北郷一刀と新たな英雄が紡ぐ外史 22話
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「…おかしいわね」

 

城壁で戦況を見守っていた荀ケは呟く。

視線の先には撤退していく曹操軍の姿

”撃退”のみならば攻勢が始まった時から繰り返している光景なのだが…

 

「あの曹孟徳がいつまでも同じ戦法で挑んで来るはずがない。それに、こちらと挟撃を狙った孫策を破ったとの報ももあったばかりだし」

 

曹操と領地が隣接している孫策ならば、曹操の勢いを弱めようと軍を興す事は荀ケの予想内。予想外なのは孫策軍を打ち破る早さだ。

どんなに早く孫策軍来襲を察知したとしても、自分達と対峙している状況で新手に軍を割く余裕はない。

ならば、本国から援軍が来ているのは間違いない。それも、孫策・周瑜を短時間で退けられる者は大陸広しといえど、ごくわずか

 

「諸葛亮と?統…臥竜と鳳雛相手なら、いくら私でも簡単に撃退はできない。野戦と違って、策が限られてる攻城戦だから2人の出番は無い…?」

 

そんな考えが浮かぶが、すぐさま自分自身で否定する。確かに並みの智者ならば、この堅牢な虎牢関を破る手無しと判断して出番が無いかもしれない。

しかし、相手は”並み”では無く”大賢者”

 

「あぁっー!もう!苛々するわね!」

 

考えれば考えるだけ泥沼に嵌る感覚に、荀ケは地団駄を踏みながら声を荒らげる。

勝っているのは自分なのに、優勢なのは自軍なのに、モヤモヤとした気持ちにされているのか…

守備兵達は、唸っている荀ケに絡まれないように遠巻きにして眺めていると、荀ケに声をかける人物が現れた

 

「ちょっと、ちょっと、桂花ちゃん。そんなに唸っちゃってどうしたんですか?いつもならわる〜〜ぃ笑顔で曹操軍の退却を見てるじゃないですか。いつもの桂花ちゃんらしくないですよ?」

 

「…煩いわね、あんたが私の事をどう見てるかよく解ったわよ。…それより、いい所に来たわね」

 

「はて、なんでしょうか?……まさか!私に罵倒して欲しいんですね!流石桂花さん、歪んだ性癖をお持ちですね♪」

 

「違うわよ!どうしてこの流れでそういう結論に至ったの!というか、”あんたにだけ”は歪んだ性癖とか言われる筋合いないわよ!」

 

「またまたそんな事言っちゃって〜♪い・つ・も、城壁から曹操軍を見下ろしつつ、ニヤニヤと笑っている桂花ちゃんには勝てませんよ」

 

「あんた喧嘩売りに来たんでしょ!いいわよ、あんたがその気なら買ってやるわよ!」

 

様子を見に来たと思えば、火に油を注ぐ張勲の言動に、城壁で守備する兵士達は我関せずを決め込む。

ここで下手に口を挟めば、荀ケからは罵倒され、張勲からは確実いじられる・・・

彼女たち直属の兵士といえど、2人揃っている時には関わりたくないのが本音

 

「まぁ、桂花ちゃんで面白がるのはこれくらいにしまして、桂花ちゃんが”らしくない”ってのは本当ですよ?いつもの桂花ちゃんなら、曹操さん達の意図なんて読み取れますし」

 

張勲の言葉を聞いた荀ケは、今までのイラつきをなんとか抑え込んで自問する

なんで急に曹操軍の動きが変わったのか、変わった時期は、その理由は…

先ほどまでの乱れた思考ではなく、大陸屈指の智謀をフル回転させた結果・・・すんなりとその答えに辿り着いた

 

「私の采配の癖を調べる為…ね」

 

「まったく…すぐ頭に血が昇るのは、桂花ちゃんの悪い癖ですよ?もう桂花ちゃんも正気に戻りましたし、私は自室に戻りますね。最近罠の効き目が良くないので、改良を考えないといけませんから」

 

そう言うと、張勲は踵を返して城壁を後にする

荀ケは去っていく張勲を一瞥してから視線を曹操軍が駐屯する陣方向へと向ける

 

「私を観察するという事は、奴らの本格的な攻勢もそう遠くはないはず。曹操、諸葛亮、?統…1人だけならともかく、3人同時となれば、いくら私でも分が悪すぎる。けれど、私達の目的は撃退じゃなく時間稼ぎ…」

 

荀ケは一度目を閉じてから、ゆっくりと目を開く

その目には力強い闘志が感じられる

 

「観察でもなんでも自由にするといいわ。来なさい!乱世の奸雄に伏竜鳳雛!あんた達がどんな策を立てようが、この荀ケ様が全部打ち破ってあげるから!」

 

 

 

冷静さを取り戻し、気持ちを入れ直した荀ケの姿を見届けると、階段の影に隠れていた張勲は今度こそ城壁を後にする。

帰り途中にも兵士達の様子を見て回り、兵糧・武具の確認などを行っていた為、自室に戻った時にはすっかり夜も更けていた

 

「遅くなっちゃいましたね。本当は他の人にもやってもらいたいんですけど、そうは言ってられませんし…」

 

 

魑魅魍魎が跋扈するとはいえど、腐っても漢の都。

都を守護する近衛軍を中心として兵力は群を抜く、その兵力で立て籠る虎牢関の防御力はかなり厚い。

そんな虎牢関の弱点挙げるとするならば、兵の数に対して将が圧倒的に不足している事だ

総大将の公孫?、軍師の荀ケ、指揮官の張勲…目立った将はこの3人ぐらいの状況で、曹操軍を釘付けに出来ている事から、3人の能力がずば抜けている事が伺える。

 

 

しかし……どんなに有能な人物だろうが、やれる事には限界がある。

「総大将の公孫?は洛陽の動乱を抑え込み」

「軍師の荀ケは大陸屈指の実力者、曹操軍を抑え込むのに全力を注いでいる」

 

残る張勲の仕事はこの二人の補佐

公孫?が”表”の都を治め、”裏”の顔を持つ都は張勲が秘密裏に処理している

曹操軍との戦いでも、諜報や進軍を妨げる罠・睡眠を妨げる銅鑼・大軍が嫌がる少数部隊による奇襲。それに加え、兵士達の鼓舞や治療、兵糧の確保に、城壁の修繕などを一手に受け持っている

これだけの執務で蓄積される肉体的疲労に加え、ある事が張勲を悩ましている

 

「孫策さんを撃退した時に現れた曹操さんは影武者。その影武者の正体は……間違いなく美羽さま」

 

諜報部隊からの報告を聞き、曹操軍と孫策軍の戦いの結末を知った時から張勲は揺らぎ始めていた

自分と過ごしていた時は、世間知らずのお嬢様であり自分の好きなように教育していた為、他者を顧みない為政者となっていた。

 

そんな世間知らずのお嬢様だった袁術が、一軍を率いて孫策との戦いに臨み勝利した。

しかも、自分と過ごしていた時には見れなかった生き生きとした姿・・・

 

自分の欲を満たす為に袁術を取り戻したい張勲だが、このまま袁術を元に戻していいのだろうか…

曹操や劉備の下で過ごした方が幸せじゃないだろうか…張勲の心に初めて迷いが生じていた

 

「私の歪んだ愛情では無く、心優しい劉備さんと一緒に居た方がいいのかもしれませんね。でも・・・この戦いは負けられません。こんな私でも、助けて貰った恩を仇で返す事は出来ませんから」

 

 

 

 

 

 

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今回は早く(1か月)で更新出来ました・・・w

個人的に桂花は優秀ですが、感情に支配されたら視野が狭くなる印象なので、それを指摘する七乃とのやり取り。

普段は見せない弱った七乃の姿をやりたいなと思った結果がこれでした。。

 

 

華琳様たちの裏側、桂花たちの裏側をやりましたので、次回から久々に一刀達が登場(参戦)します。

ヒロインは決めてあるのですが、今後七乃の立ち位置をどうしようかはまだ未定です

Twitterで進捗情報知りたいという意見がありましたら、今後やろうと思いますので、希望がありましたらコメントお願いします

 

某所で原作基準の董卓√での一刀の役割を話していたら、書きたくなってきた浮気性・・・w

 

 

 

説明
我ながら思う・・・どうしてこうなった・・・w
七乃のキャラががが(今更感
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コメント
イライラしている桂花さんにしれっと話しかけられるなんて、さすが七乃さんですな。(mokiti1976-2010)
汝の成したいように成すが良いってどこぞの邪神も行ってたし欲望に従うのは悪いことじゃないとry(未奈兎)
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恋姫†無双 恋姫英雄譚 恋姫革命 七乃 桂花 

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