩達は驚きの表情を見せる。

「それでだ、お前達の練習を見て一つ問題が出てきた。ん〜、言うのもつまらないから

そうだ、紗軒答えられるか?」

俺が紗軒に質問をすると・・・

「え〜、陰陽魔術の発動に時間がかかり過ぎる所ですか?」

「…お前、勘良さ過ぎ…」

俺はある意味でショックだった…。

「・・・まあ、そういう訳だ、お前達共通で言える事なんだ」

俺がそう言うと・・・

「そうすると、このメンバーではダメじゃないんでしょうか?」

2年の学年別リーダーがそう言う

「いや、そんな事はない、ひとつ良い手があってな、それが、エレメントカードだ」

「何ですかそれ?」

後輩達がそう言う

「な、お前達、エレメントカードを知らないのか!?」

「マジかよ…」

俺と、幸助は口を開けて驚いた。

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「んーそうだな、簡単に言うとだな、発動に必要な素材と術式を詰め込んで、圧縮したカードだ」

俺がそう言うと後輩からこういう質問が出た。

「しかし、俺達には、それは無理なのではないでしょうか?

そこまでの技量はありませんし、先輩方が作って頂くとありがたいのですが…」

(・・・ん〜、やはりこういう質問をする奴が出てきたか…)

俺はそう思いながら

「それは無理だ、何故かと言うと、エレメントカードを生成するのは、自分の魔力での

生成でなければいけない、そうじゃないと、魔力が逆流するか、

もしくは暴走するなど非常に危険だ。それと、エレメントカードの生成はそんなに難しくはない」

俺がそういうと後輩達は安心した顔をした。

「ならば、やりかたは教えてくれるのですよね」

「ああ、もちろんだ、だから、此処に呼んだんだ」

俺はそういって、一人一人に個人用のメニューを渡す。

「これは…?」

「ああ、今日から上手く周りに気付かれないように学校に残って欲しい。

まあ、それが無理なら保健室に行ってくれ、川上先生に言えば絶対にばれないよう

にしてくれるから」

「はい、分かりました」

俺は後輩にそう言った。

「今日はどうします?」

一人の後輩がそう言った。

「そうだなー、お!良い手があった」

勝はそう言うと、その良い提案を聞いてから、俺は部活に皆を戻した…。

そして、部活が終わる頃に大会に出るメンバーが時間を置いて、バラバラに失敗をする。

その度に勝は

「おい!!危ないぞ!…はぁー、なぁ幸助どうにかしてくれ!!」

と言う

「まあ、そう怒るなって」

そして最後のメンバーを勝が注意し終わったとき、俺は椅子から立った。

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「はぁあー、仕方ないあんまこういうのは好まないんだが…

おーい、今、主将から注意された奴は、今日は居残って、練習!!

そうじゃないと、今年の大会には出れないからな!!分かったか!?」

俺がそう厳しく言うと、大会メンバーはため息をして返事をした…。

「よーし、終わるぞー」

俺はそう言って・・・

「さっき言われた奴等は、ここに集合!その他は帰って良いぞー」

俺がそう言うと、部員達が帰り始める。

出口のほうでは・・・

「あいつら、完全に大会に出れないな…」

と心配する奴や・・・

「バカだなー、大会前なのに失敗なんてして、ブッ、ハッハッハ…」

などと、面白そうに笑う奴などの声がした。

そして、他の奴らが帰ったのを見はらかって、大きな笑い声で笑った。

「はぁー、面白かった、それにしても勝るのあんな顔久しぶりに見たよー」

「そりゃ、最近怒鳴った事もないしなー」

「先輩達、演劇部でもやっていけるんじゃないですかー」

後輩がそう言う・・・

「そうか?」

「本当に普通でしたもん怒り方と、指導の仕方」

もう一人の後輩が言う・・・

「いやいや、お前達のかったるそーな顔こそ、普通だったよー」

俺たちは、その後数分の間、その事について笑っていた。

「それじゃあ、まず見本から見てもらおう、いきなり座学から入っても、面白くないしな」

俺はそう言うと、名詞程の大きさの厚紙を出した。

俺はその紙に魔術式を書く・・・

「先輩、これは何の魔術式ですか」

「秘密」

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俺はそう言うと、片手をそのカードにかざす。

「我が汝の力にして汝の主、今此処に必要でない力を封印し、その封印を解く時、

その力が発動する事を誓う、封印!」

俺がそう言うと、カードが黄色の光を放ち始め、一瞬俺に触れ離れた。

そして必要な元素を取り込んだ光は、カードに吸い込まれていった。

「と、まあ、これが一連の工程だ。そして、これが俺が作ったカードだ。

カードにはこうして印が記される。

しかし、これは自分が指定するのでなく、術者に似合ったマークが付く

俺は昔からカードを生成すると、陰陽のマークに白い翼が生えたマークになっている」

俺はそれを後輩に渡す。

「綺麗なマークですねー、それでこれは何のカードですか?」

後輩が聞く

「ああ、カードのマークの下に書いている言葉が、そのカードの正体だ。

まあ、発動すれば分かる」

俺はそう言って、後輩からカードを返して貰い、床へと置く

「解除」

俺がそう言うと、そこには、その場全員分のお茶が出来ていた。

「これが、このカードの正体だ。まあ、飲みながら続きを説明するとしよう、ほら?」

俺はそう言って、後輩や勝に飲み物を渡す。

「お、サンキュ、こうなったら俺は…」

そう言って、俺と同じようにして、カードを出し手をかざす。

「我が汝の力にして汝の主、今此処に必要でない力を封印し、封印を解く時

その力が発動する事を誓う、封印!」

そう勝が言うと、同じようにエレメントカードが出来た。

「と、まあ俺も幸助と同じ感じのやり方だが、ほら、マークが違うだろ」

「ん?どれどれ」

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俺はそう言って、勝からカードを見させて貰う、その瞬間、背筋が凍りついた・・・。

「こ、これは…」

俺は、勝に聞こえないよう小さい声で言った。

勝が作ったカードには、前島先生を瀕死に追いやった黒い翼が生えた赤い玉のマーク

そう、あの時の魔方陣のマークと同種のものが印されていた。

しかし、そのカードからは優しい魔力が出ていた。

(いや、まさか勝があんな事をするはずがない

自分の恩人の命を奪うような事をするような奴じゃない…)

俺は、信じたくない証拠を見て考え込んでいた。

「ん?どうした幸助?」

勝が不思議そうに見る。

「い、いやなんでもない、それよりこのカードは一体何だ?」

俺がそう言うと、勝がそれを取って

「まあ、見てろって」

勝はそういうと同じ様にして、カードを床に置く

「封印解除」

勝がそう言うと、床の上に器が出来ていて、その中には、せんべえが出来ていた…。

「でだ、このカードの生成は、意外と簡単なんだ。だが、発動するのが難しい」

俺はせんべいを食べ終えてからそう言うと

「おい、勝もう一回よろしく」

「ああ、分かった」

勝はそう言って、もう一枚のエレメントカードをポケットから出した。

「それじゃあ、やる前に俺が、お前の周りにシールドを張っとくから」

「おう、了解」

そう言って、勝は手をかざす、俺は勝の周りに、全方位型シールドを張る。

そして、勝が・・・

-23ページ-

「封印…」

勝がそう言った瞬間、勝の携帯を鳴らした。勝は携帯によって集中力が一瞬切れてしまった。

その瞬間、エレメントカードが暴走し勝を襲う、しかし、その暴走は俺のシールドで防がれた。

「と、まあこんな感じだ。さっきみたいに集中力がきれるとこの有様だ。

つまり、作る事態はそんなに難しくはないが、カードを開放する際に相当な集中力が必要になる。

だから、今回の特別訓練メニューは、カードの生成方法を教えると共に、

集中力を鍛える訓練をする」

俺はそう言って、個々の特別訓練メニューを渡す。

「これが、個々のデーターから考えて出来た訓練メニューだ。

これを基本としてやるのでよろしく。じゃあ、始める」

俺はそう言って、まずカードの生成方法を教える。

「カードを生成できるようになるには、まず、自分の心が落ち着いてないと無理だ。

特に気が荒っぽい奴は要注意だ。まあ、一日もあれば出来る」

こうして俺達は、夜8時まで、訓練メニューをこなしていった…。

「よーし、終わるぞー」

「はい、分かりました」

後輩達は帰る準備をし始める。

「先輩!」

「のわぁあ!!??」

俺は驚きのあまり、飛び上がってしまった。後ろを向くと若林が立っていた。

「はぁあ、びっくりした」

俺は胸を押さえて若林を見る。

「す、すみません」

「で、何か用か?」

俺がそう言うと・・・

「どうして今回の大会に私が選ばれたのかが、不思議でしょうがないんです。

あれだけ大きい失敗をしたのに…」

-24ページ-

若林は自信なさそうに下を向く

「良いだろう、何故若林を選んだか教えよう、それはな、俺から見て、

とても良い素質を持っていたからだ。それに、他の奴より数倍の努力をしている」

俺がそういうと若林が

「だけど、まだ力が発揮出来ていないんですよ、それなのに何故?」

若林が不安そうに言う・・・

「確かに今は、その力が開花していない、だから、今回この訓練で、その開花しない

花に水を上げようと思ってな、開花すれば、必ず綺麗な花が咲くと思ったのも、その理由の一つだ。現に、誰よりも早くエレメントカードの生成のこつをつかんだのは若林だよ」

「そういう事だったんですか、本当にありがとうございました」

若林の顔には再び力が漲っていた。

「おう、頑張れよ」

「はい!」

若林はそう言って、更衣室に行った。

「さて、俺も帰るか」

俺は帰る準備をして、部室を掃除してから帰った。

「ただいまー」

「お帰り」

月が顔を出してくれた。

「今日は、随分遅いね、何かあったの?」

月が興味心身で俺に聞く・・・

「秘密〜」

俺がそう言うと

「教えてよー」

とねだってくる。

「無理だ、教えると身に関わる」

「んー、まぁ、しょうがないか、ご飯の支度出来ているよ」

月に連れられリビングに向かう・・・

-25ページ-

「おー、美味そう」

俺がそう言うと、月が椅子に座る。

「それじゃあ、食べよう」

「おう、それじゃあ」

「いただきまーす」

俺と月は声を合わせて食べ始めた…。

「ふぅう、ご馳走様でした」

「ご馳走様でした」

俺と月は飯を食い終わり、リビングでゆっくりしていた。

「あれ?そういえば親父遅いな」

「叔父さん、電車が止まって、足止めになっているんだって」

「で、親父は今何処?」

「横浜だって」

「はあ、当分帰って来ないな」

俺はそう言って、自分の部屋に戻る。

「さてと、宿題を済まさないとな…」

俺はそう言って、数時間宿題をやった…。

「幸助君、おやすみー」

隣の部屋から月の声が聞こえた。

「おう、おやすみー」

(んー、俺も寝るか・・・)

俺はそう思ってベッドに入り眠りに就いた…。

「ふぁー」

俺は大きなあくびをして起きた。

「はあ、よく寝た」

俺はそう良い、ベッドを出る。

「さて、今日の支度をするか」

俺は必要な教科書をカバンに入れ、椅子に座った。

-26ページ-

数分が経つと・・・

「おはよう、幸助君、ご飯だよ」

月が起こしに来てくれた。

「おう、今行く」

俺はそう言って、下へ降りる。

「おはよう、幸助」

親父が挨拶をする。

「おはよう」

俺はそう言って、椅子に座る。

「じゃあ、食べよう」

「いただきまーす」

三人の声が重なって、朝食を始めた…。

「ご馳走様でした」

朝食を終えた俺は、歯を磨き終え玄関へと行く・・・

「それじゃあ、行こう」

「おう」

俺は月の横に座る

「いってきまーす」

俺と月はそう言って、家を出た。

「いってらしゃーい」

後ろでは、親父の声がしていた…。

「…それでね、あと一歩で黒木先輩に勝てそうだったんだよ?」

「ほー、凄いじゃん」

「えへへ、そう言われると照れるなー」

そう言って、月は少し駆ける。

「おいおい、危ないぞ」

「うん!」

月が返事をし、交差点に差し掛かった瞬間!!

「パア―――――」

クラクションの音がして、横から、大きいトラックが飛び出てくる。

「え?」

月はそこから動けなくなってしまう

「馬鹿やろっ!!」

俺は月をかばうようにして、トラックの前に飛び出す。

「グギャアァァァァァ――――――――」

トラックのフルブレーキの音がした。

そして俺の手の中には、横たわる月の姿があった。

俺の意識は音が出てもおかしくないような勢いで、そこでブッツリと切れた。

まるで、今までの人生が消えてしまうように・・・・・・・・・・。

説明
今回は、この物語の中でも要の部分となる章です。
ご興味がある方は、どうぞご覧下さい。
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